学校法人青山学院は、深い知識と他者を敬う心を持って社会に仕え、その生き方自体が導きとなる人=“サーバント・リーダー”の育成を目標に掲げています。同学院において小学校に相当する青山学院初等部ではその目標に向け、以前から学びのツールとして ICT の重要性に着目。そしてこのほど、3 年生以上の 4 学年で PC の 1 人 1 台環境を実現しました。その際に採用したのが、軽量・薄型・コンパクトながらタブレットとしても使える 2-in-1 仕様の「Surface Go 2」です。小学生ながらあえてハイスペックな PC を選定し、教員にも同じ端末を配布した意図はどこにあったのでしょうか? 本稿では、同校のこの取り組みでキーパーソンとなった担当者の話をもとに、Surface Go 2 導入・活用の様子を紹介していきます。

” ICT はあくまでもツール”の基本姿勢で 1 人 1 台環境を推進

青山学院初等部 情報主任 井村 裕 氏

青山学院初等部
情報主任
井村 裕 氏

青山学院初等部では、学院がサーバント・リーダー育成を目標として掲げる以前から、児童が自らの役割を主体的に見出し、活動していくことを重視していたといいます。そんな同校にも 2012 年頃から ICT を学校教育に取り入れる動きが始まり、電子黒板やタブレット端末の導入が少しずつ進み始めます。

情報主任の井村 裕 氏は、ICT の位置づけを次のように教えてくれました。

「ICT はあくまでも、子どもたちの主体性を育て、授業をわかりやすくするために役立てるツールだと捉え、子どもたちが手元に当たり前にある文房具のように活用していくことを目指しています」(井村 氏)。

文房具であるからこそ、使い方とその良さを理解するために、たとえばアプリケーションでノートを取る体験をさせるなど、まずは試してもらいます。ただそのあとは、授業でデジタルを使い続けるか、アナログの紙ノートを使うかを、児童に自主的に選択させる方針で臨んでいるとのことです。

こうした流れで、同校では 2015 年から複数の Windows 搭載タブレット端末を導入し、試用していました。ところが井村 氏は、当時導入していた端末に一種の物足りなさを感じていたと振り返ります。

「子どもたちが使っている机はそれほど大きくありません。その狭い場所に、紙の教科書やノート、筆箱、さらにタブレット端末も置くとなると、端末サイズはどうしても小さいものを求めることになります。当校は宿泊行事や校外学習も多いので、持ち運びを考えても小さめのサイズであることが大切でした。ただその頃は、コンパクトなタブレット端末を探すと、CPU などの性能がそれほど高くないものが多かったんですね」(井村 氏)。

処理が遅かったり、固まってしまったりで、授業での活用に困難を感じたケースも当時は実際にあったといいます。そのように試行錯誤を続ける中で、2018 年、Surface Go 2 の前モデルである Surface Go にたどり着くこととなります。

「その頃には 3 年生以上で 1 人 1 台環境を実現しようとの方針が決まっており、そこに向けてまずは 3、4 年の一部クラスで Surface Go を試行導入しました。Surface Go は 10 型クラスの小型サイズでありながら、大きな画面を持つノート PC と同レベルの高性能 CPU を搭載しており、実際に授業で使ってサクサク動作することが検証できたので、2020 年には後継機種の Surface Go 2 を導入することに決定したのです」(井村 氏)。

あえて上位モデルの Surface Go 2 を選択
教員と児童で同じ端末を持たせた狙いとは

同校では Surface Go 2 の中でも CPU に Core m3 、メモリ 8GB 、そして 128GB のSSD を搭載する上位モデルを選択しました。なぜスペックの高いモデルを選んだのかについて、井村 氏はこう説明してくれました。

「タブレット端末を 3 年次から導入すると、小学校の 4 年間使い続けることになります。その間、アプリケーションのアップデートで要求性能は上がっていくことが想定されますが、当初からスペックが高いモデルを選んでおけば、4 年間十分に使いこなせると考えました。そのため学校としては上位モデルの購入を推奨していましたが、各家庭には事情もあるので、下位モデルも選べる形にしました」(井村 氏)。

とはいえ結果的に、8 割以上の家庭が上位モデルを購入したとのことでした。「家庭でもこれからの時代に向けて ICT 教育が必須だとの意識が浸透しているのでしょう。」と井村 氏は語ります。そうしたこともあって Surface Go 2 自体の購入に際しても各家庭からの異論はほとんどなく、教員からの支持も高かったといいます。

「Surface Go 2 はキーボードを気軽に外すことができ、持ち運びはもちろん机の上で使うときも収納するときも省スペースという点で、教員たちの評価が高かったことも選択のポイントになりました」(井村 氏)。

  • Surface Go 2 は、教科書と一緒に机の上に広げても十分なスペースが取れるサイズ感
  • Surface Go 2 は、教科書と一緒に机の上に広げても十分なスペースが取れるサイズ感
  • Surface Go 2 は、教科書と一緒に机の上に広げても十分なスペースが取れるサイズ感

2020 年はちょうど教員用端末の更新タイミングにあたっていたため、まずは新型コロナウイルス感染症の影響による休校期間が明けた 6 月、教員用の Surface Go 2 LTE モデルを先行導入します。児童と同じ Surface Go 2 を選択しつつ、教員用は LTE 接続が可能なモデルを選択した理由を、井村 氏は次のように語ります。

「学びを止めないという点において、生徒たちや教員たちが皆同じ端末を使うことは非常に有効です。1 人 1 台環境の実現を前提としていたので、子どもたちの端末にトラブルが起きた際のサポートを想定すると、やはり教員用も同じ端末であることが望ましいと考えました。というのも、教員自身もふだんから触っている端末なのである程度トラブル対応が可能なうえ、子どもたち同士でフォローし合うこともできるからです。端末が壊れた場合もすぐに予備を貸し出しできるので、使えなくなるということがありません。また、管理や設定が統一しやすいのも便利ですね。LTE 対応にした理由は、校外学習でも便利に利用できるからです」(井村 氏)。

同校には ICT に対する意識やリテラシーの高い教員が比較的多くいたものの、中には授業への活用が限定的だった教員もいたそうです。 その状況を変えたのは、2020 年春からの突然の休校措置であったといいます。

「キャンパス自体が閉鎖され、子どもたちはもちろん教員たちも学校に来られない状態でしたので、学びを止めないためには在宅ワークで教材を作り、配信しなければなりませんでした。ICT が苦手、あるいはあまり肯定的に捉えていなかった教員もいましたが、これをきっかけに ICT の必要性に気づき、意識が大きく変わったと実感しています」(井村 氏)。

このときリモートで連絡を取り合うために、従来の SharePoint のみの活用と合わせて Teams の利用も開始。不得手な教員には、井村 氏が基本的なツールの使い方から、授業内での ICT 活用のアイデアなどを Teams を通してレクチャーしました。

  • 生徒は、状況に応じて Surface Pen とキーボードを使い分けている
  • 生徒は、状況に応じて Surface Pen とキーボードを使い分けている
  • Surface Go 2 を使用して生徒とコミュニケーションを取る教員も

学年・教員ごとに多様化する使い方
Surface Penの活用も

このような期間を経て、2020 年 9 月から各家庭が 1 台ずつ購入するというスタイルでSurface Go 2 導入をスタートします。児童向けに新たに導入した Surface Go 2 は 256 台で、教員用が約 60 台。加えて以前からの Surface Go も約 200 台あるため、合計で 500 台以上のSurfaceが同校で活用されることとなりました。ちなみに、全デバイスの管理は井村 氏が中心となり、Microsoft 365 の Microsoft Intune を通じて行っているそうです。

実際の授業での使い方については、学年や教員によって多岐にわたるといいます。

「まだ ICT に慣れていない3、4年生は、まとめや調べ学習のツールとして使うことが多いですね。個別最適化の一環で、子どもたちの理解度に応じて問題を配信するといった使い方もされています。一方、5 、6 年生はレポート作成や作文の推敲など、自分なりの使い方をどんどんと見つけています。当校ではデジタル教科書を採用しているのですが、たとえば国語ではデジタル教科書から文章を抜き出し、並べ替え、全体を要約するというように、頭の中を可視化するツールとしても活用されています」(井村 氏)。

Surface Penも利用されています。下級生の場合はキーボード操作がまだ難しいため、特に重宝しているようです。また上級生についても、ちょっとしたコメントを書くときなど場面によって使いこなしているといいます。「Surface Penは紙に書く感覚で快適に使えるのがいいですね。」と井村 氏も評価します。

  • 生徒は、状況に応じて Surface Pen とキーボードを使い分けている
  • 生徒は、状況に応じて Surface Pen とキーボードを使い分けている
  • 生徒は、状況に応じて Surface Pen とキーボードを使い分けている

子どもたちからも好評
個人用端末 になって大切に扱う姿勢が生まれる

休校期間中は授業動画を制作し、オンデマンド配信する試みが行われました。当時は子どもたちがまだ 1 人 1 台環境になかったため、家庭の事情を考慮し、いつでも閲覧できるオンデマンドにしたとのことです。休校期間が明けてからも、教員によっては予習・復習用の解説動画を配信しているそうです。動画については授業以外でも積極的に使われ、感染症対策で礼拝堂に集まれなくなった現在は毎朝の礼拝を動画配信しています。

  • 毎朝の礼拝を動画配信するなど、授業以外の場面でも ICT が活用されている

    毎朝の礼拝を動画配信するなど、授業以外の場面でも ICT が活用されている

学習に使う資料は基本的にクラウドへ保存していますが、回線トラブルでアクセスできないケースに備え、デジタル教科書は各端末のローカルに保存させています。また、授業などで写真やスクリーンショットを撮影するケースも多いとのこと。こうした点でもストレージ容量が大きな上位モデルのアドバンテージを感じていると井村 氏は話します。

「Surface Go 2 導入以前は共有端末を貸し出す形でしたので、正直にいうと子どもたちはあまり丁寧に扱ってくれませんでした(笑)。それが 1 人 1 台自分のものとなったことで、愛着がわいたのでしょう、いまはとても大切に使っていると感じます。教員も Surface Go 2 を常に持ち歩くようになり、時間と場所を選ばず作業できるようになりました。効率化によって生まれた時間で子どもたちをより細かく見たり、あるいは自分の時間を楽しんだりできるようになり、働き方が変わったのが本当に良かったと思っています。今後も、Surface Go 2 をとことん活用し、サーバント・リーダーの育成に力を入れていきたいと考えています」(井村 氏)。

導入後、Surface Go 2 は大きなトラブルもなく、順調に稼働を続けているといいます。何か困りごとが生じた場合におけるマイクロソフトのサポート体制も、井村 氏は高く評価していました。これからもマイクロソフトは青山学院初等部の学びを力強く支えていきます。

教員も Surface Go 2 を常に持ち歩くようになり、時間と場所を選ばず作業できるようになりました。効率化によって生まれた時間で子どもたちをより細かく見たり、あるいは自分の時間を楽しんだりできるようになり、働き方が変わったのが本当に良かったと思っています

- 井村 裕 氏:情報主任
青山学院初等部

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