2015年までに、日本人のがん罹患率で部門別のトップになると言われている大腸がん。医療技術は日進月歩の発展を続けているにもかかわらず、大腸がん検診の受診率は低いままだ。そこで今回は、大腸と胃の内視鏡専門クリニックを運営する寺井毅院長と、「"BRAVE CIRCLE"大腸がん撲滅キャンペーン」を展開しているオリンパスメディカルシステムズの森嶌治人社長に、大腸がんや内視鏡検査の現状や課題について教えてもらった。
プライバシーへの配慮が大腸がん撲滅のカギ?
「内視鏡検査を受ける人に安心して検診を受けてもらえる診断体制を整えたかった」と寺井院長は力を込める。医学博士で順天堂大学消化器内科非常勤講師の寺井毅院長は現在、御茶ノ水の東京医科歯科大学近くで、大腸と胃の内視鏡専門クリニック「寺井クリニック」を運営している。順天堂大学で19年間、病棟医・外来医の経験と、消化器内視鏡を専門としてきた寺井院長。こと消化器内視鏡に関しては、大腸内視鏡検査を専門に20,000件以上の内視鏡検査に携わってきたという。
同クリニックには、ゆったりした皮製のリクライニングシートと毛布が一組置かれた回復用の個室が3部屋ある。検診を受けた後の1時間を、プライバシーが保たれた環境で過ごしてもらいたいという配慮から設置したものだという。大腸の内視鏡検査では大腸内に空気を送り込むため、検査を受けた後は腸内にたまった空気がガスとして出る。「女性にとって、おならをするのは非常に恥ずかしいこと。であるにも関わらず、大病院などでは共用の回復室で、大勢の人と一緒に待たなければならない」。女性が大腸内視鏡検査を受けることへの抵抗は、プライバシーへの無配慮に起因するようだ。
大腸内視鏡検査の最も大きな特徴は、前日は普通に食事をすることができる点にある。まずは当日検査の4時間前に、約2リットルの下剤を服用する。味は「ポカリスエットに似ている」とのこと。これにより腸の中を完全に洗浄してきれいな状態にできるという。
大腸の洗浄が済むと、次はいよいよ検査。鎮痛剤を注射してから肛門からゆっくり内視鏡を挿入していく。通常、大腸の内視鏡検診では痛みがないらしい。「大腸内の粘膜には神経がないので、内視鏡が通過しても痛くない。痛みを感じるとすれば、S字結腸と横行結腸を吊り下げるように定着させている腸間膜という腹膜が、内視鏡を通過させた時に引っ張られた場合。ただし、内視鏡検査の知識や経験が豊富な医師であれば、そういったことは起こらないので心配いりません」。