IaaSを提供している海外大手クラウドベンダーには、有名なICT企業が名を連ねています。日本の企業が海外ベンダーを契約相手として検討する場合、まず大手のサービスを軸にして選定プロセスを始めることになるでしょう。このような海外ベンダーの一般的な特性は、欧米系企業経営のニーズに応えるサービスが充実している点です。
欧米系企業経営に呼応するクラウドサービス
欧米の会社では一般的に株主の権利が強力で、経営陣は短期的なスパンでの業績改善と利益分配が求められる傾向があります。また、グローバルに展開する業態では、競争力を維持するためには意思決定のスピードが最も重視されると言われています。このような経営環境下で物理的なシステム構築を担うクラウドベンダーには、経営上の迅速な意思決定に対応した柔軟な業務システム構築力が求められます。
つまり、冒頭に触れた海外ベンダーが業界シェアを拡大させてきた事実は、その対応力の証左と考えてよいと思われます。さらに、海外ベンダーは情報公開に積極的です。まず、自社サービスのスペックを公開する詳細なドキュメントの配布が一般的です。さらに企業としてのマネジメントの信用度について、国際基準の認証を取得するなど、客観的な評価材料が提供されます。
このような特性を持つ海外クラウドベンダー比較の際のポイントは、「SLA」と「テクニカル・ホワイトペーパー」という公開情報への着目です。なお、国内ベンダーであっても、欧米系企業経営のニーズに応えるサービスを提供している意欲的な企業も数社存在しますので、比較対象にするとよいでしょう。
業者選定のポイント1 SLA
SLA(Service Level Agreement)とは、クラウドサービス利用者のサービス要求水準とクラウドベンダーのサービス提供範囲を明確にする文書のことです。SLAの最大のメリットは、どのようなサービスが提供されるのか(またはされないのか)が明文化され、判断基準が明確になることです。その効果としては、責任範囲と保証及び補償の対象についての当事者双方の齟齬が最小化されます。
特に業者選定時について言えば、利用者にとっては、提供されるサービスの具体的な内容が明示され、業者を比較する際の判断基準としての活用が可能となります。同様に、ベンダーにとっては、自社のサービスレベル情報の開示によって、競争優位性が担保される可能性があります。
なお、高品質のサービスレベルを維持するためには、SLAを定期的に更新する必要があり、SLM(Service Level Management)と呼ばれる管理手法による更改が推奨されています。
業者選定のポイント2 テクニカル・ホワイトペーパー
一般的なクラウドベンダーは、ホワイトペーパーを発行することで情報公開しています。ホワイトペーパーとは日本語で「白書」と呼ばれ、公開情報が掲載された公式報告書を指します。
ベンダー各社は総論的なホワイトペーパーに加えて、さらに技術情報(テクニカル・ホワイトペーパー)やセキュリティ情報(セキュリティ・ホワイトペーパー)に特化したドキュメントを作成・配布している場合がほとんどです。テクニカル・ホワイトペーパーには、提供するサービスの基本スペック、アップデート履歴と性能比較、各種統計データ、その他の詳細な技術情報が記載されています。業者選定の際には、このドキュメントの詳細な比較検討が必須となります。
海外ベンダー選定の際の特性とポイントは上述したものとなりますが、国内・海外を問わず、検討を始める前にまず自社の経営戦略から導出されたスペックを確定しておく必要があります。IaaSを導入するメリットを最大限に享受しようとすれば、コストパフォーマンスから考えて、その経営戦略の遂行に必要な業務改革との一体的な移行プロセスもあわせて検討すべきかもしれません。
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