当日、筆者以外の参加者は、若い方から子供連れのお父さん、マニアらしき方と幅広いが、層が厚いのはやはりミドルからシニアか。指定された席に着くと、作業デスクには必要なツールが揃っている。内容は、スピーカー取り付けボルトの脱着に使用する3mmのヘキサゴンレンチ、ネットワーク用パーツの仮組に使用する瞬間接着剤、ネットワーク用パーツをハンダ付けするための電子工作用ハンダごてとヤニ入りハンダ、リード線などをねじり合わせたり余分をカットするためのニッパーとラジオペンチ、ネットワークパーツを固定するためのゴム系接着剤、ネットワークをキャビネットに取り付ける際に使用するNo.2の+ドライバー、吸音シートを張り付ける木工用ボンド、そして吸音材をカットするためのハサミと定規である。ちなみに、パーツのハンダ付けには銀ハンダをおごると良いとのことだ。また、ネットワークを構成するパーツを本固定する際にはゴム系ボンドよりも作業性が良く強固な接着が可能なホットメルト(熱で溶けた接着剤が先端のノズルから出てくる)を使用した。通常、これらのうちいくつかは所有しているという方もいるだろうが、足りないツールを揃えるにも少しながらお金がかかるし、買ってもその後の出番はおそらくそうないという方もいるだろう。組み立てに適したツールがすべて揃っているというだけでもかなりのメリットだ。
参加者が揃ったところで、スケジュール説明があり、その後SX-WD5KTの製作の手順を説明するビデオが10分程度放映される。ごく短いこれらの前説明が終わるといざ組み立てだ。レクチャーを担当するのは、SX-WD5KTの商品化にも携わった、高田幸一氏をはじめ数名の同社ベテランスタッフだ。組み立て説明書に沿って作業をはじめるが、コイルや配線の向きなど、分かりにくい場合は悩んでいるよりスタッフに質問した方が早くて確実だ。また、その際、より良い音質を得るためのテクニックやノウハウを惜しみなく教えてくれるので、少々、工作や音に関して自信があるからといって、一人黙々と組み立てるよりは、スタッフの方々に教わりながら組み立てた方が良いだろう。なお、ここでの組み立てレポートは、実際と異なったり変更される可能性もあることをご承知頂きたい。
まずキャビネットに固定されたスピーカーユニットを取り外し、中に収納されているパーツ類を取り出す。スピーカーユニットを固定しているスクリューは、3mmのヘキサゴンレンチを使用して取り外す。抜いたスクリューは、なくしたりスピーカーユニットのマグネットにくっつかないよう分別しておく。スクリューを抜くとスピーカーユニットが取り外せるが、指や爪の先でははずれないかもしれない。その場合は、ヘキサゴンレンチの先端をスピーカーユニットのスクリュー穴にひっかけて軽く持ち上げるようにするとはずしやすいだろう。はずしたスピーカーユニットは、工具などで傷めないよう避けておく。キャビネット内に収納されているパーツを取り出し、キャビネット内のごみをスピーカーの穴から掃き出す。キャビネット内にごみが残ったまま組み立ててしまうと音質に悪影響をおよぼす原因になるので注意したい。パーツの確認ができたらいよいよ組み立て開始だ。
最初はネットワークの組み立てだが、仮組みの邪魔にならないようにコイルやコンデンサなどの配線を折り曲げ、瞬間接着剤でネットワークボードに仮止めする。固着するまで数分かかるので、その間にもう一つのネットワークも仮止めすると良いだろう。説明書ではハンダ付けが終わったあとでゴム系接着剤で固定するように解説されているが、これは硬化時間が長いため、本講座ではホットメルトが用意されており、実際にこれを使用した。ホットメルトは、引き金を引くと熱で溶けた固形接着剤が先端のノズルから出てくるというものだ。ここでも各パーツを点付けして仮固定した後、本格的に付けてゆく。ホットメルトは、熱が冷めると硬化する。数秒で強力に固着するため大変効率が良い。
ネットワーク素子が固定できたら、説明書にしたがってリード線をねじり合わせる。パーツ同士の配線を無理なく接触しない範囲でねじり合わせるのだが、これがなかなか難しい。指とラジオペンチを駆使して作業するのがコツのようだ。次にネットワーク素子のリード線にコードを繋ぐ。ここまでできたら次はハンダ付けだ。自分で組み立てる場合、ハンダごては細くて取り回しの良い電子工作用を使うと良いだろう。用意されていたハンダゴテの場合、配線をねじり合わせた部分にハンダごての先をあてて約10秒程度待ってハンダを付ける。すると、溶けたハンダがするりとねじり合わせた配線に溶け込む。熱を入れすぎるとコードの被覆がこげたりハンダが流れ落ちてしまうので慎重に作業する。筆者は、趣味で古いオートバイや自動車の電装を修理することがあるのだが、振動が多くパーツが大きいこれらのハンダ付けでは強度を持たせるために多めにハンダを付けがちだ。そんなこともあって、最初の2個所ぐらいうまくできると、緊張が緩んでしまい気が付くといつものようにかなり余分にハンダを付けてしまっていた。ハンダ付けが終わると、テスターを使用して導通、非導通をチェックして正常に結線されていること確認する。問題なく組みあがっていることが確認できたら、はみ出したリード線やコードをニッパーでカットし、配線類を接着固定する。まず、接着しやすいように配線を曲げてレイアウトし、ホットメルトで固定する。
ネットワークが完成したら、これを+スクリューでキャビネットに取り付ける。次にダクトにゴム系接着剤と木工用ボンドを付けてキャビネット内側からダクト穴に取り付ける。ここでのポイントは、ダクトとダクト穴に隙間ができないよう、多めに接着剤を付けること。ダクト穴にダクトを挿したら何度か回して密着させる。この時、ダクトの向きを合わせておく。これで接着剤が固まるのを待つわけだが、ダクトが動かないように手で保持したまま待つわけにもいかない。そこで、ここでもホットメルトを使用する。ダクト穴外側から点付けして仮固定、その後ダクトとダクト穴の隙間を埋めるように接着剤を付ける。付けすぎると後で削る必要があるので注意が必要だ。ダクトが固定できたらダクトリングの両面テープをはがしてダクト穴の凹面に張り付ける。
ダクトが固定できたらキャビネット内部に白黒2種類の吸音材を張る。黒の吸音材は低音を白の吸音材は高音を吸収する。音質に関わるのでよく検討してから作業されたい。筆者は説明書にしたがって作業したが、本講座に参加した場合は、ここで好みの音、合わせたい音楽ソースなどをスタッフに伝え、吸音材の量、サイズ、張る場所などをアドバイスしてもらうと良いだろう。吸音材は、木工用ボンドで要所をキャビネット内に接着する。スピーカー穴から吸音材を入れて適切な位置に接着するのはなかなか難しい。キャビネットにボンドを付けないよう注意して作業する必要がある。
吸音材を張り付けたらスピーカーコードを引き出し、スピーカー端子用コードとスピーカー端子を接続して+スクリューでキャビネットに取り付ける。キャビネットは木なのでトルクをかけすぎないように締める。
いよいよ最後の作業、スピーカーの取り付けだ。ツイーターとウーハー用コードを引き出し、それぞれを接続する。赤コードの端子近くに青いチューブがあるのがツイーター用、ウーハー用にはこれがない。端子は+-でサイズが違うので間違うことはない。きちんとはまると「カチッ」と音がする。最後にスピーカー用スクリューをヘキサゴンレンチで締める。これで出来上がりだ。