島全体が県立自然公園に指定され、美しく豊富な自然に恵まれた、沖縄県久米島町。約 1,000 名の児童生徒が、豊かな自然のもとで学習に取り組んでいる同町ですが、地域過疎の問題が深刻化する昨今、久米島町の学校においても、児童と生徒の減少により、学校は小規模化しています。
小規模化の進行は、2 つ以上の学年を 1 クラスにして行われる「複式学級」の増加を生み、そうすると教師による授業時間は、学年ごとに分散化されてしまいます。久米島町教育委員会では、このような状況下でも実りのある教育を実践し、基礎学力の向上を目指すべく、ICT 環境の整備を 2010 年より実施。2015 年 には、デジタル教科書とタブレット デバイスの整備を全小学校に行うことで、児童の学力向上を実現しています。ICT 支援員の不在を背景に大規模なシステム導入が難しい制約の中、同町では、日本マイクロソフトの Surface Pro 3 とワイヤレス ディスプレイ アダプターを活用することで、シンプルながら効果の高い ICT 教育を実践しています。
プロファイル
沖縄本島から西へ約 100 km に位置し、島全体が県立自然公園に指定されるなど豊富な自然に恵まれた、沖縄県久米島町。過疎地域の拡大が日本全国において問題となっている中、同町では、Surface Pro 3 とデジタル教科書をもって、豊かな教育を実践しています。久米島町では、教育環境だけでなく、町民と観光客のだれもが利用できるフリー Wi-Fi の設置など、若い人たちが暮らしやすい ICT 環境整備も積極的に行うことで、島全体を活性化し、より魅力的にしていく活動を続けていきます。
導入の背景とねらい
小規模化の進行によって増加する教師の負担を軽減し、効率的で効果の高い授業を行うためには、ICT の利活用が必須だった
沖縄本島から西へ約 100 km に位置し、島全体が県立自然公園に指定されるなど豊富な自然に恵まれた、沖縄県久米島町 (以下、久米島町)。同町では、小学校 6 校と中学校 2 校、高校 1 校が設置され、約 1,000 名の児童生徒が、美しい自然のもとで学習に取り組んでいます。これらを運営する久米島町教育委員会では、基礎学力の向上を目的とし、2010 年より ICT 環境の整備に取り組んできました。
「他の地方と同じく当町の人口も減少傾向にあり、児童の数についても同様です。そうすると、2 つ以上の学年を 1 クラスにして行われる『複式学級』の採用校がどうしても生まれます。異学年の児童が一緒に学習する複式学級では、年長者と年少者の相互教育を育みやすいメリットがある一方、教師による授業時間はどうしても学年ごとに分散してしまいます。従来のアナログ教材を利用した授業を踏襲するだけでは、基礎学力の向上を目指すことが難しく、授業効率や学習効果を高めるべく、ICT 環境の整備を進めたのです。その一環として、2010 年には小、中学校の全教室へデジタル テレビを整備し、操作デバイスとして Windows ノート PC も導入しました」(高江洲 氏)。
複式学級の採用校特有の課題に対し、ICT 環境の整備で対応を推し進めた久米島町ですが、デジタル テレビの活用は、思うようには進まなかったと高江洲 氏は語ります。
「(導入当時) 市場にデジタル教材が充実していなかったこともあり、教材は Office などを用いて教員自身で作成してもらっていました。教員個々の取り組みによりデジタル テレビが授業で用いられ、それが学習効果を高めることも確認できたのですが、従来の利用ではデバイスとデジタル テレビを有線で接続する形になります。そうすると活用が教壇上に制限され、操作しながら児童のようすを見て回れないことがネックとなり、効果はあってもなかなかその活用が進まなかったのです」(高江洲 氏)。
さらに、操作を行うノート PC の性能についても課題があったと、高江洲 氏は続けます。
「デジタル テレビを活用すれば、画面を見るために児童生徒は顔を上げ、より積極的に授業に臨んでくれます。それをもっと活用したいと、教員からはデジタル教科書の採用要望を多く受けたのですが、デジタル教科書の再生にはそれなりのデバイス性能が求められ、デジタル教科書の整備には、操作デバイスの刷新も併せて進める必要があったのです。そのためには綿密な導入事業計画が必要であり、小学校の教科書が改訂される 2015 年をタイミングと考え、2014 年 の下旬より検討を行いました」(高江洲 氏)。
小学校では 4 年に 1 度の頻度で教科書の改訂が行われ、デジタル教科書も同時に改訂されます。久米島町教育委員会では 2015 年に控えた教科書改訂のタイミングで全小学校における主要教科のデジタル教科書導入と、操作デバイスの刷新を行うべく、同年の「沖縄振興特別推進市町村交付金」について先の導入事業計画を沖縄県に提案。2014 年 12 月には同導入事業計画が交付対象事業として認定され、正式に導入事業計画が進められることになりました。
システム概要と導入の経緯
ICT 支援員が不在という制約の中、Surface Pro 3 とワイヤレス ディスプレイ アダプターの組み合わせは最適な選択だった
交付金の認可が下りたとはいえ、その予算には限りがあります。投影機器は従来のデジタル テレビが踏襲されることとなり、いかにその利活用を推し進められるかが導入事業計画においては重要となりました。
デジタル教科書を「場所に制限されず活用する」ためには、Wi-Fi 未対応のデジタル テレビへどのように映像出力を行うかが課題になります。高江洲 氏は、日本マイクロソフトより案内を受けたワイヤレス ディスプレイ アダプターが、課題の解決に大きく貢献したと語ります。
「導入事業計画を具体化するにあたって、ボトルネックはデジタル テレビの仕様でした。予算の都合上リプレースを行えないデジタル テレビは、すべて Wi-Fi に未対応で、たとえ操作デバイスとデジタル教科書を整備しても、その活用はこれまでのように教壇上に限られてしまうのです。日本マイクロソフトから紹介を受けたワイヤレス ディスプレイ アダプターは、デジタル テレビの HDMI 端子へ取り付けるだけで、有線接続せずとも遠隔のデバイス画面をテレビへ投影することが可能なものでした。大がかりなシステム導入を不要とし、シンプルにローコストな形で課題を解決できるのは、当町にとって非常に魅力的でした。すぐに採用を決め、それに最適なデバイス選定を行ったことを覚えています」(高江洲 氏)。
高江洲 氏が説明するとおり、一般にデジタル教科書の導入においては、サーバーから各操作デバイスなどへコンテンツを配信する大がかりなシステムの採用校が多いといえます。その中で、久米島町がシンプルなシステムを求めたのには、予算とは別にも理由がありました。
「他の学校と異なり、久米島町の学校には ICT 支援員がいません。また ICT の専門業者もいないため、仮にサーバーを各校に導入しデジタル教科書を運用する場合、教員への管理負担が増すと同時に不具合時のリスクも高まってしまうのです。当町では、各デバイスにデジタル教科書を保存するという方法を採用することで、コストだけでなく運用負荷とリスクも最適化した導入計画を立てました」(高江洲 氏)。
2015 年 2 月からは操作デバイスの選定が進められました。小学校に向けたデジタル教科書の大半が Windows を採用している背景から、デバイス側にも Windows を搭載していることを前提とし、タブレット用途ができる 2 in 1 タブレット デバイスの中で検討が進められたといいます。
「デジタル教科書を導入することが最大の目標でしたので、OS は Windows の一択でした。とはいえ、デジタル教科書はあくまでもツールです。それを操作するために児童のようすを見て回れないのでは本末転倒ですので、従来のノート PC ではなく、片手で持ち歩けるタブレット用途ができるデバイスが必要でした。デバイスは教員配付ではなく教室設置の形式でしたが、ほとんどの教員が学級担任である当町小学校の特性から、教室への設置は教員への配付とほぼ同義になります。そうすると、授業での活用だけでなく、教材作成や校務でも利用できた方が効率的ですので、キーボード入力も可能な 2 in 1 タブレット デバイスの中で検討を進めました」(高江洲 氏)。
2 in 1 タブレット デバイスの検討においては、沖縄本島の家電量販店で実際にいくつかの製品に触れ、比較検討された結果、「起動時間」と「操作性」、「豊富なインターフェイス」に優れた Surface Pro 3 の採用を決定したといいます。
「小学生は好奇心が旺盛ですので、たとえ少しの時間であっても、授業が中断するとたちまち集中力が低下してしまいます。教員がデバイスを利用する際、操作性や起動時間に難があればそれは授業の中断を招いてしまうでしょう。そうするとせっかくのデジタル教科書の活用が、かえって授業の質を落とすことになりかねないのです。Surface Pro 3 は同時期販売されていた製品の中で、タッチ パネルの操作性や起動時間が非常に優れていると感じ、先の心配をすることなく教員に活用されると考えました。また、同じマイクロソフトが提供していることもあり、ワイヤレス ディスプレイ アダプターとの相性は非常に高く、デジタル教科書の安定運用が期待できます。さらに、教務での利用も 1 つの目的でしたので、フルサイズの USB 端子を備えているなど、インターフェイスの豊富さも、他製品にはない大きなメリットでした」(高江洲 氏)。
導入製品とサービス
- Surface Pro 3
- Surface Pro 4
- マイクロソフト ワイヤレス ディスプレイ アダプター
導入メリット
- ICT 支援員の不在を背景に大規模なシステム導入ができない中、Surface Pro 3 とワイヤレス ディスプレイ アダプターを採用することで、シンプルに ICT 教育環境を整備することができた
- 机間巡回をしながらでも児童の学年に合わせ表示画面が変えられるようになったことで、複式学級においても有効に機能する ICT 教育が実現できた
- 既に導入していたデジタルテレビの利活用が促進され、児童の積極性や基礎学力を向上することができた
導入の効果
優れた操作性と起動速度が、児童の集中力を維持した ICT 教育の実践をサポートし、基礎学力の向上にも寄与
久米島町教育委員会では、2015 年 3 月に Surface Pro 3 の正式採用を決定し、ゴールデンウィーク明けの 5 月には 47 台の Surface Pro 3 が調達され、デジタル教科書を用いた授業が開始されています。
高江洲 氏は、久米島町の教員から「導入して本当によかった」という声が上がっていると、その効果をうれしそうに語ります。
「導入から約 1 年が経過していますが、Surface Pro 3 のタッチ パネルは直感的に操作ができ、日本マイクロソフトやデジタル教科書のベンダーからもていねいにレクチャーいただけたこともあり、現場で有効に活用できています。机間巡回をしながら、児童の学年に合わせ表示画面を変えられますので、複式学級の先生からは特に評価が高く、『以前よりも有効に活用できるようになった』とコメントをいただいています。従来のノート PC と比較し起動スピードも格段に早くなりましたので、計画立てした活用だけでなく突発的に教材表示が必要になった際にも対応できるようになりました」(高江洲 氏)。
これまで有線接続を必要としていた環境は、Surface Pro 3 とマイクロソフト ワイヤレス アダプターを採用することで、遠隔での操作が行えるようになり、机間巡回時でも活用することができている |
デジタル テレビの活用が促進されることで、児童の授業への積極性が増し、基礎学力の向上も期待できるという |
高江洲 氏は、デジタル教科書の拡充や操作環境の整備に伴いデジタル テレビの利活用が促進されたことが、児童の基礎学力向上にもつながっていると続けます。
「黒板や物理的な教科書を用いた授業ではどうしても言葉でしか説明できなかったことが、今の環境では画像や動画などをもって伝えることができます。それを、児童に合わせて適宜利用できますので、理解までの時間が早められ、授業の密度を濃くできました。児童からも『より興味を持って授業に取り組めるようになった』という声が上がっており、確実に成果は出ていると感じます。2016 年 2 月には、県内の小学校を対象に実力テストが実施されました。まだ結果はわかりませんが、これらの取り組みが基礎学力向上にも現れていることを期待しています」(高江洲 氏)。
今後の展望
中学校教員へも導入を検討。児童へのデバイス配付も視野に、計画を進める
2015 年度では小学校への Surface Pro 3 導入でしたが、久米島町では 2016 年度、中学校の教科書改訂に伴い、デジタル教科書と PC を導入します。そこにおいては、既に一部の中学校へ導入済みの iPad といかに連携するかが課題だと、高江洲 氏は説明します。
「沖縄は気温が高く、設置型 PC は劣化が早いです。そのため、中学校生徒が ICT を利用する PC 教室のデバイスについては、リプレース タイミングである 2014 年度に iPad へ変更しました。iPad へは教材などのアプリケーションは入っていませんが、2016 年より運用を開始する Surface Pro 4 と連携し、何かしらの相乗効果を出していけないかと考えています。連携には無線接続が不可欠ですので、まずは校内への Wi-Fi 環境の敷設を進める予定です」(高江洲 氏)。
また、現在は教員のみのデバイス利用ですが、久米島町教育委員会では今後、児童へ向けたデバイス配付も視野に入れ、ICT 環境の整備を行っていくといいます。高江洲 氏は、そのデバイスへの Surface Pro の採用について、次のような期待と要望を挙げます。
「小学校へ導入した Surface Pro 3 は非常に効果が高く、日本マイクロソフトには製品面だけでなくサポート面でも大きな信頼を寄せています。今後、児童へのデバイス配付も考えていますので、Windows 向けの学習ソフトウェアがさらに充実されることに期待しています。また、デジタル教科書ベンダーが早く Windows 10 へ対応いただけるよう働きかけもお願いしたいです。今後のタブレット デバイス導入においては Windows 10 搭載の Surface Pro 4 が候補となります。Windows 10 にはオートフォーカス機能が提供されており、書画カメラ代わりに使うこともできますので、教科書側の対応が完了すれば、当町教育委員会としても Windows 10 への移行を進めたいと考えています」(高江洲 氏)。
日本全国において問題となっている「過疎地域の拡大」。それは、学校の統廃合や複式学級の増加といった形で、児童の学習環境へも影響を与えます。そこへ対応するべく、久米島町では Surface Pro 3 とデジタル教科書をもって、豊かな教育の実践を続けています。さらに同町では、教育環境だけでなく、島民専用のフリー Wi-Fi の設置など、若い人たちが暮らしやすい ICT 環境整備も積極的に行われています。学校はもちろん、島全体を活性化し、より魅力的にしていく。久米島町の ICT を活用したチャレンジは、これからも続いていきます。
ユーザー コメント
「導入から約 1 年が経過していますが、Surface Pro 3 のタッチ パネルは直感的に操作ができ、日本マイクロソフトやデジタル教科書のベンダーからもていねいにレクチャーいただけたこともあり、現場で有効に活用できています。机間巡回をしながら、児童の学年に合わせ表示画面を変えられますので、複式学級の先生からは特に評価が高く、『以前よりも有効に活用できるようになった』とコメントをいただいています。従来のノート PC と比較し起動スピードも格段に早くなりましたので、計画立てした活用だけでなく突発的に教材表示が必要になった際にも対応できるようになりました」
久米島町教育委員会
主任
高江洲 新 氏
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