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国内でも3,000社様近くにご利用頂いている同社から、切削加工および射出成形品を効果的かつコスト効率良く設計し、材料を選択するためのアドバイスや提案をお伝えします。

多くの樹脂パーツにはコーナー(角)が多く採用され、形も鈍角や鋭角など様々で、機能上や安全上の理由により設けられるものなどがあります。射出成形で製造されるパーツでは、そのコーナーが不具合の原因になる場合があるため、コーナーへのR付けは様々なリスク(変形・剛性不足・ヒケ)の軽減や回避ができる可能性があります。また、コーナーRはパーツの用途に応じ、必ずしも考慮する必要はありませんが、Rを考慮せず一度射出成形用金型を製作してしまうと、後からの修正は非常に困難な場合があるため、一般的には設計段階から用途に応じて設計することで、強度を保ちつつ製造効率を向上させるなど、バランスのとれたパーツ製造が可能となる場合があります。

補強を考慮したコーナーR

例えば、下図Aの青色のコの字をした樹脂パーツの製造を考えた場合、コーナー部分にR付けがないと応力が集中してしまい、破損する可能性があります。コーナーRを設けた場合、応力集中による割れ防止や凸部の欠け防止などに効果がある場合があります。また、全くコーナーRが設定できない場合などは、ほんの少しだけでも設けることでパーツを離型しやすくしたり、同時に金型側でも補強策となる場合があります。コーナーRの設定は、強度確保や破損防止のみであれば、単にRを可能な範囲で大きく設定してしまえば良いですが、R付けで厚肉になった部分のヒケや機能上の問題も懸念されますので、それらを考慮したバランスの良い適切なコーナーRを設定することが望まれます。

応力を考慮したコーナーR

コーナーのR付けは、樹脂の流れ方にも配慮することで、さらに不具合を低減できる場合があります。樹脂は複雑に入り組んだ金型内部を高温・高圧で流れる際、樹脂配向、肉厚、圧力、温度などにより、各部の収縮の仕方が異なるため、冷却固化時に応力を緩和しきれず、成形品に応力が残留してしまいます。また、ガラス繊維の入った樹脂の場合には、その繊維の向きにより、繊維なしの脂よりも顕著になる傾向があります。そのため、力が加わったときや薬品・溶剤付着、経年により応力が開放され、ヒビ割れなどを起こすことがあります。そのような用途の場合には、さらに残留応力を軽減させることに目を向ける必要があります。

一般的な対策として、パーツの用途・機能を損ねないよう充分に考慮し、肉厚が均一になるよう、できる限り大きなRを各部に設けることで樹脂がスムーズに流れ、樹脂の配向・厚肉による収縮差で発生する応力を緩和できる場合があります(図B)。また、コーナーエッジを少なくすることで成形品の離型性が良くなり、パーツ突き出し時に発生する応力を低減できる場合もあります。補強のコーナーRと組み合わせて設計することをお勧めいたします。

安全性を考慮したコーナーR

冒頭でも少し述べましたが、安全面からでもコーナーRは重要な要素となります。例えば、自動車に関しては保安基準というものがあり、安全に運行させるためのルールですが、その中に外部突起規制というものがあります。主な内容は自動車と人が衝突・接触した際に人への危害を最小限に食い止めるものです。ご存知の通り、自動車の外装品にはライト、バンパー、グリルなど多数のプラスチックパーツが使用されており、各部品はその基準に従って設計・製造されています。例として前照灯の透明なレンズカバーに関しては、人との衝突対策としてコーナー部には、ある程度の丸みを設けなければならないなどのルールがあります。この場合では、コーナーエッジによる危害、衝突時の応力集中による破損部分での危害などを想定した規定内容を、設計段階から考慮する必要があります。すでに市場で見られる製品はこのような厳しい基準をクリアするだけではなく、デザイン性や強度、他の部品との嵌合性が確保された樹脂製品となり、適切なR設定が強く要求されるケースとなります。

補強のリブでさらなる強度UPと変形の抑制

前項までは樹脂部品の構造上の強度確保、応力対策についてコーナーRの重要性を説明させていただきましたが、ケースによってはR付けのみでは対応し切れない場合があります。例として箱型のような樹脂製品の場合には、使用される樹脂にもよりますが、ほとんどの場合、側面が内反りしてしまいます(図C)。理由として、やはりコーナー部には成形プロセスで発生する応力の影響を大きく受けることによります。コーナーRを設けることで、いくらかは改善の見込みはありますが、変形を抑制する形状がなく、特に長く、高い壁形状などは強度もそれほどないため、狙った効果が現れないことがほとんどです。肉厚を増やして強度を確保する方法も考えられますが、ヒケや過度な収縮、気泡の発生、重量の増加といった懸念材料もありますので、あまり良くない方向性と考えられます。

これは設定可能な場合に限られますが、対策として変形する方向に対し直交するようにリブを設定することで比較的変形を抑えられる場合があります(図D)。これは倒れてくる壁を支えるつっかえ棒の役目を果たします。また、応力対策として補強リブ周辺にもコーナーRを設けることで、一連の懸念事項に対しても有効になる場合があります。リブの厚みの設定はヒケなどを考慮する必要がありますので、むやみに厚くできません。プロトラブズでは推奨される肉厚について「樹脂部品設計ガイド」の樹脂の種類と推奨肉厚ページおよび肉厚の均一化ページでご紹介しておりますので、是非ご覧ください。

今回ご紹介しました内容は、様々なケースに応用が可能で、プロトラブズの短納期射出成形サービスをご利用いただくことで、その効果も比較的早く確認することが可能です。コーナー部に可能な限り適切なRをつけることは非常に手間がかかるかもしれませんが、射出成形では事前に製造性・性能を見越した解析や検証内容、経験者からのアドバイスを盛り込むことが肝心であり、重要な位置付けとなります。

ご参考:

CNC旋盤加工パーツ設計ガイド
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本コラムは、プロトラブズ合同会社から毎月配信されているメールマガジン「Protomold Design Tips」より転載したものです。

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