これまで紹介してきたとおり、組み込みデータベースにはさまざまな製品がありますが、組み込みシステムは個別要件が多いため、すべてに適用可能な組み込みデータベースは存在しないと考えられます。
そこで、想定するシステム要件に適した組み込みデータベースを選択することが重要になります。
以下に、組み込みデータベースを選択する際のポイントについて簡単にまとめます。
機能性と性能/省リソースのバランス
一般に組み込みデータベースの機能性、性能、リソース消費量は、トレードオフの関係にあるため、個々の仕様が要件を満たしていたとしても、実環境で動作させたときに期待どおりのメリットが得られるとは限りません。特に性能やリソース消費量は、実際のデータ構造やアプリケーションからのアクセス形態にも大きく影響を受けます。
そのため、組み込みデータベースを評価する場合は、できる限りシステム全体としての要件や優先度を明確にして、実際の機器やユースケースに近い環境で、機能、性能、リソース消費量のバランスを総合的に判断することが重要です。
標準インタフェースのサポート
SQL、ODBC、JDBCなどの標準アクセスインタフェースを使用して開発を行うことで、短期間で品質の高いシステム開発が実現できます。また、将来的に開発したアプリケーションの互換性や移行性という観点でも、標準インタフェースのメリットは高いと考えられます。
しかし、標準インタフェースについても、性能、リソース消費量という観点では、一般的にトレードオフ関係にあることや、標準であっても製品に依存する要素は存在することから、バランスや製品ごとの依存性を総合的に判断しながら使用することが重要です。
コストモデル
組み込みシステムは、厳しいコスト制約があるため、組み込みデータベースのコストモデル(ライセンス、サポート)の検討は非常に重要です。開発やランタイムの局所的なコストだけで判断せず、製品ライフサイクル全体にわたるTCOを考慮しながら最適なコストモデルを判断することが必要となります。
サポート、品質保証
携帯電話やカーナビゲーションシステム、デジタル家電など製品は、いまや日本国内だけでなく、世界中に提供されることが前提です。また、医療機器や自動車などで使用する場合、組み込みデータベースの不具合が大きな事故を引き起こす可能性もあります。そのため、ベンダのサポート体制や品質保証体制も重要なポイントとなるでしょう。