正直、どんな仕事をしているのか想像しにくい半導体業界。ビジネスマンでさえそうなのだから、学生にとってはなおさらだろう。しかし、半導体業界は、これからますます盛り上がり、かつ働きやすい「狙い目の業界」でもあるのだ。
2018年12月12〜14日の3日間、東京ビッグサイトにて、世界最大級の半導体展示会「SEMICON Japan 2018」が開催される。会場では、学生に半導体業界を知ってもらうイベントである「未来COLLEGE」も開催される予定だ。
そこで本記事では、半導体分野の将来を担う若手ビジネスパーソンを通して、仕事の内容や働きがいを紹介する。半導体業界がよく分からない方も、なんとなく興味がある方も、参考にしていただければ幸いだ。
半導体業界に勤める「半導体男子・半導体女子」とは
そもそも半導体業界で働く人たちはどんな人なのか。SEMICON Japan 2018の主催であり、業界全体の発展を推し進めるSEMI JAPANの協力のもと「半導体男子・半導体女子」としてまとめた。
半導体は、世界中の先端技術に使われている。必然的に、仕事のフィールドは世界に広がり、先端技術の情報も頻繁に耳に入るようになる。また、専門性が高そうだからといって、出身学部に偏りがあるわけではない。さまざまなバックボーンの人が活躍しており、興味があるなら誰にでも働きがいを見出せる業界だ。
この業界は、研究家肌の人が多いためか、プライベートでも好きなものを突き詰めていく人も多いようだ。ホワイト企業と呼ばれるワークライフバランスがしっかりしている企業が多い業界なのも、プライベートを充実させている人が多い要因の一つだ。
とはいえ、これはあくまで半導体男子・半導体女子の全体の傾向にすぎない。実際に半導体業界で働く若手ビジネスパーソンに取材してきたので、次の章で彼女らの生の声をお届けする。
海外で学んだことを、日本にフィードバックしたい
グローバルに発展する半導体業界では、日本にとどまらず海外で活躍できる機会も少なくない。半導体製造装置の専門メーカー・SCREENセミコンダクターソリューションズのプロセスエンジニアとして、現在海外の研究機関に駐在する入社5年目の小森香奈さんに、プロセスエンジニアの仕事や、海外での研究生活、そしてこれからのキャリアプランについてうかがった。
次世代の半導体デバイスを実現する、プロセスエンジニアの仕事
──現在どんなお仕事をしているか、簡単に教えていただけますか?
プロセスエンジニアとして、弊社と共同開発の契約を結んでいるimec(アイメック)というベルギーの研究機関で、プロセスの評価をしています。
プロセスの評価というのは、具体的にどんなお仕事なんでしょうか?
今後想定される半導体デバイスを製造するために必要であろうプロセスを、弊社の装置を使ってimecと一緒に評価していくのが仕事です。
今後、求められる半導体デバイスがどんどん微細化するにつれて、構造や部材の変化が起こります。たとえばFET(導電率を制御するトランジスタ)が、今まではフィンと呼ばれる魚のひれ状だったものから、ナノワイヤーという細いチューブを並べたようなものに置き換わったりします。そうした場合に従来の製造方法では対応できない部分が出てくるので、そこをどうやって処理していくかというプロセス技術を開発しています。
──次世代の半導体デバイスを作るために欠かせないお仕事なんですね。小森さんは、もともと半導体業界でプロセスエンジニアの仕事をしたいと思って入社されたんでしょうか?
いえ、私はもともと大学では化学専攻で、半導体とは全く関係のない研究をしていました。なので半導体の知識ゼロでこの会社に入ったんです。もともと専攻していた化学は、今の仕事に使える部分もありますが、全く関係のないところもありますね(笑)。
プロセスエンジニアになった当初は、化学専攻ということもあって、装置開発のサポート的なことをする面が多いのかなと思っていたんです。ところが実際に仕事をしてみて、プロセスエンジニアは装置を作る上でまず必要なプロセス条件を決める、とても重要な仕事なんだなというのを実感しました。
──今、仕事をしていて、特にどんなところにやりがいを感じますか?
今自分が評価しているプロセスが、数年後にお客様に採用されるかもしれないというところですね。未来に役立つと思うと、そこがすごくやりがいにつながって楽しいです。
ベルギーでの研究生活
──小森さんは現在、ベルギーの研究所で働かれていますね。日本にいた時と比べて、どんなところに違いを感じていますか?
日本では先輩と一緒に評価をしていたのですが、今は基本的に一人でimecの研究員と向き合って評価をしていくという点がまず違いますね。日本とは違い社内ですぐ相談できる人がいないこともあり、プレッシャーはかなり感じています。日本にいた時はひたすらビーカー評価をするようなことが多かったのですが、今はimecと一緒に評価をさせていただく中で「半導体ってこういう風に作られていて、こういう部分が弊社の装置で対応できる部分なんだ」と、全体を見られるようになったと感じています。
──なるほど。会社の外に出ることで、今までよりも半導体製造工程の全体を見渡せるようになったんですね。働き方については、日本と海外とで違いはありますか?
日本人は「働きすぎ」とよく言われると思うのですが、確かに海外の方は日本人に比べてオン・オフの切り替えがとてもしっかりしている印象です。私自身は日本人なので海外に行っても働く時間は変わらないのですが(笑)。
──ベルギーでの食生活はいかがですか? 日本食が恋しくなったりはしませんか?
はい、恋しくなります(笑)。でも、向こうでも日本食は食べようと思えば食べられますね。ベルギーに行って1年半ほどたつのですが、中心部にはチョコレート屋さんとワッフル屋さんが山ほどあるので、甘いものには困らないです。あとはフリッツ(フライドポテト)も名物で、ソースの種類がたくさんあって、どこのお店が一番おいしいとかのランキングもあるみたいです。
──ベルギーはビールも有名ですよね。
そうですね、私はあまり飲めないんですけど、ビール好きにはたまらない最高の国だと思います。一緒に研究している仲間は、食事にいくとひたすらビールを飲んでいますね。imecには研究者として学生から50代の同僚までいるので、幅広くいろんなことを話せるようにと思っています。
これからの目標 ―海外での経験を日本にフィードバックしたい
──御社の女性社員の割合はどれくらいでしょうか?
半導体業界の中でも薬液メーカーなどに比べると、弊社のような装置メーカーは女性がかなり少ない方だと思います。ただ、最近よく「女性が活躍してない会社はダメだ」みたいな風潮があると思いますが、当の女性本人はそこまで気にしていないのかなぁと思います。個人的な意見ですが。先輩社員にも女性はいますし、女性だからということで働きにくさを感じたことはないです。
──性別を気にすることなく、やる気のある人が活躍できるのはいいですね。小森さんが将来こうなりたいという姿があれば、お聞かせいただけますか?
いつかは結婚して子供も育てながら仕事をしたいなと思っています。結婚して子供が生まれてからもずっと働き続けている先輩がいるので、そういう部分では弊社は働きやすいのかなと思います。
──未来の自分の姿に重なる先輩がいるのは心強いですね。お仕事の内容については、これから目指していることはありますか?
半導体の動向は日本にいるとなかなかわからない部分も多いので、海外で働いた経験を今後いかに日本へフィードバックして、成果につなげられるかということを考えています。あと1~2年で日本へ戻る予定なので、海外での経験で得たことを活かして、日本でも引き続き評価の仕事をしていきたいです。
──では最後に、これからエンジニアを目指す方や半導体業界に興味を持っている若い方へ向けて、メッセージをお願いします。
私自身が半導体のことをほとんど知らないままこの業界に入って、苦労したこともありますが、知らないからこそ楽しいと感じたこともたくさんあります。なので、分野外の人でももっと興味をもっていただけたらいいなぁと思っています。
半導体女子Topics!!
ベルギーで甘いものを楽しみながら、半導体業界の未来を支えている小森さん。インタビューでも、プロセスエンジニアが、製品を生み出すプロセスそのものを評価するとてもやりがいのあるお仕事であることが伝わってきました。海外での生活をポジティブに楽しむ姿勢を持っているからこそ「知らないからこそ楽しめる、やりがいを感じることができる」のでしょう。
2018年12月12〜14日の3日間、東京ビッグサイトにて、世界最大級の半導体展示会「SEMICON Japan 2018」が開催される。会場では、学生に半導体業界を知ってもらうイベントである「未来COLLEGE」も開催される予定だ。ご来場いただいた学生の方へのプレゼントとしてQUOカードも用意しているので、日本の、そして世界の最先端技術を支える業界に興味がある方は、この機会に、是非とも足を運んでみてほしい。
[PR]提供:SEMI JAPAN