1993年に著された『The One to One Future』(※1)では、顧客ロイヤリティと顧客生涯価値を高めるために“One to Oneの顧客関係の構築”――すなわち高度にパーソナライズされた体験が不可欠になると書かれている。実際に今日では、消費者はタイムリーで、適切かつ信頼できるパーソナライズされた体験を望むようになっている。

長年にわたり企業はこのOne to Oneの顧客関係を提供することに努めてきたが、実行は困難だった。なぜなら、テクノロジーやプロセス、人材といったすべての要素が課題になっていたからだ。

では、どうすれば企業はOne to Oneの顧客関係を構築できるのか。その答えはカスタマーデータプラットフォーム(CDP)のようなテクノロジーである。One to Oneの顧客関係を構築するには、顧客データを効率的に収集、整理、エンリッチメント、活用する必要があり、世界中の企業がその方法を模索している。そしてCDPはその実現を支援している。

その他にも、顧客データやCDPを重要視する要因はいくつもある。

今、顧客データとCDPが重要である5つの理由

現在、顧客データはあらゆるビジネスの中核となり、そのデータを活用するためにCDPは重要なシステムとなっている。その理由を5つ紹介しよう。

1.オンライン活動の増大で、リアルタイムな俊敏性と購買者のより深い理解が必要

新型コロナウイルス感染症の拡大も後押しし、従来の店舗における対面型体験に代わり、オンラインでの活動は増大している。そのため、企業やブランドは適切なタイミング、オファー、チャネルで顧客にエンゲージする方法を見出す必要性に迫られている。

そのためにはCDPを用いてデータの収集、一元化、活用を行い、最適な顧客体験を大規模に創出しなければならない。

2.データプライバシー規制は拡大。自社がどのような種類のデータを使用し、どのように収集しているかを把握することが重要

EUの一般データ保護規制(GDPR)は、企業が消費者データを収集する際のプライバシー規制の流れの始まりとなった。他国や米国の多くの州もこれに追随しており、世界規模でプライバシー規制の制定は進んでいる。

今後、企業は様々な国や地域のプライバシー要件を管理する課題に直面するだろう。コンプライアンスを維持するには、顧客のライフサイクルを通じてデータの使用許可を適切にセグメント化し、管理する能力が必要となる。これを実現しうるのがCDPである。

3.サードパーティCookieは徐々に失われつつあり、企業はファーストパーティデータ戦略の評価に目を向けざるをえない

Googleは同社のウェブブラウザChromeにおいて、サードパーティCookieのサポートを段階的に廃止すると発表。サードパーティCookieデータが失われると、企業活動には大きな影響が生じることになる。

そこで、多くの企業はCDPを活用したファーストパーティデータ戦略を採用する方向にかじを切っている。これにより、企業は購買者から直接顧客データを収集し、より信頼性の高い、適切な顧客体験を生み出せるようになるだろう。

4.顧客は適切な体験を期待している

2022年版 CDP最新動向レポート(※2)によると、「この1年でより重要性が増した」と答えた優先事項のトップ3のうち2つは、「顧客とのコミュニケーションをよりパーソナライズすること」「チャネルを横断してより適切な統一された顧客体験を提供すること」であった。つまり、適切なタイミングで適切な人に適切なメッセージやオファーを届けることは、企業の競争力と存在感を高めることにつながるのだ。

一方で、顧客データが不完全だったり古かったりすると、パーソナライズ戦略を実行することは困難になる。リアルタイムでデータを収集し、活用するためにはCDPが必要であり、CDPがあれば顧客が待ち望んでいる体験を創出できるのだ。

5.機械学習は大きな効果をもたらすが、データの品質に大きく依存する

機械学習(ML)は、サービスの解約を予測したり、購入する可能性がもっとも高いセグメント層を特定したり、患者に予防措置を推奨したりするのに役立つテクノロジーだ。

しかし、Dimensional ResearchAlegionの調査によると多くのMLプロジェクトは軌道に乗るまで苦労があるという。MLプロジェクトに取り組んでいる企業の80%が「プロジェクトが停滞している」と報告しており、96%が「データの品質、AI学習に必要なデータラベリング、モデルの信頼性構築などの問題に直面している」と回答しているのだ。

このような状況でこそ、CDPのメリットが発揮される。CDPはデータのクリーン性と相関性を確保し、AIがモデルごとに一貫したデータセットで学習することを保証するのだ。

CDPの活用には適切なプロセスと人材確保も重要

CDPの目的は、企業が顧客データのあらゆるソースをつなぎ合わせて、最適な顧客体験を創出できるようにすることだが、単なるマーケティングツールではない。

CDPは部門間のサイロをなくし、手作業による業務を合理化することで変革のための活用領域を広げるのに役立つ存在である。一方で、CDPのようなテクノロジーは道具の1つでしかないことも事実だ。テクノロジーの導入は変革の第一歩であり、成果を上げるには適切なプロセスと人材の確保も重要になる。

まず、人材については、社内外問わず、適切なスキルセットだけでなく適切なマインドセットを持つ人材を見つけることが重要だ。CDPを毎日使用する必要があるのは誰か、インサイトを得たいのは誰かを早期に特定することが必要だ。

また、プロセスもCDPの導入成功に重要な要素だ。組織が収集するデータの種類や保管場所、組織全体のデータの統合、部門横断的な分析などを明確化しなければならない。不要なことに時間をかけず、確実にビジネスに成果をもたらす価値の高いユースケースから始めるべきだろう。

  • CDPプロジェクトを始める際のチェックリスト

    CDPプロジェクトを始める際のチェックリスト

CDPのための5通りのチーム構成方法

具体的にCDP、特にTealiumのCDPがプライバシーと消費者の信頼を戦略的優位性に変える方法とはどのようなものだろうか。

効率的かつコンプライアンスに則ってデータを収集・利用するためには、マーケティング、IT、データ、カスタマーサクセスなど多くの部門を横断するコラボレーションが必要となる。顧客データ活用はまさにチームスポーツのようなものだ。

組織に適したチーム編成を選んでいただくために、CDPのためのチーム編成方法を5通り紹介しよう。

①データセンターオブエクセレンスとカスタマーデータ(CDOPs)チーム

データセンターオブエクセレンス(DCoE)は、組織が必要とするサービスの戦略、設計、人材配置、提供を大規模かつ専門に行うための中枢的な部門である。DCoEはカスタマーデータオペレーション(CDOP)によって9運営されており、すべてのビジネスユニット/ITユニットに直接的な価値につながるアウトプットを提供するものである。

企業によっては、データの収集・分析から意思決定、アクティベーションというモデルでチームやプロセスを構成することもある。このモデルでは、CDOPsチームメンバーが各カテゴリーに常駐する。こうしたチーム編成は、顧客データの大規模な導入を必要とし、俊敏性を保ちながらベストプラクティスの標準化に取り組みたい企業にとって最適なものである。

【チームの役割】
・チーフデータオフィサー
・CDPデマンドマネジメントリード
・データアーキテクチャディレクター
・CDPアーキテクト
・プロジェクトマネージャー
・CDPアナリスト
・データソースエンジニア
・CDP技術者

  • データセンターオブエクセレンスとカスタマーデータ(CDOPs)チーム(1)
  • データセンターオブエクセレンスとカスタマーデータ(CDOPs)チーム(2)

②データ主導のCDPチーム

多くの企業では、カスタマーデータプラットフォームの運用にデータ部門を選んでいる。このチーム編成で気をつけなければならない最大のリスクは、CDPで管理されているデータを実際に活用するチームからあまりにも離れてしまうことである。

もし、確立されたデータ部門があるなら、カスタマーデータチームをこの部門に集約させることを検討すべきだろう。最大のメリットの1つは、データユーザー間の緊密な連携を実現できることだ。また、熟慮されたデータ戦略の基盤があることで、ビジネス上の意思決定を促進することができる。

【チームの役割】
・データアナリスト
・データエンジニアリング
・データアーキテクト
・データサイエンティスト

  • データ主導のCDPチーム

③マーケティング主導のCDPチーム

マーケティング部門は、ROIの向上やターゲティングの改善などのために、CDPの導入を主導することが多い。マーケティングは優れたデータを活用する部門であり、CDPの責任がこの部門にあることは理にかなっているといえる。

マーケティング主導のCDPチームは、顧客体験を重視し、明確なユースケースを持つ強力なマーケティングチームがある企業に最適である。

【チームの役割】
・マーケティングマネージャー
・マーケティングアナリティクス
・マーケティングオペレーション(MOPs)チーム

  • マーケティング主導のCDPチーム

④IT主導のCDPチーム

人工知能(AI)や機械学習(ML)の取り組みを担当するIT部門にCDPを任せる場合もある。特にデータチームが設置されていない組織では、データチームはIT部門に配置されることになるだろう。

複雑な技術スタックを保有する企業や、熟考された技術スタックを重視し、相当数の統合作業を行う企業はこのモデルを検討することになる。IT部門がCDPチームを主導する企業は、マーケティング部門をAIや機械学習の取り組みから切り離さないようにする必要がある。

【チームの役割】
・機械学習エンジニア
・フルスタックエンジニア/開発者
・バックエンドエンジニア/開発者
・データセンターエンジニア

  • IT主導のCDPチーム

⑤製品主導のCDPチーム

製品が事業を牽引し、マーケティング部門やIT部門など他のチームがサポート的な役割を担っている場合、このモデルが効果を発揮する可能性がある。

複雑な製品群や革新的で先進的なソリューションを保有する企業は、CDPの所有権を製品部門に置くことを推奨する。これにより、ユースケースをビジネス全体の成長目標に合わせ、他のサポート部門にも浸透させられるだろう。

【チームの役割】
・製品責任者
・製品ディレクター
・CDPデマンドマネジメントリード
・CDPアーキテクト
・CDPアナリスト
・CDP技術者

  • 製品主導のCDPチーム

CDPチームを編成する際、CDPの経験者をチームに異動させたり、新たに社員として採用したりするのが理想的だが、必ずしもそれが可能とは限らない。いずれにせよ、チームを編成する際には、データを処理した経験があり、部門を越えて仕事ができ、コミュニケーション能力の高い候補者を探すべきだろう。

CDPの導入を成功させるためには、組織内に新たなコミュニケーション経路を開くことが重要な要素の1つだ。そのために必要な新たなコミュニケーション手法としては、たとえば「各部門の賛同者の確立と推進役を設ける」「全員の足並みをそろえ、成果を測定する」「役割と責任を明確に定める」「利害関係者への伝達手段を決める」などがある。

適切なチームこそ、顧客データとCDPの未来をつかむ

CDP導入の成功のカギは、適切な人材、プロセス、ユースケース、そしてチーム編成である。CDPの実装を支える適切なチームを構築できれば、CDPの未来の成功に向けたもっとも重要な第一歩を踏み出せるだろう。

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ダウンロード資料では、今回紹介した5つのチーム編成方法の詳細に加えて、その他のチーム編成方法についても紹介している。

CDP導入を成功に導くノウハウが必要であれば、ぜひダウンロードして一読してほしい。

全文はこちらからからダウンロード

※1参考:Don Peppers ,Martha Rogers「The One to One Future: Building Relationships One Customer at a Time」Crown Business ,1993
※2参考:「Adobe survey reveals link between brand trust and consumer buy-in」(Techday Australia)

※本記事はTealium Japan株式会社から提供を受け一部編集の上掲載しております。著作権は同社に帰属します。

Tealiumについて

Tealium(ティーリアム)は、ウェブやモバイル、オフライン、IoT などで増え続ける顧客データ管理の課題を包括的なアプローチで解決しています。Tealium の Customer Data Hub(カスタマーデータハブ)によって、企業は複数のマーケティングツールや部門でサイロ化した顧客データをリアルタイムに統合し、常に最新のデータを活用して、より綿密にパーソナライズされた顧客体験の提供や精度の高いデータによる意思決定を可能にします。

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