「働き方改革関連法案」が成立し、労働時間にかかわる制度が大きく変わろうとしています。2019 年 4 月より、一部業種を除き、時間外労働の上限が月 45 時間、年 360 時間に定められます。1 人ひとりの生産性を本質的に高めなければ、企業としての競争力を維持することが困難な時代が訪れているのです。

しかし、「労働時間の削減」と「生産性の向上」を両立する、このことに対して限界意識を持つ企業は少なくありません。明豊ファシリティワークスの進める取り組みは、この意識を払しょくする好例といえるでしょう。同社ではデジタル技術を駆使することで、企業のあらゆる活動を可視化。これにより、すべての従業員が、常に生産性を意識して業務に臨む文化を定着させたのです。さらに 2016 年 からは、Microsoft 365 をはじめとするクラウド サービスを利用して、モバイル ワークも更に加速させています。最先端のツールを活用することでこれまで以上にどこでも生産性の高い業務が行われるようになり、同社では 2017 年度、従業員の労働時間を大きく削減しながら過去最高益を記録。「労働時間の削減」と「生産性の向上」を見事に両立しているのです。

従業員の意識改革を目指し、業務のデジタル化をすすめる

明豊ファシリティワークスは、大型施設の建設や設備更新、本社移転等の建設プロジェクトにおける「発注者支援(コンストラクション・マネジメント= CM)」事業を営む企業です。

一般的に、「建設プロジェクト」は、多くの企業において頻繁には発生しません。そのため、発注業務はこれに携わる担当者にとって、専門性の高い「イレギュラーな業務」となるケースが多いといえます。どのようなプロセスを経ればよいかわからない、業者が提出する見積りの妥当性がわからない、……経験や知見が不足しているために生じるこうした課題は、プロジェクト全体の遅延やコストの高騰を引き起こします。

明豊ファシリティワークス株式会社 代表取締役社長の大貫 美 氏は、「CM 方式を活用することで、発注者は自らの体制、専門性の質的補完を図ることができます」と語り、そのベネフィットをこう説明します。

「CM 方式では、専門的な知識と技術を持つ当社が、中立性を保ちながらお客様側に立ち、発注業務を支援します。上流工程の基本計画から設計検討、工事発注方式の検討、工程管理といった一連の各種マネジメント業務を当社が行うことで、コストの最適化や、工期の短縮といった価値を提供することが可能です。発注者はCM方式で当社を活用し、価値に応じたフィーのみを当社に支払うことで、発注者としての説明責任を確保することができます」(大貫 氏)。

  • 明豊ファシリティワークス株式会社 代表取締役社長 大貫 美 氏
  • 資生堂グローバルイノベーションセンター(左)、市原市防災庁舎(右)など、明豊ファシリティワークスではCM方式によって、全国の様々な建設プロジェクトを支援している

    資生堂グローバルイノベーションセンター(左)、市原市防災庁舎(右)など、明豊ファシリティワークスではCM方式によって、全国の様々な建設プロジェクトを支援している

CM 方式は、建設プロジェクトの発注者にとって、大きな価値があるサービスです。しかし、CMサービス提供側にとっては、フィーに見合った「顧客にとっての高い価値」を提供できなければ、事業の発展、継続は困難です。大貫 氏は「我々のビジネスは、従業員 1 人ひとりの生産性を高めなければ、企業としての成長は成し得ません」と語り、ここに対するアプローチとして、長年かけて「業務のデジタル化」を進めてきたことを次のように述べています。

「当社では、業務がどれだけお客様の価値につながったのかを『生産性』と定義しています。2004 年にはペーパーレス化を実現し、また従業員が行う一つひとつのアクティビティがフィー (= 顧客の価値) にどれだけつながっているかを可視化する独自のマンアワーシステムを内製で構築しました。こうした取り組みの目的は、従業員自身が自らのシステムとして活用し、『生産性を高めよう』という意識を高くもつことにあります。自らのために活用するという意識が従業員の中に生まれなければ、たとえ制度やツールを整備したとしても、劇的な変化は見込めません。一方、自分自身の業務が生産性という形で可視化、定量化されれば、従業員は自らこれを高めようとするでしょう。事実、現在当社の従業員は、日々、お客様の価値を意識しながら業務に臨んでいます」(大貫 氏)。

従業員の能力を最大化すべく、モバイル ワークとクラウド シフトを推進

生産性を明確に定義して、これを可視化する。明豊ファシリティワークスのこうした取り組みは、従業員の生産性向上以外の効果も生み出しています。可視化した情報を上司と部下で共有しながら対話を行い、定量的なアピールに基づくフェアな評価によって社員が定着するなど、好影響が生まれているのです。

  • 独自に内製したシステムの1つである「マンアワーシステム」では、従業員1人ひとりの行動に関する生産性が、「予測」と「実績」の視点から可視化される。従業員は日々これを参照し、自らの貢献度合いや成長度合いを意識しながら業務に臨んでいる

    独自に内製したシステムの1つである「マンアワーシステム」では、従業員1人ひとりの行動に関する生産性が、「予測」と「実績」の視点から可視化される。従業員は日々これを参照し、自らの貢献度合いや成長度合いを意識しながら業務に臨んでいる

こうしたデジタル化と並行し、同社ではモバイル ワークの取り組みも推進しています。2000 年代から「どこでもオフィス」という名称で PC によるテレワークをスタート。2003 年にはモバイル ワーク環境を独自の方法で構築し、2008 年に ISMS を導入、そして 2016 年からは、IT 環境をクラウドにシフトしています。このねらいについて、大貫 氏は次のように説明します。

「社内に蓄積されたアクティビティ情報を可視化した成果として、2012 年には、『生産性向上を意識して業務を行う』という文化が従業員の中に定着するに至りました。次に行うべきは、テレワークをより安全で安心して利用できる環境づくりでした。実は当社の IT 基盤は、この視点でみれば幾つか取り組むべき課題がありました。これまで個別に自社開発した多くのシステムを横断的に活用するために、システム間をつなぐ仕組みを独自に構築することが必要だったり、操作性がシステム間で異なっていたりしていました。クラウド シフトの目的は、このように複雑にならざるを得なかったシステムを統合していくことで、モバイル ワークを加速すること、そして業務環境の利便性を高めることにありました」(大貫 氏)。

業務環境の利便性を高めるべく、情報系サービスを Office 365 へと統合

業務環境の利便性が高まれば、従業員は自身の能力を最大限発揮してくれます。明豊ファシリティワークスにとってこれは、企業全体の生産性向上と同義だといえました。

企業全体の生産性をいっそう高めるべく、同社ではまず、情報系サービスの統合に着手。大貫 氏は、「当社ではこれまで Lotus Notes を情報系サービスに利用してきました。Lotus Notes のカスタイマイズ性の高さは、短いスパンで業務への最適化を継続するアジャイル開発と相性が良く、サービス単体でみれば利便性に不足はありません。ただ、システム間の連携を考えた場合、先ほど述べたような課題がどうしても存在しました。さらに、会社の成長に伴いメールを始めとしたデータ量は日々増加し続けており、リソースの限られた社内サーバーで運用し続ける事が、継続的な課題となっていました。これらの課題を解決する為、マンアワーシステムのようなコアシステムは別として、情報系サービスはOffice 365 の様なクラウドベースのスイート製品へ移行するべきだと考えたのです」とこの理由を説明します。

明豊ファシリティワークスでは、文書管理やグループウェアは Lotus Notes を、ビデオ会議には他のシステムを、という風に、情報系サービスだけをみても複数 IT が横断的に利用されてきました。こうした環境は、ユーザーに高い IT リテラシーが必要なうえ、高い開発力が社内に必要となり、開発リソースの分散を引き起こします。結果として、マンアワーシステムをはじめとするコア システムの改善活動を滞らせることにもつながるのです。

これらの課題を見定めて、同社は 2016 年、Exchange Online や SharePoint Online、Teams などを備える Office 365 へと情報系サービスを統合。大貫 氏は、「複数サービスをワン ライセンスで一元化できる、またサービス間の GUI に統一性があって連携性も高い、こうした Office 365 の特徴は当社にとって大きなメリットでした。さらに、Yammer や Teams のように従来はなかった新たなコミュニケーション ツールを利用できることも魅力でした。移行時に多少の混乱は発生するかもしれませんが、結果的には業務環境の利便性を高められると期待して、リスク対応策を事前確認した上で導入を決意しました」と、この理由を明かします。

そして、同氏の期待は導入から間もなく、ユーザーの反響として現れました。従来はメールを主とした画一的なコミュニケーションだったのが、状況に応じて適宜、従業員がツールを使い分けるようになったのです。「従来なかったツールを積極的に利用しようとする従業員の姿には、正直驚きました。当社では Teams を利用して社内 IT のユーザー サポートを行っていますが、そこには日々、『このツールでこんなことができないか』といった質問がユーザーから挙がっています。ツールの使い分けによって、社内コミュニケーションが円滑化したように感じます」大貫 氏はこう笑顔をみせ、高い利便性をもつ Office 365 ならではの成果だと評価しました。

  • Teamsによるユーザーサポートのようす。このTeamsも従来のITツールにはなかったものだが、すでにユーザーの中で浸透しているという

    Teamsによるユーザーサポートのようす。このTeamsも従来のITツールにはなかったものだが、すでにユーザーの中で浸透しているという

ユーザーの利便性を高めるべく、ライセンス形態を Microsoft 365 E5 へ移行

クラウド サービスによる IT 統合がもたらした効果を評価し、明豊ファシリティワークスは 2018 年、Office 365 の契約形態を、Microsoft 365 E5 へと変更しています。Microsoft 365 E5 では、Office 365 が備えるすべての機能にくわえて、モバイル セキュリティ スイートのEnterprise Mobility + Security (EMS)、Windows 10 Enterprise など、広範囲のサービスをユーザー単位のサブ スクリプション契約で利用できます。

大貫 氏は、「当社は従業員全員に PC と iPhone を貸与しており、ユーザーによってはタブレットや仮想デスクトップも利用しています。デバイス数に基づいたライセンスの場合、変動の大きさからコストや運用工数が増大します。ユーザー ライセンスで提供される Microsoft 365 E5 は、当社にとって、コストと運用工数の両面で大きなメリットがありました」と語り、つづけて同サービスに期待したことを次のように述べます。

「複数にまたがっていた IT を統合することがユーザーの利便性につながることは、Office 365 の取り組みで明確でした。Microsoft 365 へと契約形態を変更したのは、この統合にくわえ、E5独自のモバイル セキュリティスィート環境上で、安心してモバイル ワーク自体を加速できると期待した点が理由です。当社ではかねてより『どこでもオフィス』を推進してきましたが、機密情報も取り扱うため、結果として複雑な仕組みを経由してシステムへの社外アクセスを許可していました。EMS や Windows 10 Enterprise によって、こういった社外アクセスをシームレスな仕組みとすることができ、利用者にとって安心で便利なものとすることが可能です。Microsoft 365 の利用は、今後、すべてのシステムへの社外アクセスを更に容易にするための大きな歩みになると考えたのです」(大貫 氏)。

実際に明豊ファシリティワークスでは、Microsoft 365 E5 の採用後、既存システムのモバイル化を大きく加速させています。マンアワーシステムは、Office 365 で利用可能な Power Apps を活用してモバイル化を推進。また、EMS の Azure Active directory Premium によって、複雑だった社外アクセスの仕組みを簡素化するなど、利便性を高めながら、セキュリティ、コンプライアンスを確保しているのです。

明豊ファシリティワークスでは、今でも全体のおよそ 7 割の従業員が、積極的にテレワークを実践しているといいます。これまで以上に便利に、そして安心、安全に社外アクセスできるようになれば、今以上に働き易い環境が構築されることになります。

時間外労働時間を月 30 時間削減しながらも、生産性は146% 伸長

こうした、兼ねてより進めてきたデジタル化、そして Microsoft 365 E5 を利用したクラウド シフトによって、明豊ファシリティワークスの生産性は大きく向上しています。具体的に、2012 年 から 2018 年の 6 年間で、同社の生産性はおよそ 146% も伸長。そしてこれに伴って企業としての業績も成長曲線をたどり、2017 年度は過去最高益を記録しています。

「以前まで、従業員の法定外労働時間はおよそ月 45 時間が平均でした。現在はこれを平均 17.5 時間にまで引き下げることができています。およそ 30 時間の労働時間を削減しながら、お客様へ提供する価値 (=生産性) も向上させることができた。こうした成果を生み出せた背景には、兼ねてから取り組んできたデジタル化と、主役である従業員一人ひとりの意識変革がまずあるでしょう。そして、Microsoft 365 E5 というソリューションがこの背中を押してくれたと思っています」(大貫 氏)。

  • 従業員の中の「生産性への意識」が定着した2012年以後、生産性(売上粗利率/直接時間)の水準は大きく向上。労働時間を削減しながら生産性は向上するという基調を生み出している

    従業員の中の「生産性への意識」が定着した2012年以後、生産性(売上粗利率/直接時間)の水準は大きく向上。労働時間を削減しながら生産性は向上するという基調を生み出している

  • 明豊ファシリティワークスではフリーアドレス制が採用されている。場所を問わない業務環境を、ITとファシリティの双方で支えている

    明豊ファシリティワークスではフリーアドレス制が採用されている。場所を問わない業務環境を、ITとファシリティの双方で支えている

業務の可視化から、業務のアシストへ

従業員の利便性の追求。ここに向けた明豊ファシリティワークスの取り組みは、Microsoft 365 E5 の利用にとどまりません。現在稼働している SQL Server 2012 のEOSL を契機として Microsoft Azure への移行を計画するなど、情報系サービス以外のシステムについても、クラウド上に統合していくことが予定されているのです。大貫 氏は、「Microsoft 365 E5 やマイクロソフトのクラウド サービスは、旧来からあった当社システムの強みを今後も活かし続ける上で非常に有用だと考えています」と語りました。

"従業員の働き易さの追求が、サービス品質の向上と生産性向上につながると考えています。現場の前線において、安全で使いやすいシステム環境を提供するとともに、今後の AI 等の積極的な活用を考慮すると、より可能性が高く、変化に柔軟なシステムを選択することが重要だと考えました。"



―大貫 美 氏: 代表取締役社長
明豊ファシリティワークス株式会社

また将来的には、AI といった新しいテクノロジーを活用していくことも構想されています。同社はこれまで、情報の可視化による顧客からの信頼獲得と、情報のデジタル化による社員が働き易い環境構築に取り組んできました。今後の構想では、何を目指されているのでしょうか。大貫 氏は次のように述べます。

「従業員の業務や意思決定をアシストする機能を実装していきたいと考えています。マンアワーシステムをはじめとする日々の働き方から生まれる各種情報は、きわめて膨大な量となります。これを AI などで分析すれば、従業員では気づけない新たな情報をお客様の価値に転換することができる可能性があります。Office 365 ではすでにこういった仕組みをMy Analytics として用意していますし、PowerBI を活用して Power Apps と連携すれば、容易に可視化や業務システムのアプリ化が行えます。マイクロソフトのクラウド サービスを駆使しながら、こういった新しいテクノロジーも積極的に業務に適用していきます」(大貫 氏)。

明豊ファシリティワークスの取り組みからは伺えることは、従業員の一層の意識向上に加えて、データ活用や業務環境の利便性が、働き方改革における大きなファクターとなることです。「時間外労働の上限規制導入」が間近に迫る今、働き方改革のモデル ケースとも呼ぶべきこの取り組みは、生産性向上に頭を悩ませる多くの企業にとって有益なヒントになるはずです。

[PR]提供:日本マイクロソフト