■事例先企業情報
企業:株式会社NTTスマイルエナジー
所在地:大阪府大阪市中央区北浜2丁目6番18号 淀屋橋スクエア4階
ウェブサイト:https://nttse.com/
■ご利用のSnowflakeワークロード
・データウェアハウス
■このストーリーのハイライト
・膨大なIoTデータの活用促進
・ビッグデータに誰でもアクセスできる環境の実現
・SDGsに貢献する発電量予測の基盤構築
太陽光発電システムの遠隔監視サービスを展開する株式会社NTTスマイルエナジーにとり、各施設のIoT端末が収集する膨大なデータ活用は大きな課題であり続けてきた。Snowflakeのデータクラウドは誰でも即座にデータにアクセスし分析が行える環境を実現し、新サービスへのデータ活用の促進など、企業文化を大きく変えることに貢献。今後は、発電量予測の精度向上などを通し、SDGsが掲げるエネルギーミックスにおける再生可能エネルギー割合の拡大に貢献する取り組みの基盤として活用を進める考えだ。
課題:商用システムへの影響の懸念もありIoTデータの活用がなかなか進まない
気候変動問題が深刻さを増す中、太陽光発電は、世界的なカーボンニュートラルの動きに大きな役割を果たしている。NTT西日本とオムロンの合弁企業である株式会社NTTスマイルエナジーは、AI・IoTや制御技術の活用を通し経済効率性の向上に取り組んできた。その代表が2011年の設立以来、提供を続ける太陽光発電の遠隔監視サービス「エコめがね」である。かつて太陽光発電はメンテナンスフリーと考えられてきたが、経済効率性の観点では早期のトラブル発見が大きな意味を持つ。東日本大震災後のエネルギー政策を受け、太陽光発電が急速に広まる中、発電設備を遠隔監視する同サービスは広く受け入れられ、今日まで家庭用を含む低圧太陽光遠隔監視のパイオニアとして市場を牽引し続けている。
発電状況や売買電量を見える化し、トラブル検知時にはアラートを送信する同社には、日々IoTセンサーから膨大なデータを収集している。遠隔監視を行う太陽光発電は、現在約8万設備。エコめがねのデータベース(DB)に格納されるデータ量は、サービス開始からの10年間で70億レコードに及ぶ。すでに供用しているサービスに留まらないデータ利活用は長年、同社にとり大きな課題であり続けてきた。価値づくり本部 エコめがねラボリーダーの橋岡 正明氏はこう説明する。
「実は70億レコードというのは当社が収集するデータのごく一部に過ぎず、DBに格納できない情報は膨大な量に及びます。ストレージの制約が大きいプライベートクラウドで運用していた時代はそうした情報は捨てるしかありませんでしたが、Amazon Web Services(AWS)に環境を移行したことで蓄積することが可能になりました。DBに格納されたデータはエコめがねサービスとしてお客様へ発電量等の監視情報を可視化し提供していま すが、商用系以外の活用が実施出来ない状況でした」(橋岡氏)
その背景には、10年にわたり運用してきたDBの構造的な問題があった。
「我々エコめがねラボは、サービス向上に技術的見地からアプローチすることをミッションにしています。そのためにはデータ分析が極めて大きな意味を持ちますが、商用系と共用するDBのデータ取得には細心の注意が必要です。特にエコめがねのDBの場合、最適化に課題があったこともあり、高負荷なSQLクエリを発行すると商用系への影響が懸念されました。そのためクエリ発行はDB構造を熟知しているエンジニアが行うほかなく、本来業務と兼務する関係上、データ抽出作業の優先度も下がり、結果としてタイムリーなデータ活用が実施出来ないという状態が続いていました」(橋岡氏)
現実問題として、DB構造を知るエンジニアは社内に数名しかおらず、それが活用の大きな足枷になっていたという。
解決策:クラウド環境にDWHを構築誰でも安全にデータ分析が行える環境を整える
この問題を解決し、データ活用を推進するには、データウェアハウス(DWH)に代表される新たなデータ活用基盤が不可欠だった。しかしDWHの運用には専門的知識が必要になることが一般的であるため、結果としてこれまでと変わらない運用が続くことも懸念された。そのジレンマの中、価値づくり本部 エコめがねラボ 担当部長の林田 悠基氏が出会ったのがSnowflakeだった。
・数分かかっていたクエリ処理が数秒に短縮
「日本進出前の2019年にラスベガスで行われたAWSのイベントで展示に触れたことがSnowflakeとの最初の出会いでした。展示スタッフからまもなく日本でもサービス提供を開始すると聞いたこともあり、これは期待できそうだと感じました」(林田氏)
では、林田氏がSnowflakeに期待する理由はどこにあったのだろうか。
「その理由は二つあります。Snowflakeはクラウドネイティブで、私たちが当時AWS上に構築したいと考えていたシステムとの親和性が高かったことが第一の理由です。もう一つの理由は、サービスが階層化され、クエリ処理を仮想ウェアハウスで行うSnowflakeであれば専門的な知識がなくてもデータ分析が行えそうだと感じられたことです。クラウドDWHは以前にもいくつか個人的にトライアルしてみましたが、多くの場合、運用にはある程度の専門知識が必要でした。しかしSnowflakeであればこの問題が解決できると考えました」(林田氏)
その後林田氏は、日本に上陸したSnowflakeのセミナーなどでさらに情報を収集。その後AWS環境構築に定評があるクラスメソッドの提案に基づくトライアルを経て、SnowflakeによるDWH構築に取り組むことになった。全国に約8万設備あるIoTセンサーのデータは当時、生データに近い状態でAmazon S3に蓄積され、サービスに必要なデータについてはAWS上に構築したエコめがねのDBに格納するという形で運用していた。それらの中から分析に必要と思われるデータをETLで抽出してSnowflakeに送り、そのデータをBIツール「Tableau」で分析することが新システムの基本的な考え方だ。ETLにはクラスメソッド社が提供するデータ統合基盤「CSアナリティクス」を採用。自社環境におけるテスト運用を2021年4月から1ヵ月行った上で、同年5、6月に既存データ移行とSnowflake上でのチューニングを行い、7月には本格運用を開始している。
「システム構築で特に注意したのは、Snowflakeにデータを転送するタイミングの設定でした。ストレージから抽出するデータは日次で1200万レコードに及びますが、データ分析のユースケースを考えると、当日朝9時までに前日データの移行を終了させる必要があります。当初非常に心配した部分でしたが、毎日朝6時からアップロードを開始する設定によりまったく問題なく運用を開始できています」(橋岡氏)
また既存データ移行で橋岡氏が驚かされたのが、Snowflake独自のデータ格納による圧縮効果だった。
「移行対象データは850GBでしたが、Snowflakeにロードすると150GBに圧縮されたことに驚かされました。また以前はクエリ処理に5分前後かかることも珍しくありませんでしたが、移行後はわずか数秒でデータ抽出が終えられるようになっています。データ抽出時間が短縮できたため、分析結果をもとにさらにデータを深掘りしていく作業に、シフトできるようになったことは非常に大きいですね」(橋岡氏)
結果:IoTデータの深掘りもスムーズにその環境が社内の意識改革につながる
Snowflakeのプラットフォームは、誰もが思い付いたとき自由にデータ分析が行える環境を実現した。現時点において、その効果としてまず挙げられるのはデータ活用に対する社内の意識の変化だ。現在、橋岡氏を中心に有志によるDWH活用が進む一方、経営層の意識改革にもSnowflakeは大きな役割を果たしている。
「これまでのように間に人が介在するのではなく、気づいたときすぐにデータにアクセスでき、Tableauで分析できるようになったことのインパクトは大きいですね。また経営層からは以前からデータ活用を進めたいという声が上がっていましたが、なにをどう活用したいのかつかみ切れていませんでした。現在はビジュアル化されたデータを定期的に届ける環境と社内のデータ分析メンバーによる活動によって、経営層のデータに対する意識も大きく変わりつつあるように思います」(橋岡氏)
また林田氏はSnowflakeのコスト面のメリットをこう評価する。
「今回は、これまでないものをゼロベースから作り上げたこともあり、比較は難しいのですが、Snowflakeの場合、ウェアハウスのサイズを設定できることもあり、運用コストについてはかなり圧縮できていると考えています。当初我々はDWH運用コストを数十万円と想定しましたが、現実にはその1/3〜1/4のコストによる運用が実現できています」(林田氏)
将来:地域の電力リソース活用に向け データ価値化とその共有を目指す
エコめがねのデータ分析で大きな成果が期待される項目の一つが、より確度が高い発電量の予測だ。
「太陽光発電は天候に大きく左右されるため、エリア別の発電実績の分析は費用対効果を検証する上で大きな意味を持ちます。発電量の予測精度を高めていくことが今後の課題の一つです。その一例が機械学習の活用で、大量のデータを使い、定量的に学習できる環境が用意できれば大きな成果が期待できます。今後は、機械学習による予測精度向上もSnowflakeのワークロード活用を積極的に検討していきたいと考えています」(林田氏)
国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)でも、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーの利用促進が掲げられているが、そこで大きな役割を果たすのが、地域の電源リソースとしての活用だ。そのためには発電量に応じた機器の制御をはじめ、今後解決すべき課題は少なくない。
「太陽光発電を地域の電源リソースとして利用する上では、エコシステムにおける情報共有が不可欠です。実はDWH導入には、情報共有の基盤づくりという狙いもあります。Snowflakeによる価値あるデータの活用、さらにはデータシェアリングの実現は、今後求められる持続可能な社会の実現においても大きな意味を持つと考えています」(林田氏)
持続可能な社会に再生可能エネルギーが果たす役割は大きい。Snowflakeのプラットフォームは、その情報共有基盤としての活用も期待されている。
Snowflakeは、Snowflakeのデータクラウドを用い、あらゆる組織が自らのデータを活用できるようにします。お客様には、データクラウドを利用してサイロ化されたデータを統合し、データを発見してセキュアに共有し、多様な分析ワークロードを実行していただけます。データやユーザーがどこに存在するかに関係なく、Snowflakeは複数のクラウドと地域にまたがり単一のデータ体験を提供します。多くの業界から何千ものお客様(2021年7月31日時点で、2021年Fortune 500社のうちの212社を含む)が、Snowflakeデータクラウドを自社のビジネスの向上のために活用しています。詳しくはsnowflake.comをご覧ください。
※本記事はSnowflakeから提供を受けております。
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