満員電車で強いストレスを受けながら通勤したり、育児や介護に携わる時間が取れなかったり、従来型のワーク スタイルは多くの問題を抱えています。優秀な人材を確保し、企業の競争力を維持、向上していくためには、多様な働き方を可能とする「働き方改革」が必要です。

多くの企業が試行錯誤のもとこの取り組みを進める中、世界有数のデバイスメーカーであるレノボ・ジャパン株式会社は、テレワークの整備を主とした働き方改革を2011年より推進。2017年3月に実施した第2回「テレワークデー」では、97%というきわめて高い実施率を達成しています。こうした取り組みをさらに発展させるべく、同社では提供からまだ間もないWindows 10 Mobileを導入。テレワークの主体デバイスであるノートPCの「補完デバイス」としてこれを活用することで時間の使い方や業務方法が変わり、引いてはそれが「新たなビジネスを創出する"発想の変化"」を生みだすことに期待しています。

プロファイル

レノボ・ジャパン株式会社は世界有数のデバイスメーカーです。同社のノートPC「Think Pad」は、業界トップ クラスの市場シェアを誇ります。近年はタブレット デバイスやスマートフォン、サーバーなど、ノートPC以外のシステムやサービスも積極的に展開。同社は"未来型企業"への転換を進めることで、新たなビジネスをこれからも次々と生み出していきます。

導入の背景とねらい
"共創"による新たなビジネス創造を目指して、テレワークを推進

2011年3月11日に発生した東日本大震災をきっかけとして、レノボ・ジャパン株式会社(以下、レノボ・ジャパン)はテレワークを推進しています。取り組みを開始した当初は利用率が低かったものの、テレワークができる日数制限の撤廃、ワーク ライフ バランスを学ぶ勉強会の実施といった、「制度」と「風土」双方からのアプローチにより、利用率は向上。2017年3月に実施した第2回「テレワークデー」では、97%という高い実施率を達成しています。

レノボ・ジャパン株式会社 代表取締役社長 留目 真伸氏

テレワークの利用によって、従業員は業務時間をフレキシブルに使えるようになります。同社のこの取り組みでは、「家族一緒で食事ができるようになった」「子供を保育園に送り迎えできるようになった」など、ワークライフバランスが向上したという声が多く聞かれるようになりました。また、同取り組みは、静かな場所で作業に集中できる、出張先からでも会議へ参加できるなど、生産性向上の面でも大きな成果を生んでいるのです。レノボ・ジャパン株式会社 代表取締役社長 留目 真伸氏は、テレワークを推進することで、「"未来型企業"への転換」が実現できると語ります。

「テレワークをはじめとする働き方改革は、一般的に『流動性が高い人材を確保するための、ダイバーシティへの対応』を目的として進められることが多いです。当社ではこれにくわえて、"共創"を生みだす『攻めのテレワーク』を推進しています。企業としての競争力を高めるうえでは、新しいビジネスの創造が不可欠です。しかし、ずっと同じオフィスにいて、同じ人間とだけコミュニケーションをしていては、視野も実現できることも広がりません。1つの会社だけでなく、他社やエンドユーザーとも連携して事業を作り上げる"共創"によって次世代のビジネスを生んでいく『未来型企業』へ転換することが、いま求められているのです。テレワークによって仕事場所や時間の使い方、業務方法環境を変えていくことにより、発想が変化し、『未来型企業』への転換に向けた動きにつながっていくと期待しています」(留目氏)

NECパーソナルコンピュータ株式会社 ICT戦略部長 佐々木 克美氏

留目氏が語る「攻めのテレワーク」を実現するには、テレワークの適用を明文化した就業規則、新たな働き方に対応した評価制度、従業員が積極的にテレワークを利用する企業風土、そして、これらを実現するためのインフラとツールが必要です。レノボ・ジャパンではテレワークに不可欠となる"いつ、どこでも業務できる環境"を提供すべく、業務PCをモバイルノートPCに統一。VPNによって社外から社内システムへアクセスできる環境を整備しています。 さらに2014年には Lync Server(現 Skype for Business Server)を導入し、PC上で固定電話の受発信ができる環境を構築。Exchange Serverも活用したユニファイドコミュニケーション(UC)環境を整備しました。"いつ、どこでも業務できる環境"を整備するうえで、レノボ・ジャパングループであるNECパーソナルコンピュータ株式会社 ICT戦略部長 佐々木 克美氏は、フレキシブルなコミュニケーションの実現を目指したと語ります。

「"共創"を活性化していくには『よいコミュニケーション』が欠かせず、コミュニケーションの形に柔軟性を持たせることが必要でした。ここでいう柔軟性とは、『いつ、どこで、だれとでも』やり取りができることや『目的に応じた伝達方法』が選べることを指します。一般的にメールはストック型でドライなコミュニケーション手法であり、チャットやインスタントメッセージはフロー型で比較的ウェットなコミュニケーション手法です。さらに電話は、情報がアーカイブされないものの最も対面型に近く、感情を込めて思いを伝えることができます。こうしたコミュニケーションのどれがよい悪いではなく、場面に応じて使い分けることが必要なのです。VoIPとSkype for Businessを利用したPCの内線化、UC環境の構築を行った背景には、フレキシブルなコミュニケーション基盤を整備することが共創による新たなビジネス創出に貢献するだろうという期待がありました」(佐々木氏)。

これまでに整備してきた"いつ、どこでも業務できる環境"において、レノボ・ジャパンではノートPCをテレワークの主体デバイスとして取り扱ってきました。外販部門など外出の多い組織に対してはフィーチャーフォンやスマートフォンなどのモバイルデバイスを配付していました。レノボ・ジャパンでは、テレワーク制度を加速させるツールを検討し、その1つがWindows 10 Mobileの導入でした。

システム概要と導入の経緯
Continuum for Phoneなど多くの優位性を備えるWindows 10 Mobileが、ノートPCの「補完デバイス」になることを期待

NECパーソナルコンピュータ株式会社 ICT戦略部(IT基盤グループ) マネージャー 坂本 英之氏

Windows 10 Mobile導入の経緯について、佐々木氏とともにレノボ・ジャパングループのITを運用管理する、NECパーソナルコンピュータ株式会社 ICT戦略部(IT基盤グループ) マネージャー 坂本 英之氏は次のように説明します。

「レノボ・ジャパンではモバイル デバイスの配付にくわえて、従業員が個人的に所有しているスマートフォンの業務利用(BYOD)も認めています。しかし、スマートフォンはメールのやり取りやスケジュール管理などはできますが、Officeアプリケーションで作成した資料は表示崩れなどを起こすこともあり、PCと比べるとどうしても業務利用の範囲が制限されます。また、個人所有であっても社用にする場合にはグローバルITのガイドラインが適応されるため、業務に使用することに抵抗がある社員が多いのが現実でした。テレワークへの有効活用を目指すうえで、使用するモバイル デバイスはOfficeとの高い親和性を持つことが重要だと考えております。Windows 10 MobileはExcelやPowerPointなどで作成されたドキュメントを完全な状態で閲覧することが可能で、ExchangeやSkype for Businessも最適なユーザー インターフェイス(UI)のもとで利用できるため、外出中のすきま時間で有効に業務活用することが期待できたのです」(坂本氏)。

また、Windows 10 Mobileが備えるContinuum for Phone機能では、Windows 10 MobileをデスクトップPCのように利用でき、テレビやPCモニターに接続することでWindows 10と変わらないUIに自動変換され、キーボードやマウスを使った操作も可能となります。Windows 10 Mobileの端末をVDIクライアント化すれば、ホテルや自宅などのテレビ、PCモニターと接続するだけで、業務用PCと変わらない環境で作業、コミュニケーションが行えます。

ソフトバンク株式会社が提供する「SoftBank 503LV」

佐々木氏は、こうした利点を備えるWindows 10 Mobileの導入によって、ノートPCを持ち帰らなくても自宅にてセキュアな環境で業務を継続できることに期待したといいます。

「テレワークの主体デバイスがノートPCであることは今後も変わらないでしょう。ですが、ノートPCを社内に置いて帰宅したときにどうしても資料を修正しなければならなかったり、あるいはグローバルな緊急会議に参加しなければならなかったりと、ノートPCが手元にない環境で作業をしなければならなくなる場面は往々にして発生します。Windows 10 Mobileは、こうした場合に業務を補完するデバイスとして機能することを期待しました。モバイル デバイスの利点は『いつでも手元にある』ことです。1つの場所に長くとどまらないようなとき、あるいは歩きながら、立ちながらでも使うことができ、Continuum for Phoneを活用すれば先のような場面にも対応できます」(佐々木氏)。

レノボ・ジャパンでは2016年10月より、Windows 10 Mobile導入の検討を開始。同月には、レノボ・ジャパンが開発しソフトバンク株式会社から提供されている「SoftBank 503LV」を選定し、導入を決定します。検討開始からわずか1か月後の11月より、外販部門の100ユーザーへの配付のもと、Windows 10 Mobileの運用を開始しました。

導入効果
豊富に備える標準機能によって、導入と業務移行に要する期間、コストが最小化

検討から利用開始までの1か月間、レノボ・ジャパンでは実導入に向けて多くの工程を進めました。

多くの工程を経たにもかかわらず1か月という短期間での導入が実現できた理由として、坂本氏は、Windows 10 Mobileが有する既存システムとの高い親和性を挙げます。

「社内のIT基盤の多くでマイクロソフトプラットフォームを利用しているため、Windows 10 Mobileとは親和性が高いこと、また、Windows 10 Mobileは、多要素認証のサポートや企業のデータ保護といった多くのセキュリティ機能を標準搭載していることが、検討、設計、評価期間短期化の1つの要因となりました。また、この取り組みでは管理、運用面のメリットも見込んでいます。現在業務PCもWindows 10への移行を進めているため、今後はOSのビルドやバージョン管理がPC、モバイルデバイス問わず統合的に管理できるようになるでしょう」(坂本氏)。

一時的に業務デバイスの変更においては、使い勝手が変わることで生産性が低下したり、またユーザーサポートの負荷が増加したりといったことが一時的ながら発生します。ですが今回の取り組みは、大きな混乱もなくWindows 10 Mobileへの業務移行が完了したといいます。この点について佐々木 氏は、次のように語ります。

「自ら使いこなせるようになってほしいという考えがあったため、今回はセルフ サービス型でデバイスを配付しました。ユーザーサポートに問い合わせが殺到すると推測したのですが、想定よりも少ないリソースでの対応が可能でした。その理由の1つとして、Windows への慣れが挙げられます。Windows 10 MobileはPCに近いUIを備えるため、ユーザーだけで容易に設定できたのだと考えています。また、電話利用だけでなく、メールやスケジュール管理、Skype for Businessの利用、さらにはプレゼンテーションにContinuum for Phoneを利用するユーザーもすでに現れています」(佐々木氏)。

Windows 10 MobileではOfficeアプリケーションが表示崩れなく閲覧できる(左)ほか、Skype for BusinessやOutlookも最適なUIで利用可能(右)

今後の展望
検証で可視化した効果をもって、Windows 10 Mobileのさらなる活用を目指す

レノボ・ジャパンは、Windows 10 Mobileの効果検証に向けたユーザー調査を2017年6月に予定しています。同調査では何かしらの形で、同社が目指す「攻めのテレワーク」への貢献度合いが示されることでしょう。

現在は100ユーザーという一部ユーザーに限った利用ですが、調査結果で示されるであろう成果を根拠として、今後Windows 10 Mobileの配付範囲を検討していきたいと、佐々木 氏は語ります。

「従業員がテレワーク制度を積極的に活用してくれて、なおかつそこにデバイスの追加調達のニーズがあれば、必要な施策支援を進めたいと考えています。たとえばAzure Active Directoryによるシングルサイン オンを実装すれば、業務システムの利便性を向上できるでしょう。当社ではグローバルITでさまざまなポリシーが定められているため、日本独自にこうした取り組みを進めることは容易ではありません。ですが、1つひとつの施策効果をしっかりと明示していくことで、少しずつではありますが日本独自の取り組みも進めていきたいと考えています」(佐々木氏)。

新たなITの活用が生みだす効果は、生産性や業務効率の向上だけでありません。環境が変わり、考え方も変化することが、"共創"からなる新たなビジネスの創出につながるのです。"未来型企業"への転換を図るレノボ・ジャパン。未来の働き方を社会に示していく同社の姿勢には、今後も目が離せません。

「自ら使いこなせるようになってほしいという考えがあったため、今回はセルフサービス型でデバイスを配付しました。ユーザーサポートに問い合わせが殺到すると推測したのですが、想定よりも少ないリソースでの対応が可能でした。その理由の1つとして、Windows への慣れが挙げられます。Windows 10 MobileはPCに近いUIを備えるため、ユーザーだけで容易に設定できたのだと考えています。また、電話利用だけでなく、メールやスケジュール管理、Skype for Businessの利用、さらにはプレゼンテーションにContinuum for Phoneを利用するユーザーもすでに現れています」

NECパーソナルコンピュータ株式会社
ICT戦略部長
佐々木 克美氏

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