この連載では、クラウド経由でネットワークの運用管理を行えるNETGEAR Insight(以下、Insight)アプリの紹介と、Insightに対応したLANスイッチの設定方法や管理方法について説明していきます。第一回では、SOHO(Small Office & Home Office)や小規模な事務所のネットワーク運用管理方法として、Insightをご紹介しました。第二回の本稿では、Insightの使い方を説明します。
1.Insightアプリのセットアップ
Insightを使うには、セットアップが必要です。事前準備として、アプリ&クラウド機器(Insightに対応したLANスイッチなど)をネットワークに接続し、インターネットと通信できるようにしておきます。アプリ&クラウド機器は、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)を利用してIPアドレスを自動取得できる必要があります。DHCPが有効であれば、ツイストペアケーブルで接続するだけでインターネットに接続できる事がほとんどです。また、スマートフォンが同一ネットワークに接続されていると、Insightを使ってアプリ&クラウド機器の自動検索が可能です。
Insightは、iPhoneではApp Store、AndroidではGoogle Playで「NETGEAR Insight」と検索して入手できます。今回はiPhoneでのセットアップ例を示しますが、Androidでもセットアップ方法は同じです。記事作成時は英語表示ですが、最新アプリでは日本語対応となっています。
「入手」をタップしてインストールし、アプリを起動した後は以下の手順でセットアップします。手順の番号は、画面の番号に対応しています。
(1) 「”Insight”は通知を送信します。よろしいですか?」と表示されるため、「許可」をタップします。
(2) イントロ画面は、右にスライドさせて全て読むと(3)の画面が表示されます。画面下の「SKIP INTRO」をタップすると、(3)をスキップして(4)の画面になります。
(3) 「CREATE ACCOUNT TO GET STARTED」をタップします。
(4) すでにMyNETGEARのアカウントを持っている場合は「Sign in」、新しくアカウントを作成する場合は、「Create MyNETGEAR Account」をタップします。「Sign in」では、メールアドレスとパスワードを入力してログインします。アカウントを作成する場合は、メールアドレスを登録したりします。登録したメールアドレスに確認メールが送付されてくるため、指定されたURLにアクセスして登録を完了させます。
(5) ログインが完了すると「Pro Tip」が表示されますが、右上の「×」をタップします。
(6) 画面右上の「+」をタップして、管理対象とする機器を選択します。
(7) 管理対象機器の登録方法には、以下4通りあります。
a)バーコードを読み取る。
b)QRコードを読み取る。
c)シリアルNoを手動入力する。
d)自動検索する。
バーコードやQRコードを読み取ると、シリアルNoが自動で入力された状態になります。バーコードなどは、装置裏面のシールに記載されています。シリアルNoを自動、もしくは手動で入力後、右の「Go」をタップします。ポップアップが表示されるため「OK」をタップすると、(9)の画面になります。「Scan Network」で自動検索する場合は、(8)(9)の順で進めます。
(8) 自動検索した場合、管理対象とする機器を選択し、「NEXT」をタップします。ポップアップが表示されるため、「OK」をタップします。
(9) ネットワーク名とパスワードを入力し、「NEXT」をタップします。ポップアップが表示されるため、「OK」をタップします。
(10) 管理対象機器の名前を変更することができます。入力後は「NEXT」をタップします。ポップアップが表示されるため、「CONTINUE」をタップします。
(11) 確認画面のため、そのまま「VIEW DEVICES」をタップします。
(12) 管理対象とした各機器が表示されます。
(12)画面のように、ネットワーク名(上記では「soho」)が表示されて、その下に管理対象の機器一覧が表示されていれば、セットアップは完了です。セットアップ完了後は、Insightのアイコンをタップするだけで、(12)の画面が表示されます。
2.ネットワーク機器の管理
準備が整ったところで、実際の管理方法について説明します。機能は大きく分けて4つあります。画面下部で選択できる「Devices」、「Health」、「Networks」、「Notifications」です。それぞれの機能は、以下の通りです。
・Devices
Devicesを選択すると、下図左のように管理している機器の一覧が表示されます。左にランプが表示されていますが、緑であれば正常です。もし、クラウドとの通信が正常でない場合、赤で表示されます。各機器をタップすると、下図右のように機器のイメージ画像やポートの状態などが表示されます。
どのポートがアップしているなどがわかりますが、ここから設定も行えます。また、通信量(Traffic)などの確認もできます。
・Health
Healthを選択すると、上のタブで「Wireless」、「Wired」、「Storage」が選択できます。順に無線AP、LANスイッチ、ReadyNASを示します。例えば「Wired」を選択すると、ポートがどのくらい使われているか、エラーがあるかなどが表示されます。右にスライドさせると、PoE(Power over Ethernet)の利用状況が確認できます。PoEとは、LANスイッチからツイストペアケーブル経由で電力を供給する仕組みです。更に右にスライドさせると、通信量が参照できます。
・Networks
Networksを選択すると、以下のメニューが表示されます。無線AP、LANスイッチ等の情報を参照したり、設定したりできます。「Firmware Management」では、装置のファームアップもできます。また、「Edit Network」ではセットアップしたネットワークを削除する事もできます。
・Notifications
「Notifications」を選択すると、CRITICAL、WARNING、NOTIFICATIONSに分けて情報を表示します。CRITICALの情報は、ユーザー登録した時のメールアドレスにも送信されます。また、通知を許可していれば、スマートフォンのロック画面にもメッセージが表示さます。
3.今までのネットワーク運用管理との比較
本格的なネットワークの運用管理を行う場合、専用のサーバを構築し、サーバから各装置を監視します。多くの場合、Web GUIでサーバに接続し、ネットワークの状態を確認する事ができます。また、アラートをメールで送信する事も可能です。この場合、外出先で簡単に参照できるのは、メールの情報だけです。詳細を確認するためには、VPN(Virtual Private Network)で事務所のネットワークに接続する必要があります。
このように、本格的にネットワークを運用管理しようとすると、サーバとVPN装置を用意する必要があり、時間とお金がかかります。SOHOネットワークでは、LANスイッチや無線APよりコストがかかり、本末転倒です。このような事から、SOHOネットワークではサーバを用意せず、LANスイッチからアラートメールだけ送信している、もしくは何も管理していないという事が多いと思います。
Insightは、サーバを必要とせず、簡単なセットアップですぐにネットワークの運用管理ができます。また、外出先からでもVPN装置を必要とせず、クラウド経由で管理できます。Insightは、アプリ&クラウド機器を2台まで無料で管理できます。つまり、Insightに対応したLANスイッチ、無線APを購入すれば、一般的なSOHOネットワークを構築できるだけでなく、無料でネットワークの運用管理(可視化)までも可能になります。
4.おわりに
今回、NETGEAR Insightの使い方を解説しました。本格的なネットワーク管理サーバでは、設定も多岐にわたりますが、Insightはほとんど何も設定せずに、すぐ管理・監視できるようになります。
次回は、Insightを利用したLANスイッチの設定方法について解説します。
のびきよ
2004 年に「ネットワーク入門サイト」を立ち上げ、初心者にも分かりやすいようネットワーク全般の技術解説を掲載中。著書に『短期集中! CCNA Routing and Switching/CCENT教本』、『ネットワーク運用管理の教科書』(マイナビ出版)がある。
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