ITの急速な進化によって、あらゆる業種のビジネスにおいて“スピード”と“柔軟性”が重要視されるようになり、クラウドサービスの業務利用は当たり前のものとなった。複数のクラウドサービスを組み合わせた、“マルチクラウド”環境を構築している企業も増えてきたが、運用管理や、データ活用でさまざまな問題が噴出し、期待していた効果が得られていないケースも多いのが現状だ。本連載では、今後のITで避けては通れない、マルチクラウド/ハイブリッドクラウドの現状と、理想の環境を構築するために有効なソリューションについて3回にわたって詳しく解説。第2回は、アプリケーションのモダナイゼーションにより、マルチクラウド/ハイブリッドクラウドを使ったデジタル改革を加速させる日本アイ・ビー・エムのソリューション「IBM Cloud Private」にスポットを当てる。
今日クラウドサービスの利用は当たり前のものとなったが、すべての企業がクラウド導入に成功しているわけではない。ましてや、これからクラウドの本格導入や、マルチクラウド/ハイブリッドクラウドの展開を検討している企業ならば、どのようにクラウドと既存のITシステムを扱うか、戦略を策定することに加え、選択するソリューションが重要となる。そこで今回は、スモールスタートにも対応し、既存のシステムとのハイブリッドクラウド環境構築も容易に行える「IBM Cloud Private」について、日本アイ・ビー・エム株式会社 IBMクラウド事業本部の上野 亜紀子氏にお話をうかがった。
既存アプリケーションのモダナイズで、新たな価値を創造する
ビジネスにおけるクラウドの活用は当たり前のものとなり、クラウド活用のモチベーションもコストの削減からビジネス速度の向上やイノベーションの創出などに移り変わってきている。
「去年まで、企業のエグゼクティブの方々は、デジタルテクノロジーを使って新しいビジネスを展開する“デジタルジャイアント”と呼ばれる企業に脅威を感じていました。ところが今年は、同じ業界内の革新的な企業に脅威を感じるエグゼクティブが増えてきています」(上野氏)
新しいビジネス、新しいサービスをクラウドネイティブで作るだけでなく、既存の資産の価値をクラウドと連携させることで向上させていくという流れが始まっていると上野氏は指摘する。クラウドサービスを導入して、新しいテクノロジーを使ったアプリケーション・サービスを展開したいという企業は多いが、既存のアプリケーションを個別に運用するのは効率的な手法とはいえない。そのため、クラウドを導入した企業では、クラウドへのリフト(アプリケーションのクラウド移行)を行い、オンプレミスで運用していたアプリケーションをクラウド上に移行させるケースが増えてきているという。さらに、クラウド移行したアプリを、最新のクラウド・テクノロジーを活用してモダナイズ(最新化)することが進んできた。従来の仮想環境ベースのアプリケーションと、コンテナ技術やマイクロサービスを活用した最新アプリケーションが混在し、それがオンプレミスと複数のクラウド上で展開されるという、まさにマルチクラウド/ハイブリッドクラウドな環境が構築されているわけだ。
企業のIT管理部門は、こうした複雑な環境を管理しなくてはならず、要求されるスキルも高くなる。必要となるのは、アプリケーションのモダナイゼーションを効率的に行えるだけでなく、マルチクラウド/ハイブリッドクラウド環境を一元管理できるソリューション。そこで注目したいのが、「IBM Cloud Private(ICP)」だ。
マルチクラウドで展開しているアプリを一元管理できるツールも用意
クラウドとオンプレミスでのプライベートクラウド環境などを混在させたハイブリッドクラウド環境を構築している企業は増えてきているが、プライベートクラウド活用の70%は既存アプリケーションをモダナイズするというニーズから導入されているという。IBM Cloud Privateを導入すれば、Kubernetesベースで管理されるコンテナプラットフォームがプライベートクラウドとして提供され、クラウドネイティブのアプリケーションだけでなく、既存のアプリケーションにもクラウドのテクノロジーを活用できるようになる。IBM Cloud Privateの特徴は、オープンテクノロジーベースのクラウドアプリ開発および実行環境を、環境を問わず利用できることにあると上野氏は語る。
「企業がクラウドアプリ開発ツールを選定する際にポイントとなるのは、オープンテクノロジーベースの製品であることです。今後、複数のクラウドを活用するようになることを考えると、ベンダーロックインされないツールを選ぶことが重要になります」(上野氏)
オープンソースのコンテナオーケストレーションシステムであるKubernetesはマルチクラウドに展開しやすく、一方で、クラウドアプリの活用が増えコンテナの展開が進むほど、Kubernetesの環境が、複数クラスタ、マルチクラウドに分散されて管理が煩雑になるというデメリットも生じる。すでにKubernetesやDockerなどのコンテナ技術をマルチクラウドで活用するという事例は増えてきており、効率的な管理を行うためのツールが求められているのが現状だ。そのため、IBMでは、IBM Cloud Private上のコンポーネントとして「IBM Multicloud Manager」をリリースした。これを導入することで、Kubernetesを活用してマルチクラウドやマルチロケーションで展開しているアプリを一元管理することが可能となり、管理者にかかる負担を大幅に軽減できる。IBM Cloud Privateが提供するセキュリティ管理、監視、ダッシュボード、ログ管理、オーケストレーション、プロビジョニングといった機能と連携することで、クラウドアプリのライフサイクル全体での生産性向上に大きく貢献するという。
Kubernetesのプラットフォームを提供し、既存のアプリケーションのモダナイゼーションやクラウドネイティブのアプリを開発・運用するための環境が容易に構築できるIBM Cloud Privateは、スモールスタートでクラウド導入を開始し、ハイブリッドクラウド環境の構築からマルチクラウド展開までをスムーズに行える製品となっている。IBM Multicloud Managerを使用すれば、マルチクラウドに展開されるクラウドネイティブのアプリも効率的に開発・運用することが可能。まずは既存の資産をモダナイズ(クラウド化)して、そこからクラウドネイティブのアプリを組み合わせてマルチクラウドでビジネスを推進したい企業にとって、IBM Cloud PrivateとIBM Multicloud Managerの組み合わせは、非常に魅力的な選択肢となるはずだ。
関連記事はこちら →
ハイブリッド・クラウド環境、オンプレミス環境の最適化と保護
※この記事は2018年10月時点の情報をもとに作成しています。
[PR]提供:日本アイ・ビー・エム