アパレル・雑貨を中心としたeマーケットプレイス『スーパーデリバリー』などを運営するラクーンは、8月25日よりスーパーデリバリーの海外版『SD export』の提供を開始した。商品を展示する場になるだけでなく、税関手続きやインボイスの作成といった一連の輸出業務から代金回収までを代行し、中小企業にとっては難しかった海外の顧客との取引をサポートする。
現在、「インバウンド」や「越境EC」といった言葉で国外BtoCマーケットの成長が注目されている中、『SD export』が対象とするBtoBにはどんな可能性があるのか。サービスの内容や開発の背景について、同社代表取締役社長 小方功氏にお話をうかがった。
ECビジネスの勘所は実業にあり
小方氏は大学卒業後、会社勤めを経て1993年に起業。海外雑貨の輸入などを行いながら徐々に規模を拡大し、3年かけて株式会社化した。その頃から小方氏が関心を持っていたのが「流通」だ。中でも特に面白いと注目したのが、アパレルと雑貨だという。
小方氏「アパレルは小売ベースでいうと10兆円産業なのですが、この規模の業界としては珍しく、2割3割というシェアを持つ巨人がいないんです。非常に新陳代謝が激しく、栄枯盛衰があるために効率化が進んでいない。同じ流通でもコンビニのように科学的に機能する業界がある一方で、私はむしろそういう混沌とした業界にチャンスがあると思っています」
小方氏はそのチャンスをBtoBに見出した。個人向けECの市場規模が急速に拡大する中にあって、アパレルにおける無店舗販売は小売全体の1割程度に過ぎない。残りの9割を扱っているのは全国の小売店。つまり、小売店を顧客にすることが最も大きな市場を相手にすることになる。その発想から誕生したのがファッション・雑貨の卸/仕入れサイト『スーパーデリバリー』だ。しかし、ただ物を並べてショッピングカート機能を付ければビジネスになるというわけではない。
小方氏「ECはある日突然生まれるものではなく、元々誰かが手作業でやっていた作業を仕組み化することでできるものです。ITが分かっても、実業を熟知していなくてはクォリティの高いサービスを作ることはできません。そこにそのビジネスの成功の勘所が存在するからです。スーパーデリバリーはBtoBのECなので、ヒントは"問屋"にありました」
800年の歴史を持つという日本の問屋は、商品を市場に繋ぐ「営業」・物を運ぶ「物流」・売り掛けを保証する「決済」という三つの機能を持っており、これは海外の中間流通業にはない特徴だと小方氏は語る。スーパーデリバリーはメーカーや小売店に新たな取引機会を生み、受発注の作業を効率化し、代金回収までを代行する。問屋が担う機能をオンラインで仕組み化し、効率よく、より広い取引を可能としたものだ。
同社では社員が積極的に中小企業の経営者や小売店の担当者などとつながりを作り、現場の課題や商習慣に触れることを徹底して行っているという。安全で効率的な掛け売り決済を提供する『Paid(ペイド)』や、受注・発注をクラウドで一元管理できる『COREC(コレック)』など、現場の業務を的確に支えるサービスを提供できるのもそうした基盤があるからだ。
では、同社が新たに開始するスーパーデリバリーの海外向けサービス『SD export』は、どんな課題に挑んだのだろうか。
輸出のハードルを"仕組み"で低くする
以前よりスーパーデリバリーには海外から取引についての問い合わせが多数寄せられていたが、これまでは日本語対応・日本国内受け取りが可能な小売店・企業に限り取引を行ってきた。インターネットにより情報が縦横無尽に流通するようになった現在も、現実にモノを輸出することは中小企業にとって高いハードルが存在となっているからだ。
小方氏「正式に海外企業との取引を行うなら、まず英文の取引契約を結び、売買が成立したら相手側が発行したL/C(信用状)の通知を受け、インボイスなどの書類を添えて輸送業者へ品物を渡し、税関への輸出申告を経て出荷します。L/Cを現金化するには、それを通知した銀行に輸送業者から受け取ったB/L(積荷証券)を持って行かなくてはなりません」
大幅に簡略化してもこれだけの複雑な手続きが必要になる。スーパーデリバリーにおける取引条件を日本語対応・日本国内受け取りに限定してきたのもそのためだ。だがその条件の中でも、スーパーデリバリーにおける国外企業との取引規模は過去4年間で約3倍に増加したという。加えて、越境ECにおけるBtoCの市場規模拡大や円安傾向による輸出の伸びなどからも、海外での日本商品のニーズが高まっていることは確実だ。
こうしたニーズに応え、かつ国内企業が輸出に当たって抱える問題をクリアするべく開発されたのがSD exportだ。
小方氏「SD exportでは、流通専門企業であるディーエムエス(以下、DMS)と提携することで、商品保管・管理から出荷まで物流に関する全ての業務と輸出のための手続きを代行できるようになりました。輸出側の企業様はSD export上で注文処理を行い、埼玉県にあるDMSの倉庫まで専用伝票を貼って品物を送るだけで全ての輸出業務が完了します」
簡単に聞こえるようだが、過去にこれを成功させた企業はない。国によって貿易に関する法律が異なり、その中でも商品のカテゴリや金額によって輸出入に関する条件が細かく決められている。仕組み化するためには、複雑な条件が絡み合う問題をある程度標準化しながら、システム面・運用面、またはその連携で解決しなくてはならない。そのためにどの程度までコストをかけられるかという面も、安定的な運用のために重要な判断だ。
海外販売におけるもう一つの大きな課題が、代金の回収だ。これもスーパーデリバリーと同様にSD exportが代行するため、企業にとっては国内取引と同じ感覚で、安心して海外販路を開拓できる場所となるのだ。
実務を知るからこそ、信頼できる場所を
スーパーデリバリー出展企業のうち、約半数がSD exportのサービス開始前から参加意欲を示している。海外との取引経験がない企業や、過去に試みたが何らかの理由で断念した企業も少なくないそうだ。輸出業務や決済以外でもやはり不安な点は残り、大きくは「問い合わせなどへの外国語対応」と「PL(製造物責任制度)に関する賠償案件」に関するものだという。
小方氏「英語のコミュニケーションに関しては、企業様の管理画面に英文テンプレートを用意し、複雑なやり取りに関しては翻訳会社との専用契約で格安プランをご利用いただけます。PL保険に関しても参加企業様全てに無料で包括契約を結んでいますので、安心してお取り引きいただけます」
また、取引後の不安としては「破損、返品」への対応の難しさがある。これは、「配送事故に関する返品や交換の対応についてはSD exportが対応する」という体制になっているため、企業側が返品や交換のためのコストを負うリスクを心配する必要がない。不安要素を徹底的に検証し、合理的に解決していくサービス設計も、実務を熟知したラクーンならではだと言えるだろう。ECは情報の行き来だけで済むサービスではなく、現実に品物と資金が行き来する実業のマーケットだけに、確かな経験に基づく信頼性の高さが何よりの価値となる。
マーケットプレイスが整えば、そこで取り引きされる品物本来の価値が市場を活性化させていくことになる。ジャンルを問わず日本製や日本企画の製品を世界のニーズに合わせて展開していきたいと語る小方氏。海外で人気の高まる日本の伝統工芸品に注目し、地場産業の組合と連携するといった具体的な取り組みも行っている。SD exportを新たな舞台にどんなビジネスが育って行くのか、注目したい。
(マイナビニュース広告企画:提供 株式会社ラクーン)
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