三菱電機は家電から宇宙関連まで幅広い製品を世に送り出す、日本を代表する総合電機メーカーだ。産業・FA分野でも高いシェアを誇っており、このうち工作機械においては、ユーザー先の工場で稼働する機械の状況をインターネット経由で把握し、生産現場を支援するリモートサービス「iQ Care Remote4U」(アイキューケア・リモートフォーユー。以下、Remote4U)を提供している。このサービスで、Secomeaの産業用ソフトウェアIoTゲートウェイ「SiteManager EMBEDDED」が活躍している。
導入前の課題 | 導入後の効果 |
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加工機のリモートサービスを海外に広げていきたいと考えていたが、グローバル展開に対応できなかった。また、スマートフォンなどモバイル端末を接続することもできなかったため、活用の幅が狭かった | 安全性が高く、手軽に導入できるため、グローバル展開が加速した。また、モバイル端末をセキュアに接続できるようになり、顧客に利便性をもたらす新たなサービスの提供につながった |
客先の工場で稼働する機械の状況把握に感じていた課題とは
三菱電機のFAシステム事業では、各種産業用途で使われる工作機械(レーザ加工機・放電加工機)やロボット、機械を動かす駆動・制御機器などさまざまな製品を開発製造している。総合電機メーカーの強みを活かし、研究段階から自社開発しているのが大きな特徴だ。
FAシステム事業は名古屋製作所を拠点に展開しているが、このなかでレーザ加工機、放電加工機などについては2021年4月、さらなる事業推進を目的として名古屋製作所敷地内に産業メカトロニクス製作所を新設した。レーザ加工機は金属の板を切断したり、穴を開けたりするための工作機械で、身の回りで金属板が使われるさまざまな製品の製造工程で利用されている。一方の放電加工機は金型を作るのが主な用途で、こちらは自動車、スマートフォンなど多種多様な製品の部品を製造する際に用いられる。
同社では以前から、ユーザー企業に納入した加工機の稼働情報や故障時のデータを収集することで、点検・修理等のサービス品質を向上できないかと考えていた。産業メカトロニクス製作所でレーザ加工機の設計開発に携わる高田浩子氏は、従来の課題をこう説明する。
「点検や修理の問い合わせは電話で受け付けていたのですが、電話を通じてお客様に機械の状況を調べていただくのは難しく、三菱電機メカトロニクスエンジニアリング(以下、MMEG)のサービス担当者が出張対応して確認しなければならないケースも多かったため、問題箇所を把握できるまで長い時間がかかっていました」
稼働状況やメンテナンス状況をリアルタイムに収集できれば、この課題を解決してサービス品質を高められることに加え、顧客の生産性向上にも寄与できる。そうした発想で2016年、同社製レーザ加工機を対象にスタートしたのがRemote4Uだ。
グローバル対応とセキュリティでSecomeaに注目
Remote4Uは、機械の稼働状況やアラーム情報などを離れた場所から確認できるダッシュボード機能、機械で発生したトラブルの原因をリモートで診断するリモート診断機能の2つの機能を提供する。Remote4Uの名称の由来は、Unified(生産・保守におけるさまざまな情報の結合)、Update(最新化された情報)、Universal(全世界どこでも利用可能)、Useful(ユーザーに役立つ)の4つの頭文字に、“For you”の思いも込めたものだ。
翌2017年には放電加工機でもサービスを開始し、国内のユーザー数を増やしていった。加えて、Remote4Uは海外ユーザーへの拡大も視野に入れており、当初の計画では、この年はグローバル展開の検討時期とされていた。しかし、グローバル展開にも対応している新たなリモートアクセスソリューションが決まらない状況だった。最終的に「国内も海外もひとつのベンダーの製品で実現したい」(高田氏)との方針により、比較検討の結果、採用したのがSecomeaのソフトウェア版IoTゲートウェイ 「SiteManager EMBEDDED」だ。
Secomeaに着目したのは、グローバル展開できることに加えてセキュリティがポイントだったと、高田氏は語る。
「インターネット接続を実現するうえで、セキュリティはやはり最も重要な要素。Secomeaは国際的な安全性認証を取得していますし、当時、VPN機能でモバイル端末の認証機能を持つソリューションもほかにありませんでした。セキュリティを基準に選んでいったら、自然とSecomeaにたどり着きました」
実は同社のほかの事業部門ではすでにSecomeaのハードウェアを利用しており、高田氏も存在自体は知っていたという。加えて、Secomeaなら容易に接続できるためスピーディーなグローバル展開が可能なこと、さらにはサポートが優れていたことも採用の大きな理由になった。
「一般的にこうしたソフトウェアは、導入先で手取り足取りリードしないとなかなかうまく接続できないのですが、Secomeaは中国でも欧州でも先方が自前で簡単に立ち上げられたので、その手軽さも高く評価しました。ソフトウェア版を選んだ理由は、ハードウェア版では 現地で設置作業の手間があるため、導入するならソフトウェア版という前提で考えていました」(高田氏)
保守対応の現場でも効果を確認し、今後の拡大を目指す
リモートアクセスの切り替えに先立ち、2019年、まずはSecomeaのLinkManager Mobile機能を利用し、放電加工機のモニタ画面をユーザーがスマートフォンからリアルタイムに確認できる「加工ビューア」機能の提供を始めた。この機能はユーザー(オペレータ)から「加工の進捗状況を詳細に把握するため、加工機のモニタ画面を直接見たい」というニーズがあり、それに応えて開発したという経緯がある。放電加工機のRemote4Uの企画設計に携わった堂森雄平氏は次のように振り返る。
「以前のリモートアクセス製品はスマートフォンに対応できなかったため、リモートアクセスをSecomeaに切り替えることを前提に、先行導入して「加工ビューア」機能を設計・リリースしました。この経験があったため、加工機への導入もスムーズにいきました」
「SiteManager EMBEDDED」の加工機への組み込みは予定通り進み、2020年4月、レーザ加工機・放電加工機での同時切り替えが実施された。コロナ禍のさなかではあったものの、中国、欧州と展開は進んだ。2022年には韓国やASEANへの展開も予定している。
「加工機をグローバル展開している国に、Remote4Uも同様に拡大していきたいと考えています」(堂森氏)
Remote4Uの運用を担っているのがMMEGである。レーザ加工機を担当する厨川元裕氏は、Remote4UがMMEGにもたらすメリットをこう語った。
「お客様の加工機のモニタ画面を遠隔で確認できるので、電話のやり取りで起きがちだったミスコミュニケーションが無くなりました。また、対応時間を短縮できることはもちろん、遠隔でデータを取れるので、サービス担当者が現地に赴いて原因分析を行う時間も削減でき、効率化を実感しています」
一方、MMEGで放電加工機を担当する渡辺祐基氏も「機械の操作方法がわからないという問い合わせについても、加工機のモニタ画面を共有しながら会話できるため、お客様と弊社コールセンター担当、双方間のコミュニケーションがスムーズになりました」と話す。いずれにおいても、「SiteManager EMBEDDED」のセキュリティの高さで安全・安心が高まっているようだ。最後に高田氏が今後の展望を語った。
「Remote4Uはこれからもお客様の生産性を上げ、収益向上に貢献できるシステムを目指し、改良を続けていきます。Secomeaには今後のグローバル拡大はもちろん、Remote4Uの高度化の点でもさらなるサポートを期待しています」
[PR]提供:Secomea