小売店舗における防犯対策、工場における安全管理、地震や河川の氾濫などの災害監視など、現在監視カメラは幅広い目的、用途で導入が進んでいる。 本連載では、監視カメラを導入・活用するために検討すべきポイントについて、3回にわたって解説する。第2回目は、異なる種類のカメラが混在している環境でも、一元管理・操作できるシステムを選ぶ際に、重視するべき主なポイントを3つ紹介しよう。
その1:スモールスタートが可能か
IP監視カメラが持つ最大の特徴、それは拡張性の高さである。例えば、小規模の利用で台数を増加する予定がないのであれば、無理にIPカメラを導入する必要はない。一方で「工場全体を網羅できる台数を揃えたい」「すべての店舗に監視カメラを導入したい」など、台数の拡張を視野に入れているのであれば、IP監視カメラは最適な選択肢になるだろう。
しかし、一般的にIP監視カメラは、アナログカメラと比べて1台あたりの価格が高額になるケースがある。多くの企業にとって数十台から数百台にも及ぶような大規模IP監視カメラシステムを“一括導入”することは、コストの面でも運用の面でも高いハードルとなる。そのため、まず小規模で導入して試し、その上で徐々に拡張する、という流れを選択することになるだろう。
高い拡張性を持つIP監視カメラは、このようなスモールスタートに適している。となれば、システム側もスモールスタートが可能でなければ、その特性を活かせない。近年は、クラウドの普及にともない、スモールスタートが可能なシステムやサービスが増えている。IP監視カメラのシステムにおいても、この流れに沿ったものである方が、将来の選択は広がるはずだ。
その2:マルチベンダーに対応可能か
連載1回目でも言及したが、監視カメラは「映す対象物」と「監視する目的」が異なれば、選ぶべき機能や性能も異なる。大規模な監視システムになればなるほど、対象物と目的に合わせ、それぞれ最適のカメラを選択していく方が目的効果も高くコストも削減できる。
ただし、それぞれの場面で最適だと思われる製品が全て同じメーカーのもので揃えられるとは限らない。一般的に、IP監視カメラにはそれらを管理するための基本ソフトウェアが付属されている。基本的な管理運用であるのなら、このソフトウェアでも十分に活用できるだろう。しかし、運用できるのはあくまでもそのメーカーが提供するIP監視カメラだけ。当然ながら他社メーカーのIP監視カメラには使えないからだ。
IP監視カメラの台数を増やす必要があり、他社メーカーから安価で高性能な機器カメラが発売されていたとしても、ソフトウェアが対応していないため他社メーカーの機器カメラは選択できない。このような典型的なベンダーロックイン状態に陥ると、IP監視カメラが持つ「拡張性の高さ」がまったく活かせないことになる。
IP監視カメラを導入するメリットは拡張性の高さである。それが損なわれてはならない。IP監視カメラのシステムを選択する際は、マルチベンダーに対応している製品を選ぶ、これは重要な条件である。
その3:自社でしっかり運用ができるか
監視カメラの目的、それは問題の発生を防ぐことと、問題が発生した際に原因を特定することだ。したがって、監視カメラを設置しただけでは目的を達成したことにはならない。監視カメラは設置して終わりではなく、設置してからどう運用していくのかが重要である。IP監視カメラシステムの運用は自社内で行うこと。これを前提にして、ソフトウェアの使い勝手やベンダー側のサポート体制などについても検討項目とすべきだろう。
食品業界を例にあげると、数年前までは、異物の混入があったとしても個人からのクレーム電話がかかってくる程度であり、個別対応もできただろう。だが昨今では、ごく僅かな異物の混入であっても、それがSNSを通じて爆発的に広がり社会問題にまで発展する可能性もある。その時になって、ログを解析して原因を探ろうとしても、ノウハウがなければその要因を解明することができず、時間ばかりが経過してしまい、対応の遅さからさらなる“炎上”を招いてしまう危険性もある。
カメラの性能は日進月歩で進化している。将来的には、工場内の監視は何十台ものカメラを設置するのではなく、数台のドローンを飛ばして監視するようなシステムに変わるかもしれない。あるいは、人ではなくAIが監視するようになるかもしれない。それは、決して遠い未来の話ではないはずだ。
IP監視カメラが持つ特徴は、このような進化や変化にも対応できる点にある。システムはもちろん、それを運用する側についても、進化や変化に対応できる体制をとっておくべきだ。
監視カメラについて解説する連載。その最後を飾る次回には、IP監視カメラの導入事例を元に、具体的な導入手順を紹介する予定だ。
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