総務省は2018 年、日本の携帯電話の契約数が総人口の 181.7% に達したことを、「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表」の中で報告しました。これは国民全員が2 台近い携帯電話を所有していることを意味します。今日の携帯電話市場は、従来型の販売戦略ではこれ以上の拡販が見込めない "飽和状態" にあると言えるでしょう。

ユーザーの多様性を見極めて販売戦略を立案する、戦略をビジネスの現場で実践し続ける。こうしたアプローチ無しに、もはや事業としての成長は困難となっています。ソフトバンク ショップの代理店業を主に展開するファーストスクエアは、次代を見定めた販売戦略を実践することで、競争や変化が激しい業界の中で大きな成長を遂げてきました。"次代を見定める" という同社の姿勢は、近年の取り組みにも色濃く表れています。市場飽和が進んだことで、"新規出店" ではなく、代理店の切り替えをもった既存店舗の "商流変更" によって市場拡大を図るという動きが各携帯キャリアで加速してきました。ただ、この場合、代理店契約の翌月には既存店舗を商流変更することが求められます。出店・開店までのリード タイムを短縮するために、ファーストスクエアでは事業や店舗運営に不可欠な業務 IT の在り方を、"所有" ではなく "利用" するという Device as a Service (DaaS) へとシフト。必要なサービスを備える業務 IT をわずか 1 日で用意できる――こうした仕組みを整備したことで、ビジネス スピードを大幅に高めています。飛躍的な成長を続けるファーストスクエアのビジネスは、DaaS サービス「Marutto 365」によって支えられています。

求められるのは、依頼の翌月にキャリア ショップを開店できるスピード感

携帯電話の代理店市場は、少数の企業が市場を占有する寡占状況にあります。市場の飽和も進む中、新規プレイヤーがシェアを伸ばすことは、容易なことではありません。大阪府に本社を構えるファーストスクエアは、2007 年に 2 店目となるキャリア ショップを開店以降、わずか 10 年で 25 店舗以上にまでその数を増やすなど、驚くべきスピードで事業を成長させてきました。

業界の中で同社が着々とプレゼンスを高めているのには、もちろん理由があります。株式会社ファーストスクエア 移動体事業部の栄本 真一朗 氏は「当社では、戦略と戦術と営業、これらの組織が速やかに連携できるよう、制度・風土・ IT ツールの 3 軸から業務環境を整備しています。」と述べ、ここから生まれる高いビジネス スピードが成長の理由だと語ります。

「全国にあるキャリア ショップの数は 8,341 を数えます。製品のコモディティ化も進んでいますから、エリア毎の特性を見極めてシーズンや時代の変化に併せた戦略を練る、そしてこれを戦術に落とし込んで店舗現場で実践しなければ、市場での生き残りは困難でしょう。当社が競争の激しい携帯電話市場において店舗数を拡大できているのは、本部と現場が密に連携して日々変わるお客様のニーズに応え続けていること、そしてこれが販売実績に繋がり、携帯キャリアから高い評価を得ている結果だと考えています」(栄本 氏)。

  • 株式会社ファーストスクエア 移動体事業部 営業戦略部 部長 栄本信一朗氏
  • 携帯電話の代理店市場は、既に一定のプレイヤーが確立されている。携帯キャリアが新規プレイヤーに店舗運営を任すことには、当然相応のリスクがある。こうした中にあっても主要取引先であるソフトバンクから数多くの店舗を任されているのは、ファーストスクエアの持つ優れた店舗運営が理由だと言える

    携帯電話の代理店市場は、既に一定のプレイヤーが確立されている。携帯キャリアが新規プレイヤーに店舗運営を任すことには、当然相応のリスクがある。こうした中にあっても主要取引先であるソフトバンクから数多くの店舗を任されているのは、ファーストスクエアの持つ優れた店舗運営が理由だと言える

実績情報や他のキャリア ショップの動向など、顧客ニーズに即した売り場づくりにあたっては、見るべきデータが多量にあります。ファーストスクエアでは、本部と店舗が利用する IT 環境を同一のものに統一し、双方が密接に連携しながら売り場をつくっていくことで、先述した実績を残し続けています。中でもユニークなのが、この IT 環境に DaaS の概念を取り入れていることです。

既に携帯キャリア各社では、市場性の高いエリアへの出店を概ね完了させています。このため、近年は "新規出店" ではなく、より販売力のある企業へ代理店をシフトして既存店舗を "商流変更" する、これによってシェア拡大を図るという動きが加速しているといいます。栄本 氏は、先の DaaS を取り入れた狙いにはまず、ここへの対応性を高めることがあったと述べます。

「注目すべきは開店までのリード タイムです。新規出店の場合、開店までには数か月の猶予があります。ところが代理店の切り替えでは、話を頂いた翌月に商流変更するようなスピード感が求められます。本部と密接に連携し過不足の無い売り場づくりを進める、このためには IT が不可欠です。ただ、これをゼロから調達し、設定・展開していては、とてもではありませんが 1 か月では終わりません。当社が DaaS の概念を取り入れたのは、今の市場の求めるビジネス スピードに追従していくことが理由でした」(栄本 氏)。

DaaS によって、依頼の翌日に業務 IT が納品される環境を整備

業務に必要なIT 環境を、"所有" から "利用" するというスタイルへ転換する――このためにファーストスクエアでは、パシフィックネットの提供する「Marutto 365」を採用。PC・ソフトウェアの調達や保守、通信、セキュリティ、運用管理のすべてをパシフィックネットに委託することで、先述したビジネス スピードを獲得しながら IT 部門の管理負荷も大幅に削減しています。

株式会社パシフィックネット 執行役員 ITソリューション2部の亀田 崇宏 氏は、「Marutto 365」の特徴について、Microsoft 365 を同サービスの中で採用していることに触れながらこう説明します。

「『Marutto 365』は PC リースとは全く異なるサービスです。通常の業務 IT のライフ サイクルでは PC ベンダーやリース ベンダー、ソフトウェア ベンダーなど数多くの事業者が介入するため、お客さまは全ベンダーと契約し、都度問い合わせ対応をせねばなりません。窓口の分散は、業務 IT を整備するまでのリード タイムや運用負荷、安定したサービス提供に多大な悪影響を引き起こします。『Marutto 365』は、PC だけでなくここで稼働する情報系サービスの Office 365、Windows 10 Enterprise と Enterprise Mobility + Security (EMS) を利用した運用管理・セキュリティ管理など、業務 IT のライフ サイクル上の全要素をワン ストップで請け負います。文字通り "まるっと" お任せ頂くことで、ユーザーは迅速かつ手離れの良い形で、最新の業務 IT を利用できます」(亀田 氏)。

  • 株式会社パシフィックネット 執行役員 ITソリューション2部 部長 亀田崇宏氏
  • Marutto 365
  • 業務 IT のライフ サイクルでは数多くの事業者が介在する。委託ベンダーを一本化することで、各工程のリード タイムを短縮し、IT 部門の管理負荷も大幅に削減することが可能1
  • 業務 IT のライフ サイクルでは数多くの事業者が介在する。委託ベンダーを一本化することで、各工程のリード タイムを短縮し、IT 部門の管理負荷も大幅に削減することが可能2
  • 業務 IT のライフ サイクルでは数多くの事業者が介在する。委託ベンダーを一本化することで、各工程のリード タイムを短縮し、IT 部門の管理負荷も大幅に削減することが可能

  • 情報系 IT スイートの Office 365 と Windows 10 Enterprise、モバイル セキュリティ スイートの EMS を提供する Microsoft 365 によって、ユーザーは常に最新且つセキュアな業務IT を利用することができる

    情報系 IT スイートの Office 365 と Windows 10 Enterprise、モバイル セキュリティ スイートの EMS を提供する Microsoft 365 によって、ユーザーは常に最新且つセキュアな業務IT を利用することができる

「Marutto 365」の特筆すべき点として、キッティング レスな業務 IT を整備できることが挙げられます。「Marutto 365」では、 Windows AutoPilot を利用し、管理者側で指定したコンピューター設定を各業務 PC へ自動適用するサービスを提供。亀田 氏は、「デバイスと Microsoft 365 のユーザー アカウントを紐づければ、後はインターネットに接続するだけで指定された設定が自動的に適用されます。マスター作成、クローニングなどの作業が不要なため、PC 調達の依頼を受けた翌日にはこれを発送することができます。」こう説明します。

続けて栄本 氏も、「パシフィックネットには予備機を用意頂いているため、依頼した翌日に必要な機能を備える PC が納品されます。このスピード感は、店舗運営やリニューアルなどの対応性を高める上で非常に有用でした。キャリア ショップ以外を含めると当社で運営する店舗の数は 45 を数えます。各店舗の IT を運用するための工数負荷も課題化していましたから、これが解消できることも大きな魅力でした。」と、この点を高く評価しました。

  • Windows Autopilot では、Intune を通じて管理者のコンピューター設定を業務 IT に自動で割り当てることが可能。これによって依頼から納品までのリード タイムを大幅に短縮するほか、常に最新のコンピューター設定を適用させ続けることができる

    Windows Autopilot では、Intune を通じて管理者のコンピューター設定を業務 IT に自動で割り当てることが可能。これによって依頼から納品までのリード タイムを大幅に短縮するほか、常に最新のコンピューター設定を適用させ続けることができる

さらに、これ以外にもファーストスクエアが「Marutto 365」に期待した事項があったといいます。栄本 氏は、店舗スタッフが IT を利用するその裏側でセキュリティが守られている仕組みが必要だったと述べます。

「アンチマルウェア機能の Windows Defender ウイルス対策 や デバイス暗号化 の BitLocker などを実装すれば、エンドポイント セキュリティの水準を高めることができます。また、Intune ではデバイスのセキュリティ情報を一元的に可視化することができ、インシデントが発生しても Mobile Device Management 及び Mobile Application Management などの仕組みによって本部で遠隔対処が可能です。ビジネス現場の業務を阻害することなくセキュリティ水準を高められると期待し、店舗だけでなく全社の業務 IT へ『Marutto 365』を採用することを決定しました」(栄本 氏)。

"「Marutto 365」が標準で備える機能だけで、十分なレベルにまでセキュリティ水準を高めることができます。他のツールを導入する必要が無いため、ビジネスの速度とセキュリティ水準を従来以上に高めながら、情報関連経費はほぼ据え置きとすることが可能でした。当社としては、これを採用しない手はなかったと考えています。"

-栄本 真一朗 氏 : 移動体事業部 営業戦略部 部長
株式会社ファーストスクエア

Microsoft 365 が、「Marutto 365」の持つ迅速性を支える

ファーストスクエアでは 2019 年 3 月現在、同社の運営する別事業部含む 45 の店舗全ての業務 IT を「Marutto 365」環境へ移行しています。これと並行し、営業部門など本部の業務 IT の移行作業も進行。現在稼働する Windows 7 端末のリプレースに併せて全業務 IT を同環境へ統一することが目指されています。

栄本 氏は、移行からまだ間もないながら本取り組みにおける成果を実感した出来事があったとし、こう述べます。

「デバイスはどうしても故障や初期不良があるものです。店舗運営にあたって業務 IT は不可欠ですから、故障時の保守対応をいかに迅速にできるかがビジネスを大きく左右します。『Marutto 365』の導入後、一度だけ業務 IT の挙動が怪しいと店舗から問い合わせが入ることがあったのですが、パシフィックネットに連絡することで、翌日には代替機を現場に納品することができました。不具合などが発生した場合、これまではオンサイトで訪問して原因を突き止める、そしてその後、原因に対処したり新たな機器を手配したりせねばなりませんでした。どれだけ急いでも問題解決までに数日を要しますから、これが手離れ良く即日で解決できるようになったことは、大きな成果だと言えます」(栄本 氏)。

続けて亀田 氏は、こうした迅速な対応を取ることができる理由には、 Microsoft 365 をサービス基盤に利用していることが極めて大きいと述べます。

「『Marutto 365』は "ワン ストップ故に迅速な対応が可能" という大きな強みを持っています。仮に 3rd Party サービスの組み合わせで『Marutto 365』を構成していたとすると、ここまで高いスピード感を持ったサービスにはならなかったでしょう。お客様から相談を受けた際に当社も各ベンダーへ問い合わせる必要があるからです。One Microsoft で同サービスを構成したことは、当社サービスの価値を高める上でも有効だったと感じています」(亀田 氏)。

"戦略を戦術にしてこれをスピーディに実行していく。そのためには管理などの作業 を排除して、可能な限り本業にリソースを集中させることが求められます。「Marutto 365」を介して "作業の排除" を支援することで、ファーストスクエア様のビジネスを支えていきたいと考えています。"

-亀田 崇宏 氏 : 執行役員 IT ソリューション2部 部長
株式会社パシフィックネット

DaaS の採用で生まれたリソースを原資に、攻めの IT を進める

「Marutto 365」による業務 IT の刷新は、当初想定していなかった効果も生み出しているといいます。モバイル セキュリティの水準を高めたことで、業務 IT の社外利用、これに伴うテレワーク、モバイル ワークなどの動きも進んだのです。

栄本 氏は、「本部社員の生産性を高めることもビジネス スピードの加速に繋がります。今後も店舗と本部の双方の業務最適化を進めることで、事業を飛躍させていきたいと考えています。」と述べ、今後の構想を次のように語ります。

「店舗で言えば、Office 365 の StaffHub を利用してビジネスの最前線にいるスタッフのコミュニケーションを変革することを今後考えています。また、本部側も、例えば市場データをより明確に可視化できる仕組みを Microsoft Power BI で作成しこれを展開すれば、これまで以上にお客様に寄り添った売り場づくりが進められるでしょう。幸いにも、『Marutto 365』によって私たち IT 担当の "作業" の負荷も劇的に削減できました。こ こで生まれたリソースを原資に、こうした攻めの取り組みを加速させて参ります」(栄本 氏)。

次代を見極めたビジネス展開により、後発ながら市場におけるプレゼンスを着々と伸ばしてきたファーストスクエア。「Marutto 365」の採用にも見て取れるように、同社の武器であるビジネス スピードは、衰えるどころか益々その勢いを高めつつあります。顧客や取引先からの高い評価とともに、今後も同社はいっそうの発展を遂げていくことでしょう。

  • 株式会社ファーストスクエア 移動体事業部 営業戦略部 部長 栄本信一朗氏、株式会社ファーストスクエア 移動体事業部 営業戦略部 部長 栄本信一朗氏

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