そして、ついに料理が完成。デモンストレーションが終了すると本来なら実習に入るが、体験会では試食タイムに。ここで、今回のお酒担当講師である「シャトーレストラン・ジョエル・ロブション」プルミエ・ソムリエの信国武洋氏が登場。料理3品それぞれに合わせたワインの解説が始まった。
「赤ピーマンのムースには、シャンパンを合わせました。ムースは食感の変化はありませんが、口に入れた瞬間に広がるふくよかな香りに特徴がある料理です。そんなムースには、シャンパンのきめ細かな泡が合います」と解説。また、「魚料理に赤ワインが合わないなんてウソですよ。香りの相性さえ考えてやれば、赤ワインも魚料理と一緒においしくいただけます」といった意外性ある発言で参加者を引き付けていた。
約1時間半の体験会はあっという間に終了。最初は有名シェフに会えるというミーハー気分で参加していた私だが、飯塚氏の「料理は計量をしていればおいしく作れるというものではない。自分の感覚で調味をしていくべきだ」というコメントが他の料理教室とは一線を画す内容で、非常に印象的だった。
また、同料理教室は料理の技術が上がるだけではなく、「もっとレストランに行きたい! 」と思わせる内容でもあるように思う。料理やワインの知識がないままレストランに行くと、専門的な調理用語が並ぶメニューブックを見て、「この料理は内容がよくわからないから、他のメニューにしよう……」と消去法で料理を決めたり、ソムリエにすすめられるがままにワインを注文することもよくあるだろう。
今回の献立に登場した「ピストーソース」もレストランのメニューではしばしばみかける名前だが、「これはバジルのソースね」とわかっていれば今までより満足のいくメニュー決めができるだろう。さらに、「○○な料理には××なワインが合う」という知識もあればソムリエとの会話もはずみ、レストランでの時間が一層有意義なものになることだろう。料理の腕を上げるだけではなく、食べ手としての心をも刺激する点に、この教室の特徴がある気がした。