激しく変化する社会において、次代を担う子供たちには、未来を拓くための主体性や判断力、創造力を備えることが求められています。それらの資質、能力を育成するために、文部科学省は、「アクティブ・ラーニング (主体的、対話的で深い学び)」の視点をもった授業改善を進めています。そのような中、和歌山県教育委員会では、確かな学力、豊かな心、健やかな体の「知・徳・体」を基盤とした、人間としての総合力の育成を推進。子供たちがこれからの社会を生き抜くために必要な主体性や判断力、情報活用能力を育むためのICT 活用にも力を入れ始めています。

この取り組みを進めるためには、教員の「ICT 活用指導力」を高めることが重要となります。同水準の引き上げを思案する和歌山県教育委員会では、2017 年、校務用 PC の老朽化に伴う更新に併せて 2 in 1 タブレットの導入を検討。入札の結果、Microsoft SurfaceBook を導入しました。最新のデバイスを活用することで、社会の変化を見据えた新しい時代の教育を目指しています。

教員の ICT 活用指導力の向上に力を注ぐ和歌山県

和歌山県が 2017 年度に策定した和歌山県長期総合計画では、教育分野における将来像を「未来を拓くひとを育む和歌山」と掲げています。同県はこの実現に向けて、確かな学力、豊かな心、健やか な体の「知・徳・体」を基盤とした人間としての総合力を育成するとともに、キャリア教育やふるさと教育、国際化に対応した教育、教育の情報化などを推進し、新しい時代に必要な資質、能力を備えた人材の育成を目指しています。和歌山県教育委員会 教育総務局総務課教育政策班 班長の下村 史郎 氏は語ります。

「幼児期から高校までの教育を通して、子供たちは多くのことを学びます。高校卒業後の進路は、大学進学や就職など生徒によってさまざまですが、自分で物事を考えて判断、解決したり、まわりの人と協力して新しいものを創造する力は、あらゆる進路で共通して必要です。それゆえに、高等学校段階でその力を生徒に身に付けることが重要であり、そのために授業のあり方を変革していくことが今求められています」( 下村 氏)。

これに続けて、和歌山県教育委員会 教育総務局総務課教育政策班 主事の今井 健多 氏は、「これまでの授業をよりわかりやすく、また、より生徒が主体的に学ぶ要素を取り入れるためには、ICT が非常に有効です」と説明。一方、ICT の活用においては留意すべき事項もあると語ります。

「ICT を活用することによって、視覚的な教材を簡単に提示することが可能です。生徒の関心を引き立てられますので、理解もよりいっそう深まります。また、生徒どうしやグループでの活動も、ICT を使えば授業に取り入れやすくなります。ですが、これまで行ってきた授業に ICT という新しい要素を加えることは、簡単なことではありません。まず、教員の意識を変えることと ICT スキルをつけていくことが大切だと考えています。ICT 環境が整備されたとしても、教員の意識や ICT スキルがなければ、宝の持ち腐れになってしまう恐れがあるのです」(今井 氏)。

文部科学省が毎年実施する「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」では、各都道府県の「教員の ICT 活用指導力」を調査しています。ICT 活用指導力について、過去、和歌山県は決して高い水準ではありませんでした。これを踏まえて和歌山県では、2010 年、県立学校の全教員に校務用 PC を整備。それと同時に、校務支援システムを導入しました。

「それまで紙ベースでの作業が中心であった出欠管理や成績処理、指導要録作成を、校務用 PC、校務支援システムなどデジタルをベースに行うようにしたことで、教員の ICT に対するアレルギーを抑えることができ、授業で ICT を活用する教員も徐々に増えてきました。この結果、ICT 活用指導力も少しずつ向上しています。『ICT をもっと授業で活用したい』という声は日に日に増えており、ICT に対する教員の意識、意欲の高まりを感じました。教育委員会として、この気運を逃さずより ICT 活用を加速する取り組みを進めなければならないと考え、校務用 PC の更新に併せて教育用 PC の導入についても検討することとしました」(今井 氏)。

「教員が本当に使いやすいもの」を導入したい。校務用途と教育用途を兼ねた PC として Surface Book を選択

授業で ICT を活用する場合、教員用 PC や電子黒板、生徒用タブレット、Wi-Fi など、さまざまな設備の整備が求められます。理想はこれらをいっせいに整備することですが、それには莫大な予算が必要です。そこで和歌山県では、授業での ICT 活用を推進する第一歩として、校務用 PC を 2 in1 タブレットにすることを決定。今井 氏はその理由について、「和歌山県の県立学校では、2010 年に導入した校務用 PC をこれまで利用し続けてきました。PC の老朽化も問題でしたが、修理部品のほとんどが製造中止になっており、リプレースは待ったなしの状況といえました。この校務用 PCを教育用 PC を兼ねた 2 in 1 タブレットにすることで、授業での ICT 活用をさらに進められるのではないか。徐々に高まってきた教員の ICT 活用に対する意識、意欲をいっそう加速できるのではないかと考えました」と説明します。

これに続けて、同クライアント環境の運用保守を請け負ってきたクオリティソフト株式会社 本社営業部の酒井 知紀 氏は、リプレース前の環境について次のように振り返ります。

「故障時でも即座に代替機を提供することで、先生方が校務用 PC を途切れなく使い続けられるよう努めてきました。しかし、たとえ修理を行っても、PC 自体は 2010 年に調達したものです。性能は劣化していますし、現在利用されるアプリケーションに適したスペックも有していません。先生方の業務効率は下がる一方でした。これを最新の PC へと更新することで、校務の効率化を果たすことができます。これだけみても、今回の取り組みには大きな効果が期待できました」(酒井 氏)。

和歌山県が新たな機種に求めた要件の 1 つが、ディスプレイのサイズです。従前、和歌山県の校務用 PC は 15 インチのノート PC でした。「PC の刷新にあたって、校務用 PC に関するアンケートを行ったり、教員から直接意見を聞いたりしました。その中で、授業で活用するために持ち運びやすいサイズの機種にすることで必然的に画面が小さくなるのではないか、テストや教材の作成がしにくくならないか、という懸念が多く挙がりました」と、今井 氏は語ります。授業での活用を意識するあまりコンパクトな PC を整備したとして、本来用途の校務面で使いにくい機種にしてしまっては、かえって教員の「授業で ICT を活用しよう」という意識を低下させてしまう恐れがありました。

一方で、授業中にデバイスを持って机間巡視を行う、生徒の解答をカメラ機能で撮影してそれをプロジェクターなどで大きく提示することは、ICT の特性を生かした有効な教育方法の 1 つです。このように持ち運んで使用する場合、画面サイズの大きな PC は、重さもあって適していません。

校務用途と教育用途、それぞれの求める要件が相反する中、和歌山県が注目したのは大画面かつコンバーチブル タイプの 2 in 1 タブレットでした。画面部分とキーボード部分が着脱式であれば、大画面であっても、授業中の携行性を担保することが可能です。

「新たに採用するデバイスは、これからの和歌山県の『ICT を活用した教育』を担う重要な要素となります。そのため、予算に限りがあるとはいえ、『教員が本当に使いやすいもの』を導入したいという思いで検討を進めました。そんな中、落札したベンダーが提案してくれたのが、Surface Book でした」と、今井 氏は説明。続けて、Surface Book に感じた魅力について、次のように語ります。

「世の中には多くの 2 in 1 タブレットがありますが、大画面でコンバーチブルタイプのものとなると、選択肢はそう多くありません。Surface Book は、校務を行うにも十分なサイズの 13.5 インチ画面を備えるほか、数年先も継続して利用できるだけの十分な性能があります。また、ノート PC と同じような感覚でキーボード入力を行うことができ、タッチ操作も高精度なので、校務用途と教育用途どちらでもストレスなく活用できると考えています。特に驚いたのは、ペン入力の精度です。これまでのタッチ デバイス特有の引っかかりがまったく感じられず、紙に書いているのと同じような感覚で入力が可能で、授業での活用も進むと感じました。Surface Book を提案してくれたベンダーには本当に感謝しています」(今井 氏)。

さらに今井 氏は、「各学校への展開前の説明会で、Surface Book を初めて見た多くの教員から『このスペックだと校務がスムーズにできる』『これを授業で使いたい』と支持されました」と笑顔をみせます。Surface Bookは、校務の効率を確保しながら、「授業で ICT を活用したい」という教員の意識をいっそう高めていくことが期待されます。

「積極的に利用したい」と思わせるデバイスであることが授業での ICT活用を促す

入札によって Surface Book の採用が決定した後、和歌山県では 2017 年6 月より、デバイスの展開に向けたベンダーとの打ち合わせを開始。学校の夏休み期間中にすべての PC の入れ替えを完了し、同年 9 月より、県内の全県立学校で Surface Book の利用をスタートしました。

Surface Book を利用する教員の数は、約 2,500 名と大規模です。それゆえ、調達や展開作業は決して容易とはいえませんでした。しかし、酒井 氏は、マイクロソフトと調達パートナーの協力によって、この作業をスムーズに進めることができたと語ります。

「短期間にかなりの台数を調達する必要がありましたが、マイクロソフトと調達パートナーのおかげで、予定どおりに展開を完了することができました。マイクロソフトは、機器提供、返却のレスポンスが迅速です。規模が大きかったため一部初期不良もあったのですが、その場合にも代替機を 1 ~ 2 日で用意してくれました」(酒井 氏)。

"いかに製品が優れていても、調達計画に対応できないようであれば導入を見送らざるを得ません。マイクロソフトは優れた製品を提供するほか、供給体制も万全ですので、大きな信頼感のもと で調達を進めることができました。また、迅速な機器交換、長期にかけた保守部材供給などサポートが綿密な点は、お客様のクライアント環境を預かる当社にとって非常に助かっています"

-酒井 知紀 氏:本社営業部
クオリティソフト株式会社

校務用 PC と教育用 PC を兼ねた 2 in 1 タブレットを導入することで授業での ICT 活用を推し進める和歌山県ですが、電子黒板や生徒用タブレット、Wi-Fi など、同県における ICT 環境の整備は、まだまだ進んでいません。しかし、これまでの取り組みで教員の意識や ICT スキルの向上を少し ずつ進めてきたことで、利用制限の多い環境であっても教員が積極的にSurface Book を授業で活用していると、今井 氏は語ります。

「たとえば、体育の授業で生徒の実技のようすをカメラ機能で撮影して、その場ですぐにフィードバックしたり、英語の授業でデジタル教材を提示しながらネイティブの発音の音声を流すなど、さまざまな形で教員は Surface Book を活用し始めています。このことが、生徒の関心を大いに高めるとともに、理解を深めていると感じています。こうした動きは、Surface Bookが教員にとって『積極的に利用したい』と思わせるデバイスであることが大 きく貢献しているのではないでしょうか。今後、学校の ICT 環境の整備を進めることで Surface Book の活用の幅が広がれば、よりよい授業を行えるのではないかと考えています」(今井 氏)。

"「授業で ICT を活用したい」というボトム アップで挙がってきた教員の意見を汲み取って取り組むからこそ、その後の ICT の活用が本当の意味で進むと考えています。教員に「積極的に利用し たい」と思わせるデバイスを導入したことは、こうしたボトム アップの観点からも有効だったと感じています"

-今井 健多 氏: 教育総務局総務課教育政策班 主事
和歌山県教育委員会

  • 高性能な環境へ移行したことで、校務の効率は向上した (左)。授業でも Surface Book を有効に活用し始めている ( 右)

環境の整備と並行し、教員の ICT 活用推進のための研修にも尽力していく

今井氏が語るように、和歌山県では今後、学校の ICT 環境を段階的に整備していくことを検討しています。2018 年度よりスタートする「第 3 期和歌山県教育振興基本計画」においても、さらなる教育の情報化に向けた具体 的な目標が設定されています。

また、ICT 活用を推進するためには、こうした環境整備と同時に教員の研修を充実していくことが必須であると、今井 氏は述べます。

「2017 年度には、全県立学校の教員を対象に、大学教授を講師に招いたICT 活用推進のための研修を複数回開催しました。この研修を通して、教員の ICT 活用に対する意識やスキルのさらなる向上を図っています。マイクロソフトもこうした教員向けのワークショップやセミナーを提供していると伺いました。製品の提供元が提供してくれる講義や研修はとても有意義であると考えていますので、今後、和歌山県でも取り入れていくことを検討したいと思います」(今井 氏)。

Surface Book の導入は、和歌山県における授業での ICT 活用をさらに推進する大きな一歩となりました。今回の取り組みを契機として、和歌山県の教育の情報化だけにとどまらず、子供たちがこれからの時代を生き抜く力の育成につながっていくことに、今から期待が高まります。

[PR]提供:日本マイクロソフト