Web 会議やチャットを行うためのツールとしてオフィスワーカーに広く採用されている Microsoft Teams。Teams は多彩な機能を提供しており、近年では、それらをオフィスワークだけにとどめるのでなはく、工場や工事、店舗、配送などのフロントライン業務でも活用していこうという動きが進んでいます。その 1 つとして注目できるのが Teams のトランシーバー機能です。マイクロソフトの年次イベント「Microsoft Ignite」東京会場では、Teams のトランシーバー機能を活用して、現場における新しい働き方を模索しました。担当者がイベント運営の舞台裏を明かします。

イベント運営協力会社:株式会社ケーズスタッフ

「現場」の働き方を変えるツールとして注目、「コラボレーションツールと一体化したトランシーバー」とは

リモートワークやテレワークに代表されるように人々の働き方が大きく変わっています。これまではオフィスへの出社が前提でしたが、現在では必要に応じて「いつでもどこからでもどんなデバイスからでも」働くことができるようになっています。

こうした働き方の変化はオフィスワーカーに限定されるものではありません。製造業における工場や小売業における店舗、物流業における運送、建設業における工事現場など、これまでリモートワークやテレワークは不可能と思われていた「現場」においても、デジタル技術を活用して「時間や場所に縛られない」新しい働き方を模索する動きが広がっています。

その 1 つとして注目できるのが「コラボレーションツールと一体化したトランシーバー」です。トランシーバーは、製造工場や工事現場、店舗案内、イベント運営、会場警備など、現場でのコミュニケーションに欠かせないツールです。指示内容を複数の担当者に素早く同時に伝えたり、携帯電話の電波が届かない山間部や海上、トンネルなどで利用できたりといった、スマートフォンや携帯電話にはないメリットがあります。その一方で、端末を購入・維持する手間やコスト、利用にあたっての電波使用の許可取得、利用するチャネルごとに端末を用意する必要性など「専用機」ならではのデメリットもあります。

クラウド活用のトランシーバーは、利用する回線としてインターネット回線や無線 LAN を含めた IP ネットワークを利用することで、こうしたデメリットを解消し、より多くのメリットを引き出そうという試みです。固定電話や FAX の IP 化が多くの利便性をもたらしたように、クラウド活用のトランシーバーは、現場の働き方を大きく変える可能性を秘めています。

実際、欧米ではスマートフォンとワイヤレスヘッドセット/イヤホンを組み合わせ、クラウド経由でトランシーバーのように利用するソリューションの市場が活況を呈しています。特に、高騒音環境向けソリューションとして高い人気を誇るのがデンマークに本社を置く GNグループです。国内では企業向けおよびコンシューマ向けヘッドセット/イヤホン「Jabra」の展開で知られており、現場向けソリューション「BlueParrott」の採用事例も急速に広まっています。

この BlueParrott をイベント運営に活用し、新しい働き方の可能性を探ったのが日本マイクロソフトです。2022 年 10 月 13 ~ 14 日に開催された年次イベント「Microsoft Ignite」東京会場の運営で、Microsoft Teams(以下、Teams)とヘッドセット BlueParrott を連携、Teams のトランシーバー機能「Walkie Talkie」を使って「いつでもどこからでもどんなデバイスからでも」という新しいコミュニケーションのかたちを実践したのです。

  • 2022 年 10 月開催「Microsoft Ignite」の東京会場にて
  • 2022 年 10 月開催「Microsoft Ignite」の東京会場にて

    2022 年 10 月開催「Microsoft Ignite」の東京会場にて

年次イベント「Microsoft Ignite」運営業務で、Teams のトランシーバー機能を活用

日本マイクロソフトは 2007 年に開始した在宅勤務制度を皮切りに、テレワークやリモートワークの取り組みを積極的に展開してきました。コロナ禍においてもデジタルを活用した変革やデジタル技術を駆使して多様な働き方を実現する「モダンワークスタイル」を掲げながら、本社オフィスの運営や働く環境の整備に取り組んできました。

こうした自社の取り組みのなかで得られた知見やノウハウは、マイクロソフトのソリューションにも生かされています。クラウド活用のトランシーバーの取り組みも、一連の働き方改革や新しい働き方に向けたソリューション提供の延長線上にあるものだといいます。日本マイクロソフト モダンワークビジネス本部 加藤 友哉 氏は、こう説明します。

  • 日本マイクロソフト株式会社 モダンワークビジネス本部 プロダクトマーケティングマネージャー 加藤 友哉 氏

    日本マイクロソフト株式会社 モダンワークビジネス本部 プロダクトマーケティングマネージャー 加藤 友哉 氏

「デジタル化が進むなかで、インフォメーションワーカーと呼ばれるオフィスで働く方々のワークスタイルは大きく変わりました。その一方で、フロントラインワーカーと呼ばれる現場の最前線で働く方々のデジタル化ははじまったばかりです。マイクロソフトでは、紙の業務をデジタル化したり、個別のツールを我々のソリューションに統合したりして、業務の効率や生産性の向上につなげていくご支援を行っています。例えば、紙で行っていた情報共有を Teams に統合したり、Teams が提供している機能で既存のツールを代替するなどです。Teams が提供するトランシーバー機能は、フロントラインワーカーの業務効率化や生産性向上につながる機能の 1 つとなります」(加藤 氏)。

Teams は、Web 会議やチャットツールのほかにもさまざまな機能を提供していて、トランシーバー機能もその 1 つです。このトランシーバー機能をマイクロソフト自身が活用した事例が Microsoft Ignite です。プロジェクトリーダーを務めた日本マイクロソフト セントラルマーケティング本部の相場 裕美 氏はこう話します。

  • 日本マイクロソフト株式会社 セントラルマーケティング本部 マーケティングコミュニケーションマネージャー 相場 裕美 氏

    日本マイクロソフト株式会社 セントラルマーケティング本部 マーケティングコミュニケーションマネージャー 相場 裕美 氏

「Microsoft Ignite はグローバルイベントで、2022 年は世界 6 つの地域で同時開催かつ、コロナ後に初となるオンラインと会場のハイブリッド開催となりました。東京会場では、マイクロソフトの担当者、イベント会社の運営スタッフ、警備担当、技術/映像エンジニアなど約 30 名が Teams のトランシーバー機能と、ヘッドセット BlueParrott を使って、会場内外でのさまざまな情報のやりとりに活用しました。Teams のトランシーバー機能を業務で活用している海外の事例はあったものの、日本国内で数百名規模が集まるイベント会場での利用例はありません。イベント運営の効率化や、運営スタッフの生産性向上につながるよい機会になると考え、採用を決めました」(相場 氏)。

GNオーディオジャパンのヘッドセット「BlueParrott C300-XT MS」と Teams を連携

大規模なイベントをオンラインと会場のハイブリッドで開催するため、会場内外でのやりとりは複雑になることが予想されました。また、トラブルに備えてトランシーバー機器の併用も行うためオペレーションやシステム構成をシンプルにすることが求められました。日本マイクロソフト セントラルマーケティング本部 統合マーケティング部の栗原 春香 氏はそうした条件のなかで BlueParrott を選定した理由についてこう説明します。

  • 日本マイクロソフト株式会社  セントラルマーケティング本部 統合マーケティング部 栗原 春香 氏

    日本マイクロソフト株式会社 セントラルマーケティング本部 統合マーケティング部 栗原 春香 氏

「BlueParrott は海外の作業現場で多くの採用実績があり、ワイヤレスヘッドセットとして高い操作性と品質を実現していることを評価しました。社内でフロントラインワーカー向け製品を扱う部署に相談したときに GNオーディオジャパン様の製品を紹介され、いくつかの製品のなかから、イベント運営に相応しいデバイスとして BlueParrott の『C300-XT MS』を選定しました。ワイヤレスで本体も軽く小さく、服装や髪形などを気にせずに装着しやすいところもポイントでした」(栗原 氏)。

GNオーディオジャパンは、国内でヘッドセットを中心にオーディオ、ビデオ機器事業を行なう会社です。エンタープライズ アカウント営業部 部長 高澤 俊行 氏は、こう説明します。

  • GNオーディオジャパン株式会社 エンタープライズ アカウント営業部 部長 高澤 俊行 氏

    GNオーディオジャパン株式会社 エンタープライズ アカウント営業部 部長 高澤 俊行 氏

「オフィスワーカーやフロントラインワーカー向けのヘッドセット、マイクスピーカー、カメラなどを開発・提供しています。音響メーカーとして優れた音質と映像品質を実現していることが特徴で、スピーカーとマイクのノイズキャンセリング機能や高い防塵防滴性能を活用して、大型トラック車内や建設現場などの大きな騒音や振動が発生する環境でもストレスなく利用することができます。また、Teams のミーティング機能や電話機能と連携して『ラストワンフィート』の使い勝手を向上させ、よりよいユーザー体験を提供することを目指しています。さらに、GNグループは、マイクロソフトとグローバルパートナーシップを結んでいて、Teams とスムーズに連携して動作することも特徴です。製品名 C300-XT MS の MS はマイクロソフトの機能向けに開発された製品を意味しています」(高澤 氏)。

さまざまな製品でマイクロソフト専用型番を開発しており、BlueParrott シリーズにおいても2022 年のファームウェアアップデートにより、Teams のトランシーバー機能との連携をサポートしました。現在は、C300-XT MS を含めて全 8 モデルが Teams と連携可能となっています。また、Jabra ブランドのヘッドセットやイヤホンについても、Teams のコミュニケーション機能との連携を強化しています。

  • 軽量で小さな BlueParrott「C300-XT MS」は、装着のしやすさも特長的
  • 軽量で小さな BlueParrott「C300-XT MS」は、装着のしやすさも特長的
  • 軽量で小さな BlueParrott「C300-XT MS」は、装着のしやすさも特長的

トランシーバーの電波が届かないような場所でもリモートから指示を伝達できる

ハードウェアとソフトウェアが一体となった専用デバイスと比較すると、スマートフォンにヘッドセットを外付けするシステムは構成が複雑になりトラブルが発生しやすいと考えがちです。実際、日頃からトランシーバーを利用しているイベント運営会社でも、利用に際して懸念もあったといいます。イベント運営会社であるケーズスタッフ 代表取締役 鳥海 貴之 氏は、こう話します。

  • 株式会社ケーズスタッフ 代表取締役 / Executive producer 鳥海 貴之 氏

    株式会社ケーズスタッフ 代表取締役 / Executive producer 鳥海 貴之 氏

「トランシーバーは、要件を簡潔にスピーディーに伝えられることがメリットです。ボタンを押してすぐに話し出せることが重要で、そこまでの操作が面倒だったり、つながりにくかったりすると一気に使いにくくなってしまいます。またバッテリーの持ちや、落としても簡単には壊れないこと、スマートフォンとヘッドセットの間の Bluetooth 接続が切れないことも重要です。テスト段階では、そうした懸念は運用の仕方によって何とか乗り切れるだろうとは感じたものの、実際に現場で使ってみないとわからないという怖さもありました」(鳥海 氏)。

もっとも、そうした懸念や怖さのほとんどは杞憂に終わります。ケーズスタッフ 企画制作部の鈴木 竜太 氏はこう話します。

  • 株式会社ケーズスタッフ 企画制作部 Producer 鈴木 竜太 氏

    株式会社ケーズスタッフ 企画制作部 Producer 鈴木 竜太 氏

「最初はボタンを押してから話すまでに遅延があることが気になったのですが、うまくタイミングを合わせると、通常のトランシーバーのように問題なく使えることがわかりました。むしろ驚いたのは音質の良さです。トランシーバーは周囲の騒音で聞こえにくくなることも多いのですが、BlueParrott は非常にクリアに聞こえました。比較的静かなイベント会場はもちろん、ブース会場でも周囲の音を拾うことなく、相手の声だけをはっきりと聞き取ることができました。バッテリーの持ちも問題なく、一日中充電することなく利用でき、ワイヤレスのためケーブルがひっかかって作業が中断することもありませんでした」(鈴木 竜太 氏)。

ケーズスタッフ 企画制作部の鈴木 秀之 氏は、トランシーバーと同じ使い方ができるだけでなく、トランシーバーではできなかったことが実現できることを高く評価します。

  • 株式会社ケーズスタッフ 企画制作部 Producer 鈴木 秀之 氏

    株式会社ケーズスタッフ 企画制作部 Producer 鈴木 秀之 氏

「スタッフの 1 人が事情により会場を一時的に離れる必要があり、その旨を警備担当者に伝達する必要がありました。通常は、トランシーバーと電話を使い分けて連絡するのですが、今回は、Teams をインストールしたスマートフォンと BlueParrott を持ち出すことで会場の外からでもリアルタイムに指示を伝えることができました。1 つのデバイスで時間や場所を問わず仕事ができるメリットを実際に肌で感じることができました」(鈴木 秀之 氏)。

「人材の配置を流動化して多様な働き方をサポートできる」「未来は明るい」と高く評価

運営スタッフからも「音質を含めた使い勝手は良い」「ケーブルレスで動きやすい」「小さくて邪魔にならない」「IP 通信なので電波の影響を受けず、離れた場所でも通信が可能」「現場に行けないが会話する必要があるケースなどで便利」「トランシーバーの免許が必要なく、専用機を持たなくても利用でき、初期費用が少なく済む」と評価する声が多くあがりました。

鳥海 氏は「専用機の場合、免許の取得・維持、機器の購入や保守が必要になるため、導入する台数によっては百万円を超えるコストが発生することもあります。現場で利用する際も複数台を同時に持つことが普通ですから、負担に感じることが少なくありません。スマートフォンとワイヤレスヘッドセットでこれら装備がまかなえるようになれば、現場の働き方も大きく変わってくると思います」と話します。

新しい働き方について、鈴木 秀之 氏は「場所を問わずに利用できるので、例えば、本社のあるオフィスとイベント会場をつないでコミュニケーションをとったり、コロナ禍で急に現場に来れなくなったスタッフが自宅から参加したりできます。人材の配置を流動化して多様な働き方をサポートできるようになると感じました」と指摘します。また、鈴木 竜太 氏も「Teams なので文書や画像・映像などの共有もスムーズです。これまでにはなかった新しい活用方法が可能で、未来は明るいと感じます」と続けます。

今回の取り組みで見えてきた改善点への対応も進めています。要望として多かったのはボタンを押して発信できるようになるまでの時間の短縮、ボタンを押す行為による耳への負担などです。GNオーディオジャパンでは「お客様からのフィードバックを受けながら製品の改善を進めています。すでにボタンを押したあとの時間についてはアップデートをリリースして遅延を大幅に少なくしました。今後、さらに使いやすくするための改良を重ねていきます」(高澤 氏)と、盛り上がる市場のニーズに応えていく構えです。

Microsoft Ignite の事例からもわかるように「クラウド活用のトランシーバー」は、時間や場所、デバイスの制約を取り払うことで、現場の働き方を大きく変える可能性を持っています。相場 氏と栗原 氏は「今回の自社実践の知見やノウハウをお客様に役立てていただけるようにさまざまな情報を公開していきます」と話します。また、加藤 氏は「トランシーバー機能だけでなく、Teams が提供するさまざまな機能をフロントラインワーカーの働き方の変革につなげていくことができるよう、これからもさまざまなサービス提供に取り組んでいきます」と今後を展望します。

[PR]提供:日本マイクロソフト