小林三昭氏
ジェイアール東日本コンサルタンツ IT事業本部 企画・ITユニット兼 データベース・TERAユニット兼 企画部 新規事業開発室 部長

編集部は、販売取扱元であるジェイアール東日本コンサルタンツ IT事業本部の小林三昭氏にお話を伺う機会を得た。まず、このシステムのインフラにGoogle Earthを採用したきっかけから伺った。

「Google Earthの英語版が出たころ、JR東日本の防災対策のための3次元シュミレーションにちょうどいいな、と話していました。3次元シュミレーションは非常にコストがかかる。しかし、Google Earhを利用すれば安価で、かつ使いやすいシステムが構築できそうだと考えたのです。そこで、日本語版が出たタイミングで具体的な開発に踏み切りました。このスピードで衛星写真を3次元でシミュレートできるなら言うことないでしょう」(小林氏)

JR東日本の防災についての研究はジェイアール東日本防災研究所でなされている。設備情報や気象情報などを重ね合わせることで、より具体的な防災計画策定業務の助けになるという。「ウェザーニュース社と連携して過去の気象情報を重ねることで、雨雲が山にぶつかる様子や、山間部への降雨が何時間後に線路へ影響するか、などを推測する手助けになります」(小林氏)

実際に衛星画像と各種データをオーバーレイして使ってみると、非常に便利で好評だっという。しかし、その一方で販売にあたっては不安もあった。「Google Earthは無料でも見ることができるソフトウェア。衛星写真でさえ、世界の主要都市は無料で見ることができるし、その範囲は広がる一方です。にもかかわらず、弊社が有料で提供した場合、どこまで利用者を集められるのかという疑問があった」(小林氏)。

雲の動きなどの気象情報と重ね合わせ、防災に役立てることが当初の目的だったという

衛星画像にマーケティングデータを重ね合わせた例。緑の濃い部分は人口が多い場所で、「SC」はショッピングセンターの位置

そこで、JR東日本の100%子会社であるジェイアール東日本コンサルタンツは、JR東日本の鉄道業務に即した業務である「都市開発」をターゲットに提案を進めたという。

都市部に新しい駅ビルを建てる場合、3次元模型であるジオラマが必要になるが、Googlg Earthを使えばそれをパソコン上で簡単に作ることができる。新宿上空から新宿副都心方面を3次元で展望、シミュレーションすれば、今後さらに過密化するであろう都市計画はもちろん、再開発計画、高層ビル建築計画の策定業務への利用が期待できる。鉄道情報に人口の統計や、ショッピングセンターなどの商業施設のデータを重ねれば簡単にリアルな商圏分布図を作成できるのだ。「実際にジオラマを作成するまでの工数、コストを考えれば、こちらは格段に安い。本格的な計画段階では、より精巧なジオラマが必要になる。しかし、その前段階なら"Google Earth & Railway"でのシミュレーションが役に立つ」(小林氏)

鉄道周辺(新宿エリア)を望む

さらに絞り込んでJR東日本本社付近を望む

この4月より、実際にJR東日本の関連会社において、駅周辺再開発計画、高層ビル"エキナカ計画"でのマーケティングのために活用されているそうだ。そして、この春「Google Earth & Railway」は観光でも活用された。JR東日本横浜支社が、その立体的で奥行きのある地形図を活かして、"地形を感じる列車の旅″の提案として旅行用小冊子「レールウェイジオラマップ(小田原~東伊豆の旅)」を首都圏の主な駅などで無料配布したのだ。「Google Earth & Railway」は高解像度の衛星画像を採用しているため、Web利用のみならず、かなり細かい縮尺での十分印刷に耐え得るデータを作成できるのも特徴といえよう。