ネットギアの協力を得て、小規模企業がネットワーク環境を一新する企画の第5弾! これまでの連載で基本的なネットワーク構築について解説してきたので、今回からは周辺機器を使ってより充実したネットワーク環境を目指していきたいと思う。まずは、近年のモバイル環境に必須の無線LANの強化にぴったりの製品を試してみたので紹介しよう。
無線LANの困り事
無線LANを使っていて困る状況というのは大抵「電波が弱い」ということに集約されてくる。もちろん、物理的な故障や不具合といった類いではなく、周囲はちゃんと電波が拾えるのに、一部分だけ弱くなる、などといったケースだ。
もっとも多いのは無線LANが設置してあるフロアから隔たりのある場所。具体的にはドア越しや厚い壁があるようなケースだ。ビジネスユースの場合、フロアにある他の部屋や、壁が存在する会議室などは当然、弱くなる傾向がある。
筆者の事務所はワンフロアなので、実際には電波が弱まる場所はあまりない。唯一あるのが給湯室なのだが、ビジネス上で活用されることはないので、今のところ問題にはなっていない。しかし、将来のビジネス拡張で引っ越すことも考えられるので、今回の企画でぜひ試してみたいとネットギアにお願いしていたのだ。
みなさんの中にもSOHOスタイルでマンションの一室を自宅兼事務所にしている人もいるだろう。また、同じマンションの別の階にもう一部屋借りて、自宅と事務所を分けているケースもあると思う。実際に筆者の仕事仲間もこの手のスタイルを取っている人は非常に多い。そんな場合、無線LANが拾えない、なんてこともよくあるケースだ。最近では、打ち合わせの際にモバイル端末にデータを入れ、それを見ながらアレコレ思案するなんていうことも非常に多いので、繋がらないと仕事が進まないということも起こり得るだろう。
無線LANの拡張はエクステンダー or アクスポイント?
無線LANのカバー範囲を広くするにはいくつか方法があるが、大きく分けるとすれば「エクステンダー」と「アクセスポイント」のどちらかになる。簡単にいうとエクステンダーは、親機がカバーしている無線LAN範囲内に設置して、さらにエリアを拡大するというやり方だ。アクセスポイントは親機から有線LAN経由で接続し、そこへ新たな無線のエリアを設ける方法になる。
このほかにも単純に親機の出力を上げるといった方法もあるが、多くの無線LANデバイスはこれには対応していないので、現実的にはやはりエクステンダーかアクセスポイントのいずれかになる。アクセスポイントの設置はどちらかというと親機を二個置くようなものなのですぐにイメージできるだろうが、エクステンダーは無線同士をつなぎ合わせるようなイメージになるためピンと来ない人も多いと思う。
また、エクステンダーは親機の無線と絶えず交信するため、ケースによってはデータ通信が遅くなる可能性がある。しかし、LANケーブル無しで設置できるので、見た目は非常にすっきりするし、ケーブルの取り回しに悩むこともない。逆にいうと、アクセスポイントはシンプルで確実だが、LANケーブルを取り回しする必要があるため、場合によっては工事が必要になることもある。それぞれ一長一短なので無線LANの拡張を考える場合は、どういった使い方を想定していて、どういった準備が可能なのかをあらかじめしっかり見極めておくことが大切なのだ。
本稿で仮導入を行うワイヤレスエクステンダー(無線 LAN 中継機) EX6100 |
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メーカー型番:EX6100-100JPS br>規格:2.4GHz/5GHz 802.11 ac/n/a/g/b 対応 br>スピード:433Mbps(5GHz) / 300Mbps(2.4GHz) br>ギガビットイーサネットポート:1 br>アクセスポイントとして利用:○ br>コンバーターとして利用:○ br>設置:コンセント差し込み br>サイズ(mm) 122×74×38 br>重量:213g br>無償保証:1年間 br>ネットワークの状況や使用環境、使用するパソコンの性能などにより、表示のデータ転送速度が異なる |
WPS対応なら簡単セッティング
今回紹介するNETGEAR「802.11ac 対応 433 + 300 Mbps ワイヤレスエクステンダー(無線 LAN 中継機) EX6100」(以降、EX6100)は、エクステンダー、アクセスポイント、あるいはルータとしても使える万能中継機になる。今後さらに需要が増えるであろう802.11acに対応しているため、特にスマートフォンやタブレットPCなどが混在する環境で威力を発揮する製品だ。
エクステンダーやアクセスポイントとして使うには、もちろん親機が必要。NETGEAR製品と相性がいいのはもちろんだが、他の製品とも連携できる。キモはWPSに親機が対応しているかどうかで、対応していれば本体のボタン操作のみですぐ使えるようになる簡単セッティングが魅力だ。それではまず、エクステンダーとして使用してみよう。
まず始めにEX6100を親機のエリア内のコンセントに挿してみよう。EX6100は形状を見れば分かるように、背面がAC100Vのコンセントとなっているので、そのまま差し込むことができるようになっている。要するに受電と省スペースを一気に実現するナイスボディなのだ。場所を決めたら電源スイッチを入れるとフロントパネルの右上インジケーターが緑に光るはず。もし、赤く光ったらエリアから遠すぎるか、エリア外ということになる。ちょっとした機能に見えるかも知れないが、設置場所選びにも役立つ優れものだ。
次に右側面にある切り替えスイッチを「Extender」にセットする。さらに電源ボタンの横にあるWPS用のボタンを押せばフロントパネル右下の下段にあるインジケーターが明滅する。すかさず(本当は2分以内)親機へ駆け戻ってそちら側のWPSボタンを押せば、お互いに無線を通じて見つけ合い、最終的にセッティングまで自動で済ませてくれるのだ。
基本的にこれで問題無く使えるのだが、例えばSSIDを変えたいとか、子機名を変えたいという場合はマニュアルにある「NETGEAR genie かんたん設定」を実行すればいい。EX6100はデフォルトで2.4GHz帯と5GHz帯両方に対応しているので、ワイヤレスデバイスからみると、「EX6100NETGEAR2GEXT(もしくはNETGEAR2GEXT)」「EX6100NETGEAR5GEXT(もしくはNETGEAR5GEXT)」として表示される。
5GHz帯に対応していないデバイスには2GEXTの方しか見えていないと思うが、いずれにしても用途に応じて好きな方を選べばよい(普通は速いほうが良いと思うので、5GHz帯が使えれば5GEXTの方を選んでおこう)。ちなみにWPSによって自動設定されているので、最初のパスワード(SSID)は親機のものが引き継がれている。アクセス時に混乱しないようにしていただきたい。
また、EX6100は2種類の帯域が使える通常モードに加えて、ワイヤレスデバイスとEX6100、EX6100と親機、それぞれ異なる周波数帯を使う「FastLaneテクノロジーモード」が搭載されている。電波の特性上、ひとつの環境で実証しても再現性がないのでここでは取り上げないが、より速度を求めたいケースなどではセッティングが詰められるので便利な機能だ。
便利なエクステンダーと安定のアクセスポイント
準備が完了したので、さっそくエクステンダーとしてEX6100を使ってみた。まず指標として、以前も紹介したルータとして導入した「NETGEAR Nighthawk」のベンチマークを測ってみる。ちなみにワイヤレスデバイスにはiPhone 6 Plusを使用した。
結果はご覧のとおり、親機はさすが5GHz帯の高速アクセスを実現。続いて、エクステンダーとして使っているEX6100へ回線をつなぎ替えてみると…… やはり想像していたように、通信速度は遅くなってしまった。仕組みとして帯域を分け合うように使うのでこれは仕方の無いところ。だが、5GHz帯に接続しているので、ある程度の速度は確保できている。大容量ファイルをダウンロードしたり、負荷の高いネットワーク処理をさせない限りは不満がでるレベルでは無いだろう。
続いてEX6100をアクセスポイントに設定してみる。現実的にやることは電源を落として切り替えスイッチを「AccessPoint」にセット。あとは簡単なセキュリティセッティングをして、親機が接続されているネットワークに繋がるよう、LANケーブルで接続すればいい。この辺はマニュアルさえ読めば誰でも分かる簡単さなのだが、実際にはコンセントとLANケーブルが取り回せることができる場所選びが一番の問題になるはず。その点でいえば、コンセントがある場所に挿すだけでセッティングできるエクステンダーのほうが断然フットワークは軽い。
アクセスポイントとしてのEX6100は、「NETGEAR Nighthawk」とほぼ同等の通信速度を保ってくれている。こちらも結果は画像で判断していただきたいが、速度と安定度ではやはりこちらが有利だった。ネットワーク越しに親機を増やしていくようなイメージになるため、物理的なケーブルの取り回しや電源の確保ができるのであれば、こちらのほうが間違いないのも先刻承知といえる。
実際にセッティングしてみるといろいろなことが見えてきた。もちろん、「筆者の事務所で試した場合」という前提がつくのだが、想像していた通りの結果が出たのは面白いところだ。みなさんもこれらの結果を参考に、自社のネットワーク環境にはどのような形態の拡張方法があっているか、実際に試してみてはいかがだろう。
新規ネットワーク機器(予定)
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