1981年6月にデビューして以来、卓越した音楽センスによる上質なサウンドをコンスタントに世に送り出してきた角松敏生。プロデューサーとして活躍する傍ら、ミュージシャンとしても精力的な活動を続ける彼に、6月末から開催される「TDK Presents TOSHIKI KADOMATSU Performance 2007~2008"Player's Prayer"RETURNS」や4月にスタートしたラジオ番組「TDK REAL SOUND JAM」(TOKYO FM)への想いなどを語ってもらった。彼が今、音楽を聴くすべての人に届けたいメッセージとは……。
――6月末からは全国ツアー「"Player's Prayer"RETURNS」が始まるわけですが、昨年の"Player's Prayer" TOURを振り返ってみていかがですか?
「昨年は25周年というのもあり、自分としてはかなり集大成的な、気合の入った作品づくりをしようと思って、ニューヨークでレコーディングをしました。今そんなにお金をかけなくてもCDが作れる世の中なので、非常にハイリスクですよね。それで、そのCDを作ったミュージシャンとツアーをまわるっていうのも、経費的な部分も含めてすごくハイリスクなことだと思うんです。ただ、来てくれた人には『こんなの観たことない』『こういうことが有り得るんだ』っていうぐらいのライブを提供しようと。そこにはすごく自信を持って、また力を入れてやりました」
――"Player's Prayer" TOURを今年"RETURNS"として実施しようと思ったいきさつは?
「ある意味、リベンジをしたいっていう思いがあったんです。"Player's Prayer"TOURでは名古屋とか大阪とか、本来お客さんが入らなきゃいけないところが入らなかったりしたんです。『こんなスゴイことをやってるのに何故? 』ってツアーに参加したミュージシャン全員が言いましたよ。みんな、ミリオンセラー・アーティストのバックをやってるような日本中の名うてのミュージシャンばかりですよ? それだけに悔しかったし、苦しかった。だから敢えて今回も頑張って続けることによって、自分が伝えたい想いが伝わるんじゃないかと思って」
――角松さんが伝えたい想いとは?
「プロのミュージシャンが一堂に揃うこのライブの素晴らしさですね。その素晴らしさをより感じてもらうために、"RETURNS"では、それぞれ”一国一城の主”みたいなメンバーが、たとえば4人でやったり、3人や2人でやったり、あるいはコンサートホールの場合、ギター・ベース・ドラムス・キーボードの4つの楽器を用いるフォーリズムにしてやってみたりと、1本1本のコンサートを全部違う内容にしていきます。アットホームなライブもあれば、フルメンバーでドーンとやるライブもある。それぞれのコンサートでメニューやアレンジも違うし、規模も場所もバラバラですけど、それが全部"Player's Prayer RETURNS"に集約されていくことで、音楽の表現方法がさらに広がりますよね。研鑽を積んだプロのミュージシャンの力量があってこそというところが、ストレートに伝わるんじゃないかな」
――ライブのときに特に気をつけていることはありますか?
「角松敏生のライブというのは、音楽の質の高さを求めるために、参加しているミュージシャンの演奏技術の高さを重要視していいものを作るというところに重点を置いているので、ミュージシャンの演奏の1つ1つがすごく貴重な瞬間なんですね。だから、ライブの映像収録時にも工夫していますよ。どんなふうにライブが作られているのかを見せるために、たとえばステージにもドラムのためだけにカメラを1台置いたりしてるんです。参加しているミュージシャンの演奏技術の高さと、そのミュージシャンとコラボレーションしている自分を見せること、つまりライブの全体像を見せることが収録時の肝でもあります」