池下設計は、1973年の創業以来、建築施工図に特化した高い生産設計技術・ノウハウを提供し、最新の3D CADやBIMによる3Dモデリングを積極的に活用する施工図業界のリーディングカンパニーだ。
そんな同社が、「業務の見える化」「システム開発・運用の負担軽減」といった課題を解決するために導入したのが「DataSpider Cloud」である。ここでは、課題の詳細、導入の経緯や理由、その効果について、同社のキーマン3人に話を聞いた。
建築施工図のリーディングカンパニーとして事業を全国展開
池下設計が設計を手掛けた建設物は、東京メトロ東西線浦安駅や造幣局研究棟、江東区深川スポーツセンターなど多数。現在は、施工図(生産設計)にとどまらず、生産設計の前段階である建築設計(意匠設計、構造設計、設備設計など)から、現場での施工管理(施工計画策定、工程管理、原価管理、品質管理、安全管理、職人の手配など)に至るまで、建設プロジェクトのあらゆるニーズに対応し、業界で唯一、事業を全国展開する企業となっている。
支店・事務所は札幌から福岡まで全国十数拠点にわたり、社員約670名のうち約480名が建設現場や建設会社のプロジェクト室に常駐で勤務するという体制だ。同社 代表取締役社長 池下 潤 氏は、業務の特徴について「建設物は設計図だけでは造ることができません。施工会社が施工できるように計画書や詳細な図面を作成することが必要で、その施工図を中心に事業を展開するのが当社です。全国のさまざまな現場に、設計・施工図の専門知識を持ったスタッフを派遣する業態でもあります」と説明する。
こうした事業の特殊性を受けて、業務システムは基本的に内製で開発されてきた。開発を主導しているのは池下氏本人であり、事業の成長や業務の変化に合わせて、必要な機能をパッケージ製品で補ったり、自らが手を動かしてシステムを改善したりしてきた。
「事業が拡大して社員も増える中、基幹システムのデータ処理や社員の情報共有の面で課題が生まれるようになりました。そこでクラウドを活用してデータ処理を効率化し、業務の見える化や会社と社員たち、そして社員同士の繋がりを強化しようとしたのです」(池下氏)
管理会計、システム運用の負担が大きな課題に
池下設計の社員は、先述のように全国の建設現場や建設会社のプロジェクト室に派遣されている。会社が大きくなるにつれ、それぞれの社員がどのような成果を挙げ、経営に貢献しているかが見えにくくなっていた。同社 総務部 システム課 小原 邦夫 氏はこう話す。
「勤怠管理・労務管理のシステムとしてSalesforceベースのアプリケーションを利用していますが、その機能だけでは不十分でした。契約形態や勤務体系は現場ごとに社員一人ひとり異なります。例えば、取引先、契約条件、勤務地、職権、単価、労働時間、諸手当といった条件から、それぞれの売上高を算出します。そのため月末に決算するまで、社員ごとの売上高や予算達成度などが把握できず、管理会計面からの課題が多かったのです」(小原氏)
売上高を算出するために作り上げたシステムは、精度を上げ、即時性を追求するほど運用の負担が大きくなった。池下設計の業務システムは、業務に関わる多種多様なデータを基幹データベースで一元的に集約し、Excelをフロントエンドにしてデータを集計、表示、操作するという仕組みだった。
プロジェクト管理や取引先管理、人材管理、管理会計といった基幹となるシステムのほかにも、社員から寄せられる問い合わせの管理システムや申請・決済などのワークフローシステム、PDF書類の閲覧システム、新卒管理システムなど、数十を超える業務システムがExcelアプリケーションとして存在している。
「Excelマクロ上にSQL文を書き、基幹データベースのSQL Serverに格納したデータにアクセスする仕組みです。マクロのメンテナンスや新規開発は、私が手を動かしていたこともあり、規模が大きくなるにつれ、ニーズに素早く対応できないケースも出てきました。そのため、連携を自動化して作業を効率化する必要があったのです」(池下氏)
GUIでデータ連携のスケジュール実行を容易に開発
こうした課題を抱える中、池下氏はあるテレビ番組を見てテラスカイとデータ連携ツール「DataSpider Cloud」の存在を知る。
「Salesforceに強みを持つ会社があって、既存システムとの連携を簡単に行えるソリューションもあわせて展開していることを知りました。すぐに連絡を取って詳細を聞くと、DataSpider Cloudが当社の課題をうまく解決できる製品であることがわかりました」と池下氏は当時を振り返る。
採用を決め、まずDataSpider Cloudで取り組んだのは、SQL Server上の基幹データベースとSalesforce上の勤怠管理システムとの自動連携だ。
SQL Server上の基幹データベースから、社員の人材データと取引先の法人データを10分ごとに抽出し、勤怠管理システムに送り込むスクリプトを作成。一方、勤怠管理システム側からは、勤怠データとプロジェクトデータを基幹データベースに戻し、集計して管理会計に活用できるようにした。さらに、これまではマクロに直接SQL文を書いてデータにアクセスしていたものを、DataSpider Cloudを使ってExcelとSQL Serverとを簡単に連携できるようにした。
「DataSpider Cloudを30分単位などで定期的に動作させ、SQL Server内のデータを再計算させています。これにより、これまでは月末にならなければ把握できなかった社員一人ひとりの売上高の把握が、月内にできるようになりました」(池下氏)
SQL Server、Salesforce、Excelとの連携が自動化されたことで、ほかのクラウドサービスとの連携もしやすくなった。例えば新たに開発したのが、G Suiteと連携して動作する「勤務地マップ」機能だ。
「社員がどの県のどこで働いているかを知りたいとき、勤務地リストから地図をクリックするとGoogleマップで場所を表示する機能です。新入社員が自分の勤務地の雰囲気をつかんだり、社員同士でその地方の情報を交換して盛り上がったりするのに一役買っています。社内で今、最も利用されている機能の一つです」(株式会社 池下設計 営業本部 本部長 小松氏)
DataSpider Cloudがもたらした3つの導入効果
DataSpider Cloudの導入効果は、大きく3つの観点から評価することができる。1つめは、業務の見える化が進み、社員一人ひとりの状況を正確に把握できるようになったことだ。
「社員の実績確認が代表例ですが、誰がどんな働き方をしているかが、Excelを開くだけでほぼリアルタイムにわかるようになりました。取引先の情報や社員の勤務先、そこで生まれているニーズなども素早く把握できます。データを活用して経営を行うという観点から、数字では表せない効果を生んでいます」(小松氏)
2つめは、システム開発・運用の負担軽減だ。これまでは内製化の強みを活かすことで、スピード感を持った経営を実現してきた。ただ、マクロ開発やメンテナンスは池下氏に頼らざるをえない面もあり、負担も池下氏に集中しやすかった。しかしDataSpider Cloud導入後は、GUIで簡単にスクリプトが作成できるため、その負担は大きく軽減されたのだ。
小原氏は「DataSpider Cloudは社内のさまざまなデータ連携で活用していて、これまでに作成したスクリプトは20本近くに及びます。マクロにSQL文を書くのに比べ、はるかに効率よく作業を進められ、保守性も向上しています」と、従来と比較して開発工数は数十分の一にまで短縮されたと話す。さらに、プログラミングの知識不要でデータ連携を実現できるため、池下氏でなくても、チームで開発・運用に参加できるようになったことも大きいと評価する。
3つめは、情報共有に向けた基盤の第一歩を踏み出せたことだ。勤務地マップが情報共有に一役買っているように、今後は、蓄積された技術情報などを、社員がどこからでも閲覧できるような仕組みを開発する予定だ。
「クラウドサービスと基幹システムをDataSpider Cloudを使って連携させることで、在宅勤務の勤怠管理や取引先との間のリモートワーク勤務などにもスムーズに対応できました。ITは経営の効率化と社員の意識共有に欠かせない武器です。今後はさらに社員同士のコミュニケーションを高め、池下設計としての意識共有を図りながら、お客様のニーズに対応していきます」(池下氏)
創業50周年を迎えようとする池下設計は、今後システム改善の取り組みをさらに加速させる方針だ。DataSpider Cloudはそんな同社を強力に支えていく。
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