市場のめまぐるしい変化や競争の激化を背景とし、成長企業が一転して経営危機に陥ることが、いまや珍しい光景でなくなりつつあります。明日はわが身ともいえる状況の中、企業が考えるべきことは、まずこうした事態に陥らないこと。そして万が一陥った場合、いかにしてそれを克服するかだといえるでしょう。

リサイクルトナーカートリッジ市場のリーディングカンパニーとして、時代時代のオフィス需要を的確にとらえながら成長を遂げてきたケイティケイ株式会社。同社は2015年8月期には、上場以来初の営業赤字に陥るという危機に瀕します。この状況を覆すべく、新たに代表取締役社長に就任した土岐 勝司氏のリーダーシップのもとで同社が取り組んだのが、働き方改革です。Office 365による情報の徹底共有、そしてスマートフォンとSurface Pro 4によるモバイルワークの推進で、ケイティケイ株式会社は赤字転落から一転、2017年8月期上半期に過去最高益を達成するまでに業績を伸ばしました。

ケイティケイ株式会社

プロファイル

愛知県名古屋市東区に本社をおくケイティケイ株式会社は、プリンターのリサイクル トナーを中心にオフィス内の消耗品を取り扱う企業です。同社は"お客様の発展をトータルでサポートし、お客様にお喜びいただき、社会に貢献する"という経営理念のもと、企業支援だけでなく、環境や障がい者の就労機会にも配慮した取り組みを進めています。

導入の背景とねらい
モバイルワーク制度と情報の徹底共有による、働き方改革を推進

ケイティケイ株式会社 代表取締役社長 土岐 勝司氏

リサイクルトナーカートリッジ市場において、国内有数のシェアを占めるケイティケイ株式会社(以下、ケイティケイ)。同社が高いシェアを獲得している理由は、「face to face」の営業スタイルで構築した「顧客との深い接点」にあります。単にリサイクルトナーやリサイクルインクといったサプライ用品を提供するのではなく、課題解決のパートナーとして顧客と接する同社の営業力は、全国に19か所の営業拠点を構えるカバレッジも相まって、大手企業を中心に高い評価を得ています。

IT化やペーパーレス化という時代の変化に伴い、リサイクルトナー市場自体は成熟しつつあるといえます。そのような中、同社は2016年8月期の決算において、上場以来2番目に高い業績を記録。さらに2017年8月期の上半期決算において過去最高益を達成しました。しかし、いまからさかのぼること2年前、同社は先のように好調な状況には身を置いていませんでした。それどころか、2015年8月期の決算において上場以来初の営業赤字に転落するという、危機的状況に陥っていたのです。

2015年当時の状況について、ケイティケイ株式会社 代表取締役社長 土岐 勝司氏は次のように語ります。

「私は2015年6月に代表取締役社長として就任しました。当時の社内を蝕んでいた状況を一言で表すなら、それは『肉体的、精神的な疲労感と閉塞感』といえるでしょう。肉体的な面でいえば、営業担当者は社内でしかできない業務が膨大にあり、お客様と接する時間以外の『移動』『事務作業』に多くの時間を割く必要があったのです。結果として、営業量は多くないのに残業がかさんでしまうという状態に陥っていました。また、経営層をはじめとした管理職から一般社員に対する情報共有も十分に行われておらず、多くの従業員が『この会社はどこに向かっているのだろうか』『この会社の未来は大丈夫なのか』という精神的な負荷も抱えていたのです」(土岐氏)。

肉体的、精神的な疲労感と閉塞感は、従業員のパフォーマンス低下や離職につながります。2015年8月期の決算報告を経たのち、ケイティケイはこの危機的状況を打破するための業務改革に取りかかります。それが、土岐氏のリーダーシップのもとで行われた「働き方改革」でした。

同社は2016年度(2015年8月21日~2016年8月20日)より、2年間をかけた抜本的な働き方改革を開始することを計画。2016年度で行ったのは、情報の徹底共有と、そのための基盤整備、そして社員のITリテラシーの向上です。働き方改革を本格化するための土壌として、まず社内にある情報の風通しをよくし、またITも積極的に活用できる環境づくりを進めたのです。そして初年度につくり上げた環境をもって、2017年度(2016年8月21日~2017年8月20日)にはモバイルワークを一気に加速。肉体的、精神的な疲労感と閉塞感を解消しながら営業量を向上させることを構想します。

ケイティケイ株式会社 管理本部 本部長 兼経営企画部 部長 青山 敏久氏

ケイティケイ株式会社 管理本部 本部長 兼経営企画部 部長 青山 敏久氏は、2016年度の取り組みについて次のように説明します。

「当時、社内ではすでにグループウェアを利用していましたが、それがしっかりと活用されていたかというと、そうではありませんでした。というのも、部門単位で独自にグループウェアを利用していたため、複数製品が社内に混在することとなり、結果、部署間を横断して情報を共有する方法が整備できなかったのです。この問題を解消すべく、2015年8月にメールや情報共有の基盤をOffice 365に統一。Outlookによる社長をはじめとした全社員のスケジュールの共有と、SharePoint Onlineを利用して、毎日更新される社長日記や、拠点や部門ごとの業績情報を共有するポータルサイトを構築することで、全社員が日々会社で起きているさまざまな情報を共有し、業務に活かせる環境を整備しました」(青山氏)。

さらにケイティケイでは、営業部門に向けたスマートフォンの配付も2016年度に実施。「時間や場所を選ばずITを利用する」というモバイル インフラの構築をスタートしました。同時に全社員がタッチタイピングを習得するというリテラシー教育も推進します。この「社内にある情報の風通しをよくし、ITも積極的に活用できる環境づくり」は、想像以上の効果を生み出したといいます。その具体的な効果について、土岐氏は同社が定点的に実施しているアンケート調査を例に説明します。

「ケイティケイでは年に一度、完全匿名で『社員匿名アンケート』を実施しています。この調査は会社に対する満足度や帰属意識、問題意識について尋ねるものですが、たとえば『ケイティケイとして明確なビジョン、戦略が示されている』という設問では、"Yes"と回答する割合が、2015年度は約30%だったのが2016年度は約75%へ伸長しました。企業への期待を示す『経営が安定していて将来性があり、末永く勤めたいと思う』という問いに対しても27%から65%へと大きく向上しています。2016年度の取り組みによって、従業員の精神的な疲労感と閉塞感は大きく削減することができたと考えています」(土岐氏)。

ケイティケイが実施する社員匿名アンケートの集計結果

精神的な疲労感と閉塞感を情報の徹底共有によって取り除いたことにより、ケイティケイに勤める従業員のパフォーマンスは明らかに向上しました。その結果は、2016年8月期の決算における高い業績で明確に表れています。この成果を受けて同社では、働き方改革の本格化に向けたモバイルワークの整備に着手します。

システム概要と導入の経緯
Windows Helloに対応するインカメラを備え、ノートPCとタブレットの両面で高い利便性を持つことを評価し、Surface Pro 4を採用

ケイティケイ株式会社 経営企画部 情報システム課 課長 山本 真二朗氏

社員匿名アンケートでは、自社への要望を自由記述形式で取得する質問も設けています。その自由記述の中でも多かった要望に、「在庫管理をはじめとする基幹業務の社外利用」がありました。メールなどの簡単な応答であればスマートフォンで行えるものの、在庫確認や見積もり作成は社内にあるPCを使わねば対応できませんでした。そのため営業部門は、商談を終えるたびに会社に戻ってこなければ、受注に向けた活動を進めることができなかったのです。

ケイティケイでは移動をはじめとする無駄な時間が、営業量を伸ばすことができないクリティカルな原因だと判断。従業員の肉体的な疲労感の解消、そして営業量の増加を果たすべく、さらなるモバイルワークの整備に乗り出します。モバイルワークの整備は、働き方改革を構想した当初から計画されていました。ケイティケイ株式会社 経営企画部 情報システム課 課長 山本 真二朗氏は、従業員からの積極的なリクエストがあったことで、同取り組みの成功をいっそう期待することができたと語ります。

「2016年に働き方改革の取り組みを開始した当初からモバイルワーク構想は存在していました。ですが当時は『従業員がモバイル インフラを十分に活用できるか』という点で懸念があり、2016年度での実行は控えていたのです。2016年度の施策によって、従業員自身からモバイルワークを望む声が挙がりましたが、この声は先の懸念を払拭し、取り組みの成功を確信させるものでした」(山本 真二朗氏)。

時間や場所を選ばず社内のITが利用できる、こうしたモバイルワークの実現には、基幹システムのWebシステム化による外部閲覧への対応と、そこへアクセスするためのモバイルPCが必要です。計画の実現に向けて同社では、2016年12月より、従業員へ配付するモバイルPCの選定を開始。その結果、マイクロソフトの提供するSurface Pro 4を導入します。

Surface Pro 4を選定した理由について、土岐氏は次のように説明します。

「モバイルワークを実現するうえで、もっとも考慮せねばならないのはセキュリティです。外部から社内システムへアクセスできるようになる、アクセスする端末が増加するということは、悪意を持った第三者によるシステムへの侵入リスクも増すということです。セキュリティに対する社会的責任が高まる中、このような不正アクセスは是が非でも回避せねばなりませんでした。Surface Pro 4は、Windows 10が備える生体認証『Windows Hello』に対応したインカメラを備えているため、ID/パスワードを用いた認証に比べ、高いセキュリティ水準を確保できると期待しました」(土岐氏)。

セキュリティの確保を前提としてモバイルワークは実現すべきです。しかし、このモバイルワークの本旨は「すきま時間の有効活用」にあると、土岐氏は語ります。そしてこの観点でも、Surface Pro 4は有効だったと続けます。

「Windows Helloが利用できるSurface Pro 4であれば、ID/パスワードをその都度入力せずとも、PCを起動して顔をインカメラに向けるだけで即座に作業を開始することが可能です。PCを利用するまでの工程が減るため、積極的にすきま時間を活用しようという意識自体が高まることを期待しました」(土岐氏)。

市場には、Windows Helloに対応するイン カメラを備える機種は数多く存在します。またその種類も一般的なラップトップ型や2in1タブレットなどさまざまです。ケイティケイは機種選定に際して、2in1タブレットをメインに比較検討を進めます。その理由について、青山 氏は次のように述べます。

「2in1タブレットをメインに比較検討した理由は、商談時のプレゼンテーションなどにも活用してほしいと考えたからです。しかし、PCとしての利便性が損なわれては意味がありません。これまで当社ではクライアント環境にデスクトップPCを利用していました。移行に際し、キーボード作業の入力性が下がってしまっては、せっかく取り組んだモバイルワークがかえって生産性を落とすことになりかねません。今回、複数ベンダーの2in1タブレットを比較検討しましたが、Surface Pro 4はタブレット、ノートPCの両側面からみて非常に完成度が高い端末でした。これならば、生産性を落とすことなく商談でも有効に活用できるだろうと確信し、採用を決定したのです」(青山氏)。

導入効果
Windows Helloが推進する「すきま時間の活用」。社員が率先してモバイル ワークに取り組む

ケイティケイ株式会社 名古屋支店 営業二課 山本 修司氏

ケイティケイは2017年3月、Surface Pro 4の採用を正式に決定します。同時期には、全営業社員に1人1台の社用車も配付、先のスマートフォンの導入と合わせモバイルインフラの構築が完成しました。その後、機器の調達と全国の営業社員への展開を経て、ゴールデン ウィーク明けよりモバイルワークを本格開始しています。

実際にモバイルワークを実践するケイティケイ株式会社 名古屋支店 営業二課 山本 修司氏は、すきま時間を有効に活用できるようになったことで、残業時間が大幅に削減されたと語ります。

「当社では毎週水曜日と隔週の金曜日がノー残業デーに設定されています。これはつまり、1か月に おおよそ13日しか残業できる日がないことを意味します。これまでは、商談が終わったあとに一度帰社して作業しなければならなかったため、このノー残業デーが逆に負担となっていました。しかし、現在、ノー残業デーは負担なく実施されています。これは、外出先でできる業務が増え、直行直帰ができるようになったことによるものです。体感的ではありますが、1日あたりの残業時間は2~3時間削減できているように感じます」(山本 修司氏)。

続けて、ケイティケイ株式会社 名古屋支店 営業三課 小池 和希氏は、実際に外出先でSurface Pro 4を利用する際の心理的なハードルの低さについても言及します。

ケイティケイ株式会社 名古屋支店 営業三課 小池 和希氏

「Surface Pro 4を起動するだけで即座に業務を行える。この気軽さは、思いのほか『すきま時間に業務しよう』という意識を生み出しているように感じます。ちょっとした休憩時間でも仕事を進められますし、お客様と電話しながらでも作業することが可能です。これは商談時も有効だと感じます。PCを起動するだけでログインでき、すぐにお客様へ画面を見せることができるのです。お客様を待たせることなくスムーズに商談を進めることができるのは、大きな利点でしょう」(小池氏)。

Windows Helloでログイン(写真左)すれば、Surface Pro 4の電源をオンにするだけで即座に作業が開始できる。これは商談時においても有効に機能している

スマートフォンやSurface Pro 4、社用車を営業社員1人につき1台配布する場合、それに要するコストは決して小さくありません。ここでは当然ながら、大きな費用対効果が求められます。土岐氏は、決して小さくない投資ながら、それを上回る成果が業績と人事の両側面で生まれていると、笑顔で語ります。

「Surface Pro 4を配付後、営業量や売上は確実に増加しており、2017年8月期上半期には過去最高益を達成しました。もちろん、来年度もいっそうの伸びを目指しています。また、こうした収益だけでなく、就業に関する制度を『形骸的なもの』から『確かなもの』に変化させられた点も見逃せません。企業を構成するのは、いうまでもなく人材です。これを確保するうえで重要な制度がしっかりと機能するようになったことは、大きな成果だといえます」(土岐氏)。

今後の展望
モバイルワークをさらに推進することで、企業としての持続的な発展を目指す

企業の業績が悪化している状況では、たとえそれを改善するためだとしても、巨額の投資は敬遠されるものです。そのような中、ケイティケイは土岐氏の強い意思決定のもと、働き方改革に一貫して取り組みました。スマートフォンやSurface Pro 4、Office 365といったITを活用することで、ケイティケイは赤字転落から一転、2017年8月期の上半期には過去最高益を達成しています。

土岐氏が触れたとおり、この成果は決して一時的なものではなく、永続的なものとなっていくことでしょう。そこへ向けて、山本 真二朗氏はIT面の整備を今後も進めていくと語ります。

「残念ながら、まだ全システムが外部からアクセスできるようになっているとはいえません。モバイルワークで行えることを拡大するために、今後、アプリケーション側の整備を進める予定です。また、現在は営業部門のみ外部からのアクセスを許可していますが、この対象も広げていく予定です。在宅や時短勤務といった柔軟な働き方を、制度と IT の両側面から整備することで、従業員がパフォーマンスを最大限発揮してくれる環境づくりを進めていきます。優秀な人材が当社で働き続けてくれることで、これからもケイティケイは発展していくことができるでしょう」(山本 真二朗氏)。

ケイティケイが推し進めた働き方改革の裏側には、問題の本質をとらえてトップ ダウンで取り組みを指揮した土岐 氏と、自らの意志で積極的に業務の改善を実行した従業員の姿がありました。マイクロソフトのSurface Pro 4やOffice 365は、そんな同社の働き方改革を支えるITとして、今日も活躍しています。

「Surface Pro 4を配付後、営業量や売上は確実に増加しており、2017年8月期の上半期には過去最高益を達成しました。もちろん、来年度もいっそうの伸びを目指しています。また、こうした収益だけでなく、就業に関する制度を『形骸的なもの』から『確かなもの』に変化させられた点も見逃せません。企業を構成するのは、言うまでもなく人材です。これを確保するうえで重要な制度がしっかりと機能するようになったことは、大きな成果だといえます」

ケイティケイ株式会社
代表取締役社長
土岐 勝司氏

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