9回目では、ストレージの信頼性を向上させるためのテクノロジーとして、RAIDとイレイジャーコーディングを紹介しました。また、最新の仮想化をベースとしたコンピューティング環境において、データ保全のためにスナップショットを実行する際には、高度な技術が必要になることも理解いただけたと思います。

このように進化し続けるストレージですが、単にデータを蓄えて高速なアクセスを可能にするだけではなく、セキュリティやサービスの品質など、現代のIT資産に必要な管理機能が求められるようになりました。また、それを包括的に管理するツールの必要性がますます高まってきています。そこで今回は、ストレージを管理するツールの重要性を紹介します。

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現代のIT資産に必要な管理機能とは?

これからのストレージ管理は、「いかにアプリケーションに容量を配分し、高速なアクセスを実現できるか」という従来の考え方だけでは収まらなくなっています。現代のIT資産に求められる管理機能は多様ですが、特に大きな傾向として、「インフラのコード化」、「スケールアウト」、「分析と予測」に対応することがより重要です。

では、「インフラのコード化」、「スケールアウト」、「分析と予測」の3点について、仮想化環境に特化したストレージを展開するTintriのストレージアプライアンスを例に挙げて解説を進めましょう。

「インフラのコード化」の実現へ

運用管理という意味では、インフラのコード化として、手動で行ってきた仮想マシンやミドルウェアなどの展開や構成管理を、従来のシェルスクリプト運用以上に、ソフトウェア開発の発想でプログラム化しようという流れがあります。これまでのシステム運用の中で、運用仕様書などをドキュメントとして作成する代わりにコード化し、再利用を促進してバージョン管理などを用いることで、運用管理の可視化を進めるイノベーションといっても良いでしょう。そのためには、グラフィカルなインタフェースだけではなく、REST APIやPowerShellなどのコマンドラインによって管理を可能にする必要があります。 Tintri VMstoreおよび「Tintri Global Center」では、すべての機能がREST APIからアクセス可能です。Windowsサーバーに慣れた管理者向けに、PowerShellのツールキットも提供しており、これまでの運用管理の延長として容易に管理できます。また、VMware vSphere PowerCLIなどとも組み合わせて実行することも可能です。

また、最近は「ChatOps」という、スマートフォン等で「Slack」などのチャットのアプリを使い、会話するように運用管理を行う動きが活発化しています。このChatOpsでの管理方法や具体例については次回詳しく紹介します。

大規模な仮想環境に対応するストレージを管理する

サーバーの仮想化が進んだことで、アプリケーションが必要とする仮想サーバーを迅速に構築することが可能になりました。つまり、1台の物理サーバーに仮想マシンが数百台規模で稼働できるということです。Webアプリケーションやクラウド環境のインフラのように、複数のサーバーで構成されるクラスターになれば、数千台、数万台という規模の仮想マシンが稼働できるようになります。しかし、そのような大規模な仮想環境では、利用するストレージがLUN単位でしか管理できないのは管理工数が膨大になってしまいます。LUNで切り分けられたストレージを管理しようとしても、さまざまなアプリケーションが稼働する仮想環境においては、利用するストレージに対するI/O要求が異なりますので、どうしても管理に限界があります。その際に必要なのは、仮想マシンの視点で管理できることとそれを包括的に管理するツールの存在です。

巨大なスケールのストレージを集中管理する

Tintriを例に取ってみると、ストレージ管理ツールであるTintri Global Centerは、最大32台のTintri VMstoreアプライアンスを一括で管理できます。これは、最大16万台の仮想マシンが稼働する大規模な環境でもあります。

仮想マシンが利用するストレージについて、スペース使用率、IOPS、利用可能な空き容量などの情報をドリルダウンしたり、仮想マシンの負荷率を上位からリストアップしたりすることで、現在の状況を瞬時に把握することができます。さらに、仮想マシンごとの稼働履歴を1ヶ月保存できるので、過去にさかのぼって傾向分析を行うことができます。Tintri Global Centerでレプリケーションやスナップショットなどを行うことも可能で、データセンターと災害対策用のリカバリーストレージを透過的に管理できます。

そしてTintri Global CenterのAdvancedオプション機能では、複数のTintri VMstoreをひとつのストレージプールとして、仮想マシンを分散配置する「VMスケールアウト」機能を提供します。最大構成では10ペタバイトの巨大なストレージ空間が生まれ、仮想マシン単位で容量と性能を自動的に無停止で各Tintri VMstoreのノードにバランシングさせることができます。

ストレージの未来を予測する

ここまでで、現代のストレージ管理に求められるセキュリティ、インフラのコード化、そしてスケールアウトをTintri VMstoreとTintri Global Centerを例に解説しましたが、ここからは、少し未来的な管理機能を紹介しましょう。

かつては、企業が使うIT資産の利用率や規模がこの先どうなるのかを予測することは、それほど難しくありませんでした。システムを利用するユーザーやトラフィック、それを処理するサーバーの数もそれほど変化することはなく、1年後を予想することは容易でした。

しかし、インターネットを活用して様々な外部サービスと連携したり、IoTに代表されるセンサーデータを活用したり、これまではあまり活用されていなかったログを使う分析が行われるようになると、企業が使うデータは急速に肥大化します。Apache Hadoopに代表される非構造化データから新たな価値を生み出すようになることで、これまで見過ごされてきたデータの価値が見直されていると言えるでしょう。これからのストレージシステムにおいては、「現在のデータ」を確実に把握して保護するだけではなく、「未来のデータ」がどうなるのかを的確に見通せるかが重要になってきています。

そこで、Tintriは「Tintri Analytics」と呼ばれる分析/予測クラウドサービスを提供しています。Tintri Analyticsは、Apache SparkとElasticsearchによって構成されるSaaS型アプリケーションで、Tintriのストレージに関する過去3年分のデータを瞬時に分析し、今後のストレージの使用率を仮想マシン単位で予測表示することができます。全世界で稼働するTintri VMstore 2,000台から6年にわたり蓄積した膨大なビッグデータの解析データをユーザーに開放することで、アプリケーション毎の利用状況や傾向の分析、将来予測を的確に行います。

たとえば、「新たに従業員300名分の仮想デスクトップを3ヶ月後に追加したら、何のリソース不足が発生するか」といったWhat-if分析が可能なので、現状の分析に留まらず未来を予測して精度の高い設備投資の計画を立てることができるようになります。

変化が激しい現代のIT資産であっても、過去から蓄積したビッグデータを利活用することで、より前向きなストレージ管理が可能になるのです。

ストレージの管理ツールについてはTintri Global Center、分析予測サービスについてはTintri Analyticsを例に説明しました。この流れはストレージのみならずITシステム全体に及び、アプリケーションを可視化し管理するAPMツールのdynaTraceやAppDynamics、仮想化基盤の運用を支援するVMware vRealize Operations Manager(vROps)や、SANストレージの分析と予測を行うNimble Storage InfoSight などが各社から提供されています。

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次回は、フラッシュストレージのニーズが高い仮想デスクトップ環境にとって、最適なストレージとはどのようなものかを紐解いていきます。

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