ICTの要の一つとして注目されているクラウドは、IaaS、PaaS、SaaSというサービスを通して個人や企業のICT活用を促進しています。その勢いはとどまるところを知らず、2016年以降も大幅な伸びが期待されているのです。ではこれらクラウドサービスの市場規模は、一体どの程度のものなのでしょうか。今回は、国内外のデータをもとにクラウドの市場規模と今後の動向について解説します。

年間35%以上の成長率が予想される世界のクラウド市場

クラウドサービスはすでにICTの重要なプラットフォームのひとつであり、2014年ベースでその市場規模は約596億ドルに達しています。この数字は米ドル換算ですので、1ドル100円として計算すると(2016年8月時点)日本円にして約6兆円という金額になり、いかに巨大な市場化をうかがい知ることができるでしょう。しかもこの数字は年間35%以上のスピードで成長し、2018年には2000億ドル(約20兆円)規模にまで達すると考えられているのです。

その中でも特に注目を集めるのがSaaSの分野で、市場の約4割を占める800億ドル(約8兆円)に達すると見込まれています。SaaSはソフトウェアをクラウド上からミニマムに提供できる形式ですが、すでにBtoBの分野のみならずBtoCでも大いに活用されているため、要注目のサービスと言えるでしょう。特にゲームやエンタテイメントの分野ではSaaSを活用したサービスが続々と登場しており、世界の複数の地域でサービスが提供されているゲームは軒並みSaaS型のサービス形態をとっています。

また、BtoBではIaaSが堅調な伸びを見せると予測されており、ICTを活用したビジネス展開において、既にIaaSが無くてはならない存在であることを示唆していると言えます。

国内のクラウド市場規模と動向

前述したようにグローバルで高い成長率を誇るクラウドサービスですが、日本国内においても急激な市場規模の拡大がみられます。2014年、2015年のデータでは国内のクラウド市場はおよそ8000億円から9000億円規模と考えられていましたが、これが2019年には2兆円を超える規模にまで成長するとの予測があるのです。

特に専用のクラウド領域を設けて独自のICTサービスを実現できる「オンプレミス型プライベートクラウド」に対する需要は大きく、さらに今後はパブリッククラウドとプライベートクラウドの中間点とも言える「ホステッド型プライベートクラウド」が人気を集めることになるでしょう。ホステッド型プライベートクラウドはパブリッククラウドとプライベートクラウドの長所を合体させたサービスと言えるため、初期コストやランニングコストを抑えつつ、強固なセキュリティと柔軟なカスタマイズ性を両立させられるサービスと考えられているからです。IaaS型のパブリッククラウドも堅調で、自宅や会社にサーバーやネットワーク環境を構築する余裕がないという個人・中小企業にとっては低価格で安定したインフラ環境を手に入れられるサービスとして支持されています。

クラウドが登場するまで、ICTを使ったインフラ構築は、非常にコストがかかるものと考えられてきましたが、IaaS型クラウドサービスの普及によってその流れは一変しました。これは、資本金1000万円未満の企業のクラウドサービス利用率が平成24年末から25年末にかけて約1.4倍に伸びていることからもわかります。さらにクラウドサービスを利用した理由として、「設備や維持管理コストを抱えずに済む」「初期コストが安い」という理由が上位を占めていることから、コスト削減に奔走する国内企業の強い味方として支持される流れは、当分続くと考えて良いでしょう。

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