オルバヘルスケアホールディングス株式会社では、中長期経営計画を踏まえたデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現に向けてインフラ基盤の整備に着手しました。更新時期が迫っている仮想基盤の刷新プロジェクトを立ち上げ、クラウド化を含めさまざまな選択肢を比較検討。以前から日本オラクルのクラウドサービス「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」の導入・運用を進めていたこともあり、最終的にOracle Cloud VMware Solution(OCVS)を採用し、データセンター上に構築したすべての仮想マシン(VM)をOCVS上に移行することに成功しています。

ソリューション

オンプレミスのデータセンターに構築・運用していた仮想基盤上にある約200台のVM(販売管理システム、ファイルサーバー、各種業務系システムなど)のクラウドシフトを検討。OCVSを採用し、バックアップソフトを利用することで全VMを実質2カ月半という短期間でOCI上に移行完了させ、パフォーマンスやスケーラビリティの大幅向上を実現した。

導入前の課題

  • 社内システムの仮想基盤に保守切れが迫っており、短期間での次期仮想基盤の導入が必要
  • 現行仮想基盤のパフォーマンス不足と、障害の増加および原因特定も困難
  • 自社の中長期経営計画で目標に掲げるDX推進に伴い、インフラ基盤のクラウド移行が急務

導入効果

  • 社内システムのパフォーマンスが体感できるレベルで向上し、ETL処理時間を30%~最大80%短縮
  • 販売管理システムの月次締め処理など負荷のかかる作業に関しても50~60%程度の時間短縮に成功
  • 大阪リージョンをメイン、東京リージョンをバックアップという構成を採用し、コストを抑えてBCP対策を実現

***

データセンター上にある仮想基盤の保守切れを機にクラウド移行も見据えた次期仮想基盤の選定に着手

2021年に創業100周年を迎えたオルバヘルスケアホールディングスは、中国・四国エリア、近畿エリア、東北エリアを中心に医療機器・介護用品の販売・レンタルや医療商材の管理など多様なビジネスを展開しています。同社のITシステムは、オンプレミスのデータセンターに構築した仮想基盤上で運用されており、老朽化によるパフォーマンスの低下・故障対応の煩雑化といった課題が顕在化。現行仮想基盤の保守切れが迫り、迅速な対応が必要な状況のなか、課題解決に向けた次期仮想基盤の選定に着手しました。グループ全体のITシステムを統括する、オルバヘルスケアホールディングス 管理本部 情報システム部 部長の相坂 年宣 氏は、本プロジェクトを、同社が取り組むDXの軸となるITインフラ基盤整備の一環と位置付けています。

「弊社の中期経営計画では、バックオフィス業務の合理化や営業活動の合理化を実現し、それらを通じて顧客体験価値を向上させることを目的にDXを推進していますが、その柱となるITインフラ基盤に関しての中期的な計画はなく、保守切れのタイミングに合わせて更新を繰り返している状況でした。これではデータの利活用や柔軟な働き方といったDXの目的を達成することは難しく、セキュリティ面での課題も払拭できません。そこで、数年先を見据えたITインフラの中期計画を策定し、仮想基盤の保守切れに合わせて、インフラ基盤の抜本的な見直しに着手したという経緯です」(相坂氏)

  • オルバヘルスケアホールディングス株式会社
    執行役員 管理本部 情報システム部 部長
    相坂 年宣 氏

仮想基盤の見直しにあたっては、現行の仮想基盤をそのまま更新するという方法から、クラウドへのシフトまで、幅広い選択肢が比較検討されました。インフラチームのリーダーとしてさまざまな案件に携わり、今回のプロジェクトでもPMとして中心的役割を担ったオルバヘルスケアホールディングス 管理本部 情報システム部 係長の水野 聡 氏は、現行仮想基盤の課題を洗い出し、その解決に資するアプローチを模索したと選定の経緯を振り返ります。

「これまではデータセンターに構築した仮想基盤のVM上で各業務システムやファイルサーバーが稼働していましたが、オンプレミス環境の物理機器は故障の可能性が拭えません。実際、1つのノードが故障し縮退運転を強いられるケースはめずらしいものではなく、修理や機器交換にかかる時間と手間は情報システム部にとって大きな負荷となっていました。また昨今ではビジネスにスピードが求められるようになり、既存のインフラでは追随するためのスケーラビリティを担保できないという課題も顕在化していました。こうした課題を解決するため、現行基盤の更新だけでなく、クラウドへの移行、すなわちデータセンターの廃止も有効な選択肢として検討を進めていきました」(水野氏)

  • オルバヘルスケアホールディングス株式会社
    管理本部 情報システム部 係長
    水野 聡 氏

既存システムで採用しているOracle Databaseとの親和性が高いOracle Cloud VMware Solutionを採用

こうしてDX施策の一環として次期仮想基盤の選定がスタートし、クラウドシフトを選択した場合の移行先についても検討が進められました。そのなかで、有効なソリューションとして同社が注目したのがオラクルのクラウドコンピューティングサービスであるOracle Cloud Infrastructure(OCI)上に、オンプレミスのVMware環境を移行できるOracle Cloud VMware Solution(OCVS)でした。水野氏は、OCVSに着目した理由について次のように説明します。

「弊社では、社内システムのデータベースをOracle Databaseで統一しており、Oracle Database Standard Edition 2ライセンスを用いて仮想基盤上でOracle Databaseを動かしていましたが、慢性的なパフォーマンス不足に悩まされており、2021年からOCI環境への移行を検討。2022年に一部のシステムをOCIに移行し、専用線で接続するハイブリッドクラウド化を実現しています。このため、仮想基盤のクラウド移行を検討するうえでは、すでに利用しているOCI、及びOracle Databaseとの親和性が高いOCVSが最有力候補となりました」(水野氏)

インフラ機器の価格増大もあり、現行仮想基盤の更新という方法ではコスト面でのメリットもなく、パフォーマンス面での課題も解決できないと判断した同社は、クラウドシフトへと舵を切ります。ほかの主要クラウドサービスのソリューションも比較検討されましたが、OCI上で稼働するOracle Databaseと低レイテンシで通信できるOCVSは、パフォーマンス面での優位性があったと水野氏。後発のクラウドサービスであるOCIは、インフラの堅牢性やSLA、導入・運用コストの面でもメリットが大きかったと語ります。

さらに水野氏は、「ほかのクラウドサービスと異なり、管理者権限を自社でコントロールでき、バージョンアップのタイミングも我々の裁量で決められることが大きかったです。仮想基盤上にはレガシーOSのVMも残っており、事前検証を行ったうえでバージョンアップしたいと考えていたので、こうした要素も採用に至った要因です」とOCI/OCVSを選んだ要因を説明。また相坂氏は、BCP対策の観点でもOCVSを採用する価値があったと採用の決め手を語ります。

「現行の仮想基盤はバックアップ体制に課題を抱えており、次期仮想基盤の導入にあたっては、BCP対策も考慮して選定を進めました。今回、OCVSを採用したことで、大阪リージョンに構築した仮想基盤を東京リージョンにバックアップするという構成を実現。医療業界のビジネスでもっとも重要な“業務を止めないこと”、事業継続性を担保することができました」(相坂氏)

体感できるレベルでVMのレスポンスが向上し、ETL処理にかかる時間を最大80%短縮することに成功

本プロジェクトは2022年後半にスタートし、構成の検討やPoC検証を経て、2023年7月から本番環境の構築に着手。移行計画の策定やリハーサルを行った後、2023年8月中旬から移行作業を開始し、約2カ月半という短期間で、現行仮想基盤で稼働している約200台のVMすべてをOCI上に移行させることに成功しています。

OCVSのPoC環境構築は日本オラクル、本番環境の構築は株式会社テリロジーが担当しています。本番環境の構築を担当したテリロジーは、主にネットワーク/セキュリティの領域で事業を展開しており、クラウドセキュリティの分野を中心に日本オラクルの製品を扱ってきました。同社のクラウドセキュリティ営業部長を務める河井 啓介氏は、「OCI、OCVSの導入実績が豊富だったこと、クラウドセキュリティに強いことなどを評価いただき、日本オラクルの紹介で本番環境の構築を担当することになりました」と、プロジェクト参画の経緯を説明します。

移行作業自体はオルバヘルスケアホールディングスが担当し、日本オラクル、テリロジーの支援を受けながら、水野氏を中心にわずか3名の少人数体制で臨んでいます。コロナ禍の影響もあり、プロジェクトはフルリモートで進められたといいます。

最低減の停止期間でクリティカルなシステムをクラウド上に移行させるという難解なミッションを進めるにあたり、問題となったのはデータセンターとOCIを繋ぐ専用線のスピードでした。「データセンターとOCIを繋いでいる専用線は決して遅いものではなかったのですが、PoCの結果から数TBのVM1台を移行し終わるまでに24時間~48時間程度かかってしまうことが判明しました。これだけ長い時間システムを止めることは現実的とはいえず、有効な方法を模索しました」と、水野氏は移行作業におけるポイントを解説します。

最終的に採用されたのは、バックアップソフト「Commvault」を用いてオンプレミスのデータセンター上にVMのデータをバックアップし、そこからOCIのオブジェクトストレージに移行、差分バックアップを取り続けることで、移行日にはほぼすべてのデータが移行されている状態にするというアプローチでした。

Commvaultを用いた現行の仮想基盤へのバックアップと、そのデータを用いた移行作業においてもテリロジーがサポートを担当。水野氏は「オラクルの担当者の移行作業にバックアップソフトを活用できるという助言から着想を得て、停止時間を最少化するために構成や移行手順を試行錯誤しました」と語り、現行の仮想基盤へのバックアップを挟むことで、スムーズに移行できたと手応えを口にします。本番環境の構築を担当した株式会社テリロジー 技術統括部の山内 洋征氏も「OCVSは設定が簡単で短期間で構築できることが強みで、VMware環境の構築自体は大きな問題なく進められました」と語ります。

またIPアドレスが変わってしまうという問題もあり、ユーザー部門との調整も重要になったと水野氏。データ連携やアプリ周りも含め、移行作業と調整作業を並行して担当するのは大変だったと話します。ITインフラの責任者である相坂氏は、「基幹システムに関わり、社内システムのアプリケーションエンジニアとしても業務に携わってきた水野がPMを務めたことが、インフラ全体を俯瞰した影響範囲を把握し、短期間での移行に成功したと考えています」と本プロジェクトの成功要因について語ります。

OCVS導入の効果について水野氏は、「体感できるレベルでVMの動作が軽快になっています。実際に利用した社員からは、ファイルサーバーへのアクセスや社内Webシステムの利用時など、さまざまな作業で以前よりレスポンスが向上したという声を聞いています」と語り、ETL処理にかかる時間が最低で30%、最大で80%近く短縮できていると説明。販売管理システムの月次締処理も、これまで5時間かかっていた作業が1時間50分で実行できるようになったと力を込めます。一方、相坂氏は、本プロジェクトの成果として内製化の足がかりができたことを喜んでいます。

「少人数でインフラ基盤のクラウド移行を実現できた経験は、今後のDX、IT戦略を考えるうえでも大きな成果だと思います。ベンダーに依存せず、ある程度内製でできるという手応えを感じています」(相坂氏)

「Oracle Databaseとの親和性を考慮し、仮想基盤のクラウド移行にOracle Cloud VMware Solution(OCVS)を採用。移行方法の工夫により短期間で200VMのクラウド移行に成功し、レスポンスの向上やスケーラビリティの担保など、DXの実現に資する成果を得ることに成功しました」

日本オラクルやVMwareのソリューションを活用し、セキュアで柔軟なデータ利活用環境の構築を目指す

オルバヘルスケアホールディングスでは、仮想基盤のクラウド移行を実現した今回のプロジェクトの成果を踏まえ、全社的なDXの取り組みを加速していく予定です。今後は、クラウド上に集約したデータの利活用を考えていくフェーズになると相坂氏は語り、今回構築したインフラ基盤を軸に、セキュアで柔軟なデータ利活用環境を構築していきたいと今後の展望を語ります。

水野氏は「OCVSを採用したことで、vSANやNSXなどVMwareのソリューションを効果的に活用できるようになり、課題であったスケーラビリティの向上も実現できています。移行が完了したばかりで、現状の成果にある程度満足してしまっている面もありますが、データセンターの完全廃止や、よりセキュアなネットワークへの構成変更、アプリケーションの整備、サイロ化しているレガシーOSへの対応なども順次進めていきたいと思っています」と語り、日本オラクルやテリロジー、VMwareのさらなる支援に期待しています。

仮想基盤のクラウド移行をフックに、柔軟なワークスタイルの実現と顧客に対する新たな価値の提供、データドリブン経営の定着を目指す同社の取り組みは、効果的なクラウド活用を模索する企業に対し、重要な“気づき”を与えてくれるはずです。

***

●業界
Healthcare

●カスタマープロフィール
「ビジネスを通じて、医学・医療・介護の発展に貢献し、国民の健康長寿に寄与する」という企業理念のもと、医療器材事業、SPD(医療施設の物品管理支援)事業、介護用品事業を展開するオルバヘルスケアホールディングス株式会社。デジタル技術の活用にも積極的で、人々の健康・快適な暮らしを守るというミッションを実現するため、DXへの取り組みを加速させている。

●ユーザーコメント
「Oracle Databaseとの親和性を考慮し、仮想基盤のクラウド移行にOracle Cloud VMware Solution(OCVS)を採用。移行方法の工夫により短期間で200VMのクラウド移行に成功し、レスポンスの向上やスケーラビリティの担保など、DXの実現に資する成果を得ることに成功しました」
――オルバヘルスケアホールディングス株式会社 管理本部 情報システム部 係長 水野 聡 氏

●導入製品・サービス
Oracle Cloud VMware Solution

[PR]提供:ヴイエムウェア