テレビ放送局の技術者に、いま映像業界に求められている本質について、本音を伺う本企画。前回は、テレビ放送局にある副調整室を見学させてもらいつつ、4Kといった今後の放送で求められる“局”としての対応や「切替」「分配」「変換」「延長」についての課題を聞かせてもらった。例えば、映像の切り替えには30ms(0.03秒)以下の遅延が求められる点、エンターテインメント性の高い機器での切替・分配・変換・変換問題、規格保証外の延長などだ。
今回は、副調整室(サブ・コントロール・ルーム、通称:サブ)や回線センター、CGセクションが「切替」「分配」「変換」「延長」への課題に対しどのような取り組みを行っているのか、場所を会議室へ移し、実態を暴いていくことにしよう。
A氏:サブで、テクニカルディレクターとして活躍。番組制作現場の技術部門をまとめ、全体を統括している。サブは、必要な素材を集約し、演出に応じて適切に切替・効果の付加などを行って映像コンテンツを作り出す、いわば番組の最終組立工場。生放送の際、サブではオペレータが「人の手」で瞬時に適切なタイミングで操作し、番組を構築している。
B氏:回線センターで「回線接続」「映像の監視」「各所への分配・変換」を担う。回線センターは24時間365日稼働しており、映像の玄関口として、国内・海外の中継現場や系列局、海外支局等と映像回線を結び、中継映像や取材映像をマスターやサブ、収録・編集センターなどへ分配・変換する役割を担っている。
C氏:CGセクションをまとめ、サブの機材選定にも携わる技術者。CGセクションでは、ニュースやバラエティ番組などで文字テロップを出したり、お天気情報を解説するためのシステムを作ったり、VTRなどでニュースを分かりやすく説明するためのCGを作成している。
テクニカルディレクターが考える映像配信への熱き想い
テレビ番組制作に関わる技術の現場監督であるA氏は、切替・分配・変換・延長などあらゆる映像機器を使い、どう利用すれば番組収録がうまくいくかを常に考えているプロフェッショナル。彼がキモに銘じていることは、「さまざまな映像をいかに表示させるか」、「さまざまな映像素材をいかに収録するか」という点だ。その一例として課題としてあがっていたのが、ゲーム機やスマートフォン、VRシステムといったエンターテインメント性の高い機器を収録で使用する際の悩みだ。
──エンターテインメント機器を番組収録で使用する際の困りごととはどのようなものですか?
A氏:エンターテインメント機器の画面を出演者に見せつつ収録用の素材としても利用するためには、映像の分配・変換や延長、さらに変換や切替が欠かせません。しかし、映像を取り出すのは、映像規格や映像端子、プロテクションの観点から、非常に手間がかかります。こういったエンターテインメント機器とテレビをカンタンに繋げる機器があれば、テレビ放送局はぜひ導入したいと思っています。
──複数の映像規格や映像端子に対応した切替・分配・変換・延長器はテレビ局で需要が高いのですね
A氏:はい。このような機材は技術部門だけでなく、美術部門でも求められています。なぜかというと、“電飾”としてテレビ放送で見せる複数台のモニターに映像を分配表示させるには、HDMI、DVI、Displayport、さらにはVGAやコンポーネントなど多数の端子を扱えねばならないからです。そのためにも、機器選定には妥協はできません。
テレビ局の裏方、回線センターでの取り組み
一般視聴者にはなじみの薄い、回線センターという部署で働くB氏。映像の玄関口として24時間365日世界中の中継を接続、モニターして、分配・変換するという、テレビ局を支える大切な裏方だ。世界各地から届くさまざまな規格の映像信号を取り扱うため、年代ごとの伝送技術に合わせた多数のシステム端末が配備されており、その数は約50台にも上る。これだけの数の機器を、どのようにして操作しているのだろうか。
──非常に多くのコンソールを少人数で操作しているそうですが、それだけの数をどのように操作しているのでしょうか?
B氏:全てのコンソールを直接操作するのは現実的ではありませんから、操作用のコンソールを用意し、切替器や分配・変換器、延長器などを使ってまとめて、遠隔操作を行っています。発展を続ける無線/有線伝送システムの最新技術が真っ先に入ってくるのが回線センターですから、さまざまな規格に対応できる機器が必要になります。ですが、中継センターに常駐する人数は決して多くはありません。わずか数名で50台ものシステム端末を個別に利用するのはとても非効率ですし、また操作スペースにも限りがあります。こういった環境で操作業務の省力化、省スペース化するために、切替・分配・変換・延長を駆使して1台のコンソールから各機器をリモート操作しています。
CGセクションが考えるPCの集中管理構想
PCへの造詣が深くCGセクションをまとめているC氏が、テレビ放送局としての機材の運用面について説明してくれた。
──CGセクションでの集中管理は何が目的なのでしょうか?
C氏:以前まで、PCはCGルームに設置されていましたが、昨今映像機器はもちろんのこと、PCもラックマウントしてサーバールームなどにまとめ、別室から遠隔操作で編集・制作を行うというシステム構成に移行しつつあります。このように機器を一か所にまとめるのはなぜかというと、リソースを集中管理させることによって、多くの人間がその機器を必要な時に必要なだけ利用できるようになるからです。つまり、機器の稼働率を高めることが可能になるのです。また、新しい機器を導入する際の入れ替えも簡単に行えるというメリットもあります。
必要なのは信頼のおけるパートナーの存在
続いて話は障害時の対応の話に移る。テレビ放送局では、システム全体で共通して使える予備系統をいくつか作っておくのが一般的で、多くは2重、主調整室(マスター・コントロール・ルーム)などは3重の予備系統を備えている。「なにかあったときに逃げる場所があるシステム」を構築することが多いのだという。また、24時間365日稼働を続ける回線センターの場合、相談できるコールセンターの存在も重要な課題となる。安定した放送を行うためには、機器の性能以上に、充実したアフターサポートが重要となってくるのだ。
──2重、3重の予備系統を構築、運用するには、どのようなアフターフォローが求められるのでしょうか?
A氏:テレビ放送局では、例えば代替品を出してくれるメーカーは強い味方です。映像機器は一台一台が非常に高価なため、余分に購入しておくような対応は現実的ではありません。かといって、故障中にシステムの逃げ場がない状態が続くのは危険です。そこで、修理に出している間、代わりとなる機器を素早く貸し出してくれることが重要なのです。
──代替品が用意できることが重要なのですね。どれくらいのタイミングで用意できると良いのでしょうか。
A氏:代替品の到着は早ければ早いほど良いでしょうね。特に地方局は、代替品のタイミングをシビアに見ていると思います。東京都内の放送局と比べて到着までに時間がかかってしまうからです。
このように、テレビ放送局の各セクションでは、予備系統の構築や故障時の代替品の提供、業務を中断しないための保守環境、相談先としてのコールセンターなど、充実したサービスとアフターサポートが整ったパートナーの存在がより重要であることがわかってきた。では実際、パートナーの立ち位置となるメーカーや販売代理店には何が求められるのだろうか。
テレビ放送局が語るメーカー/販売代理店への期待と要望
今回の座談会で、テレビ放送局が抱える「切替」「分配」「変換」「延長」における課題や取り組みが明らかになるとともに、メーカーや販売代理店に対し期待しているのは、絶対に事故を起こすことのできない環境だからこそ、現場の立ち位置に近いサポートをしてくれる体制だということが見えてきた。テレビ放送局という現場だからこそ、親身にサポートしてくれるメーカーや販売代理店の存在は強い味方なのかもしれない。
こういった技術者の要望に熟知し、さまざまな業務用ソリューションを充実したサポートのもとで提供しているのが、プリンストンだ。同社が展開するソリューションのうち、テレビ放送局の業務と関連が深そうなメーカーを1つ挙げるなら、例えばPCをはじめ映像機器を長年にわたり提供している「ATEN (エイテン)」ブランドがある。同社は、KVMスイッチなどで有名な企業で、最近はその高い技術力を活かした映像ソリューションを展開している。
次回は、ATEN製品を含め長年にわたって映像ソリューションやテレビ会議システムを販売しているプリンストンに伺い、テレビマン達の悩み解決策とプリンストンのサポート力についてその強みを聞いていこう。
[PR]提供:プリンストン