1949 年に設立され、「世界トップレベルの特色ある総合研究大学」を目指す、広島大学。文部科学省が定める「研究大学強化促進事業」と「スーパーグローバル大学創成支援事業」の対象大学に指定される同大学では、現在、グローバル化が急速に推し進められています。
広島大学では、教育カリキュラムの発展と並行し、学生へのノート PC の必携化を実施。講義レポートや論文作成へのノート PC とインターネットの活用を義務付けています。新入生の約 75% は、必携するノート PC として大学生協のオリジナル PC を購入しており、オリジナル PC は学生にとって重大な役割を担うデバイスといえます。広島大学はこのオリジナル PC について、2016 年度の機種へマイクロソフトの提供する Surface Pro 4 を採用することで、学生の自発的なデバイス活用を促進しています。
プロファイル
総合大学かつ研究大学として 1949 年に設立され、「自由で平和な一つの大学」という建学の精神を継承しながら「世界トップレベルの特色ある総合研究大学」を目指す広島大学。学生一人ひとりに応じたきめ細かい学習サポートの実現と、卒業生の質の確保および教育の質の向上を目指し到達目標型教育プログラム「HiPROSPECTS (R)」を実施するほか、国際平和文化都市ヒロシマの総合研究大学として、国際水準の教育研究の展開に向け、研究大学強化促進事業やスーパーグローバル大学創成支援事業などにも注力しています。
導入の背景とねらい
長期にわたる ICT 環境の整備によってノート PC の所有率が向上し、必携化を決定
広島県東広島市に本部を置き、国内有数の研究大学として、多くの研究成果を生み出してきた、広島大学。同大学は、文部科学省が定める国内の研究力強化を図る「研究大学強化促進事業」の対象大学に指定されており、世界水準の優れた研究活動が日夜行われています。
広島大学は、こうした研究大学としての側面だけでなく、優秀な人材輩出を担う「総合大学」としても、高い水準の教育を提供することで有名です。事実、2015 年には、国際競争力を強化すべく文部科学省が実施している「スーパーグローバル大学創成支援事業」において、13 大学あるトップ型の 1 校に指定されています。
グローバルで活躍する人材の輩出には、先の教育の提供と並行し、あらゆる業務において欠かすことのできない「ICT をツールとして不自由なく利用できるスキル」を身につけさせることが求められます。このことを見据え、広島大学は 2004 年度に、学生のノート PC 所有を推奨。同時期より学内 ICT 環境の整備を進めてきました。
広島大学 副理事 (情報担当) 情報メディア教育研究センター長 教授 相原 玲二 氏は、2004 年より進めた ICT 環境整備の概要について、次のように説明します。
「学生へノート PC の所有を推奨し始めた 2004 年当初は、無線 LAN はおろか、有線データ通信網も今ほど整備されておらず、下宿はもちろん、学内でも気軽にインターネットに接続することが困難な状況にありました。まずは、学生がノート PC を所有したいと思う環境を作りだすことが必要と考え、『キャンパス ユビキタス プロジェクト』と称し、ICT 環境の整備を進めました。このプロジェクトではまず、通信各社の協力のもと、大学内や学外周辺へブロードバンド回線を敷設。あわせて、大学生協と連携してプロバイダ事業を開始し、自宅でも気軽にインターネット回線が利用できる環境を提供しました。さらに近年では、食堂やオープン スペースへ無線 LAN を敷設するなど、ノート PC を所有する学生がデバイスを最大限活用できる環境づくりを、10 年以上かけて進めてきました」(相原 氏)。
相原 氏は、長期にわたる同取り組みにより、学生のノート PC 所有率を飛躍的に高めることができたと語ります。
「学生のノート PC 所有率について、2004 年度の入学生では 10% 弱、約 200 台ほどだったのが、2014 年度の入学生では 80% にまで向上しました。これは、10 年以上にわたって環境整備をしてきたことや、本学のメッセージが浸透した結果といえるでしょう。ですが、今後も所有率の向上が見込める一方で、それが自発的に 100% にはならないとも推測しました。1 人でも所有していない学生がいれば、当然ノート PC を活用した講義は実施できません。必携化を目指したプロジェクトではなかったのですが、これだけ所有率が高まる中、講義で活用しないことは大きな機会損失だと考え、必携化に踏み切ることにしたのです」(相原 氏)。
相原 氏が語るとおり、ノート PC の所有を推奨し始めた 2004 年当初は、学生所有のノート PC を活用した講義は計画されていなかったといいます。学生のノート PC 所有とその学内利用が一般的となり、また、有効な教育機関向けの IT 製品が各ベンダーより提供されてきたことも受け、必携化が決定したといえます。
広島大学の学生全員がノート PC を所有するうえで重要な役割を担うのが、大学生協で販売するオリジナル PC です。広島大学消費生活協同組合 専務理事 吉山 功一 氏と、広島大学消費生活協同組合 常務理事 塩崎 昌哉 氏は、オリジナル PC が担う役割と機種選定の方法について、次のように説明します。
「必携化を開始した 2015 年度において、オリジナル PC の購入数は、約 1,900 台と、新入生の 75% にものぼりました。広島大学に入学した新入生のおよそ 3/4 が、オリジナル PC を利用しているのです。今後同デバイスは、講義で活用されていく中で非常に重要な役割を担っていくと推測されますので、その機種選定には慎重を期する必要があります」(吉山 氏)。
「オリジナル PC の機種選定は、毎年 11 月、5 ~ 6 ベンダーを募ったコンペを実施し、広島大学の PC 講座運営学生サポーターによって検討されます。同サポーターは、新入生向けに PC の基本的な使い方や Microsoft Office をはじめとした基本アプリのインストールをレクチャーする講義を運営しており、学生にとって最適なデバイスを選定するには欠かせない視点をもっています」(塩崎 氏)。
システム概要と導入の経緯
利用するデジタル ネイティブ世代の特性を踏まえ、2 in 1 タブレット デバイスを選定候補に
広島大学の学生にとって最適なデバイスでなくてはならないオリジナル PC として、2016 年度に採用されたのが、同デバイスとしては初の 2 in 1 タブレット デバイスとなる Surface Pro 4 です。
これまでオリジナル PC では、ラップトップ型のノート PC が採用されてきました。今回、2 in 1 タブレット デバイスが検討候補に挙がり採用にまで至った背景には、「学生が使用するデバイスの変遷」があったといいます。広島大学消費生活協同組合 ショップ本部 情報機器担当 佐々木 達哉 氏は、次のように説明します。
「学生はノート PC 上で、Microsoft Office をはじめとしたさまざまなアプリケーションを利用します。そのため、これまでの選定基準では、画面サイズを重視する傾向にありました。しかし、今や学生が使用するメイン デバイスはスマートフォンです。そこで慣れ親しんでいる『小型軽量』や『タッチ操作』といった要素も重要な検討事項と考え、2016 年度での機種選定では、2 in 1 タブレット デバイスも本格検討することにしました」(佐々木 氏)。
実はノート PC の必携化を開始した 2015 年度の機種選定でも、候補のひとつに Surface Pro 3 が挙がっていたといいます。しかしその時点では、まだラップトップ型が検討候補においては主軸であり、広島大学が求めたオリジナル PC の要件にも適わず、別機種が選ばれました。
相原 氏は、このような背景の中で Surface Pro 4 が 2016 年度のオリジナル PC に決定された理由を、次のように説明します。
「学生サポーターによる選定コンペは、採点方式で行います。選定候補に対し、画面サイズや重量、バッテリ持続時間など、さまざまな観点から評価を行うわけです。2015 年度、Surface Pro 3 は筐体デザインや解像度、画面サイズなど多くの項目で高い評価を得ましたが、バッテリの減りや、ラップトップと比較した際のキーボードの入力性能などへの懸念が指摘され、最終的には別ベンダーのラップトップ型ノート PC を選定しました。ですが、Surface Pro 4 は前モデルと比較し、まずキーボードがラップトップに近くなり、またバッテリ持続時間も約 9 時間にまで伸びています。全体的な完成度が上がったことと、『小型軽量』『タッチ操作』といった要素を保有しているという点が、2016 年度の機種に選定された理由だと考えています」(相原 氏)。
導入製品とサービス
- Surface Pro 4
導入メリット
タッチ パネル上から直接テキストを書き込む、Microsoft OneNote で撮影した写真を編集するなど、Surface Pro 4 ならではの活用が自発的に行われた
キーボードの入力性能やキーボード型とタブレット型を使い分けられる 2 in 1 タブレットの利便性などが評価され、予想を上回る新入生が Surface Pro 4 を選択した
ノート PC の必携化に伴い増加した大学生協での修理やサポート業務について、マイクロソフトの強固なサポート体制により、修理に要するリード タイムを短縮できた
学生のデバイス活用への意識が Surface Pro 4 により高まり、ノート PC 活用がスタンダード化。学内資料のペーパーレス化を促進するきっかけになった
導入の効果
学生の自発的なデバイス活用を促進。ペーパーレスの観点でも効果を期待
広島大学は、学生サポーターからの賛同を受け、2015 年 11 月、Surface Pro 4 をオリジナル PC として採用することを正式決定。もうひとつの機種である「MacBook Air 11」とあわせて、2016 年 4 月より、学生への販売を開始しました。
新入生の PC 購入は入学と同時に行われることが多く、学生が購入を検討する際、そこには当人だけでなくその父兄の考えも影響します。タブレット デバイスの側面を持った Surface Pro 4 の反響は未知数でしたが、結果としては予想を上回る新入生が Surface Pro 4 を選択したといいます。
PC 講座運営学生サポーターのリーダーを担当する、広島大学 工学部 第二類 前田 拓海 氏は、Surface Pro 4 を使用する学生の立場から、同デバイスを次のように評価します。
「まず、タッチ パネルを採用し、タブレット デバイスとしても利用できる点が新鮮だという意見が多いです。また、授業で使用するキーボードも評判がよく、ストレスなく利用することができています。カバーを変えることでおのおののスタイルでデバイスを利用できる点も好評です。キーボードスタイルとタブレットスタイルを使い分けることで、講義だけでなく、課外活動やプライベートな時間も含めたさまざまな場面で活用できます。これは Surface Pro 4 ならではの利点といえるでしょう」(前田 氏)。
ノート PC の必携化により、当初は想像していなかった活用方法も学生から生まれています。たとえば数学科では学生が数式情報に対してタッチ パネル上から直接文字を書き込んで編集、保存したり、生物科学科ではフィールド ワークで撮影した写真をそのまま Microsoft OneNote で手書き編集し、グループ内で共有したりと、Surface Pro 4 ならではの活用が、学生間で自発的に行われています。
相原 氏は、必携化によって発生したこのような自発的なノート PC 活用が、今後、ペーパーレス化といった効果も生み出していくと期待します。
「講義における PC 活用の用途としては、まず『参照』が挙げられます。授業の多くは教員が話す時間となりますので、学生側では資料の確認や関連した調べものをするという用途が半分以上を占めるでしょう。もちろん、今後、アクティブ ラーニングといった場面での活用可能性もありますが、短期的な効果として期待しているものは、学内にある資料のペーパーレス化です。Surface Pro 4 によって学生のデバイス活用への意識がいっそう高まり、講義中も含め学生のノート PC 活用がスタンダード化したといえます。ですので、ペーパーレス化はすぐにでも進むと期待しています」(相原 氏)。
また、大学生協で機器の修理やサポートを担当する佐々木 氏は、Surface Pro 4 の優れたユーザー サポートについても評価します。
「必携化後の課題としては、ノート PC の修理件数の増加がありました。学生は教科書や資料、筆記用具などとともに ノート PC を持ち歩きますので、そこでの物損は避けられません。ただ、修理に要するリード タイムが伸びてしまうと、必携化した背景から学業へ影響を及ぼしてしまいます。Surface Pro 4 は、ソフトウェア ベンダーが開発したデバイスという印象があったため、この点で当初不安があったのですが、実際はサポート体制が強固です。結果としてリード タイムも短縮化できていると感じます」(佐々木 氏)。
今後の展望
学生の自発的な活用を促進すべく、次年度以降の機種選定を進めていく
ノート PC の必携化を開始して 2 年目の広島大学ですが、2015 年度の新入生が 4 年生となる 2018 年頃には、全学年、全学生がノート PC を所持することが推測されます。
相原 氏は、今後のオリジナル PC の選定基準について、次のように説明します。
「新しいデバイスを導入すると『使い方を教えなければ』と考えがちですが、学生はこちらが思っている以上に自然に使い方を覚え、こちらが想像もしなかった新しい使い方をします。それゆえに、学生の活用意欲を刺激するような環境を整備し続けることが、(自発的な活動を促す) アクティブ ラーニングにもつながる重要な要素だと考えます。今後もこのような動きが活発化するような選定を期待しています」(相原 氏)。
ここで語られている「環境の整備」は、単に利便性を高める、という意味合いではありません。学内の環境を十分に整備しすぎてしまっては、社会に出た際の環境との間にギャップが生まれ、大学内で培った IT リテラシーを思うように社会で発揮できない、という事態も招きかねません。
相原 氏は終わりに、広島大学における ICT 環境整備の今後の方針について、次のように語りました。
「広島大学における ICT の環境整備は、あくまで社会に出る前のシミュレーションを大学で行う、という方針のもとで行っています。たとえば、企業の多くは Windows のデバイスで業務を行いますが、それでも 100% が Windows というわけではありません。それと同様に大学生協オリジナル PC も、選定時に OS を指定することはないでしょう。ただ、2016 年度には Surface Pro 4 によって学生が新たな活用を見いだしているという事実もありますので、それを加味し、2017 年度以降も選定を行っていきます。グローバルでも活躍できる人材を輩出すべく、利便性と実際の社会とのバランスを保ちながら、今後も ICT 環境を整備していきます」(相原 氏)。
ユーザー コメント
「講義における PC 活用の用途としては、まず『参照』が挙げられます。授業の多くは教員が喋る時間となりますので、学生側では資料の確認や関連した調べものをするという用途が半分以上を占めるでしょう。もちろん、今後、アクティブ ラーニングといった場面での活用可能性もありますが、短期的な効果として期待しているものは、学内にある資料のペーパーレス化です。Surface Pro 4 によって学生のデバイス活用への意識がいっそう高まり、講義中も含め学生のノート PC 活用がスタンダード化したといえます。ですので、ペーパーレス化はすぐにでも進むと期待しています」
広島大学
副理事 (情報担当)
情報メディア教育研究センター長
教授
相原 玲二 氏
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