表組み機能に「表スタイル」「セルスタイル」を追加

InDesign CSシリーズに搭載される表組み機能は、表計算ソフトに似た操作感と細かな文字組機能の組合せで、他のレイアウトソフトにはない充実した内容を誇る。とはいえ、日頃常用しているとちょっとした操作が面倒になるもの。例えば、文字周りは段落スタイルが適用できるものの、複数セルを同時に変更することは不可能。また、セル内に網掛けしようとすればその都度セルを選択してパレットから指定しなければならず、いささか煩わしかった。

InDesign CS3では、「セルスタイル」と「表スタイル」が新たに加わったことで、表組みの体裁を簡単に整えることができるようになった。セルスタイルでは段落スタイル、テキスト、罫線と塗り、斜線の設定が一貫して行えるようになっており、InDesign CS2では複数回の設定を繰り返さなければならなかった内容をワンクリックで適用できる。

「表スタイル」は行や列に対する罫線、塗り指定やヘッダ / フッタ / 本文に対する段落スタイルの設定が可能。セルスタイルを組み合わせることもできるため、シンプルな表組みを複数作らなければならない場合に便利だろう。同時に、テキスト配置時の読み込みオプションには「表スタイル」が加わっている。

とはいえ、複数セルを同時に選択することは今回もできない。ここまで表組み機能が充実すれば、つい欲張った望みを持ってしまう。細かいところだが、次バージョンでは是非実現してほしいところだ。

InDesign CS2で表組みを作成する場合、セルにスタイル定義が行えないため一つ一つ手作業で属性を指定する

表組みの素材となるExcelファイル

InDesign CS3では、「セルスタイル」を定義することによって線や塗り、斜線をワンクリックで適用できるようになった。テキスト属性は、セル内の配置方法を決定できる

「セルスタイル」はセルだけに適用される機能。「表スタイル」を用いると表全体の設定をスタイル定義できる。ヘッダやフッタ、左 / 上の列または右 / 下の列など目立たせたいセルにはセルスタイルを適用できるので、設定を極めれば表組み制作が格段にスピードアップしそうだ

PDF / X-4など最新のPDFフォーマットをサポート

最近では校正のやり取りだけでなくオフセット印刷の入稿用データとしても用いられるPDF。InDesignではPDF書き出しプリセットが用意されており、Acrobatが手元になくてもPDF / X-1aなどの規格に則ったPDFが作成できる。

InDesign CS3では、新たに「PDF / X-4:2007」などのプリセットが加わった。PDF / X-4:2007はPDF1.4をベースにしたもので、ライブ透明効果をサポート。カラーマネージメント仕様はPDF-X / 3と変わらない。ただし、受け取る側の環境に注意が必要で、Acrobat 7.0以降でないと開けない。

InDesign CS3に用意されたPDF書き出しプリセットは7種類。そのうち2種類が新バージョンで加わったもの

「PDF / X-4:2007」はISO規格にもなっている。カラー設定はPDF / X-3と共通のため、RGBデータなどを許容しているのが特徴

InDesign CS3でパフォーマンスは上がったのか?

Mac Proユーザーにとって、今回のバージョンの目玉はなんと言ってもユニバーサルバイナリ対応だろう。CS2はロゼッタ環境でもそこそこ動いていたが、表示画質を高品質表示にした状態ではいささか不安定であり、このあたりはネイティブで動作するPower Mac G5に比べて劣っていた。筆者はPower Mac G5 (Late 2005)とMac Proを所有しているが、CS2を使う仕事では動作の遅さからMac Proを使う気にならなかった。ところが、今回のバージョンアップで立場は完全に逆転してしまったのだ。

CS3はPower Mac G5にも対応しているものの、高品質表示で作業を行なうとワンクッション入ってしまい、かなり使いづらい。これがMac Proだと高品質表示でもさして問題なく、ストレス無く作業できる。

Mac Proでの起動時間も2回目の起動(初回はいろいろ読み込むためバージョンに関わらず遅くなる)では、ロゼッタ環境に対して2倍高速になっている。そして、面白いのはそのMac ProでBoot Campを使い、Windows環境でCS3を動作させるとさらに速くなることだ。これはMac Proに限った話ではなく一般的なCore 2 Duo機でも同じ傾向にあり、大概においてMac OS X環境よりもWindows環境の方が高速のようだ。フォントもMORISAWA PASSPORTのような年間ライセンスシステムであれば、Macintosh、Windows両プラットフォームで利用できるので、この機会にWindowsへの乗り換えを考えるのも良いかもしれない(Macintosh用しかない特殊な欧文フォントを使わないという前提においてだが)。

Mac Proユーザーは当然「買い」だが、Power Mac G5ユーザーにとってパフォーマンスという点でバージョンアップのメリットはさほどない。とはいえ、下位互換性はあってもCS3とのやり取りでは文字組が崩れたりするため、周囲の状況に合わせて結局はCS3にせざるを得ないだろう。

Adobe InDesign CS3日本語版(Windows 版 / Mac版)の価格は、通常版93,000円、アップグレード版26,000円(Adobe InDesign 2.0 / CS / CS2日本語版の正規登録ユーザ)、特別提供版26,000円(Adobe Page Maker 日本語版のパッケージ版の正規登録ユーザ)、アカデミック版31,300円。

Windows版の対応システムは、インテル Pentium 4、インテル Centrino、インテル Xeonまたはインテル Core Duoクラスのプロセッサを搭載したパソコン。OSは、Windows XP (Service Pack 2) 日本語版または Windows Vista Home Premium、Business、Ultimate 日本語版。Mac版の対応システムは、PowerPC G4、G5、またはインテルプロセッサを搭載したMac。OSは、Mac OS X v.10.4.8 日本語版。