工業デザイナーとして数々の受賞作品を生み出してきたアダプトの代表である戸松真也氏が、建築現場の人との何気ない会話から生み出したのがネジホルダー「ビットドレス」です。すでに世の中に類似製品は存在していたものの、なかなか現場で使いやすいものがなかったのが現実でした。そんなネジホルダーを、戸松氏が再定義し、アイデアの実現の鍵になったのが、プロトラブズの液状シリコーンゴム(LSR)射出成形でした。
課題
■小ロットであってもコストを抑えたシリコーンゴム成形品の実現
■射出成形の専門家でなくても実現可能な成形性を考えた設計
■コストを抑えつつも、品質も信頼できる製造委託先の発掘
解決
■プロトラブズのLSR射出成形を試作パーツ製造に活用
■3Dデータのみで見積り可能なProtoQuoteで成形性検討も同時に実現
■すべて自社内で製造を完結するプロトラブズに製造を委託
プロトラブズのLSR成形でビットドレスの開発が一気に進展
ビットドレスの開発は、建築業を営む父親との雑談がきっかけだったと、戸松氏は振り返ります。ビットドレスとは、戸松氏が開発したネジホルダーです。ネジ止めをする際、ネジがある程度固定されるまでは、ネジはドライバーの先端についている必要があります。鉄系の材料であれば磁力でドライバーにくっつけておくことができますが、現場で使用されるネジの材料は多岐にわたります。ネジホルダーはすでに既存の製品が存在していますが、建築現場で満足のいくものが見つからない、という声を聞き、戸松氏は開発に着手しました。
現場で使われるためには、安価に提供できる必要があります。そのためには、まず構造を単純化することを意識しました。同時に、材料としてシリコーンゴムに着目しました。使い勝手の鍵となるのは、ネジの取り付けをいかに簡単にするか、保持力をどれだけ保てるかということです。ドリルにはめてから回し始めるまでネジを保持できれば良いのではないかという仮定を基に、まずは手でシリコーンの材料を切って試作を始めました。開発は順調に進みましたが、本当の強度は量産の時と同じ方法で作らないと測ることができません。ここで大きなハードルが現れました。シリコーンゴムの射出成形に対応している会社を紹介してもらったものの、個人事業の身では荷が重い「数百万円のコスト」という壁が立ちはだかりました。他の工法として、型を樹脂で作って、シリコーンを流し込む方法もありますが、圧をかける射出成形とは似て非なる仕上がり強度しか出せません。3Dプリンターも使えません。つまるところ射出成形でないとだめ、というところで八方塞がりになってしまいました。
特許の取得は進めていたものの、製品化の目処が立たずに頓挫したところに現れたのがプロトラブズのLSR射出成形サービスでした。実はプロトラブズは、他の製品の開発でもすでに使ったことがありました。そのプロトラブズが新しくLSRに対応したということですぐにトライしてみることにしました。
これが一気に製品開発を加速します。まず、コスト面では従来言われていたコストの数分の一でできることがわかりました。射出成形で製造できたことで、実利用に即した強度の確認ができた他、本当に型が抜けるのか、などの製造上の確認まで一気に進めることが可能になったのです。
射出成形の専門知識がなくても成形性を考えた設計を実現
戸松氏は、試作パーツの成形を射出成形で依頼する際のハードルは、コスト面だけではなかったと言います。それが図面の問題です。元々製品設計をしていた戸松氏は、機械製図はできるものの、樹脂部品で金型を意識した図面を作ったことはなかったし、射出成形の専門家でもありません。
ところがプロトラブズの場合、まず2Dの図面が必要ありません。必要なのは、3Dのデータだけです。また、製造性という観点からもメリットがありました。プロトラブズの双方向見積りシステムであるProtoQuoteを使えば、成形性に問題のある形状が3Dの状態で指摘されます。これで問題を潰していけば、成形性にも問題のないデータができるのです。
戸松氏は、作画や動画作成も行うデザイナーのため、主なモデラーとしてLightWaveを使用しています。LightWaveのデータはポリゴンであるため、プロトラブズのシステムでは対応していませんが、RhinocerosでCADデータにするなど、工夫することで、プロトラブズのシステムによる解析から製造を利用しています。
品質に信頼がおけるプロトラブズの製造プロセス
製造されるパーツの品質に対する安心感も、依頼のポイントだったと戸松氏は述べています。例えば、コストを下げるために製造原価の安い新興国での生産や製造も考えられないことではありませんし、実際、国内の成形メーカーであっても海外の協力会社を使うことは珍しくなくなってきています。しかし、実際の製造先やそこでの仕事が、きちんと把握できないと品質に対する不安が拭えないと言います。現在、プロトラブズでは、LSR射出成形は日本ではなく米国の本社で行っています。戸松氏は、製造こそ日本ではないものの、アメリカの本社工場で成形されている以上、その製造の品質やしかるべき材料をきちんと使用しているであろう、という安心感があったと言います。材料物性は当然大きく製品の強度にも影響してきますから、指定したものをきちんと使ってくれているはず、という安心感もプロトラブズを選ぶポイントでした。
とはいえ戸松氏には、プロトラブズに対しさらなる期待があります。
「ビットドレスの改良はまだまだ続きます。少しずつ形を変えたものを1個、2個の単位で試作したいのです。最近はシリコーンの切削もできると聞いています。ぜひ、プロトラブズさんでも対応していただけると、開発の流れが一気通貫になると思います」
アダプト
代表 戸松 真也 氏
http://adapt-id.com/メーカーに勤めていた戸松真也氏が、しがらみのないものづくりを目指して独立して創業。その活躍の領域は、建築・建設パースといったCGから、インダストリアルデザイン、プロダクトデザインと多岐にわたっており、International Car Design Competition、ダイソンデザインアワード、會ʼs NEXT プロジェクトコンペなどにも入選、受賞。さらに「ビットドレス」などの独自製品でその活躍の幅を広げる。
本連載は、「日経ものづくり」2016年1月号に掲載されたコンテンツを再編集したものです。
プロトラブズおよびProtomold射出成形の詳細:http://go.protolabs.co.jp/
これまでの連載「ビジネスで勝つための3D CAD活用術」はこちら >>
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