アプリケーション開発や新規ビジネスの開始に必要な環境を、丸ごとクラウド上から提供するPaaS。しかし、実際にはIaaSやSaaSに比べて抽象的な概念ととらえられがちで、有効活用できていないケースもあります。

そこで、実際の事例をベースにしながらPaaSの活用方法をピックアップ。ビジネスの効率化と速度向上に貢献するPaaSの活用方法をご覧ください。

レガシーからPaaSへ移行でコストが軽減

製造業を営むあるメーカーは、巨大な基幹システムの移行先として、とある外資系企業が提供するPaaSを選択しました。

PaaSは新規ビジネスや小規模なアプリケーション開発環境立ち上げには適しているものの、巨大なレガシーシステムと化した製造業の基幹業務システムとして活用できるのかという疑問があったことは事実です。実際に、次期基幹システムの構想段階でPaaSは候補にすら入っておらず、オンプレミスで新たな基幹業務システムを構築するという流れが支配的だったといいます。

ただ、ここで直面したのが基幹業務システムの維持・メンテナンスにかかるコストです。業界有数のメーカーであっても、業務効率化やコスト削減の流れには逆らえず、巨大な基幹業務システムを適切にメンテナンスしながら運用していくためには、数年おきに膨大なコストがかかるという問題に直面しました。

しかし、PaaSをしっかりと知り、必要とされるシステムの規模から具体的な費用を算出すると、10年ないし20年単位ではPaaSを導入したほうが低コストになることが判明。クラウドは先進的なビジネスに適しているものであり、「旧来のビジネスを支える巨大な基幹業務システムには適さない」という先入観が覆されたのです。

また、災害時における事業継続性(BCP)の観点からみてもPaaSは有力で、規模が大きくなればなるほど、万が一の事態で威力を発揮するといわれています。

社内での新規ビジネス立ち上げリスクを低減

さまざまなWebサービスを開発、提供するある企業では、毎月のように新たなWebサービスをリリースしており、ユーザー数も順調に伸び続けていました。しかし、なかなか利益を出せる段階にまで到達せず、その原因を開発環境への投資であると判断したのです。

新サービスのプロジェクトが開始するたびに、サーバー・ネットワーク機器・OSやミドルウェアなどに投資をおこない、その投資を回収しきれていないサービスが散見されるといった状況に、PaaSの導入を決断。サービスごとに分散していた開発環境やインフラを、PaaSで1つに集約し、コスト削減にも成功したのです。結果、Webサービス全体のコストパフォーマンスが改善され、利益があがるようになったといいます。

Webサービスが巨大になればなるほど、バックエンドのコストは増大しがちですが、そのリスクを低減するための方法としてPaaSが活用されているのです。

巨大システムにもスモールビジネスにも対応可能

前述した2つの事例からもわかるように、PaaSは巨大なレガシーシステムとスモールビジネスの出発点の双方に対応可能です。また、行く行くはIaaSやオンプレミスへ移行する予定であったとしても、喫緊の課題をクリアするという目的でも用いることができます。その理由はイニシャルコストが圧倒的に安く、敷居が低いことにあるでしょう。

ビジネスの課題をクリアするための最適解としても、緊急避難先としても活用できるのがPaaSの魅力なのです。

クラウドサービスへの理解が突破口を開く

ビジネスの成功・成長に、ITやICTが欠かせない要素となって久しいですが、クラウドサービスの普及はその流れをさらに加速させているといえるでしょう。いかに効率化し、コストを安く済ませ、有事の際のリスク管理をしていくか。その答えがPaaSをはじめとしたクラウドサービスにあるのかもしれません。企業のシステム担当者やビジネスオーナーの方は、クラウドサービスへの理解を進めておきたいところですね。

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