「コロナ禍に、職員と関係者の全員で挑んだオンライン教育」
今回の新型コロナウイルス感染症流行は、日本の学校に「生徒と先生が同じ教室で、同じグランドで共に対面して学び、教える場」を奪いました。しかし、ICT 教育はオンラインの場という「新しい対面教育の場」を生徒と教員にもたらしてくれたのです。
私たちは将来を担う子供たちのために、これを前向きに活かしていかなければならないと強く思います。
日本大学第二中学校・高等学校(以下、日大二高)は、1926 年に東京都杉並区で創立した伝統のある進学校です。4 万平方メートルを超える敷地内で、中高合わせて 55 クラス/約 2000 人の生徒が、校訓三則「信頼敬愛」「自主協同」「熱誠努力」のもとで自立し、共生する力を養いつつ、おおらかで明るい学校生活を送っています。
日大二高は、2004 年から中学の「技術」、高校の「情報」において、デスクトップ端末を共有しながら ICT 教育を行ってきましたが、これまで ICT 教育においては日本大学系列の他の付属校の後塵を拝してきました。世間で ICT 教育が急速に進む中、同校は 2018 年に ICT 推進委員会を設立。新型コロナウイルス感染症対策のために休校を余儀なくされる状況下にありながらも、2020 年 4 月度より生徒 1 人 1 台の Surface Go 導入、Microsoft Teams (以下、Teams ) をはじめとする Microsoft 365 の利活用をスタートさせました。
学校、教育委員会、関係省庁、民間企業が手を取り合って GIGA スクール構想を推し進めている中、これに加え学校には新型コロナウイルス感染症流行以前とは異なる新しい学習環境を整備することが求められています。この状況下において日大二高は、独自の ICT 授業を模索しつつ、校訓と教育目標に則った学びを実践すべく、改革を続けています。
新型コロナウイルスの影響下における対応とこれからのオンライン授業
同校は 5 月 14 日にライブ配信を利用したオンライン入学式を実施し、5 月 16 日よりオンライン授業、オンラインホームルームをスタートさせました。
「緊急事態宣言が解除されるまでの 2 週間の経験を踏まえ、日大二高では通学中の感染リスクに備え、オンライン授業を基軸としたスタイルを 6 月 26 日まで続けました。これができたのは、生徒も教員もTeamsに慣れ、オンラインの良さがだいぶ分かってきたからです。生徒の負担を考えて通常の授業では 1 コマ 50 分のところ、オンライン授業では 40 分にしています。また中学 1 年生だけは発育・発達状況を考慮して 1 日 4 時間までという形で制限をかけています。安全と感染リスクの低減を第一とし、登校を強いない方針です」(中島 氏)
長島 理事長も、この 1週間の練習期間は、教員同士が協力し、助け合いながら同じ方向を向いて取り組めたと、当時を振り返ります。生徒もいない中で急遽実施されたオンライン入学式や授業、ホームルーム実現の裏には綿密な打ち合わせがあったのです。 また、本格的にオンライン授業を実施する前に、3 日間ホームルームの練習を行ったことで体制を整えることができたと日本大学第二中学校・高等学校 情報科 教諭 教科主任 ICT 推進委員会副委員長の梅園 英俊 氏は続けます。
「ネットワーク環境や端末に関する知識などは各家庭により異なるため、準備もなしに突然オンラインを導入してしまうと混乱が生じかねません。そのような状況でオンライン授業が開始されると不安を感じられるご家庭も多いと思います。そこで 5 月に練習の形でホームルームを 3 日間繰り返しました。Surface を使っていない学年やスマートフォンで Teams を利用している方からの不具合報告が多かったのですが、3 日間の練習によってトラブルシューティングの体制を作ることができたため、スムーズにオンライン授業に入ることができました」(梅園 氏)
日大二高では現在、Teams をはじめとする Microsoft 365 のサービスを含め、3 つの教材アプリを利用していますが、今後は Microsoft 365 を中心に運用していくことを計画していると日大二高の IT 管理を担当される日本大学第二中学校・高等学校 学務主任 コンピュータ委員会委員長 ICT 推進委員の関森 繁 氏は話します。
「コロナ禍による教育現場からのニーズに対応するため、この数週間だけでも Teams が大幅にバージョンアップしており、教員という立場から見てとても便利な機能が増えました。画面分割機能や挙手機能は学校からすると大変ありがたい機能です。また参加や退室のログを取れる機能なども加わっており、より使いやすい形に近づいてきていると思います。今後は生徒側の画面共有の柔軟性や、出席の取りやすさといった面での改善を期待します」(関森 氏)
また、同校ではオンライン入学式の成功を踏まえ、オンライン保護者会についても検討を進めていると日本大学第二中学校・高等学校 国語科 教諭 学年主任 ICT 推進委員会副委員長の折橋 学 氏は話します。
「学校というところでは、生徒と教員だけでなく保護者との関係性も非常に重要です。これから生徒と教員は Teams などを使いながら未来に向けた授業を行っていくことになりますが、そこにどのように保護者を加えていくかが大きな課題となるでしょう。マイクロソフト様でも、この視点を持っていただけると非常にありがたいなと思います」(折橋 氏)
ただし、これから GIGA スクール構想による ICT 環境整備が本格化し、他にも Microsoft 365 を活用する学校も出てくるでしょう。現在のような安定した動作や機能改善が今後も続けられるのかどうか、その状況を見つつ、将来的な ICT 環境構築を進めていくというのが同校の考えです。
コロナ禍があった 2020 年は学校教育のオンライン化を進める大きなチャンス
日大二高は新型コロナウイルス感染症流行によるピンチをチャンスに変え、Microsoft 365を中心に据えた新しい学びをスタートさせました。現在、非常勤講師を含めたすべての教科担当者がオンライン授業を行っています。同校は今後、学びの場を広げるために教務や校務以外の場でも積極的に Microsoft 365 を活用する方針を打ち立てています。
「本来であれば 2020 年度に 1 年かけてじっくりと Microsoft 365 に慣れていければと考えていたのですが、こうして数週間の間に一気に Teams が生徒の中で浸透しましたので、 Surface Go を配布した新 1 年生の授業の中ではうまく Microsoft 365 を生かしたいと思っています。 Word、Excel、PowerPoint だけでなく、Sway なども活用し、共同編集でみんなが 1 つのものを作れるような学びの場を作っていきたいですね。また入試のエントリーでもデジタル化が進んでいますので、そういった場に生徒が対応していけるような教育を行っていきたいと思います」(梅園 氏)
「生徒たちが Surface などの端末を日常の道具として利用し、学びや生活の場でも生かしていってもらえるように指導しつつ、私ども教員もともに学んでいければと思っています。これまでの ICT 教育は学校の中でのやり取りで終始していましたが、これからは学校の外での学び合いにも広げていけると感じています」(折橋 氏)
さらに中島 氏は、日本のネットワーク整備状況の改善という大きな課題について警鐘を鳴らします。
「 ICT 教育においては、ネットワーク環境の整備という点に大きな課題があると思います。日本全体でもっとネットワーク環境を改善しなければならないでしょう。現在の日本では、家庭がネットワーク環境を整備するのにお金がかかりすぎています。これによって家庭間の格差が生まれつつあるのです。学校側での整備にも限界があります。建築後数十年たった校舎に後付けでネットワーク環境を構築するのは本当に大変でお金のかかる作業なのです。これからテレワークが増え、ますます通信網は圧迫されていくでしょう。5G などの普及も進むと思いますが、日本においてネットワーク環境の整備は急務であると考えます」(中島 氏)
また、中島 氏はこれから本格的な ICT 環境整備を始める他校に向けて、次のようなメッセージを送ります。
「新型コロナウイルスというインパクトによって、当校は教職員一丸になって ICT 化を推し進めることができました。我々もこれがなかったら課題を先延ばしにしていたことでしょう。今年一年は教務・校務のオンライン化を充実させる大きなチャンスだと思います。ぜひここでアイデアを固め、ICT 教育を進展させてほしいと思います」(中島 氏)
後発の利を生かした ICT 環境構築を進める日大二高
日本大学系列の他の付属校の後塵を拝してきた同校が ICT の活用に舵を切ったきっかけは、2026 年に迎える創立 100 周年です。2017 年の冬ごろから創立 100 周年に向けた今後の取り組み内容が模索され、ICT 推進委員会が設立されました。当時の理事長が打ち立てた方針は「後発の利を生かす」というものです。
そして 2018 年 2 月ごろ、ICT 推進委員が動き始めると同時に、新学習指導要領を見据えた新カリキュラム編成委員会が立ち上がりました。この 2 つの委員会を両軸として、同校は学校改革に着手。ICT 環境と情報端末の選定については ICT 推進委員会を中心に進められました。
複数のメーカーから端末の貸与を受け様々な面から検討を進める中で、当初 Surface はプレミアデバイスというイメージがあり、候補に含まれていなかったと関森 氏は話します。ですが、機能面での優位性を考慮してマイクロソフトに問い合わせを行ったところ、その印象は大きく変わったそうです。
「非常に大きな企業であるにもかかわらず、営業の方から迅速なレスポンスを頂戴したことを今でも覚えています。そこからすぐに製品の紹介のため来校いただきました。そこで Surface の紹介だけでなく、Microsoft 365 の紹介、その中でさらに Teams の紹介をしてもらったことが、他社と比較して大きなインパクトになりました。学校に合ったソフトウェアのライセンスや取り扱いについての提案、実運用に関してのイメージづくり、教職員側へのサポートにもご協力いただき、当校が目指す ICT 教育方針には Surface が合うと判断できたのです」(関森 氏)
「後発の利を生かす」という観点で何を選択すれば良いか、他社のデバイスを活用する様々な学校のケースと慎重に比較検討した結果、Surface が躍り出ることになったのです。
Surface が採用された具体的な理由としては、想像以上に堅牢性が高いという点があったと関森 氏は続けます。更に、Microsoft Intune (以下、Intune )での運用管理による使い勝手の良さもポイントとしてあげました。また中島 氏は、日大二高がキーボード付きタブレットPCにこだわりを持っていたことを理由としてあげます。日本ほど大学生がキーボードを扱えない国はないともいわれる中、同校はキーボード入力のスキルが学べることに重点を置いており、取り外しができるにも関わらずしっかりとしたキーボードがついている Surface はその条件に合致していたのです。
「教員にとってはこれまで校務でも使っていた Windows OS を学生と一緒にシームレスに使えることが非常に良かったと思います。Surface Go はネームバリューがあり、そのイメージは生徒にとっても、生徒の親御さんとっても説得力のあるものだったと伺っています」(折橋 氏)
こうして同校は Surface の導入を決定し、2019 年の夏から秋にかけて先行して電子黒板や教員向け Surface Pro の発注、導入がスタートしました。しかし、2020 年 2 月に Surface Go の納品が始まり、3 月中旬からキッティングを開始するという矢先に、新型コロナウイルスの流行に伴う休校の決定し、スケジュールに大きな変更が生じることになります。
「新型コロナウイルスの感染拡大を受け、臨時休校を余儀なくされたこの 2 ヵ月間、ICT推進委員会は大変な思いで ICT 環境を整備してきました。キッティングでは京セラコミュニケーションシステム様に多大なご協力もいただき、ご来校したうえでのキッティングが難しい中、なんとか Intune のモダン展開を活用して、キッティング工数を削減しながら無事 4 月上旬に終了しまして、自宅待機中の生徒へ配送を行うことができました。当校の ICT 環境もようやく周辺の学校に追いついたのではないかと自己評価しています。ですが、オンラインによって授業そのものの在り方が大きく変わろうとしているいま、 ICT 授業をどう進めていくかは今後も課題としていかなくてはならないでしょう」(中島 氏)
新型コロナウイルス感染症流行は電子機器の生産工場にも大きな影響を与えており、この時期、企業や学校では予定されていた機材や端末が届かないという問題も発生していましたが、Surface は大きなトラブルなく納品されました。
クラウドから端末の設定や教材アプリの追加を自動で配信する Intune を用いたモダン展開・管理
日大二高の ICT 環境導入にあたり、大きな役割を果たしたのが Intune を用いたモダン展開・管理です。Microsoft 365 に含まれている Intune と Azure Active Directory を使えば、設定パッケージの作成、端末の一斉更新やユーザー登録を行うことでき、アカウントの状況把握が可能となります。その結果、大量展開におけるタスクを大幅に削減することができ、短期間かつスムーズに学生に端末を配布することができました。 京セラコミュニケーションシステムの ICT 事業本部 文教医療ソリューション事業部 基盤サービス部 文教基盤サービス課 田野口 浩一 氏はモダン展開・管理のメリットについて次のように説明します。
「従来の方法では、端末の配布後にアプリの追加や設定の変更があると、一度端末を回収して作業を行うか、生徒自らが手順書に合わせて設定を行わねばなりませんでした。また、イメージを作成する手間が端末毎に依存して発生するので、配布する端末が変わるたびにイメージ作成の作業が必要でした。生徒全員が同一環境を整えるまでに多くの時間が必要となりますが、モダン展開・管理を活用すれば、端末の違いを意識することなく、クラウドから端末に自動的に教材アプリを追加したり、端末の設定を配信したり、紛失時の設定削除を実行するといった作業を管理者一人で実行できます」(田野口 氏)
日大二高ではこれまで端末を個々に管理していましたが、2000 人単位の端末を個別に管理するのは現実的ではなかったため、管理面での合理化を考えてこの Intune を用いたモダン管理を導入しました。そしてこのモダン管理は、新型コロナウイルスの影響下にあった日大二高にマッチしました。厳しい状況下にありながらも導入の工数やコストを減らし、スケジュールの短縮が実現したのです。今後は予備機のセットアップや来年度に向けて Windows Autopilot の導入実施を予定しているという。
「生徒 1 人 1 台の端末を利用する環境では、学外での利用頻度も増すでしょう。これを効率的に管理するためには学内にあるサーバーからではなく、学外からも接続できるクラウドを利用した仕組みが必要と考えました。クラウドを利用することでインターネットに接続さえできれば、いつでもどこにいても安全に管理が可能となるのです。今回は学校側と行いたいことを共有しながら一緒に検討できたため、短い納期の中でスムーズに構築を進めることができました」(田野口 氏)
無事展開を終えた今後は、モダン管理で端末の設定変更や教材アプリの追加が行われていき、変化し続ける ICT 教育のニーズに柔軟・迅速に対応することができます。また、今回のように緊急事態宣言が出され、家庭で急遽利用が必要になったり故障対応が必要になったりしても、インターネット経由で場所に依存せず展開できることは学びを止めないためにも大きなメリットになると言えます。
「 Intune によって管理が容易になり、家庭においても一定の管理が可能になる点は高く評価しています。Intune を活用することで、生徒が家庭でインターネットにつなげるだけで自動設定が終了するという流れをスムーズに運用できるよう、今後も京セラコミュニケーションシステム様と話をしながら取り組んでいきたいと思います」(関森 氏)
最後に長島 理事長は「コロナ禍は日本の学校から『生徒と先生が同じ教室で、同じグランドで共に対面して学び、教える場』を奪いましたが、ICT 教育はオンラインの場という『新しい対面教育の場』を生徒と教員にもたらしました。」と語ります。
ICT 化を進めている学校もあれば、これから ICT 環境の構築を進める学校も多いでしょう。日大二高の今回の取り組みは、まさにそのようなこれから充実した ICT 教育環境の構築を図る学校が ICT 利活用において前を走っている学校に並び、さらに進めるための一つのお手本であるといえます。GIGA スクール構想がさらに加速する中、対応に追われる学校にとってデバイスの整備というテーマを超えて、大いに参考となるケースになるのではないでしょうか。
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