中小企業庁が発表する「中小企業白書」(2016年版)によれば、中小企業の人材数は2011年以降、6年間にわたり「不足」の状況が続いています。中小企業における「人材不足問題」は深刻化の一途をたどっているといえますが、そのような中、人材の新陳代謝に成功し、順調な事業運営を継続している企業があります。
1975年の創業以降、40年以上にわたり事業を展開する株式会社日本綜合経営協会は、10数名いる従業員の平均年齢が34歳と、若い年代層が活躍する会社です。今でこそ若い人材で構成されている同社ですが、数年前の2013年までは現在とまったく異なっていました。 50代以上の従業員が7割以上であり、高齢化が問題となっていたのです。
事業を継続するうえで次世代への業務の引継ぎは不可欠であり、これは多くの中小企業で共通する課題だといえるでしょう。しかし、先の調査では、中小企業離職者のうち約7割が、離職理由に、労働条件や収入といった待遇面や職場環境への不満を含む「その他の個人的理由」を挙げたことも示されています。単に採用活動を行うだけでは、その人材の定着は期待できないのです。
株式会社日本綜合経営協会はこの定着を図るべく、Microsoft Office 365を活用した働き方改革を実施。社内風土、就業規則の変革と並行しこれを進めたことで、結婚や出産など、若い従業員が迎えるさまざまなライフステージへ対応できる就業環境を構築しました。この取り組みは、従来よりもITに要するリソースとコストを削減しながら、短期間で人材の新陳代謝を実現しています。
プロファイル
株式会社日本綜合経営協会は、47都道府県を対象に、講演依頼に基づく講師派遣や企画提案を行う企業です。日本で初めて講師派遣を生業とした同社は、4,000名を超える講師やタレント陣を擁し、さまざまなテーマや目的、条件に応じた講演会を成功に結び付けてきました。同社がもつ信頼のネットワークは現在でも進歩を続け、今もなお全国で行われる講演、研修を厚く支援しています。
導入の背景とねらい
さまざまなライフステージへ対応した就業環境を提供すべく、働き方改革を決意
企業や地方自治体などを顧客とし、講演者との仲介を行うことで、数々の講演、研修会を支援する、株式会社日本綜合経営協会(以下、日本綜合経営協会)。日本で初めて講師の仲介・派遣に特化したサービスを提供した同社では、1975年の創業以降、40年来の顧客を多く抱えています。従業員数わずか10数名という少数で運営されていながらも、同社のサービスを利用する顧客は途絶えることがなく、今もなお順調な事業運営が行われています。 日本綜合経営協会の特徴は、中小企業には珍しい「若く活気のある社員構成」と、一般事業主行動計画に表れた「働きやすい環境の提供」にあるといえます。日本綜合経営協会 代表取締役 岩鼻 宏樹氏は、同社の特徴について、次のように説明します。
「『仕事と子育ての両立』が可能な働きやすい雇用環境を実現すべく、当社では現在『出社勤務』と『在宅勤務』の2つの働き方を実践しています。また、従業員は自身が置かれた状況に合わせて労働時間を4時間、6時間、8時間の中から選択することもでき、これらは就業規則にもしっかりと銘打っています。企業活動の継続には、人材の新陳代謝を高め、優秀な人材に働き続けてもらうことが欠かせません。従業員の生活環境に合わせた働き方を提供する目的は、まさにこの人材確保にあります。この結果、当社は従業員の平均年齢が34歳、50代以上から 20代に至る幅広い年代層が活躍する会社となりました」(岩鼻氏)。
この「なりました」というコメントにも表れるように、岩鼻氏が代表取締役に就任する2013年以前は、現在と異なり50代以上の従業員が7割以上を占めていたといいます。高いサービス品質が評価され多くの顧客を抱える中、その需要を満たす形で今後10年、20年と事業を継続するには、次世代への業務の引継ぎが不可欠です。
そこで同社は、岩鼻氏の就任とともに若い人材の採用を推進。しかし、2013年にある従業員がガンに罹患したことを機とし、人材採用と並行して労働環境と就業規則の見直しも進める必要が生じたと、岩鼻氏は語ります。
「この従業員は当社に欠かせない優秀な人材でした。勤務にも非常に積極的で、『治療をしながら働きたい』という強い要望も受けていました。このような方は本当に貴重なのです。中小企業こそ、こういった人材を逃してはなりません。しかし当時、当社では在宅勤務に対応した就業規則を敷いていませんでした。また業務に必要なITシステムやメールなどの利用も会社内で制限されており、紙を利用したアナログな運用も数多く残っていたのです。このような『社内勤務を前提とした状態』では、先の従業員の要望に応えることができません。それだけでなく、結婚や出産、育児、介護や療養など、これから入社するであろう若い人材が迎えるさまざまなライフステージにも対応できないと考え、人材採用だけでなく、環境と制度の両側面から、在宅勤務にも対応した働き方の変革を進めるべく、課題の洗い出しを始めました」(岩鼻氏)。
当時、プロフィールをはじめとした講師の全情報は、社内にあるサーバー上で管理されていました。顧客要望に合った講師のアテンドを行ううえで必須ともいえる同システムですが、その利用は原則として社内のみに制限されており、用意されていたリモートアクセスツールも、利便性の悪さから社外利用で有効に機能するものではなかったのです。同様に、プロバイダが提供するメールサービスも社内でしか利用することができず、社内で広く共有すべき講師のスケジュールといった情報は、紙ベースの回覧板で行われているという状況にありました。在宅勤務を可能とする制度を敷き、それを実際に機能させるためには、まずビジネスツールを刷新し、業務フロー自体を変革させる必要があったのです。 この課題を解消すべく、同社は2014年、東京都が整備する「東京都中小企業ワークライフバランス推進助成金」の利用を前提に、ビジネスツールの選定を開始しました。
システム概要と導入の経緯、効果
幅広い年代の従業員が抵抗無く利用できるビジネスツールを模索し、Office 365に活路を見いだす
単にビジネス ツールを導入するだけでなく、それを有効に機能させるためには、自社の業務に必要な機能を有し、かつ幅広い年代の従業員が抵抗無く利用できることが求められます。しかし、専任のIT 担当を持たない中小企業にとって、自社でそれを運用することは、コスト、工数の側面で最適な選択肢とはいえません。 そこで、日本綜合経営協会ではクラウドサービスを前提に検討を進め、講師情報の管理、情報共有、メール、スケジューラなどの機能を備え、かつそれらが外部から高い安定性のもと利用できるサービスについて比較検討を実施。多くのサービスを試用した結果、パートナー企業より紹介を受けたOffice 365の導入を決定しました。
岩鼻氏は、このOffice 365の紹介を受けた際、機能と利便性の両側面で最適だと感じたと、当時を振り返ります。
「ビジネスツールの検討プロセスにおいてもっとも重要なのは、そのツールによって当社の『どの業務』が『どのように』円滑に進められるようになるのかを見定めることです。Office 365は、講師情報の管理はOneDriveで、メールとスケジュール管理はExchangeで、そして情報共有は SharePointで、といったように、当社の業務を行ううえで必要な機能を網羅的に有していました。また、マイクロソフトが主催する企業向け説明会にも参加しましたが、Office 365に触れた際、何よりも利便性の高さを実感しました。Windowsのインターフェイスは既に多くの方が慣れ親しんでいます。それに近いUIを備えるOffice 365であれば、現在の従業員やこれから入社するであろう人材に対し、無理に新しいものを覚えさせる必要がありません。必要な機能を網羅し、それらを高い利便性のもと利用できるOffice 365であれば、本当の意味で"ツール"として活用されるだろうという手応えを感じました」(岩鼻氏)。
日本綜合経営協会では 2014年12月に Office 365の導入を正式に決定したのち、翌月となる2015年1月からその運用を開始。社外でも業務が遂行できるよう、全従業員へ向けたiPhoneの配付も実施されました。さらに業務PCのリプレースを迎えた2015年には、全従業員のデスクトップPCをモバイルPCへ刷新。これら、ビジネスツールの整備を完了した2015年2月に就業規則の改定を行い、働き方改革を本格化しました。
導入の効果
ビジネスツールと社内風土、そして就業規則の3側面を持ったアプローチにより実現した、働き方改革
こうして、日本綜合経営協会が実施した働き方改革は、結果として「若く活気のある社員構成」と「働きやすい環境の提供」を現実のものとしました。同取り組みのユニークな点は、単に新しいビジネスツールとしてOffice 365を導入しただけでなく、並行して企業の風土と規則の変化も促してきたことにあります。
岩鼻氏は、Office 365の導入効果を最大化するにあたり、従業員の意識変革を促してきたと説明します。
「働き方改革は、従業員の幸せを担保するためのものです。しかし、いかに優れたビジネスツールを導入しようとも、一人一人に変革の意味を理解してもらい、従業員が自ら率先して新たな働き方を実践しなければ、この変革はうまく機能しないと考えています。そこで重要となるのは、『経営者視点』の醸成です」(岩鼻氏)。
岩鼻氏は、この経営者視点を全従業員に持ってもらい、会社全体が1つのチームとして利益をだすという風土を作るべく、次のような活動を行ってきたと続けます。
「たとえば残業時間の削減は、従業員のプライベートを充実させるだけでなく、無駄な人材コストの削減によって企業利益の増加にもつながります。この削減によって生まれた利益は、最終的には従業員全体に給与として還元されるのです。こうした経営者視点を持つことで、社員は自ら新たな働き方を実践するようになるでしょう。そのために、日々従業員へこうした話をしたり、経営者視点を持つために必要な決算書は社内でオープンにし、その他の情報もOffice 365上などで共有したりすることで、社内の風土づくりを進めました」(岩鼻氏)。
この活動の結果、従業員には自発的に時短勤務を実践しようという意識が行動に表れたといいます。たとえば、これまで出社してからメールをチェックしていた従業員は、通勤時間中にメールチェックを済ませて出社後すぐにそれ以外の業務に取りかかるといった動きを見せているのです。これは、先の風土の浸透と社外でICTが利用できる環境の提供があっての効果だといえるでしょう。
メールだけでなく、OneDriveやExchange、SharePoint上にある講師プロフィールや講演スケジュールの情報へも社外からアクセスできます。これらはスマートフォンからのアクセスも可能で、Office 365が備える高いセキュリティによりその情報は厳格に守られています。
こうした効果を経て、日本綜合経営協会では2015年2月、就業規則の改定も実施。新たな就業規則では、従業員は在宅、出社問わず4時間、6時間、8時間の勤務時間から自らのライフ ステージに応じた時間を選択することができ、有給休暇も、4時間単位で2年間最大40日まで取得できるよう整備されました。
これらビジネス ツールと社内風土、そして就業規則の3側面を持ったアプローチについて、岩鼻氏はOffice 365があったからこそそれらを進めることができたと語ります。
「働き方改革へ向けた社内風土作りと就業規則の改定自体、そもそもOffice 365がなければ実現することができませんでした。現在、新卒社員も積極的に採用していますが、こうした新しい人材が当社で働き続けてくれる環境が整備できたこと、またそれにより業務に新陳代謝が生まれ、事業の継続性が高まったことが、Office 365を導入した一番の効果だといえるでしょう。当初期待したとおり、Office 365はWindowsに近いUIで利用できるため、従業員は能動的に各機能を利用してくれています」(岩鼻氏)。
さらに岩鼻氏は、こうした先進のICT環境が専任のIT部門なしで低コストに利用できることも、Office 365の大きなメリットだと続けます。
「IT部門を設けていない当社ですが、Office 365は管理がほぼ不要のため、簡単に利用できています。また、従来の環境を継続利用した場合と比較すると、サーバーの調達や保守、業務PCのOfficeライセンスに要するコストがカットできたため、およそ40%ものコスト削減が実現できました。Office 365の導入はあくまで手段であって、真に実現すべきことは、規則と風土の変化と並行した働き方改革です。IT管理に余計な工数、コストをかけることなくこの対応へリソースを割くことができた点は、Office 365の大きなメリットだといえるでしょう。Office 365は、中小企業にとって不可欠ともいえるソリューションではないかと思います」(岩鼻氏)。
今後の展望
ボトムアップの要望へも対応することで、働く環境のさらなる発展を目指す
ビジネスツール、社内風土、就業制度の3つの側面から働く環境の整備を実施した日本綜合経営協会。この取り組みは、基本的にトップダウンにより進められましたが、現在では従業員側から積極的に就業規則を変えていこうというボトムアップの動きも生まれているといいます。 こうしたリクエストへ適宜対応していくことで、今後さらに就業規則を発展させ、従業員が働き続けてくれる環境づくりを目指していくと岩鼻氏は意気込みます。
「働き方改革のきっかけとなる最初の活動は、トップダウンでしか機能しないと考えています。しかし、それ以降もトップダウンであり続けていては、従業員が本当に求めている細かな要望に応えることができません。従業員の就業規則への要望は、それを積極的に活用しようという意識の表れです。この兆しが見えた後は、こうしたボトム アップの要望へ迅速に対応していくことが、働き続けてくれる環境づくりを継続するための道筋だといえるでしょう。実際に当社では、2016年12月には一部の就業規則を再改定し、有給休暇2年最大40日に加え、未消化の有給休暇を最大20日までストックすることを認めるようにしました。また、自らの検査、治療、療養だけでなく家族の看護や介護にもそれが使用でき、さらに有給休暇を1時間単位で使用できるようにするなど、ボトムアップをきっかけとした内容の変更も行っています」(岩鼻氏)。
こうしたボトムアップによる変化の対象は、就業規則に限った話ではありません。現在、同社には完全な在宅勤務の従業員がまだいないため、会議は原則として社内で実施しています。ですが今後、完全な在宅勤務を希望する従業員が現れた場合を想定し、在宅でも会議に参加できるしくみも検討されています。このようなビデオ会議も、Office 365が備えるSkype for Businessを活用することで対応することが可能です。
「ビデオ会議だけでなく、Skype For BusinessとVoIPを連携すれば、会社の固定電話に掛かってきた電話をスマートフォンで応答するといったことも実現できます。完全な在宅勤務の従業員がいないため実装はまだですが、いずれは利用することになると思います。また、人材の多様化が加速していますので、今は想像もしないような業務ニーズが生まれる可能性もあるでしょう。こうした時代の変化に対応し続けられるよう、マイクロソフトへは今後も、働く人にフレンドリーな機能の提供を期待したいですね」(岩鼻氏)。
40年以上にわたって人と人を結び付ける業務を行ってきた日本綜合経営協会。企業の歴史同様に古くから続いていた旧態依然な業務体制と就業規則を変えたのは、Office 365による働き方改革でした。10年、20年後も事業を継続する企業を目指し、同社の働き方に関する取り組みは、今後も発展を続けていきます。
ユーザーコメント
「働き方改革へ向けた社内風土作りと就業規則の改定自体、そもそもOffice 365がなければ実現することができませんでした。現在、新卒社員も積極的に採用していますが、こうした新しい人材が当社で働き続けてくれる環境が整備できたこと、またそれにより業務に新陳代謝が生まれ、事業の継続性が高まったことが、Office 365を導入した一番の効果だといえるでしょう。当初期待したとおり、Office 365はWindowsに近いUIで利用できるため、従業員は能動的に各機能を利用してくれています」
日本綜合経営協会
代表取締役
岩鼻 宏樹氏
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