数年前はSSD (Solid State Drive)を採用した「オールフラッシュストレージ(アレイ)」は、HDD(Hard Disk Drive)搭載ストレージと比較して、高価でした。しかし、SSDの記憶チップとして採用されている「NAND型フラッシュメモリ」の技術革新により、SSDの低価格化が進んだことで、エンタープライズ市場においても、オールフラッシュストレージの導入を検討する企業が増加しています。
オールフラッシュストレージの最大の特徴は、I/O性能が高く、高速な読み書きが可能となることです。その一方で、データの書き換え回数制限による寿命や、長期間使用するとパフォーマンスが低下するといった、HDDとは異なる課題も存在します。オールフラッシュストレージを選択する際には、こうした課題に対してどれだけ工夫がされているのか、NAND型フラッシュメモリの特性を十分に考慮し、最適化されているのかを見極める必要があるといえるでしょう。
ポイント1 書き換え回数制限による寿命を理解する
オールフラッシュストレージの多くは、従来型のHDD搭載ストレージと同じアーキテクチャを採用しています。しかし、HDDとSSDではデータの読み出し/書き込みに関する内部構造が異なります。単にHDDとSSDを入れ替え、RAID、ストライプサイズ、その上位のファイルシステムを今まで通りそのまま使用すれば、SSDの持つ高速性能を十分に享受できず、さまざまな弊害を引き起こしてしまう可能性があります。
少し詳しく見ていきましょう。オールフラッシュストレージを運用するにあたり、知っておきたいポイントは、「書き換え回数制限による寿命」です。NAND型フラッシュメモリは元あったデータの一部だけを「書き換える(上書き)」ことが苦手なデバイスです。データを書き換えるためには、一度データを「消去」してから書き込みます。NANDメモリの書き込みは「ページ」と呼ばれる単位で行います。一方、消去は複数の「ページ」をまとめた「ブロック」単位でしか実行できません。1つのページに書き込まれたデータを変更する場合には、そのページを含むブロック全体を空きのあるブロックに移動させ、元データをブロック単位で消去したあと、改めてデータを書き込むという処理を行います。つまり、一カ所の変更でもより多くのデータを書き込む必要があり、長期間、書き換えを繰り返すとセル(フラッシュメモリのデータを記録する最小単位)が磨耗し、パフォーマンスの低下を引き起こし、最終的に寿命を迎えてしまうのです。
こうした書き込みの課題に対し、NANDフラッシュメモリやSSDのデバイス側、および、SSDを用いるストレージ側の両面から課題を解決する技術が注目されています。
デバイス側では、微細化技術の限界が叫ばれて久しく、MLC(マルチレベルセル)やTLC(トリプルレベルセル)の寿命の問題も知られていますが、ウェアレベリング(*1)技術やECC(エラー訂正)技術などの発達によって性能、寿命、信頼性を維持し、微細化されたMLCの大容量SSDのエンタープライズ利用が進んでします。
(*1)ウェアレベリング技術:書き換え回数が限られている記憶媒体(メディア)において、各セルの書き込み回数がなるべく均等になるように工夫し、その使用寿命を延ばすための手法
ポイント2 「インライン重複排除/圧縮(*2)」技術を理解する
(*2)インライン重複排除/圧縮:データがSSDやハードディスクに保存されるタイミングで重複排除/圧縮処理を同時に行う技術
一方、ストレージ側では書き換え回数に限界があるSSDの課題を鑑み、オールフラッシュストレージやハイブリッドストレージの多くは「重複排除/圧縮」技術を備えています。特に、データをSSDに書き込む前に重複排除処理を実行する「インライン重複排除技術」が搭載されているかどうかは、大きな差別化ポイントです。書き込みの回数を削減することで、NAND型フラッシュメモリの製品寿命を延ばせるのです。また、重複排除や圧縮を行うことで、実際のSSD容量よりも多くのデータを格納することができるようになるため、SSDの容量単価をより低く抑えることにも寄与します。このこともエンタープライズ分野でのオールフラッシュストレージの普及を加速している一つの要因といえます。
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