業務生産性を高めることでサービス品質を維持向上させる――日本の人口構造が大きく変わりつつある今、この取り組みがあらゆる業界・企業に共通した経営課題となっています。しかし、生産性向上は言葉で言うほど容易いものではありません。支社、組織、部門はそれぞれで業務環境が異なるものです。画一的ではなく、それぞれの環境に適したアプローチを採る " 組織としての改善活動" が、今日の生産性向上にあたっては求められます。
全国に 354 の拠点を構え (取材時点)、延べ 18,240 名 (2019 年 4 月 1 日現在) の社員を抱えるリコージャパンは、" 組織としての改善活動" の取り組みによって企業全体の生産性を高めている 1 社です。同社では、Microsoft Teams (以下、Teams) や Microsoft Excel Online (以下、Excel Online)、Microsoft Forms (以下、Forms) といった Office 365 の備える各種ツールの下、各部門が独自の裁量で業務やコミュニケーションの在り方を改善・発展させていくことができる環境を整備。Office 365 という共通のプラットフォームの下でこの環境を用意することで、全社のガバナンスを管理統制しながら " 組織としての改善活動" の歩みを進めているのです。
働き方の "変革" を目指す、リコージャパン
ワークスタイル変革やダイバーシティ推進等があらゆる組織で進められています。社会構造の変化やここへの危機感が背中押しになり、今、こうした取り組みが加速しているのです。
ですが、実はリコージャパンでは 1990 年代から、働き方改革とも表されるこうした取り組みが進められてきました。そして、そんな同社が現在推進するのが、従来施策の延長線上にある "改革" ではなく、常識や前例にとらわれず新たな働き方を創り出す「働き方 "変革"」です。
働き方を変えるための取り組みでは、トップダウンのアプローチが不可欠になります。しかし、ビジョンだけが先行してしまっては現場は "理想論" と捉えてしまい、中々計画が進まないものです。リコージャパンのように数多くの拠点を構える企業においては、特に管理部門 (= 経営) と事業部門 (=現場) との間でコンフリクトを生むことを避けるべきでしょう。
同社がユニークなのは、"変革" に必要なツール・制度は全社統一のものを用意し、"変革" の実践についてはそれぞれの支社・組織・部門に裁量と権限を渡している点です。
例えば、同社では "変革" を推し進めるためのツールとして Office 365 を導入していますが、それぞれの事業部門が独自のルールを敷いて自由に Office 365 を活用することができます。同社が構える拠点の数は 354 を数え、それぞれの拠点で業務の在り方や風土、働き方の課題は異なります。先述した高い自由度を持つ業務環境を提供することで、リコージャパンは " 組織としての改善活動" の観点から全社的な働き方 "変革" を進めているのです。
実際にどのような形でこの "変革" が進んでいるのか。幾つか具体例を見て いきましょう。
Teams、Forms によってビジネスのリアルタイム化を進める神奈川支社
主要拠点の 1 つである神奈川支社では、ビジネスのリアルタイム性を高めることを目的にした "変革" が進められています。リコージャパン株式会社 販売事業本部 神奈川支社 支社長の松原 正彦 氏は、「リコージャパンでは 2018 年度、従来利用してきた Lotus Notes から、Office 365 に情報基盤を移行しました。神奈川支社では、ただ既存業務を Office 365 へ置き換えるのではなく、ビジネスの在り方自体を変える取り組みとしてこれを進めています。」と述べます。この言葉の通り神奈川支社では、従来オンサイトで行ってきた一部の会議を Teamsによって電子化する、予実管理といった日々の報告を Excel Online や Teams で電子化するなど、業務の抜本的な "変革" を進めはじめています。
具体的に、神奈川支社の社員はどのように 1 日の業務を進めているのでしょうか。
神奈川支社では現在、一部の業務・コミュニケーションがモバイル PCやスマートフォンを介しデジタル上で完結できるようになっています。例えば営業社員であれば、出社後、資料印刷などを行う必要なく顧客先へ訪問することができ、そこでの商談や受注情報も Excel Online 上の進捗シートへ入力してチーム内に報告が可能です。急な連絡事項があっても Teams でマネージャーや組織全体へ通達することができる、これによりビジネスのスピードを早めるとともに、従来会議や作業に要していた工数を削減することに成功しているのです。
神奈川支社 事業戦略部 部長の神田 博 氏は、まず工数削減の側面から、ここでの効果を説明します。
「これまで月に 4 回、32 名が一堂に会する会議を実施していました。この会議だけをみても、Web 会議やチャット ベースの在り方に変えることで [1時間(1 回の会議) × 32 人 × 4 開催] で月間 128 時間が削減されています。営業やフィールド担当であればこの時間の分だけお客様対応ができますし、管理者であればマネジメントに時間を費やせるようになります。コミュニケーションの内容はログとして電子上に残りますから、誰かが発した情報がすぐに支社全員の集合知になることもポイントでしょう」( 神田 氏)。
会議の度に会議室やメンバーの予定を調整する、報告のための資料を作る、対面報告のために上司が戻るのを待つ、こうしたものは業務ではなく作業だといえます。生産性を高めるならば、可能な限りこうした作業を排除すべきでしょう。
神田 氏は、「社員や管理者の時間を最大限活かすために、神奈川支社独自の取り組みとして業務・コミュニケーションの電子化をルール化しました。」と述べます。これに続けて神奈川支社 神奈川コーディネート営業部 AAコーディネート2グループ リーダーの佐伯 雄二 氏は、Office 365 の利用を開始してから 1 年で、ビジネスのリアルタイム化も大きく進んだと語ります。
「Office 365 は大変使いやすいため、社員の活用が自然発生的に進んでいます。そしてこれに伴って、当初想定していなかった活用の在り方も生まれています。例えば、既存のお客様に向けたあるセミナーで来場者アンケートを紙から Forms を用いる形に変えたのですが、回答情報を即座に集計・可視化できるようになったため顧客フォローまでの時間を短期化できているです。また、商談時に営業だけでなく本社の技術担当も Teams でオンライン参加するなど、日々新たな活用が生まれています。単に働き方を変えるだけでなく、当社のビジネス自体がよりリアルタイム化している、価値が増しているように感じます」(佐伯 氏)。
"活用を広げる役割を持たせたキーマンを選定したこと、そしてキーマンを軸にして実務への適用を広めたことで、Office 365 は極めてスムーズに私たちの業務に浸透しました。そして、これと同時にビジネスのスピード感も大きく加速していると感じます。"
―松原 正彦 氏:販売事業本部 神奈川支社 神奈川支社長
リコージャパン株式会社
相手ありきだったコミュニケーションから脱却した東京支社
同じ関東地区でも、東京支社においてはまた異なる狙いを持って "変革"が進められています。東京支社が推進するのは、相手ありきだったコミュニケーションからの脱却です。
東京支社では従来、対面やメール、電話など、"1 対 1" のやり取りが支社内コミュニケーションの主になっていたといいます。特定の相手がいることを前提としたコミュニケーションの在り方を変えるべく、同支社では Teams の活用を推進。「拠点の全メンバー」「部署の全メンバー」など複数人が参加する Teams のグループで情報をやり取りするというルールを設けるすることで、"多対多" のコミュニケーションが生まれる環境づくりを進めているのです。
リコージャパン株式会社 販売事業本部 東京支社 中央営業部 部長の番場 篤 氏は、同取り組みの狙いをこう説明します。
「首都圏は公共交通機関が整理されています。そのため、車移動が多い他の支社と比べてフロア内で人が集まりやすい環境にあります。せっかくこうした数の利を活かせる環境があるのだから、人と人とがもっと連携するような職場づくりを進めたい、部門を横断したシナジーがどんどん生まれていく支社にしたいと考えました」(番場 氏)。
相手ありきだった従来のコミュニケーション環境では、どうしても、"あの人でないと判断ができない" "これは誰に聞いたらいいの" とった属人化が進んでいたと番場 氏は述べます。支社にいる全員の力を結集する、この目的の下で Teams の活用を進めたことで、今ではほとんどのコミュニケーションが Teams 上で行われるようになりました。
東京支社 中央営業部 中央ソリューション営業グループの大三川 隆啓 氏と中央営業部 京橋営業所 大西 梨絵 氏は、実際にどのような変化が業務環境に生まれているのかを次のように述べます。
「いつも同じ人に報告・相談しているなど、以前は日々のコミュニケーションの対象がある程度決まってしまっていたように思います。今では Teams 上で何か相談を投げかけたり誰かを称賛したりした場合、すぐ不特定の誰かが反応するようになっています。こうした "みんなが情報を発信する" という風土はデジタル上だけでなく実際のフロアにも広がっており、支社の雰囲気が大きく変わったと感じます」(大三川 氏)。
こうした風土・雰囲気の変化は、社員の中に "やらされ感" があっては中々形成されません。東京支社ではどのようにして " 変革" を成功に導いているのでしょうか。
東京支社 中央営業部 中央ソリューション営業グループ リーダーの小檜山 智丈 氏は、「今回、" 情報の発信は基本的に複数人が参加する Teams 内で行う" ということ以外には特にルールを定めずに Teams を展開しました。社員が自ら "これを使おう" と思わないと、風土は変わりません。ここにあたり、厳格なルールの存在は、社員の中に "やらされ感" を生んでしまうと考えたのです。自由度の高い業務環境としてツールを展開する、そして、番場や私をはじめとする管理者が率先して利用して活用のきっかけづくりを行う。これだけで自然に活用が広がり、社員が Teams やフロア内でどんどん情報を発信するようになりました。」と、成功の要因を語りました。
"職場が適度な緊張感を持つことは、個のパフォーマンスを最大化する上で重要です。強すぎる緊張感は社員にストレスを与えてしまいますから。コミュニケーションの在り方だけでなく支社の雰囲気も変えることができたのは、Teams 導入の大きな成果でしょう。"
―番場 篤 氏:販売事業本部 東京支社 中央営業部 部長
リコージャパン株式会社
全体会議を Teams で電子化。「マルチウェイ戦略」を加速させる鹿児島支社
東京支社や神奈川支社の取り組みは、コミュニケーションの場を Teams に集約するという点で共通しています。しかし、ここまで触れてきたように、取り組みの狙いや活用のルールは各々で異なっています。このような " 組織としての改善活動" が進んでいるのは、都市部に限りません。鹿児島支社では、拠点内にいるメンバーの一体化、意識統一を目的に、月に 1 回開催している全体会議を電子化。これによってリコーグループの掲げる「マルチウェイ戦略」を大きく加速させているのです。
リコージャパン株式会社 販売事業本部 鹿児島支社 支社長の唐本 正 氏は、「マルチウェイ戦略」の詳細に触れ、こう述べます。
「営業やフィールド担当だけでなく経理などのバックオフィス部門も含む全ての社員がお客様第一の下で業務に臨むこと、リコージャパンの総合力を持ってお客様に価値を提供することが、『マルチウェイ戦略』の概要です。ただ、鹿児島支社は担当するエリアが広く、社員の多くが日中社内にいないため、部門横断的な取り組みが困難でした。そんな鹿児島というエリアだからこそ、『マルチウェイ戦略』を実践することは、他社には無いお客様にとっての価値を持つと考えます。競合も私達と同じような課題を抱えているはずですから。まずは『マルチウェイ戦略』で必要な一体感をこれまで以上に高め、尚且つ、離れた場所であってもコラボレーションが生まれる環境をつくりたい、そういった思いが Office 365 の利用開始時にありました」(唐本 氏)。
鹿児島支社では毎月 1 回、支社の意識統一を大きな目的に掲げた全体会議を実施しています。ただ、唐本 氏も述べたように、鹿児島支社は遠方にある顧客に訪問することが多いため、これまで全員が参加することは一度もなかったといいます。
鹿児島支社 事業戦略部 部長の上迫田 仁 氏は、「社員の意識統一は『マルチウェイ戦略』の進退を大きく左右します。そのため、全体会議を、全員が現実的に参加できるような形に変えなければならないと考えました。そこで、会議の様子を Teams 上でも配信し、スマートフォンなどから移動中でも参加できるようにしました。」と説明。これによって、全社員の参加が実現できるようになったと語ります。
会議への全員参加は、「マルチウェイ戦略」の実践に向けた 1 つの通過点に過ぎません。ですが、同取り組みをきっかけとし、ここに向けた歩みは確かに加速しているといいます。
鹿児島支社 事業戦略部 ソリューション1グループ リーダーの榎田 豊 氏は、「全体会議を Teams で閲覧できるようにしたことで、一体感が強まっただけでなく支社内メンバーの Teams 利用も浸透しました。2018 年の上半期から取り組みをスタートしたのですが、下半期には、支社の全メンバーが参加する Teams 上のグループで総務部門と営業部門がお客様対応に関わるやり取りを行ったり、部門横断で情報を共有し合うグループが作成されたりといった動きが生まれています。」と述べ「、マルチウェイ戦略」に向けた歩みが確実に進んでいると笑顔をのぞかせます。
"全体会議で Teams の利用をスタートしたことをきっかけに、支社のメンバーが自発的に「マルチウェイ戦略」を進めるような動きを生み出せました。Teams を武器に、異なる職種間で連携しながら、当社独自の価値をお客様に提供してまいります。"
―唐本 正 氏:販売事業本部 鹿児島支社 支社長
リコージャパン株式会社
ガバナンスを管理統制しながら"組織としての改善活動" を進めていく
ビジネスの現場となる各支社が独自に " 変革" を進めていく――リコージャパンがこうした取り組みを進めることができている背景には、1 つ、大きな理由があります。
松原 氏は、「たとえ有効なツールがあったとしても、その利用に制限があっては中々活用が浸透せず、働き方も変わらないものです。Office 365 はガバナンス機能が充実していますから、ただ業務上で有用であるだけでなく、" 安心" して "自由" に使える環境として社員に展開することができます。」と述べ、Office 365 によって、" 組織としての改善活動" の裏側でしっかりとガバナンスが管理統制されることを評価します。
また、番場 氏と唐本 氏は、リコージャパンにおけるこの実績を実践事例とし、自社の働き方を変えるだけでなくお客様のビジネスも " 変革" させる存在になっていきたいと語ります。
「コピー機屋という "モノ売り" からお客様の課題を解決する "コト売り"へと、当社は今、ビジネスの在り方を大きくシフトさせています。私たちが働き方を変えられたというこの経験は、働き方に課題を抱えるお客様を支援する上で、"リコージャパンだから提供できる価値" になると考えています」(番場 氏)。
「当社独自の Office 365 活用法を、今後ソリューション化していきたいですね。例えば、私が広島支社の支社長を務めていた 2018 年に広島で大規模な土砂災害が発生したのですが、SharePoint Online を安否確認用途で活用することで社員の安全性を確保することができました。こうした経験に基づいた価値を、働き方に限らないあらゆる方面からお客様に提供してまいります」(唐本 氏)。
生産性向上が、あらゆる企業に共通した課題となっています。しかし、画一的なアプローチでこれを進めることにはどうしても限界があります。Office 365 を活用したリコージャパンの取り組みは、ガバナンスの管理統制を行いながら " 組織としての改善活動" を進めるという、働き方 " 変革"の 1 つのあるべき姿だといえるでしょう。
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