サイバースペース史の歴史学者は2018年をIoT(モノのインターネット)が主流になった年として回顧するようになるかもしれません。家庭のコネクテッドデバイスから工場の監視カメラやセンサーまで、IoTの加速は想像力を刺激し、製品開発を新しい方向へと推し進めています。2018年に私たちは今後数年間急速に普及するであろういくつかのIoTのキートレンドの出現を目の当たりにしました。以下にそのトレンドを挙げてみましょう:

AIとIoTの出会い

IoTにとってAI(人工知能)は、ポップコーンにとっての塩とバターのような存在です。IoT自体も刺激的で興味深いものですが、AIはそれに味付けをして、予測分析やデータに基づいた意思決定を可能にするのです。

2018年にはベンチャーキャピタリストたちが革新的な手法でAIを活用するスタートアップ企業に資金をつぎ込む一方、レガシーカンパニーは後れを取るまいと自己資金を投資しました。実際に第2四半期には、23億ドルという記録的な額が米国に拠点を置くベンチャーキャピタリストからAIのスタートアップ企業に投資されました。この動きは米国内だけにとどまりませんでした。8月には、トロントを拠点として工場の生産現場においてより分析的なデータ駆動型決定を支援する予測プラットフォームを提供するCanvass Analyticsが、GoogleのAI投資部門であるGradientが主導するファンドから500万ドルを確保しました。さらに、AIに投資しない企業はAIを買いにでました。5月には、NokiaがSpaceTime Insightを買収し、同社はNokiaのIoT製品ラインに予測分析を加えることになるでしょう。

AIによって加速した2018年のIoT革命は予測分析、産業用途、輸送分野に集中しましたが、ホームオートメーションなどの消費者向けのユースケースも多く見られ、こちらでもAIの活用が進んでいます。

省電力広域ネットワーク(LPWAN)の価値

必要なのはバイオリニスト1人なのに、なぜオーケストラを雇うのか?LPWANが重要なIoTプレーヤーとして登場した背景には、この考え方があります。高価な多層ネットワーク構築に依存するかわりに、IoTのアーキテクトたちは様々なLPWANを様々な新技術と組み合わせて低電力消費のIoTデバイスをサポートしています。

予測では、2021年までに世界全体で34億4,000万のデバイスがLPWAN技術を使ってコネクトされるとされています。

セキュリティを巡り続く攻防

2018年にはメーカーとネットワークを破壊する厄介者の間の駆け引きが続きました。IoTセキュリティへの支出が過去12カ月間で15億ドルに達したと予想されたのも驚きではありません。問題の大部分は、膨らみ続ける課題に端を発しています。すなわち消費者はより小さく、おしゃれで軽いソリューションを求めがちであり、こうした特性はより強力なセキュリティのニーズと必ずしも相容れないのです。

この二律背反は急成長するIoT医療機器のエコシステムにおいて特に深刻です。医療機器においては、より軽量であることがほとんど常に顧客にとってより好ましいのです。しかしながら、軽量のペースメーカー、あるいはコネクテッドコンタクトレンズは、より小さいフォーマットに収められる適切なセキュリティソリューションを必要とします。たとえば、2018年夏には、セキュリティの脆弱性による医療機器の大規模なリコールが2件発生しました。Medtronic社は心臓用の装置を回収し、FDAはAbbott社の心臓ポンプ5,000個の回収を命じましたが、これらはいずれもセキュリティ上の懸念によるものでした。

しかしながら、IoTセキュリティの懸念はテレビやガレージドアオープナーのような家庭用のアイテムにも広がっています。ハッカーたちはあなたの家を人質にしてお金を要求できるのです。ただし、ハッカーにとっての最先端分野はイノベーターにとっての新商機にもなるのです。

2018年にはIoTのセキュリティに対する懸念とソリューションの必要性が注目を集めました。実際に、Avnetの2018年の調査によると、IoTのスタートアップ企業の81%がセキュリティを製品発売時の障害の1つとみなしていました。

今では私たちは皆、サイトのクッキー使用を認める場合はクリックをすることや、どこにプライバシーポリシーが書かれているかを知っています。しかしこれは単純な一面なのです。スマートフォン上で同意のクリックを行うのも1つの手続きですが、ではIoTのセキュリティカメラがあなたの画像を捉えて、それをクラウドやあなたのスマートカーのセンサーに送信するのはどうでしょう?そのセンサーがあなたのドライビングデータを集めてあなたの保険会社に送るとしたら?メーカーや企業は、個人データの収集に関わるすべてのIoTデバイス上に同意するかどうかのオプションを提供しなければならなくなり、そうしなければ罰金を払うリスクを負うことになるでしょう。今夏EU(欧州連合)がGDPR(一般データ保護規則)を施行したことにより、この問題は誰にとっても最重要事項となりました。GDPRは他諸国が最終的に採用するテンプレートになると見込まれ、IoTプロバイダーは近い将来に準備を迫られることになるからです。

瀬戸際に立つIoT

2018年には世界のエッジコンピューティング市場は106億ドル規模まで膨らみました。この金額は、セキュリティとデプロイメントの拡張性を高める現場または現場の近くでのデータ処理に対する天井知らずの需要を表しています。フィルターをかけてあなたのビジネスが扱う極秘データを除去できて、残りのデータをクラウドに送ってルーチン処理することを想像してみてください。エッジコンピューティングはそれを現実にするのです。

2018年に、AvnetのパートナーであるIntelが、同社がエッジコンピューティングの大ファンであることを表明しました。GEのPredixと提携することにより、Intelはその生産設備の広大なネットワーク中のすべてのファンフィルターユニットにセンサーを取り付けたのです。このファンは、産業用機械内の空気を清浄化し、工場の生産現場の至る所に設置されています。ファンに過熱や不具合が発生すると生産がストップする恐れがあるのです。予測メンテナンスデータとエッジ分析を活用して、Intelは工場の稼働停止時間を300%減らしました。

他の多くの企業もエッジに身を投じています。AvnetとOctonionは協力して、エッジプロセッシング向けにAIで動くセキュリティソリューションの開発に取り組んでいます。これはエコシステムの中のこの部分にあふれる商機の好例といえるでしょう。さらに、今年はマイクロソフトからAzure Sphereが発売されました。これは先駆的な新ソリューションであり、Avnetが販売する業界トップのエッジテクノロジースタックにおいて複雑なIoTエコシステム全体に安全なタッチポイントを作ることができます。

トレンドに乗るために、適切なパートナーを見つける

IoTのアイデアを持つ人と、それをプロトタイプから生産へと展開するパートナーにとって、商機はこれまでになく大きくなっています。2018年は、新たなIoTのアイデアや発明の土台が作られた年でした。スマートホーム、コネクテッドカー、IoTで動く工場。すべては明日の200億のコネクテッドデバイスの世界の一部なのです。

当記事はアヴネットによる記事コンテンツを転載したものです

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