ラクーンが8月25日より提供を開始した海外向けBtoBマーケットプレイス『SD export』には、これまで海外との取引きがほとんどなかった企業や、様々な事情で限定的にしか行っていなかった企業も数多く参加している。SD exportをきっかけに海外向けビジネス拡大へ乗り出したのには、どんな理由があったのだろうか。4つの企業の代表者に、海外向けビジネス展開への意気込みと、SD exportへの期待を語ってもらった。

これまでのEC販売と『スーパーデリバリー』

今回お話をうかがったのは、いずれも従来からラクーンのBtoBマーケットプレイス『スーパーデリバリー』に出店しており、今回のSD exportにもサービス開始前から参加を決めた4つの企業の代表者の方々。はじめに各社の業種とこれまでのECへの取り組みを聞いた。

幅広い年齢層に向けた帽子のデザイン・製造を行う並木伸好デザインルームの統括部長 奈良隆嗣氏。少人数のため人的負担を考えてEC販売には踏み出しかねていたが、スーパーデリバリーは入り口のハードルが低く、システム的にも簡単だったので参入を決めたという。

奈良氏「使いやすいプラットフォームが出来上がっていた感じです。始めてみると思った以上に反響が大きく、遠隔地のお客様からもご注文をいただいています」

(左)並木伸好デザインルーム 統括部長 奈良隆嗣氏、(右)スーパーデリバリー上の「並木伸好デザインルーム」販売ページ


独自に企画・開発した文具や紙製アクセサリーをオンライン販売しているハイモジモジは、代表の松岡厚志氏と奥様のお二人だけで運営する企業。自社サイトで小売をしながら、スーパーデリバリーと問屋経由での卸売も行う。

松岡氏「人出は足りていないのですが、商品を"語る場"が必要なのでオンラインはむしろ拡充していこうと思っています」

(左)ハイモジモジ 代表 松岡厚志氏、(右)スーパーデリバリー上の「ハイモジモジ」販売ページ


瀬野三孝氏が代表取締役社長を務めるプレステージは、女性向けのアパレル企業。以前は別の卸売専門サイトを利用していたが、そちらが閉鎖された際にスーパーデリバリーへ移った。BtoCも一部で出店していたが、競合の多い中でどうしても大きなブランドに注目が集まってしまい、難しさを感じているそうだ。

瀬野氏「スーパーデリバリーでは一度買ってくれたお客様に電話や訪問で営業したり、商品マップを送付するなど、リアル側の取り組みも並行して行っています。ネットを介してはいても、人間と人間ですから」

(左)プレステージ 代表取締役社長 瀬野三孝氏、(右)スーパーデリバリー上の「プレステージ」販売ページ


ジムは原宿に本社・店舗・倉庫を持つメンズニット国内大手。代表取締役社長の三浦秀輝氏によると、BtoCではいち早くオンラインストアを持ち、現在も順調に運営しているという。スーパーデリバリーは決済の仕組みが整っていることで、新規の取引先でも与信を気にする必要がなくなり、相手側もキャッシュよりは余裕ができるため、双方にメリットがあると考えて参加した。

三浦氏「長年営業しているうちに口座数が膨大になっているので、その管理だけでも大変。ゆくゆくはそれらをこちらに集約させたいという思いも、実はあります」

(左)ジム 代表取締役社長 三浦秀輝氏、(右)スーパーデリバリー上の「ジム」販売ページ

海外取引きの難しさを知るから分かる、SD exportの価値

今回ご参加いただいた4社は、SD exportへもサービス開始前から参加を表明していた。近年、日本製・日本企画製品の需要の高まりを感じていながら、海外企業との継続的なビジネスには様々なハードルがあり、各社とも独自にやっていくことは困難だと考えていたそうだ。海外向けビジネスの現状についてお話をうかがった。

奈良氏「現在は台湾・韓国と取引がありますが、売り上げ全体に占める比率は高くないわりに、輸出手続きや梱包、取引きに関する打ち合わせなどで時間がかかっています。シーズン物で年に1、2回しか輸出しないので、書類の作り方も毎回調べ直したりして。それでも、展示会では明らかに海外のお客様が増えているし、百貨店のオーダー会でも旅行中の方がオーダーしてくださるなど、海外からのニーズが高まっていることは皮膚感覚で感じています」

松岡氏「よく海外から商品を扱いたいというメールが来るんです。その度に、あいさつ一つでもどう書くのが適切かと悩んだり、返信するのがとても大変で、もっと簡素化したいと思っていました。ある商品のライセンス契約を米国の企業と結んだのですが、まあ大変でしたね。最後は弁理士さんにも頼んで、1件で半年ほどかかりました。気持ちは海外に向いているけど、実務が追いついていなかった感じです」

瀬野氏「10年前くらいから台湾や香港のお客様が店にいらっしゃって、現物在庫から仕入れていくことが度々あり、台湾のあるチェーン店さんとは正式に取引を始めましたが、先方の東京出張所に送る形だったため輸出手続きが必要になるような取引は経験がありません。最近も月に1度くらいは直接仕入れの方が見えたり、中国のネット業社さんから商品を掲載してくれないかと勧誘があるなど、出せば売れるという感じはあります」

三浦氏「海外に商品を出してはいますが、商社経由や国内で円決済できる取引先だけです。今、原宿のテナントや路面店ではすごくインバウンド需要があって、売り上げの3割くらいを占めるほどの状況です。フィレンツェで開催されるピッティ・ウオモという世界的な見本市に出展した時も非常に反応が良く、海外のマスコミからも取材を受けました。ただ、それをきっかけに商談を進めたものの、契約で定めた前金が振り込まれなかったり、サンプルを送った後に連絡が途絶えるといったケースが多くて、難しいなと思いました」

ニーズがあると分かっていても、言葉の壁、輸出手続きの煩わしさ、そして決済手段が障害となっていたことが異口同音に語られた。こうした課題がシステム的に解決されれば安心して取引ができる。参加企業にとってSD exportの最大の魅力はそこにあるようだ。

三浦氏「海外から問い合わせがあれば、ここを使ってくれと紹介できるので助かります。決済も心配しなくていいし、見本市で一度商品を見てもらえば、あとは写真でも判断してもらえると思います」

松岡氏「まさに、お待ちしていましたという感じです。スーパーデリバリーに出品中の品に『海外配送する』を設定し、素材と重量を入力するだけなので、こんなに楽なことはないです」

SD exportで商品が売れた時、企業が行う作業はいくつかのオンライン上の操作と、品物を埼玉県にある物流倉庫へ送ることのみ。海外向けの書類作りや輸出手続き、国外配送の手配などは一切必要ない。人的な負担を心配していた奈良氏は、「現在国内向けの取引で行っている作業に、何もプラスすることなく海外に広げられる」と歓迎する。商品ページの翻訳は自動的に行われ、個別のやり取りが必要な場合には低価格で翻訳サービスを利用することも可能だ。「輸出手続きの煩わしさや外国語対応は、自前ではできないと思っていました」という瀬野氏も、この内容ならばと参加を決めたという。

SD exportの正式オープンを前に、各社ではコーポレートサイトの英語対応やSD exportへの誘導、製品タグで「日本製」を分かりやすくしたり、来季から手頃な価格の国内製造品を増やすといった海外向け施策を進めているそうだ。これまで各種の問い合わせやインバウンド需要に対応した経験、見本市などで得た海外顧客からの反応が、その足掛かりとなっている。

海外市場に寄せる期待

国内市場では競合になる同業他社も、SD exportでは海外へ向けて共に場を盛り上げていく仲間となる。三浦氏は競合が数社なくては百貨店も売り場を設けなくなる、とカテゴリが充実することの重要性を述べた。同様に、松岡氏は国内の小規模な文具メーカー数社が「ベンチャー文具」という名で商業施設への出店や催事を行っていることに触れ、集まることでできることがあると述べた。

また、海外市場の可能性は物量的なことばかりではないようだ。奈良氏は「取引先が南半球にも広がれば、シーズン性の高い商品を一年中回していけるのではないか」と期待する。瀬野氏は「将来的にはSD exportの見本市のような、大きな仕掛けに伸びていけるといいですね」と、リアルも含めて広つながりが生まれることに期待を寄せる。

高齢化・人口減が見えている日本国内の市場が縮小傾向にあることは確実だ。しかし、今回お話をうかがった各社ともそれをただマイナスととらえて海外へ出るのではなく、これまでに経験した取引きや店舗・見本市での反応から海外市場の可能性を確信してSD exportという場を活用する道を選んでいることが印象的だ。品物の価値だけでなく、積極的な姿勢それ自体が生み出すマーケットプレイスの価値も、必ず海外から評価されるものになるだろう。

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