探していないものを見つける技術

統計的・分析的な情報からおすすめを選んで表示してくれるサービスと言えば、Amazon.com/co.jpを思い浮かべる人が多いだろう。「あわせて買いたい」や「この商品を買った人はこんな商品も買っています」などには、高い確率で興味ある商品が表示され、必ずしも購入されないとしても、プロモーション効果は大きい。

AppleのiTune Storeでも「JUST FOR YOU」として、ユーザーの購入履歴などからおすすめ商品を表示している。ここではそれぞれの商品について「すでに持っています/とくに興味がない」がマークでき、ユーザーの音楽的傾向の分析にフィードバックされているものと思われる。

これまでEC関連のWebサービスでは、売りたいものをいかに的確に検索結果に載せるかが大きな勝負となっていた。それが昨年頃から、いかに口コミされるかが新たな要素として重視され、ブログを巻き込んだバイラル広告という市場が造られた。同時に、ユーザーのネット上の行動を分析してセグメント化し、傾向に合った広告を配信する行動ターゲティング広告が広がりを見せている。

リコメンデーションは、これら3つの要素を組み合わせたような状態で、ユーザーが直接検索していない(が、嗜好に合う可能性が高い)ものを個別に「おすすめ」として提示する仕組みだ。長い間、ユーザーの検索により探し出される存在であった情報が、自ら適したユーザーの元へ出向くことでその価値を高めたことになる。PULL型の典型とされてきたインターネット上に、PUSH型の情報提供を行う機能が付加された構図だ。

検索の代名詞であるGoogleも、Google Accountユーザーに提供されている「Google検索履歴」において、「お客様の検索に関連する最近の上位キーワード」として、ユーザーが直接検索したもの以外の情報をPUSHするという機能を取り入れた。また、検索履歴に関連するとして抽出された"Googleオススメ"のページが、「Picks For You」(ボタンギャラリーからツールバーに追加できる)から閲覧できる。これらは今のところツールとして機能しているが、いずれ何らかの形で広告方面に活用されると考えていいだろう。

Googleツールバーの「Picks For You」ボタンと、検索履歴から抽出されたおすすめサイト

リコメンデーションのこれから

おすすめRSSの根幹となる「リコメンデーション技術」を開発したNTTコミュニケーションズによると、この技術はデジタルコンテンツが増えたことによって、欲しいもの(コンテンツ)が探せない状況が生まれていることから、それを解決するためのものとして1年ほど前から開発を進めてきたもので、今後は映像・音楽コンテンツへの応用も検討しているという。

増加が著しい音楽や映像コンテンツについては、テキストデータによるキーワードでは検索しにくいという性質がある。また、様々な検索技術により、ネット上では大概の情報が"探せば見つかる"環境になっているが、情報が多すぎて逆に探しきれないということも起きている。検索が廃れるということはあり得ないだろうが、パーソナライズ、ターゲティング、リコメンデーションと、情報が"個"に向かう流れは確実に進んできている。