ICTを駆使した独自のデジタル マニュファクチャリング システムにより、カスタムパーツの試作から小ロット生産をオンデマンドかつ画期的な速さで受託製造するプロトラブズ。
国内でも3,000社様近くにご利用頂いている同社から、切削加工および射出成形品を効果的かつコスト効率良く設計し、材料を選択するためのアドバイスや提案をお伝えします。

射出成形でも他の製造プロセスと同様に、特有の設計ガイドラインの適用が必要になります。そのガイドラインに沿った最適な方法でパーツ設計をすることで、充分な構造上の強度を持ち、表面の仕上がりも綺麗なパーツ、そしてそれらのパーツを使った製品を実現することができます。以下に示すのは、射出成形パーツを製造する際に問題となる典型的な外観不良と、それらの問題を避けるコツです。

ヒケ

ヒケは成形されたパーツの表面に現れる緩やかな窪みです。一般的に適正な肉厚よりも厚すぎる、パーツの肉厚が不均一である、あるいは不適切なゲート位置がその原因になります。ポリプロピレン(PP)やアセタール(POM)をはじめとする、いくつかの樹脂はヒケが生じやすい一方、ガラス繊維などを含有した樹脂の場合にはヒケが生じにくい性質があります。樹脂の種類に応じた推奨肉厚についてはプロトラブズのWebページに公開していますので、ご活用ください。また、金型内部での樹脂の流動方向は、可能な限り肉の厚い部分から薄い部分へ流れるよう考慮し、適切なゲート仕様・肉厚などを設定することでヒケを防止できる可能性があります。

反り

使用する樹脂の適切な厚みと比較して薄すぎるパーツは、反りが発生してしまう可能性がありますが、一般的な肉厚のガイドラインに沿って設計することで、ある程度対策することができ、ヒケ対策と同様の方法となります。またガラス繊維含有の材料は、樹脂の流れに沿った繊維配向により、繊維が向いている方向とその直行方向とで収縮差が異なることで反りが発生しやすくなります。対策としては、薄肉部分を補強するガセット(補強用の板形状)やリブ構造を設けることが、比較的有効な方法となります。

左図は設計形状、右図は変形後を示しています

  • 図1・・・最も肉厚が大きい形状部分にヒケが発生することを示しています。
  • 図2・・・肉厚部位があることで反りの懸念があることを示しています。
  • 図3・・・肉厚の部位を適正な肉厚を確保しつつ、肉抜きすることで最適な成形に繋がることを示しています。

バリ

射出成形で製造された様々な樹脂・ゴム製品などをよく観察すると、製品の外周に沿って細い線を見つけることができます。これをパーティングラインといい、2つの金型の合わせ目に現れる継ぎ目の線です。 そのパーティングラインに沿ってペラペラしたバリが付着している場合があります。エラストマーやフィラーのないナイロンのような粘度の低い樹脂の場合には、ごく少量の樹脂が金型のパーティング面の隙間に入り込み、パーティングラインに沿って微小なバリが発生する場合があります。また、ドーナツ形状などで製品最外周部分がR形状や自由曲面などで構成されている場合は、パーティングラインを設定するうえでほとんど選択の余地はありません。四角い形状の場合、角形状(ピン角)が多く設定されている場合があり、この角部分を上手く使用することでバリが目立ちにくいパーティング面を設計できたり、パーティングラインの繋ぎ目を目立たなくするなど、製品の見栄え向上に繋がります。プロトラブズではそれらを踏まえ、製品製造性を考慮した最適なパーティングラインを確保するため、事前に形状変更を提案させていただく場合があります。その際にもプロトラブズのオンライン双方向見積りシステムProtoQuoteにて迅速かつ明確に内容をご確認できます。

ウェルドライン

時と場合により、射出成形パーツ上に毛髪の太さ程のひびにも見える細い線が現れることがあります。気になることがあるかもしれませんが、これは割れやひびではありません。これらは成形時に、金型内部の形状により一度分岐した樹脂の流れが再合流する際に発生するウェルドラインというものです。ウェルドラインは、製品に設けられた開口形状の周辺に発生しやすく、主に見栄え上の懸念材料となります。また、ネジの締結部などの大きな応力がかかる部位にウェルドラインが発生している場合は、パーツがネジの締め込みなどで破損する可能性があります。このような場合には、穴の外周に沿ってリング状に増肉することで補強したり、ウエルドラインの位置をずらすために、あえて製品肉厚を変動させるなどの手法が考えられます。

パーツ表面の仕上げ処理

プロトラブズの表面仕上げの選択肢の一つ「PM-F0(低コスト仕上げ・切削したままの面)」では、パーツ表面のツールマーク(工作機械による切削加工の痕)を残したままの処理があります。「PM-F0」で成形されたパーツを確認した後、パーツの外観レベルを向上させたいということになった場合は、費用は上がりますが、金型を手仕上げで磨くという選択が可能です。大部分のツールマークを除去するPM-F1という仕上げ、鏡面を伴った一層滑らかなSPI-A2という仕上げ処理なども選択できます。その他のオプションとして、ビーズブラストによるシボ加工も承っており、肉厚の厚い部分、ウェルドライン周辺を除き、ムラの少ないマット仕上げなども可能です。なお、深くて細い穴のような形状や見切りのない形状、複雑に区分された仕上げエリアなどは、磨き処理やブラスト処理が困難な場合があり、各仕上げ工程が納期に影響を及ぼすことにご配慮ください。プロトラブズの射出成形では、7つの仕上げオプションを用意していますので、ぜひご確認ください。

かじり

適切な抜き勾配の設定は、スムーズな金型設計・加工に欠かすことのできない条件です。垂直な立ち壁面、つまり金型の抜き方向と平行に設計されている面は、最低でも0.5度、可能ならば2度、深いシボがある場合には5度以上の抜き勾配を推奨します。適切な抜き勾配がない場合は、金型からパーツの取り出しの際、表面に引っかいたような擦り傷が発生するなど、大きな離型抵抗により製品の突き出しが困難であったり、最悪の場合、金型からパーツが全く取り出せないなどの重大なトラブルを引き起こす可能性があります。抜き勾配でお悩みの場合は、お気軽にプロトラブズのカスタマーサービスのエンジニアにご相談ください。

ゲート痕

ゲート痕は成形後にパーツから、カッターやニッパーなどを使用してゲートをカットした所に残り、小さいですが見栄えに影響します。ただ、ゲート痕は射出成形を利用する限り、どうしても残ってしまうものです。 一般的な対処法として、目立たなく外観上問題のない場所にゲート痕が来るように、パーツの配置・設計を考慮する必要があります。例えば、「自由の女神」のプラモデルであれば、ゲート設定は女神の脚の裏にすることが見栄えの観点で好ましいでしょう。ゲート位置は非常に重要なチェックポイントで、カスタマーサービスのエンジニアへの相談項目として必須で、使用する材料とパーツの形状に応じた様々なゲート仕様から最適を選ぶことができます。

ジェッティング、ゆず肌(肌荒れ)など

射出成形するうえで様々な問題への対策が必要となります。そのうちのいくつかは、冒頭にもある肉厚に関連することで、厚過ぎる肉厚は以下のような問題に繋がることがあります。

  • 蛇行したような流動痕が残るジェッティング(ジェットフロー、くねくね模様)が、特に肉厚のあるゲート付近に残されることが特徴で、厚肉パーツに発生する成形不良です。
  • パーツ表面にゆず肌が現れることがありますが、これもキャビティ内の転写不良やガスに起因するもので、不均一な肉厚部分に発生しやすいです。
  • 材料の流動方向に銀白色の条痕が現れるシルバーストリーク(銀条)は、高い湿度や劣化した樹脂を使用したことが原因となる他、射出成形機のスクリュー速度が使用樹脂に対し最適でないことで発生した、せん断力が原因となることもあります。
  • ゲート付近で樹脂が曇ったようになってしまう白化現象は、樹脂の充填速度が適切でないことが原因の一つとして挙げられますが、製品形状やゲート位置によっても問題となることがあります。

異なる樹脂を検証したいという場合は、同じ金型で複数種類の樹脂を成形するといった対応もします。また成形性を解析した結果はアップロードしていただいた3D CADデータに対して平均3時間、無料、3D図解付きで回答していますので、画面を見ながらカスタマーサービスエンジニアと摺り合わせ確認をしながら、満足できる外観のパーツを製作することができます。

全社50,000以上の金型を製作してきたデータと経験豊富なエンジニア、最先端のICTを駆使した短納期システムにより、試作・小ロット生産のスピードアップをサポートします。

ご参考:

CNC旋盤加工パーツ設計ガイド
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本コラムは、プロトラブズ合同会社から毎月配信されているメールマガジン「Protomold Design Tips」より転載したものです。

これまでの連載「ものづくりを強くする-Protomold Design Tips-」はこちら >>

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