保険をはじめとする金融商品は、一般的に差別化を図ることが困難といわれています。顧客にとってベストなサービスとして親しまれるためには、商品の高付加価値化だけでなく、顧客との接点で提供する顧客体験価値 (カスタマー エクスペリエンス : CX) を最大化していくことが欠かせません。“最優の商品・サービスの提供”を経営指針に掲げる太陽生命保険は、IT を積極的に活用することで、この CX の最大化に取り組んでいる 1 社です。
同社は 2018 年 8 月、提案から領収までの一連の手続きを完全ペーパーレス化する次世代渉外端末「太陽生命コンシェルジュ」の運用を開始。サービス価値と CX の双方を高めることに成功しました。同端末で取り扱われる顧客情報は、Semi-Annual Channel (SAC) のサービシング モデルを適用した Windows 10 Enterprise E3 のもと、最先端のセキュリティ機能によって固く守られています。
早期からモバイル化とペーパー レス化を推進してきた太陽生命保険
2016 年に業界初となる選択緩和型の認知症保障商品「ひまわり認知症治療保険」を提供開始するなど、太陽生命保険は、顧客ニーズに沿った数々の商品を提供していることで知られています。
太陽生命保険が掲げる「顧客に必要とされ、愛される会社を目指す」という経営ビジョンは、こうした画期的な商品開発以外の側面でも見て取ることができます。同社は 2012 年に保険契約支援システムを導入し、営業職員が携行する携帯端末によって契約上必要な手続きのペーパー レス化を推進。さらに 2018 年には、契約後の領収まで一連の手続きをペーパーレス化した新サービス「太陽生命コンシェルジュ」へと同システムをアップデートすることで、商品と CX の双方から、サービス価値の向上に取り組んでいるのです。
太陽生命保険の IT 機能を担うT&D情報システムの黒岩 剛 氏は、まず、従来の業務フローにあった問題点をつぎのように説明します。
「金融機関の業務、契約フローには、いまでも紙ベースの契約書をはじめとしたアナログ要素が数多く介入してします。たとえば、お客さまがサインした申込書は帰社後でないと業務システムへ入力できない、プラン設計時に膨大な文書が必要になる、などです。こうしたアナログ要素の存在は、結果として、お客さまが最適なプランを選定してそのプランの契約を完了する、この一連のリード タイムを長期化させることにつながってしまいます」(黒岩 氏)。
従来、太陽生命保険では、紙に印刷した設計書をベースに顧客へプランを提示してきました。「太陽生命コンシェルジュ」の稼働後は、システムが備える「コンサルティング・プレゼンテーション機能」によって、顧客の要望を聞きながらその場でさまざまなプランを設計して画面上に表示することが可能となっています。
また、同システムは、販売実績データに基づいて理想的なタイミングで最適なプランを提案したり、契約割引制度の適用を踏まえてプランを修正したりする機能も備えています。くわえて、提案後の契約、そして領収までの手続きも電子化されました。渉外担当から説明を受けた後、その場で理想のプランを設計し、申込と領収まで完結できるようになったのです。これは、これまでの金融サービスには無かったあたらしい顧客体験だといえるでしょう。
「太陽生命コンシェルジュ」の利用は、黒岩 氏が触れたリード タイムの劇的な短縮につながります。しかし、このようなサービスの提供は、顧客の契約情報、アドレス情報、決済情報などの取り扱いにも耐える高いセキュリティをシステムが備えていることが前提として求められます。黒岩 氏とともに同プロジェクトを推進したT&D情報システム株式会社の阿久津 昌史 氏は、セキュリティ対策についてつぎのように語ります。
「お客さまの情報を取り扱うわけですから、いまある脅威への対応だけでは不十分といえます。『未知の脅威』への対応も想定せねば、お客さまに安心してご利用いただくことができません。そのため、渉外端末にはアンチマルウェアや暗号化などを複合させた多層防御を敷いています。さらに、Windows 10 Enterprise E3 が備える標準機能を活用することによって、未知の脅威に向けた対策も講じています」(阿久津 氏)。
Windows as a Service によって常に最新、常にセキュアな環境を維持できる
世の中にあふれる脅威は巧妙化をつづけており、日々あらたな攻撃手法が生みだされています。同様にセキュリティ機能もアップデートしていかなければ、万全のセキュリティ水準を保つことはできません。黒岩 氏と阿久津 氏は、この観点を交えて、Windows 10 Enterprise E3 の採用理由を明かします。
「Windows 10 Enterprise は、Windows as a Service (WaaS) の概念のもとで定期的に機能更新プログラムが提供されます。ここで重要なのは、セキュリティ機能についても追加されていくという点です。悪意をもった攻撃は日々増加していますから、ここに対応しつづけるために、今後まったくあたらしい概念のしくみが必要になるかもしれません。Windows 10 Enterprise は、そうした場合でも 機能更新プログラムによっていち早く機能が実装される、未知の脅威への対応可能性を高めることができるという期待がありました」(黒岩 氏)。
「Windows 10 Pro も十分なセキュリティ機能を備えていますが、更新プログラムで追加されていく機能を最大限活用するならば、Enterprise Edition を採用した方がよいと考えました。また、これはいまある脅威へのセキュリティ水準を高める意味でも有効です。渉外端末はユーザー認証と権限設定によって操作できる機能を制限して配付していますが、Windows 10 Enterprise E3 が備える Credential Guard を実装したことで、この認証情報自体を保護することができています」(阿久津 氏)。
さらに、この WaaS というコンセプトは、渉外端末に共通したある特徴からみても有効だったと黒岩 氏はつづけます。
「渉外端末のように用途が限定された端末は、標準 PC と比べて利用期間が長い傾向にあります。たとえば『太陽生命コンシェルジュ』専用端末として調達したタブレットでいえば、これから長期にわたり利用をつづける予定です。WaaS によって、この期間中に端末を移行することなく常に最新の機能性を持たせることができ、常にセキュアな環境を維持することができます」(黒岩 氏)。
" WaaS によって常に最新、常にセキュアな環境を維持できる。これは他の OS にはない利点であり、当社が SAC のサービシング モデルのもとで Windows 10 Enterprise E3 を採用した大きな理由でした。"
-黒岩 剛 氏: テクニカルサポート一部 プロフェッショナル
T& D情報システム株式会社
全渉外担当で「太陽生命コンシェルジュ」を利用。CX 向上に取り組む
既述のとおり、太陽生命保険では 2018年 8 月より「太陽生命コンシェルジュ」の提供を開始。全渉外担当を対象に約 9,000 台の本番機を配付し、予備機および一部内勤者向けとしても 3,000 台ほど同端末を調達して、渉外対応で利用しています。
黒岩 氏は、「サービス インから間もないため、明確な効果はまだ確認できていません。ただし、現場の営業からは従来よりも携行性や利便性が良くなったこと、そしてお客さまの要望に対して従来以上の対応が可能になったと評価されています。2018 年 11 月には保険業界としての 1 つの商戦期を迎えるため、その頃には営業数字として、CX 向上の効果が現れることを期待しています」と語ります。
- IM@「太陽生命コンシェルジュ」を利用した渉外対応のようす。プランの説明(左)とその契約(中)、領収、カメラで診断書などを撮影することによる給付金の即時支払いなど、一連のプロセスを電子化することで従来以上にスピーディに各種サービスを提供できるようになった
CX のさらなる向上に向けて、同社では今後、定期的な機能拡張によってサービスの利便性をより高めていくことが計画されています。そしてこれは、WaaS コンセプトに則った Windows 10 Enterprise E3 を採用したからこそ生まれた動きだと、黒岩 氏と阿久津 氏は語ります。
「SAC のサービシング モデルでは、月次のセキュリティ パッチとは別に年に 2 回、機能更新プログラムが配信されます。機能更新プログラムを適用するために行われる検証作業は、工数負荷が発生することから、一般的にはネガティブにとらえられがちです。ただ、『ならば、アプリケーション側も定期的に発展させていこう』という発想が生まれると考えることもできます。事実、当社ではこの意識のもと、OS、アプリケーションの双方を発展させていくことを計画しています」(阿久津 氏)。
「『太陽生命コンシェルジュ』はネイティブ アプリですので、OS のアップグレードにあたってはアプリの互換性を検証せねばなりません。そのため、機能更新プログラムの適用と併せてアプリ側もバージョン アップすることは、効率化の視点でも有効です。今後のアップグレードの中で、開発やテストをスムーズにすすめていくための最適解を模索していきたいと考えています 」(黒岩 氏)。
標準 PC を含むクライアント環境全般を、よりセキュアに、より利便性高くしていく
「太陽生命コンシェルジュ」の提供開始によって、プロセスの電子化とともに、”いつでも、どこでも”お客様とつながる環境を整えた太陽生命保険。そこで取り扱われる情報は、時代ごとで要求されるセキュリティ機能を WaaS のもとで実装していくことにより、セキュアに守られつづけることでしょう。
とはいえ、同端末の利用期間は長期にわたります。その間でどのような脅威が生まれるか、見通しを立てるのは極めて困難でしょう。阿久津 氏は、未知な脅威への対応力を自らも高めることで、「安心、安全なサービスの提供」を追求していきたいと語ります。そして、その一環として、現在 Windows 10 Enterprise E5 の検証作業をすすめていることに言及します。
「Windows 10 Enterprise E5 は、ふるまいから未知の脅威を検知する Windows Defender Advanced Threat Protection という機能を備えています。これはあくまで検知するという EDR 機能のため、セキュリティを監視する SOC が社内になければ使いこなすことは困難です。ただ、次代の脅威への対応力を高めるためには、SOC が不可欠になっていくと考えています。未知の脅威をどのように検出すればよいのか、またそのためにどういったノウハウや人員が必要なのか、これを検討するために、現在一部の渉外用端末を対象として、Windows 10 Enterprise E5 の検証をすすめています」(阿久津 氏)。
"現在、標準 PC についても Windows 10 への移行計画を進めています。Windows 10 Enterprise E5 の検証結果をもって、渉外端末だけでなくクライアント環境全般をよりセキュアに運用するための方法を確立していきます。 "
-阿久津 昌史 氏: テクニカルサポート一部 IT基盤管理一課
T& D情報システム株式会社
安心、安全にサービスが利用できるという前提のもとで、CX の追求をすすめる太陽生命保険。画期的な商品とこの CX を武器に、太陽生命保険は今後も、ビジョンである“最優の商品・サービスの提供”を体現していくに違いありません。
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