この連載では、クラウド経由でネットワークの運用管理を行えるNETGEAR Insight (以下、Insight)アプリの紹介と、Insightに対応したLANスイッチの設定方法や管理方法について説明していきます。第一回の本項では、Insightを利用することで、これまでのネットワーク運用管理とどのような違いがあるのか、どんなメリットがあるのかを中心に解説します。
1.兼任IT管理者の大変さ
あなたは事務所のIT管理者を任されていて、ネットワークのトラブル対応なども行っています。IT管理者と言っても本職は営業で、日々お客様先に出向いて営業活動しています。ある日、出張している最中に先輩から電話がかかってきました。
これは非常に困った事態です。あなたもお客様との打ち合わせですし、先輩もお客様相手です。この場合、あなたのお客様にお願いして打ち合わせを再調整させてもらうか、先輩のお客様に少し待ってもらうようお願いするしかありません。先方が快く承諾してくれればいいのですが、場合によっては今後のビジネスに影響が出る事もあり得ます。 このように、SOHO(Small Office & Home Office)や小規模な事務所では、人数やコストもかけられない事から専任のIT管理者がおらず、業務と兼任している兼任IT管理者も多くいます。場合によっては、社長自らが兼任IT管理者という事もあります。兼任IT管理者としては、外出先からでも簡単にネットワークの管理ができないと、結構大変です。呼び出されて事務所に帰った挙句、プリンターのケーブルが抜けていただけだったなんていう事は、よくある話です。
2.外出先からのネットワーク管理方法
外出先から事務所のネットワークを管理しようとしても、通常はできません。インターネットとの接続はファイアウォールで守られており、外部から侵入できないためです。
一般的に、インターネットから事務所のネットワークを利用するためには、VPN(Virtual Private Network)を使います。VPNは、パソコンやスマートフォンを仮想的に事務所のネットワークと直結する事ができるため、事務所にいる時と同じようにネットワークが使えます。
つまり、VPNを利用すれば事務所内のネットワーク管理も行えます。VPNは、ネットワークの管理だけでなく、事務所にいる時のようにプリンターへ印刷したり、サーバにアクセスしたりできます。このため、用途は多いのですが、VPNに対応した装置が必要で、その設定やメンテナンスも必要になります。また、外出時にパソコンを起動して、VPNで接続するのが難しい場面もあります。この時、スマートフォンでVPN接続したとしても、スマートフォン専用のアプリでなければ、操作は簡単ではありません。
3.外出先からもスマートフォンを使って自由にアクセスできるInsight
これらの課題を解決する方法として、Insightがあります。Insightは、スマートフォン専用のアプリです。Insightを利用すると、インターネットからクラウドを経由して、事務所のネットワークを運用管理できます。
クラウドの場合、インターネットから自由にアクセスできるため、外出先からスマートフォンを使って自由にアクセスする事ができます。Insightにより外出先からアクセスすると、LANスイッチのポートがアップしている、ダウンしているかなどが視覚的にわかるよう表示されるため、プリンターのケーブルが抜けているなども判断できます。
InsightはLANスイッチだけでなく、無線LANのAP(Access Point)にも対応しています。以下は執筆時点の対応製品と、製品画像例です。
・LANスイッチ
・無線AP WAC510:867 Mbps (5GHz)/300 Mbps (2.4GHz)、PoE受電
NETGEARでは、これらInsightに対応した製品を「アプリ&クラウド」機器と呼んでいます。つまり、アプリ&クラウド機器で事務所のネットワークを構築した場合、外出先から手軽にネットワークの監視を行えます。また、Insightから設定変更も可能なため、急な変更依頼があった場合でも、外出先から簡単に対応できます。アプリ&クラウド機器であれば、全ての設定をスマートフォンだけで行えるのもInsightの特徴です。 更に、NETGEAR製品であれば、アプリ&クラウド機器以外でもInsightから管理したり、モニターしたりする事が可能な製品があります。
Insightは、2台までの管理であれば無料で利用できます。また、3台目からは1台につき、年間560円(執筆時点の価格)で使えます。
4.サポートビジネスでの活用
Insightは、サポートビジネスで活用する事も可能です。SOHOユーザーを対象に、ネットワーク機器を販売している会社も多くあると思います。SOHOユーザーでは、導入後のメンテナンスが困難なため、販売会社にサポートをお願いしたいと思うのが普通ですが、コストをかけられないといったジレンマもあります。販売業者も、メンテナンスの度に現地に行くとコストがかかるため、それなりのサポート費用を請求する必要があります。このため、SOHOユーザーはサポートをあきらめてしまい、ビジネス機会の損失につながります。 このような時、ユーザー先にアプリ&クラウド機器を導入すれば、Insightを利用して遠隔サポートが可能となり、ビジネスチャンスを広げる事ができます。
遠隔サポートが可能であれば、複数ユーザーのネットワークを一度に監視する事が可能になります。また、今すぐ設定変更して欲しい、LANスイッチの状態を確認して欲しいといった要望にも応える事が可能になります。 同様の事は、SOHOユーザーの事務所にVPNで接続しても行えますが、VPN装置を購入・設定する費用が発生します。また、VPNはユーザーのネットワークを自由に使える事もできるため、サポートをお願いしているとは言え、SOHOユーザーにとって個人情報や機密情報にアクセスされるかもしれないというのは、避けたい状況です。 Insightによる遠隔サポートでは、アクセスできるのはLANスイッチや無線APなどの管理対象機器だけです。このため、SOHOユーザーにとっても安心です。遠隔サポートであれば価格も安く抑えられるため、SOHOユーザーも契約し易くなります。このような事から、Insightを活用して複数顧客を獲得しつつ、長期リピートも獲得するといった、ビジネスモデルが可能になります。
5.おわりに
今回、NETGEAR Insightを利用した、ネットワーク運用管理のメリットを解説しました。Insightにより、IT管理者やサポート業者が現地で対応するといった軛(くびき)から解放され、どこからでも素早く対応する事が可能になります。 次回は、Insightの使い方を解説します。
のびきよ
2004 年に「ネットワーク入門サイト」を立ち上げ、初心者にも分かりやすいようネットワーク全般の技術解説を掲載中。著書に『短期集中! CCNA Routing and Switching/CCENT教本』、『ネットワーク運用管理の教科書』(マイナビ出版)がある。
[PR]提供:ネットギアジャパン