Google AppsやMicrosoft Office 365のデベロッパーであるサテライトオフィスが、2016年4月、ロボットアプリの開発をスタートした。2足歩行ロボット「Palmi(パルミー)」を使って、どんなことができるのか。現在開発しているアプリの内容などを、同社ソリューション事業部プロジェクトマネージャーの荻久保正和氏に聞いた。

サテライトオフィス ソリューション事業部プロジェクトマネージャー 荻久保正和氏

クラウドとの連携がカギに

――ロボットアプリの開発を始めた経緯、DMM.comのPalmiを取り扱うきっかけについて教えてください。

実はDMM.comさんは以前から我々のお客さんだったんです。そのDMM.comさんがロボットビジネスを始めたと知って、別件で伺ったときに話を聞いていたら「これは面白そうだ」ということになり、我々は、ロボットアプリの開発をやってみようということに決まりました。私もロボットには興味がありましたので、ちょうど良い機会でした。

――ロボットはビジネスシーンでどのように活用できると考えていますか?

ロボットは、Google AppsやMicrosoft Office 365のようなクラウドサービスとの相性が非常に良いと思います。現時点でも、ある程度はロボット自身に知能を持たせることはできますが、クラウドとの連携を活用すれば、能力は無限に広がります。ロボットはそのためのインタフェースとして考えています。

企業の情報は、すでに大部分がクラウドにあります。クラウドのAPIを使えば、グループウェアとロボットを直結することができます。クラウドに大量のデータがあって、人間が気がつくのに時間がかかるようなことを、クラウドのプログラムが発見して、ロボットを通して教えてくれる。そういうことに向いているでしょう。

同社の開発で使っているPalmi。「パルオ」「パルカ」「パルル」の3台があるという

――スマートフォンでも同じようなことができませんか?

クラウドへのインタフェースという意味では、スマートフォンもロボットも同じですが、人間の形をしたロボットであれば、人間は仲間意識を感じることができます。見たり話したりするのも、ロボットの方がより自然です。たとえば、秘書のような仕事なら、スマートフォンよりロボットの方がマッチするのではないでしょうか。

――Palmiやロボット関連アプリの取り扱いを始めてみて、お客さんからの反応はいかがですか?

6月からロボットの活用セミナーも開始したのですが、今までやっていたクラウドのセミナーより圧倒的に集客力がありますね。法人向けロボットはまだ未成熟な分野であるものの、一般企業、一般ユーザーからの関心はかなり高いです。

ロボットが秘書に、営業に

――具体的には、どんなアプリを開発しているんですか?

今、弊社で企画しているのは、オフィスアシスタント機能、アンケート収集機能、プレゼンテーション機能、受付サポート機能などです。

オフィスアシスタント機能は、秘書、営業、事務といった役割になります。この機能では、Office 365のメールAPIやカレンダーAPIを利用して、メールを確認したり、今日の予定を知らせるようなことが可能です。また、OneNote APIやCognitive Servicesを利用して、会議の議事録を作るようなこともできます。

アンケート収集機能も、ロボットが最も得意な分野と言えます。たとえば展示会場の出口で評価を聞くようなケースが考えられますが、来場者の回答を音声認識し、Excel APIでアンケート収集用のフォームに記録するようなことが可能です。人間相手だと気を遣うこともあるので、ロボットの方が本音を聞きやすいかもしれません。

プレゼンテーション機能は、PowerPointと連携させます。ノート欄に話す内容を書いておけば、それをプログラムで読み込んで、Palmiが読み上げてくれます。ページ送りまでやってくれるので、完全に全自動のプレゼンが可能。ロボットなら、話し忘れも無いし、規定時間をオーバーすることもありません。店頭デモにも使えそうですね。

受付サポート機能は、企業での受付業務を想定しています。受付に無人で電話が1つだけ置いてあると味気ないですが、Palmiとタブレットを置いておけば、来客から用件を聞き出して、Skype APIを使って担当の社員を呼び出してくれます。レストランなどでのオーダー受付にも活用できるでしょう。

Palmiに飲み物をオーダーすると、ちゃんと認識して取り込んでくれた

――ロボットアプリの開発で苦労することはありますか?

今までやってきたサーバーサイドのプログラミングに比べると、ロボットならではのやりにくさは少し感じます。普通、デバッグするときにはブレークポイントを置いて、ステータスを随時チェックしていきますが、それができません。昔ながらのprintf関数を使うスタイルで、手動で埋め込んだデバッグ用の出力を、ログビューアで確認しています。

ただ、それ以外はあまり大きな違いはありません。Palmiのコーディングについてはプラグイン開発に近いので、すんなりと入ることができました。

ロボットプログラミングを簡単に

――顧客側でカスタマイズできれば便利ですが、難しそうですね。

Palmiの開発環境はMicrosoftのVisual Studioで、言語はC++を使います。このプログラミングは難易度が高いため、弊社では、誰でももっと簡単に使えるようにと、ロボットフレームワークを開発しています。実は、さきほどの4つのアプリは、このフレームワーク上で作ろうとしています。

このフレームワークでは、人間が話しかけたときなどに発生する「イベント」に対し、ロボットの動作を指定するスタイルでアプリを作ることができます。動作のコア部分も含めて、ユーザーがハードにコーディングする必要はありません。今のところ、これは今秋にリリースする予定で開発が進んでいます。

――もうロボットプログラミングから想起される難しい感じでは無いですね。

はい。プログラミングというよりも、むしろHTMLでホームページをデザインするようなイメージに近いですね。そのくらいのスキルがある人なら、問題無く使えると思います。

まずフレームワークを作っておいて、弊社の方で、こうアクションしたらこう動くというアプリを用意します。そのまま使うことも可能ですし、お客さんの側で自由にカスタマイズすることも可能です。我々を通さず、お客さんが自分自身でアプリを作れるようになれば、市場はもっと広がるのかなと考えています。

――今後、どのようにビジネスを展開していく予定ですか。

Palmiは非常に有能なロボットだと思いますので、まずは事例作りが大事ですね。あの企業でPalmiが採用されたと、そういう事例を1つ1つしっかり積み上げていけば、様々な企業で使ってもらえるようになるでしょう。事例が多くなれば要望も増えるでしょうから、それを踏まえてアプリをどんどん作りたいですね。

法人向けロボットはまだ始まったばかり。ぜひ新しいアイデアを出して、チャレンジして欲しいです。弊社の方では、無料のトライアルも開始する予定ですので、まずは実際に使ってみて頂ければと思います。

サテライトオフィス


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さまざまなビジネスモデルに最適なソリューションパッケージを開発し、ユーザー目線に立った戦略の企画・提案を行っています。業界No.1の導入実績を持つGoogle Appsをはじめ、Office365、Works Mobile、DMMの人型ロボット「Palmi」関連のロボットソリューションなど、クラウドコンピューティングに関わるビジネスの可能性を追求しています。
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