地域に根ざす整形外科医院として 1969 年に鹿児島県鹿児島市に開業した、社会医療法人 緑泉会 米盛病院。2013 年より救急科を導入した同院は、2014 年 9 月、同市内で地上 8 階建の新病院を新設し、病床数の大幅な拡大や、鹿児島県初となる民間医療用ヘリを導入するなど、救急医療も拡充しています。

社会医療法人 緑泉会 米盛病院

救急科の導入もあって医療現場の緊急性が増す中、社会医療法人 緑泉会 米盛病院は、チームとして医療サービスを提供することでそこへ対応すべく、新設移転を機に、Surface Pro シリーズを導入しました。同院は、医師だけでなく院内スタッフのだれもがどこでも診療情報にアクセスできる環境を整備することで、部門ごとの業務改善と、提供する医療サービスの品質向上を実現しています。

プロファイル

1969 年、鹿児島県鹿児島市で米盛整形外科医院として開院し、2014 年 9 月には地上 8 階建の新病院へと新設移行した、社会医療法人 緑泉会 米盛病院。305 床という県内有数規模の病床を備える同院は、高度な医療サービスの提供を通じて地域貢献に取り組んでいます。近年では、県内初となる民間救急用ヘリも導入し、重症患者を受け入れる施設を拡充することで、「一秒を救う。一生につなぐ」という同病院のコンセプトの実践を、よりいっそう推進しています。

導入の背景とねらい
新病院への新設移転に伴い、タブレット デバイスの導入を検討

社会医療法人 緑泉会 米盛病院
副院長兼看護部長
菊地 雅文 氏

整形外科を中心として 40 年以上、地域に根ざした医療サービスの提供を続ける社会医療法人 緑泉会 米盛病院 (以下、米盛病院)。同院は、若年層の交通事故が多いという地域の事情をふまえ、2013 年に救急科を導入し、「一秒を救う。一生につなぐ」という米盛病院のコンセプトの実践を、よりいっそう推進しています。さらに、創立 45 周年となる 2014 年 9 月には、地上 8 階建の新病院へと新設移転しました。病床数を大幅に増やしたほか、屋上ヘリポートや ER、ICU、HCU を備えることで、重症患者を受け入れる施設を充実させています。

この新設移転は、米盛病院で勤務する職員たちの ICT 活用にも大きな変化をもたらしました。社会医療法人 緑泉会 米盛病院 副院長兼看護部長 菊地 雅文 氏は、次のように説明します。

「電子カルテ システムの普及を背景に、今後、医療における ICT 活用は加速の一途を辿ると考えていました。また、当院が導入した救急科では、1 分 1 秒でも早く患者様の治療を行う必要があります。そこでは、医師だけでなく院内スタッフのだれもがどこでも診療情報にアクセスし、チームとして医療サービスを提供することが求められます。旧病院はそこまで広くなかったため、こうした環境の整備はせずとも対応できましたが、新設移転に伴い病院が広くなったことで、職員の院内での行動範囲も広がりました。そのため、タブレット デバイスなどを利用し、いつどこでも診療情報へアクセスできる環境の構築が必要となったのです」(菊地 氏)。

システム概要と導入の経緯
ベンダーにとらわれずにデバイス選定を進行し、携行性と性能に優れた 2 in 1 タブレット デバイス「Surface Pro 3」の導入を決定

米盛病院では、新設移転を控えた 2014 年 4 月より、タブレット デバイスの選定を開始しました。iOS や Android は、同院全体で導入している仮想環境や電子カルテ システムとの親和性から対応が難しく、米盛病院は Windows 搭載のタブレット デバイスを前提に、選定を進めたといいます。

当初、米盛病院は、電子カルテ システムと同じベンダーが提供する製品を検討しましたが、最終的には、日本マイクロソフトが提供する 2 in 1 タブレット デバイス「Surface Pro 3」の導入を決定しています。

Surface Pro 3 を選定した理由について、社会医療法人 緑泉会 米盛病院 システム課 課長 福永 智一 氏は、次のように語ります。

社会医療法人 緑泉会 米盛病院
システム課
課長
福永 智一 氏

「電子カルテ システムと同ベンダーのデバイスで統一することは、診療情報へのアクセスを最適化するうえで有効だと思います。しかし、デバイスの初期導入時に限らず、電子カルテのリプレースなど、今後も電子カルテ システムとデバイスの統一がついてまわることになります。当院では、デバイスを段階的に導入し、それらを長期間利用することを考えていました。電子カルテ システムにリプレースが紐づけられてしまうと、まず段階的な導入が難しく、資産の最適な運用にも悪影響を与えます。そこで、デバイスについてはベンダー フリーで検討することにし、さまざまな製品で検証しました。その過程で検証した (前モデルの) Surface Pro 2 は、携行性や性能に優れていました。なにより、用途によってタブレット モードとキーボード モードの切り替えが可能で、さまざまな院内スタッフでの利用を構想していた当院においては Surface Pro シリーズが一番適合するという結論になりました」(福永 氏)。

米盛病院は 2014 年 7 月に Surface Pro 3 の導入を決定。同年 9 月の新病院オープン時には、13 台の Surface Pro 3 を揃えました。

当初、Surface Pro 3 が導入されたのは、医師の事務作業をサポートする「MA課」と、総合受付でコンシェルジュを務める「サービス課」の 2 つの部署だけだったといいます。しかし、導入から間もなく、他の現場から「こういう形で自分たちの部署でも Surface Pro 3 を利用したい」という要望が上がり、さらに 13 台追加。米盛病院では計 26 台 (Surface Pro 4 も含む Surface Pro シリーズを) を購入しました。現在は、MA課とサービス課に加え、麻酔科、感染管理室、医療安全室、救急科、薬剤課、国際交流課、人材開発課、当直の計 10 の部署で Surface Pro シリーズ が活用されています。

「病院内において場所を問わず、診療情報の入力や参照を行わなければならない部門スタッフに、Surface Pro 3 を配付することで、いつどこでも患者様の診療情報を確認しながら業務を行うことができ、効率の良さだけでなくスピード感も増しています。また、診療情報ではなくとも、外部でのガイダンスや病院説明など、院外での活動を行う部門スタッフにおいても良い効果を生んでいます」(福永 氏)。

導入製品とサービス

  • Surface Pro 3

  • Surface Pro 4

導入メリット

  • これまで業務が重複していたインフォームド コンセントの入力作業について、病棟に所持した Surface Pro シリーズで直接入力できるようになり、業務効率が改善できた

  • いつどこでも診療情報の閲覧と入力を行うことができ、年間 2,000 件以上もある麻酔手術を安定して遂行できるようになった

  • 現場の要望に対応する形で導入が拡大することで、医師や職員のモチベーションが向上し、病院全体の医療サービスの品質向上につながった

導入の効果
各部門の業務効率が大幅に改善され、病院全体の経営面にも好影響をもたらす

2014 年 9 月の新設移転を契機に Surface Pro シリーズ の活用を開始した米盛病院ですが、同製品は既に、医師や職員たちに受け入れられているといいます。

米盛病院にて Surface Pro シリーズが導入された部署のひとつに、外来患者を診察する医師の横で、電子カルテや診断書の入力を行い、医師の事務作業を補助する MA課があります。新設移転前、MA の執務スペースには 数台の共用 PC しかなく、端末を共有し合いながら入力を行っている状況でした。Surface Pro 3 の導入後は、診察のタイミングに合わせて 1 人 1 台のデバイスが使えるようになったといいます。

社会医療法人 緑泉会 米盛病院 MA課 園田 聖子 氏は、Surface Pro 3 導入の最も大きなメリットとして、入院患者に対するインフォームド コンセント (IC) における入力効率の最適化を挙げます。

社会医療法人 緑泉会 米盛病院
MA課
園田 聖子 氏

社会医療法人 緑泉会 米盛病院
サービス課
曽山 唯 氏

「手術や治療の説明といった IC の際、MA は医師の説明内容を 電子カルテ システムに入力します。以前は病棟に PC がなかったため、その場で紙に書きとめて、執務スペースに戻ってから入力をしていました。それでは作業量が倍になるため、IC が多い日は残業につながることもありました。Surface Pro 3 導入後は、病棟まで端末を持ち歩き、その場で直接入力できるようになりましたので、作業時間を大幅に短縮できています」(園田 氏)。

総合受付を務めるサービス課も、導入当初から Surface Pro 3 が配付された部署のひとつです。現在 13 名のコンシェルジュが在籍する総合受付には、新設移転後より Surface Pro 3 が設置され、来院者に最寄りのバス停やバスの時刻表、近所の商店といった院外情報を提供することを主に活用しています。

社会医療法人 緑泉会 米盛病院 サービス課 曽山 唯 氏は、Surface Pro 3 を導入する以前との違いについて、次のように説明します。

「来院者様にお問い合わせいただいた際、以前はいったんバック オフィスへ戻ってから据え置きの PC で情報を調べ、紙に印刷してお渡ししていました。Surface Pro 3 が導入されてからは、即座にその場で調べられるようになり、必要に応じてタブレットの画面をお見せしたり、その場から印刷して紙でお渡したりすることが可能になりました。患者様をお待たせすることなく、スムーズにご案内できるようになったと思います」(曽山 氏)。

MA は医師の説明内容をその場で電子カルテ システムへ入力できるようになり、業務効率が大きく改善。「キーボードもしっかりとした打鍵感があって打ちやすいです」と、園田 氏は Surface Pro シリーズの入力精度を評価する

Surface Pro シリーズによりその場での来院者対応が可能になった。サービス課では、デバイスに備わるアラーム機能を利用することで、スケジュール調整にも役立てているという

社会医療法人 緑泉会 米盛病院
麻酔科
科長
岩永 康之 氏

また、新設移転後、現場からの要望により Surface Pro シリーズの導入が行われた部門のひとつに麻酔科があります。手術時の麻酔を担当する同科では、新設移転後、年間約 2,000 件以上の手術を常勤 3 名の麻酔科医が抱えることになり、診療情報をすばやく確認する手段が求められていました。

社会医療法人 緑泉会 米盛病院 麻酔科 科長 岩永 康之 氏は、従来の環境では、年間約 2,000 件という手術への対応が難しかったと、当時を振り返ります。

「患者様の診療情報は、我々が麻酔を施行するうえで患者様の身体状態を正確に把握するための『カルテ診断』に欠かすことができません。診療情報を確認する際、以前は据え置きの PC がある麻酔科医室まで戻る必要があり、緊急手術ですぐに患者の情報を確認しなければならない時には特に苦労していました。また、手術時だけでなく、術前と術後の診察時にも、診療情報は必要になります。Surface Pro シリーズの導入後は、手術室間を移動する間などいつどこでも手元で診療情報を確認できるようになりました。今やこれが無ければ、業務は回らないといえるでしょう」(岩永 氏)。

麻酔科医は、手術や診察のほか、他科の医師からの問い合わせである麻酔科診察依頼への対応も業務の範囲となります。その際にも、携行性に優れ、閲覧だけでなく入力作業も可能な Surface Pro シリーズは大きく役立っているといいます。

麻酔科では常に Surface Pro シリーズを携行し、業務が行われている

事前診療の書類作成など、麻酔科では入力作業が必須の業務も多い。タブレット用途だけでなくキーボード入力も可能な Surface Pro シリーズは、円滑な業務遂行に大きく役立っているという

今後の展望
持ち運びやすさを活かし、臨床現場や海外出張などでさらなる活用を目指す

米盛病院では現在、計 10 の部門で Surface Pro シリーズを活用しています。同院における今後の Surface Pro シリーズの活用構想について、菊地 氏は次のように語ります。

「現状、Surface Pro シリーズが使われているのは、コンシェルジュや MA といった、『医療を周りでサポートする部署』がほとんどで、診察に直接関わっているのは、麻酔科など、まだまだごくわずかです。今後は、携行性やキーボード入力といった Surface Pro シリーズのメリットを院内に共有することで、臨床の現場からの利用要望を引き出し、活用を広げていきたいと考えています」(菊地 氏)。

さらに福永 氏は、海外の医療機関との情報交換といった、国際交流にも力を入れる同病院ならではの活用方法についても、今後構想していくと続けます。

「たとえば国際交流の海外出張に Surface Pro シリーズを持っていくなど、院内だけでなく院外で活用できるシチュエーションはまだまだあると考えています。セキュリティ性も高く身軽に持ち歩けるという Surface Pro シリーズの特徴と、仮想環境によるセキュリティ性の高さという当院 ICT 環境の特徴を生かし、より良い ICT 環境整備の実現を検討していきたいと思います」(福永 氏)。

県内有数の大規模な救急設備と人員を抱える病院として、世界水準の医療サービスを提供する米盛病院。同院は今後も、Surface Pro シリーズをはじめとした ICT のさらなる活用をもって、医療サービスの品質を高め、地域社会によりいっそう貢献していきます。

ユーザー コメント
「ICT 活用は、トップ ダウン的に押し付ける形で進められるケースも多いと思いますが、当院では逆に、『(麻酔科のように) こういう使い方をしたい』と現場から声が上がることで、活用の幅を拡大してきました。これは Surface Pro シリーズを導入した大きな経営効果だと捉えています。というのも、現場の要望に対応する形での導入は、業務改善だけでなく、医師や職員のモチベーション向上にもつながります。それは、診察や医療、看護などの品質に還元されることになるでしょう。Surface Pro シリーズの導入は、部門ごとの業務を改善すると同時に、病院全体の経営面にも効果をもたらしていると考えています」

社会医療法人 緑泉会 米盛病院
副院長兼看護部長
菊地 雅文 氏

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