オリンパスが何故、大腸がんなのか。そんな素朴な疑問を胸に、「"BRAVE CIRCLE"大腸がん撲滅キャンペーン」を展開しているオリンパスメディカルシステムズの森嶌治人社長にインタビューを実施した。

オリンパスメディカルシステムズの森嶌治人社長

――オリンパスと聞いて「内視鏡」と思い浮かべられる方人は、あまり多くないでしょうね。

「オリンパスといえば、まずはカメラを想起するでしょう。実はオリンパスは1950年、東京大学外科分院と共同で、胃カメラを世界で初めて実用化しました。現在では、内視鏡を中心に全社の売上の3分の1は医療分野で占めています。特に消化器内視鏡は世界シェア7割以上を占めており、文字通り医療用内視鏡の分野でトップを走ってきました」

――内視鏡を製造、販売する上で大事なことは何でしょうか

「内視鏡は体内に直接挿入するという極めて特殊な医療機器ですので、その安全性を確保するために、定期的なメンテナンスが必要です。ここ数年で世界各地に工場と同じ方式で集中修理を行うリペアセンターを設けるなど、購入した時と同じ性能を維持できるメンテナンスのライン体制が整っています。そして、内視鏡を利用する医師らとの話し合いを進めながら、より使いやすいものに改良していく姿勢が重要だと思います」

――現在使われている内視鏡は「胃カメラ」と呼ばないと聞いたのですが

「"胃カメラ"とは、1950年に実用化した最初の内視鏡を指します。胃の中を撮影するだけのカメラですので、内部を観察、治療する内視鏡とは異なります。当時は、胃の内部を撮影するだけで、治療ができませんでした。治療が可能になったのは、1960年代に開発されたファイバースコープからです。80年代にはCCDを採用したビデオスコープを実用化したことで、テレビモニターに写し出される画像を共有できるようになり、医療スタッフと連携しての治療を行うことが実現しました」

――がんは内視鏡でどの程度まで見ることができるのですか

「昨年発売した新型の内視鏡は、特殊光を照らすことで、がんの腫瘍部分を強調表示できます。このため、早期発見のみならず、切除する部分を最小限に抑えることができます。さらに、細胞レベルや分子(ナノ)レベルで、がんを見ることができる内視鏡の開発も進んでいます。現状では直径1cm前後でないとがんを発見できませんが、将来的には直径2mm程度の超早期がんの発見も視野に入れていきたいですね」

――昨年、カプセル型内視鏡が欧州で発売されましたが、将来的には大腸も検査できるようになるのでしょうか

「現在のカプセル型内視鏡は、内視鏡が届かない"暗黒大陸"と呼ばれる小腸検査用です。ただ、任意の場所を希望通りに撮影できるようになるまでには、さらなる技術革新が必要でしょう。将来的には、カプセル型内視鏡で消化器系全ての一次検査を可能にし、必要に応じて内視鏡による治療が行えるように、カプセル内視鏡の技術開発をしていきます。」