小売店舗における防犯対策、工場における安全管理、火山の噴火や河川の氾濫などの災害監視。現在、監視カメラは幅広い目的、用途で導入が進んでいる。 本連載では、監視カメラを導入・活用するために検討すべきポイントについて、3回にわたって解説する。第1回目は、近年、監視カメラの主流となりつつあるネットワークカメラ(IPカメラ)について、その現状と導入する際の注意点について紹介しよう。

成長を続ける監視カメラ市場

調査会社である富士経済の発表によると、2020年の監視カメラ市場は491億円と、2016年比で21.8%増が見込まれている(*1)。2020年には東京五輪の開催も控えており、今後もテロ・犯罪対策の有効なツールとして、監視カメラのニーズは高まり続けるだろう。また犯罪対策以外の用途についても、画像解析やAIツールを利用したサービスの提供などによって、さらなる市場の拡大が期待されている。

*1出典:2017年11月2日 富士経済プレスリリース 「2019年をピークとする東京五輪関連の需要増加が期待される セキュリティの国内市場を調査」より

このような市場拡大の原動力となっているのが、ネットワークを介してモニターに接続する「ネットワークカメラ」である。

かつて監視カメラは、同軸ケーブルでカメラとモニターを接続するアナログカメラが主流だった。しかし、ネットワークカメラが持つ高い機能性や拡張性が徐々に評価され、最近では需要が逆転している。先に紹介した富士経済の報告では、2015年の市場シェアは6割以上がネットワークカメラとなっており、2018年には8割を超えると予測されている。

ネットワークカメラとアナログカメラの違い

アナログカメラとネットワークカメラ、その違いは大きく分けて二つある。一つは遠隔操作、もう一つは拡張性である。

アナログカメラでは、監視できる範囲は同軸ケーブルが届く距離に限定される。もちろん、長いケーブルを用意すれば距離をある程度稼ぐこともできるが、その場合は、コストがかさみ転送のロスも増えることになる。また、カメラを追加するには、台数分のケーブルとコネクタが必要となるため、アナログカメラはあまり大規模な監視システムには向いていない。

一方のネットワークカメラは、ネットワークが繋がる場所であれば、どこでも設置が可能で、かつどこからでもアクセスしてリモートによる管理・操作が可能だ。ネットワークに接続さえできれば、理論上は何台でもカメラを追加できるので、小規模から大規模な監視システムまで対応が可能だ。例えば、工場全体を網羅するような監視システムや、全国に展開する複数の店舗を本社のモニターで一元的に監視するシステムも、ネットワークカメラであれば容易に実現できる。

  • ネットワークカメラ 構成例

    アナログカメラ構成例

  • ネットワークカメラ 構成例

    ネットワークカメラ構成例

最適なネットワークカメラ選びの秘訣とは

近年のネットワークカメラは、高機能化・高画質化が進み、種類も多種多様である。その中から最適なカメラを選択するためには、まず目的をできるだけ明確にしなくてはならない。

例えば小売店の場合、店舗内での万引きを防ぎたいのか、夜間に外部からの侵入を防ぎたいのかによって、選択すべきカメラは異なる。前者であれば、死角を少なくするために画角が広いカメラが適している。一方、後者の場合は、侵入口を見張ればいいので広い画角よりも、少ない光量でも映るだけの高い感度が求められる。場所によっては、赤外線機能が必要なケースもあるだろう。

屋外に設置する場合、もし交通量が多い幹線道路沿いであるのなら、ヘッドライドで人影が見えなくなることもあるので光量調整機能があるものが望ましい。津波や洪水などの監視であれば高い防水性が必須だろうし、製鉄所のような場所の監視であれば耐熱性も重視されるべきだろう。

当然、高価な監視カメラは高機能であり、複数の機能を兼ね備えた汎用性の高い製品も存在する。だが、よほど潤沢な予算がない限り、すべてのカメラを高機能で高価な製品にすることは難しい。一方で、コストだけを見て安価なカメラで揃えてしまうのもまた、注意が必要である。屋内であれば、安価なプラスチック製の製品でも事足りるかもしれないが、環境の厳しい屋外には、しっかりとした防水、耐熱性・のある金属製のカメラを選択すべきだ。

ネットワークカメラはシステムの導入と同じと考える

監視カメラを導入するとなると、どうしてもカメラ本体の性能や価格に意識が向きがちである。だがネットワークカメラは、自ら画像を処理してネットワークへの伝送伝承処理を行う、それ自体が一台のコンピュータのようなもの。つまりネットワークカメラの導入には、ネットワークを介したシステムの導入が必ずついて回る。ここを念頭に置く必要がある。

2016年に大きな話題となった監視カメラのハッキングサイト「Insecam」。ここでは、全世界数万台の監視カメラの映像が公開されており、日本国内にある監視カメラも約7,000台が確認されている。そして、ハッキングされた原因の多くが、IDとパスワードが初期設定のままだったためだと言われている。

ネットワークを介したシステムを導入する際、セキュリティ対策は最優先で対応しなければならない。そこがおろそかだったという事実は、非常に深刻だ。防犯が目的であるはずの監視カメラが、情報漏えいやプライバシーの侵害などの犯罪に利用されてしまっては本末転倒である。

複数のカメラをリアルタイムで監視する場合には、ネットワーク帯域を確保するための工夫が必要になるし、録画蓄積した映像データの解析を重視するのであれば、保存するストレージの容量や信頼性を考慮しなくてはならない。また、システムの保守やメンテナンスも重要な検討項目の一つだ。システム冗長化などの障害対策や、万が一の時のシステム復旧体制も備えておかなくてはならない。

このように考えると、監視カメラの導入は、新規システムの導入と等しいということがご理解いただけるだろう。つまり監視カメラの導入は、カメラだけではなく、システムの面でも注意すべき点が発生する。

第二回目は、ネットワークカメラを導入する際に、どのようなシステムを選択すべきか、そのポイントについて解説しよう。

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