ゆうちょ銀行では、かねてより、能力のある社員が性別・年齢・ライフ スタイルなどに関係なく力を発揮でき、自らのキャリア形成を図っていくことのできる業務環境づくりを進めてきました。中でも現在注力しているのが、人事制度の充実と、これを支える IT 環境の整備です。同社は 2018 年度、Microsoft 365 が備える強固なセキュリティ機能を活用し、ファット クライアントによるテレワーク環境を整備。これと同時にテレワーク制度も策定したことで、社員が積極的にワーク ライフ マネジメントに取り組む職場づくりを実現したのです。クラウド サービスの Microsoft 365 を採用したことで、ゆうちょ銀行はわずか半年という異例の短期間で、テレワーク環境を整備することに成功しています。
働き方改革は制度だけでは不十分。実効性ある施策として、テレワーク環境を本社社員向けに用意
これまで、国内企業は長時間労働に依存した旧来型の働き方をつづけてきました。その中で染みついた労働風土を背景に、ワーク ライフ マネジメントは、この言葉が普及した今もなお、具体的な動きとしてはあまり多くのものは生まれていません。しかし、2017 年には女性の就業率が過去最高を記録 (内閣府 2017年版男女共同参画白書) し、共働き世帯数も依然として増加するなど、社会は確実に変化しています。少子高齢化による労働生産人口の減少も叫ばれる今日、社員が率先してワーク ライフ マネジメントを行うための環境をつくっていかなければ、いずれ人材確保が困難になることは明白です。
ゆうちょ銀行 コーポレートスタッフ部門 人事部 グループリーダーの竹田 学 氏は、「当社でも、女性の社員比率が年々高まり、女性管理職の数も増加傾向にあります。また、ワーク ライフ マネジメントが必要なのは、必ずしも女性に限りません。」と語り、本質的に働き方を見直さなければならない時期に差し掛かっていることを述べます。つづけて、同社が現在すすめている、「制度」と「風土」、「環境」の 3軸を意識した働き方見直しについて説明します。
「単に人事制度を変えればワーク ライフ マネジメントが進むかといえば、それは違います。重要なのは、無理やりにではなく社員 1 人ひとりが“主体的”に仕事と生活の両立を図ることにあります。これを促すべく、当社では 2016 年よりダイバーシティに特化した組織をつくり、育児や介護に関わる『制度の整備』、自らのワーク ライフ マネジメントを表明する“イクボス宣言”をはじめとした数々の取り組みをもった『風土の形成』とともに、BPR(ビジネス プロセス リエンジニアリング)の推進による『業務負担の軽減=業務環境の改善』、以上の 3 つを軸にして働き方の見直しをすすめてきました。2 年かけてようやく風土として定着しはじめたのを見定めて、現在あらたにテレワークもスタートしています」(竹田 氏)。
ゆうちょ銀行のテレワークでユニークなのは、ユーザー対象を、結婚や育児、介護といったライフ イベントに該当する社員に限定せず、本社の社員を対象にして希望者へ Surface Pro を配付し、各々が様々な利活用を試そうとしている点です。この意図について、ゆうちょ銀行 コーポレートスタッフ部門 人事部 主任の森下 絵理奈 氏は、「遠方から出勤する社員や出張が多い社員など、テレワーク環境が必要なユーザーはライフ イベント該当者以外にも数多くいます。また、目的を限定せず本社の社員に対して適用可能にすることで、社員 1 人ひとりがこれを自分事としてとらえるようになります。結果として、主体的にワーク ライフ マネジメントに取り組もうという意識を高めることにもつながるのです」と説明しました。
スケーラビリティに富んだ Microsoft 365 は、テレワークをスモール スタートするのに最適だった
ゆうちょ銀行では、シン クライアントではなくファット クライアントで、テレワーク環境を運用しています。テレワーク環境では個人情報と機密情報の取り扱いを禁止しているものの、その他のビジネス情報、ドキュメントも、基本的に、社外に漏れてしまうことは許されません。セキュリティを重視するのであれば、シン クライアントが筆頭の選択肢になるでしょう。しかし、スケーラビリティの観点から、シン クライアントは、ゆうちょ銀行の求める要件には適さなかったといいます。同社で IT 管理を担当する、株式会社ゆうちょ銀行 システム部門 システム統括部 専門役の小池 輝彦 氏はつぎのように説明します。
「当社では希望者に対して Surface Pro を配付する方式でテレワークを実践しているため、ユーザー数は随時増減することとなります。ワーク ライフ マネジメントの社内風土が醸成されていくことで、今後は増減しながらも段階的に利用者が増えていくと予測されます。ですがテレワーク制度自体が初めての試みだったため、初期段階でどのくらいユーザーから申請があるかが未知数でした。シン クライアントでは VDI 環境の構築が必要であり、そこではまず規模感のサイジングが求められます。しかし、先の理由からサイジングは困難でした。イニシャル コストや初期開発に要する期間も大きいため、今回のようにユーザーを段階的に拡大していくというケースには適合しなかったのです」(小池 氏)。
上記の理由から、ゆうちょ銀行ではファット クライアントによってテレワーク環境を用意することを決定。ここではセキュリティが懸念されましたが、株式会社ゆうちょ銀行 システム部門 システム統括部の入交 美穂 氏は、近年の技術発展に触れ、ファット クライアントであってもセキュリティ リスクの解消は可能だと説明します。
「今日のファット クライアントは、ハード、OS の両面で、旧来と比べて大幅にセキュリティ性が向上しています。OS でいえば、通常エンド ポイントには多層防御のしくみが必要になりますが、最新の Windows 10 Enterprise ではアンチ マルウェアの Windows Defender、アプリや Web サービスを制御する Windows Defender Application Guard、AppLocker など、OS の標準機能でこうした多層防御のしくみが実装できます。実際、当社のテレワーク環境ではこれらの機能を実装してセキュリティ水準を高めており、なかでもドキュメント保護については、Information Rights Management と Windows Information Protection、そして Bit Locker の3連の暗号化機能によって、高いセキュリティ水準を保っています」(入交 氏)。
また、運用面においても、ゆうちょ銀行のテレワーク環境にはセキュリティを高めるための工夫が凝らされています。たとえ多層防御のしくみをしいたとしても、ローカル環境で作業やドキュメントを保存するファット クライアントは、シン クライアントと比較してどうしてもセキュリティ リスクが高くなります。
これを踏まえてゆうちょ銀行では、テレワーク環境と社内システムとを接続するのではなく、テレワーク用のワーク スペースを社内システムとは別に用意することで、セキュリティ リスクを最小限におさえています。この ワーク スペースの核を担っているのが、モバイル セキュリティ スイーツの Enterprise Mobility + Security (EMS) と Office 365 、Windows 10 Enterprise を統合ライセンスとして提供する Microsoft 365 です。小池 氏と入交 氏は、同社のテレワーク環境のしくみについてこう説明します。
「現在、テレワークを利用する場合には、申請者があらかじめ、作業予定のドキュメントを社内から SharePoint Online 上のワーク スペースへアップし、社外からここへアクセスするという形をとっています。はじめにドキュメントをアップする作業はあるものの、SharePoint Online 上のワーク スペースは利便性が高く、別途導入したメール機能で社内社員とのコミュニケーションも可能なので、自席に近い感覚で業務を行うことが可能です」(入交 氏)。
「万が一デバイスを紛失してそれが悪意のある人間の手に渡ったとしても、Intune をはじめとする EMS が備える各種機能によって、ワーク スペースへの接続を排除することが可能です。当社では、ほぼ Microsoft 365 だけで、多層防御をもったエンドポイント セキュリティ、モバイル セキュリティ、ワーク スペースといった『テレワークに必要な環境』を用意しています」(小池 氏)。
"テレワークに必要な環境を Microsoft 365 だけで一通りそろえることができる。これは、当社のようにまずテレワークをスタートする、そしてその後段階的に拡大していく、というケースにおいてはとても有用だといえます"
-小池 輝彦 氏: システム部門 システム統括部 専門役
株式会社ゆうちょ銀行
わずか半年でテレワーク環境を用意。想定外のニーズに対してもクラウドがもつスケーラビリティで対応が可能
ゆうちょ銀行がテレワークの検討を開始したのは、2017 年 11 月のことです。同社ではそこから半年に満たない 2018 年 4 月に、テレワーク環境をスタートしています。これは、テレワークに必要な環境をひととおり用意できるという Microsoft 365 の利点がいかんなく発揮された成果だといえるでしょう。
小池 氏は、「仮に VDI を構築していたとしたら、とてもここまで短期にはスタートできなかったでしょう。もしかするとサイジングだけで、同じくらいの期間がかかっていたかもしれません。」と、短期で環境を用意できた点を高く評価します。また、クラウド ベースの Microsoft 365 を採用したことで、スケーラビリティを持ったテレワーク環境を整備できたことも大きなポイントです。竹田 氏と森下 氏は、テレワーク制度を利用する現ユーザーの反響に触れながら、つぎのように語りました。
「現在、申請ごとにユーザーへSurface Pro を貸し出す形で運用しています。すでにワーク ライフ マネジメントが文化として社内に浸透しつつありましたから、スタート当初から、社員は積極的にこれを利活用してくれています。今後、様々な状況で利活用できるように環境を整備しなければならないと感じていますが、そうした場合にも、当行は既に社用端末用に全社員分の Microsoft365 ライセンスを保有しているため、Microsoft 365 のユーザー数を増やせばあとはデバイスを調達するだけで対応が可能です」(森下 氏)。
「テレワークを開始してから 1 つ意外だったことがありました。当初、育児や介護に伴う“長期間”でのテレワーク申請が多いと予想していたのですが、運用し始めてみると、『子どもが入院してしまって急遽半日だけ利用したい』『中学生の子供の入試を傍らで応援するために、今週金曜日だけテレワークしたい』といったスポット利用の要望がいくつか挙がっているのです。また、男性社員が育児に積極的に関わるために利用する、という例もありました。これは、先の企業文化の浸透ゆえに表れた成果ともいうことができ、今後テレワークを活用するユーザーがいっそう増えることを期待させる動きでした。この視点でも、今回スケーラビリティをもったテレワーク環境を用意できたことは、大きな意義があったと感じています」(竹田 氏)。
これに応えるように、入交 氏は「現在、しくみや運用ルールともに、スポット利用には対応していない状況です。しかし、Microsoft 365 ではユーザー権限を容易に変更可能なため、必要に応じて設定の変更を行い運用しています。ユーザーが増えてきた場合にも、クラウドゆえのスケーラビリティによって、サービスを停止することなくユーザー数を増やしていくことができるでしょう。」と語りました。
ゆうちょ銀行では、かねてより“ダイバーシティ・マネジメント”を経営上の重要課題のひとつと位置づけてこれを推進してきました。2018 年度にスタートしたテレワークは、この動きをいっそう加速すると同時に、ライフ イベントに該当する社員以外にまで“柔軟な働き方”へと意識を向かせることに成功したといえるでしょう。
社員が“主体的”かつ“自律的”に、仕事と生活の両立を図る。ゆうちょ銀行が目標に掲げるこうした社内文化の形成は、着実に実現へと向かっています。仕事と生活の両立には、日々の業務生産性の向上が欠かせません。ゆうちょ銀行がすすめる社内文化の形成は、やがては社員 1 人ひとりに、生産性を高める『行動の変革』を生み出していくことでしょう。ゆうちょ銀行のすすめる働き方見直しが、同行のサービスをよりよいものにしていくことに、期待が高まります。
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