歴史ある一貫教育校が実現した「学びを止めない全校オンライン授業」
神奈川県藤沢市にある湘南白百合学園中学・高等学校は、中高一貫教育を行う私立の女子校だ。1936年に設置認可を受けた片瀬乃木幼稚園を皮切りに、小学校、高等女学校と拡大させ、1946年に校名を湘南白百合高等女学校と変更した歴史を持つ。また、キリスト教カトリック教会の精神に基づいた教育を行う伝統的な学校として知られている。
在校生は6学年で1,000名を超え、神奈川県を中心に東京都からも通学する生徒もいるという。そうした中、生徒たちが安全な環境で十分な教育を受けられるようにするため、2020年春からの新型コロナウイルス流行を受けた対応は迅速かつ大胆に実施された。
まず、2月27日午後には政府要請に先んじて休校を決定。2020年度が始まる新学期からはオンライン授業が行えるよう、3月中から対策チームの結成や教員用オンライントレーニングを実施した。各家庭の環境を整えてもらう期間を含め、実際に授業ができるようになったのは4月20日からだったが、それ以前にもオンライン朝礼を行うなど、生徒が自宅待機で手持ち無沙汰に過ごす期間は最小限に抑えられた。そのまま1学期間をまるまるオンライン授業で対応することになったが、カリキュラムにほとんど遅れは出なかったという。これを支えたのはサテライトオフィスが導入支援を行った、G Suite for EducationとChromebookの組み合わせだった。
コストメリットと将来性で生徒用に
「G Suite for Education+Chromebook」を選択
緊急事態に迅速な対応ができたのは、以前から校内のICT化に取り組んできていたからだ。湘南白百合学園中学・高等学校では、PC教室や理科実験室等への端末配備は進めてきたが、すでに4年ほど前から1人1台の端末を配備した環境を目指していたという。
「私自身は校内のICT化推進やシステム構築のために入職し、現在ではそれに加えて生徒対応もしています。学校ならば無料で利用できるプランや海外の教育機関で導入事例が多いことから、クラウドシステムはG Suite for Educationを利用したいと考えていたのです。ただ、調べる中でパートナーの必要性を強く感じ、いくつかのベンダーに打診していたところ、我々が切望する技術力を持って迅速に対応をしてくれたのがサテライトオフィスだったのです。Googleサポートセンターに問い合わせても数日かかる質問を、すぐに調べて回答してくれました」と語るのは、湘南白百合学園中学・高等学校の太田裕美氏だ。
生徒が1人1台の端末を持てる環境を実現するために、具体的な端末選定を行うにあたっては、トータルコストと共に、生徒が将来活躍する時代がどうなっているかという視点が重視された。
「WindowsとMac、Chromebookという選択がある中で、各種ライセンスや保守まで含めたトータルコストが安価であること、起動が速いこと、クラウドを利用した管理がしやすいこと、導入が迅速に行えることなどからChromebookを選定しました。いろいろなことをクラウドで行うと決めれば、機能的にもChromebookで十分です。また、WindowsとExcelという組み合わせが今後いつまでもスタンダードだとは限りません。子供たちが成長し、仕事の現場で上に立つころには、すばやい問題解決力を持ちあわせていれば使用するアプリの少しの違いなどは問題にならないはずです」と太田氏。
実際に選定されたのは、ペン入力が利用できる「ASUS Chromebook Flip C214」だ。サテライトオフィスが提供するChromebookの中では高価なため、コストを重視したときに選ばれにくい端末といえる。しかしこれは、授業や校内活動での利用の拡張を見込んだ選択だという。
「ペン入力があることで、できることが広がります。PDFへの書き込みは便利ですし、美術や家庭科といった実技教科や、国語の書道での利用といったことも将来的に考えられます。ペンがあることで授業のアイデアが広がり、実際に生徒たちはペンをマウスの代わりに、とてもよく使います」と太田氏はペン入力への期待を語った
配布計画直前の休校に郵送配布やポータル整備で対応
準備は順調に進められていたが、残念なことに生徒への端末配布計画は2020年4月からだった。つまり、配布開始前に休校になってしまったわけだ。
「まずは2学年分を配布予定だったのですが、直接配布することはできず郵送になりましたし、ガイダンスを行うこともできませんでした。初期不良対応なども対面ではできない状況で、取り急ぎサテライトオフィスに作成してもらった手引き書と、Googleサイトで作成した学年ごとのポータルサイトを活用しての対応になりました」と語るのは、湘南白百合学園中学・高等学校の教諭で教務部長である石原寛子氏だ。
当初の予定では、まず2学年への配布を4月に行い、ついで2学年分を夏休み明けの9月に行う予定だった。そのため、ポータルサイトも2学年分だけを用意していたが、急ぎで全学年分を展開することになったという。
「Googleサイトは意外と使いやすかったですね。それでも急きょ全学年に必要となったので、とても忙しかったです。利用マニュアルやClassroomなどへの入り口も全部ポータルサイトに用意したので、とにかくここへ入ればなんとかなるということで、その手引き書を紙で配付しました。かなり大変なことになると思ったのですが、子供たちの対応力が高く、意外となんとかなりましたね」と石原氏は振り返る。
4月初旬には全生徒に対してG Suite for Educationのアカウントを発行。端末配布が間に合わない学年に対しては、家庭で保有するPC利用を前提にネットワーク環境も含めた調査を実施。端末がない生徒へは個別相談のうえ、Chromebookの貸し出しが行われた。
さまざまな予定を前倒しして開始されたオンライン授業のスタートは、4月13日のことだった。まずは1週間、学年ごとの朝礼を実施。4月20日からは全生徒を対象としてClassroomを活用した授業が完全開始された。朝のうちに全教科の動画や課題を配信し、生徒自身が学習計画を組み立てる形で時間割を構築するなど、これまでのように教室で授業を受けるのと異なる状況は1学期間続くことになった。
「2年分は進んだ」実感! 緊急事態に教員が一丸となって取り組む
生徒側の環境整備だけでなく、教員側の準備にも苦労は多かったという。新学期からの活用を視野に入れた機材面での準備は整っていたものの、実際に授業を行うだけの知識や経験がやや不足していたのだ。
「教員には昨年9月から1人1台のChromebookを配布していましたが、授業での活用は限定的でしたし、Jamboardも3台導入していたものの、昨年度までは大きなディスプレイとして使われているだけでした」と石原氏。
同じく9月に導入したChromecastは、教室内を教員が歩き回り、ときには生徒の近くで声をかけるといった授業スタイルを維持したまま、教員端末から画面をミラーリングできるということで非常に効果があると利用されていたが、生徒が1人1台の端末を持つことを活かした授業への対応には行き届いていなかったという。
そのような状況を受けて、コロナ禍への対応を急きょ求められることになった直後から行われたオンライン授業トレーニングには、多くの教員が非常に熱心に参加。サテライトオフィスが急きょ実施したトレーニングでも、質問が途切れないほどの熱心さが見られた。
「あのときの先生方の取り組みは、本当にすごかったですね。皆さん、すごく協力してくれて、教科ごとにGoogle Meetを利用した勉強会などをしていました。各授業でビデオを撮影してClassroomにアップロードしたり、課題を配布したり。また小テストなども行った結果、カリキュラムをほとんど遅らせることなく進めることができました。大変でしたが、あれで2年分くらいICT化が進んだと感じています。職員の朝礼なども全部Meetでしたし、少し落ち着いてからの部活動もまずはMeetからだったので、もうMeetを使えない先生はいないくらいです」と太田氏は緊急対応からの大きな成功について語ってくれた。
安全と学習を両立させる柔軟な学校生活はアイデアとICTで実現中
湘南白百合学園では、学校側から配信するオンライン授業や、教室に集まって教員と生徒が一対多数で行う授業での利用だけでなく、ChromebookやJamboardの活用が校内で広がっているという。
「たとえば、委員会を決めるにあたって、委員会ごとのMeetを立ち上げて自分が所属したいところに参加する、という方法を生徒主導で進めていました。人数が多いところには、もっと少ないところへ移動して、と呼びかけるようなやり方です。面白い方法を考えるなと感心しました」と太田氏。
従来は1つの机を囲んで頭を寄せ合って話していたグループ学習では、Jamboardをうまく活用して、自分の端末から画面共有を行ったうえで共同作業機能を利用するなど、距離を保ちながら学習を進めているという。また、ピアノを使う授業でも従来は入れ替わり立ち替わりピアノを使っていたところを画面上で利用できるデジタルピアノに切り替えるなど、柔軟な対応が行われている。
「Androidアプリも入れられるので、生徒からリクエストを受けて認められたアプリが利用できるようになっています。天気予報のようなものから、集中するためのタイマー、単語カルタといった勉強に使うもの、特定の部活動で利用するもの、塾で使っているものをそのまま利用するなど、月に4~5件リクエストがあります。デジタル化すると生徒からの意見が出やすいと感じていますが、先生と顔を合せて話すよりも言いやすいのでしょうね」と太田氏は生徒たちの変化について語った。
Jamboardを利用したアクティブラーニングも可能な
「メディアネットラボ」がオープン
急きょ対応することになったオンライン授業を乗り越え、通常授業を行えるようになった今、湘南白百合学園では、校内でのICT活用をさらに進めるべく動き続けている。
2020年9月にはかねてより計画されていた、アクティブラーニングに利用が可能で、学生ステーションとしての役割も担う「メディアネットラボ」がオープンした。これはブラウジングゾーンに移動可能なテーブルとJamboard、ドキュメントの出力やスキャンが可能な機器に加えて、貸し出し用Chromebookを配備したスペースだ。
「ペーパーレス化は進めていますが、紙が必要になることもあります。以前はPC教室だけで対応していたので不足がありましたが、メディアネットラボができたことで小規模なグループがいくつも並んで利用できるようになりました。デバイスの貸し出しは自分の端末を忘れた生徒への窓口として考えています」と石原氏。
「端末を配布していない学年が2学年ありますが、ここでも授業に必要ならば貸し出しを行っています。今後はもっと借りやすくする環境を整備しなければなりません。いずれはJamboardを全教室に導入し、全生徒を繋ぐネットワークを構築したいですね」と太田氏はより一層の環境整備に目を向ける。
1学期まるごとオンライン授業という状況に対応した結果、教員側のスキルが向上し、すでに単純な機器やシステムの使い方に悩むことはなくなっているようだ。さらなるG Suite for Education活用のために、G Suite for Education の上位バージョンであるG Suite Enterprise Educationの利用も開始。授業への活用方法にも多彩なアイデアが見られるという。
「こんな使い方をするのかとアイデアに驚くこともあります。先生方から出てくるアイデアがとても面白いので、今後はそれをいかにシェアするかが課題です」と石原氏は締めくくった。
監修:原口 豊(はらぐち・ゆたか)
大手証券会社システム部に在籍後、1998年、サテライトオフィス(旧ベイテックシステムズ)を設立。2008年、いち早くクラウドコンピューティングの可能性に注目し、サービスの提供を開始。G Suite(旧Google Apps)の導入やアドオンの提供で、これまで実績4万社以上。「サテライトオフィス」ブランドでクラウドサービスの普及に尽力している。
サテライトオフィス
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さまざまなビジネスモデルに最適なソリューションパッケージを開発し、ユーザー目線に立った戦略の企画・提案を行っています。業界No.1の導入実績を持つG Suite(旧Google Apps)やOffice 365、LINE WORKSなどクラウドコンピューティングに関わるビジネスの可能性を追求しています。
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